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CLASSICAL新譜レビュー 前編【2020.6 146】

2020年6月20日発刊のintoxicate 146、お茶の間レビュー掲載の
CLASSICALの新譜7枚をご紹介!

※CLASSICAL新譜レビュー後編【2020.6 146】はこちら

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intoxicate 146


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①【CLASSICAL】
エミール・ギレリス第11集 - ベートーヴェン、ラフマニノフ: ピアノ協奏曲
第3番

エミール・ギレリス(p)オイゲン・ヨッフム(指揮)コンセルトヘボウ管弦楽団 ユージン・オーマンディ(指揮)フィラデルフィア管弦楽
[Doremi DHR8100] 〈輸入盤〉

1999年からDoremiレーベルでリリースが続いている『Emil Gilels Legacy』シリーズ。6年振り第11弾が発売。「このような録音を聴けるのを待っていました」と思わずにはいられない迫真の演奏。ベートーヴェンの協奏曲は、1、3楽章は、流れるようなタッチと情熱入り混じる力強いテクニック。一方で2楽章はじっくりと聴かせてくれている。ラフマニノフでは、まるで鍵盤と乱闘しているかのような超絶技巧。負けじとオケもくらいつく。音質の面は残念ながら決して良好とは言えないが、それでもライヴの緊張感溢れる音楽がひしひしと伝わってきてならなかった。 (新宿店 飛田陽海)

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②【CLASSICAL】
キャリン・ユマ: ピアノとオーケストラのための《交響的協奏曲》/ 交響曲第1番《 カルパティカ》(全曲世界初録音)

セルジュ・トゥフティウ(p)クリストファー・ピートリー(指揮)
BBC ウェールズ・ナショナル管弦楽団
[Guild GMCD7824] 〈輸入盤〉

オススメしたい美しいメロディが溢れるピアノ協奏曲を発見! ルーマニア出身、イギリスで活動する作曲家キャリン・ユマ(1965-)。2015年に作曲されたピアノとオーケストラのための「交響的協奏曲」はその名の通りオーケストラが壮大に華やかで、躍動するピアノと共に音楽を盛り上げている。ユマの故郷であるルーマニア、モルドヴァ地方の民謡がふんだんに取り入れられ、ロマン派的雰囲気を持つ美しく、どこか懐かしく感じる哀愁のあるメロディが新鮮。雄大な自然の威風堂々とした佇まいを音楽から感じてしまうのは気のせいでしょうか。カップリングは「交響曲第1番《カルパティカ》」。2 曲とも世界初録音。 (上村友美絵)

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③【CLASSICAL】
カンティレーナ

タベア・ツィンマーマン(va)
ハヴィエル・ペリアネス(p)
[Harmonia Mundi HMM902648] 〈輸入盤〉

アルカント・カルテットの一員としても活躍する一方、現在の作曲家もこぞって新曲を作曲するビオラの名手、タベア・ツィンマーマンの新作『カンティレーナ』はピアソラやファリャといった南米、スペインの作曲家による作品集。今までビオラを含むクラシックの作曲家のオリジナル作品をレパートリーの中心として来た彼女にとっては珍しくアレンジもの中心の選曲でクロスオーヴァー的な仕上がりになっている。冒頭のピアソラの《グランタンゴ》を情熱的に聴かせるかと思うとタイトル曲《カンティレーナ》ではしっとりと聴かせる。彼女の新たな魅力を引き出したアルバム。( 梅田大阪マルビル店 西川智之)

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④【CLASSICAL】
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第2番 モーツァルト: ディヴェルティメン
トK136 ~第1 楽章 グリーグ: 組曲《ホルベアの時代から》

マルタ・アルゲリッチ(p)
小澤征爾(指揮)水戸室内管弦楽団
[Decca/ ユニバーサル UCCD-40017] UHQCD 〈高音質〉

2017年5月。水戸芸術館で開催された伝説のコンサート『水戸室内管弦楽団 第99回定期演奏会』から2年。再びアルゲリッチと小澤征爾&水戸室内管弦楽団との共演が実現。水戸第1回目の公演は残念ながらマエストロの体調不良のため指揮者なしの演奏であったが、2日目に感動の共演。流れるようなタッチで快活に奏でられるアルゲリッチのピアノ。そして水戸室内の一糸乱れぬ演奏と柔らかな響き。その音楽に終始胸の鼓動は高まるばかりだ。その余韻は聴き終わっても消えることはない。聴衆の割れんばかりの拍手喝采が、この名演の全てを物語っている。カップリングの2曲も非常に価値ある録音である。 (新宿店 飛田陽海)

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⑤【CLASSICAL】
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲全集

スティーヴン・ハフ( p)ハンヌ・リントゥ(指揮)
フィンランド放送交響楽団
[Hyperion CDA68291] 3CD 〈輸入盤〉

響きが混濁しないで、詩情豊かな美しい高音の弱音と柔らかく優美な低音が響く。ハフはベーゼンドルファーのピアノを使用し速すぎないテンポで自然で流麗、そして力強さも備えたベートーヴェンを表現した。第4番の第1楽章や各曲のラルゴやアダージョの緩徐楽章が優れている。第5番「皇帝」では冒頭のカデンツァを弾き飛ばすことを戒め、楽譜の音を抑揚をつけてしっかり鳴らして耳に届けてくれる。第3楽章の中間部のピアニシモの壮絶な美しさも聴きどころ。この演奏に大きく貢献したリントゥ指揮フィンランド放送交響楽団の爽快でキレのあるリズム感と音に立体感が素晴らしい。(渋谷店 雨海秀和)

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⑥【CLASSICAL】
J.S. バッハ: マタイ受難曲

サー・スティーヴン・クレオベリー(指揮)
ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団
ケンブリッジ・キングズ・カレッジ・スクール合奏団 他
[The Choir of King's College  KGS0037] 3CD SACD ハイブリッド
〈高音質〉〈輸入盤〉

2019年11月22日に70歳で死去したスティーヴン・クレオバリーのおそらく最後の録音となった『マタイ』。ウィルコックス、レッジャーという名匠たちの後を継ぎ、37年もの間、英国の名門、ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団を音楽監督として率いた彼は、同年4月にカレッジのチャペルで録音を行い、9月に引退した。彼の “白鳥の歌”となったこの 『マタイ』再録音でエヴァンゲリストを務めるのは、ガーディナー再録盤やエガー盤でも美声を聴かせてきたギルクリスト。クレオバリーが少年たちと感興豊かに奏でる澄明な空間へ鮮やかな光彩を差し込ませる表現力は、ここでも格別の存在感を示す。(新宿店 森山慶方)

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⑦【CLASSICAL】
ベートーヴェン: 三重協奏曲、交響曲第7番

アンネ= ゾフィー・ムター(vn)ヨーヨー・マ(vc)ダニエル・バレンボイム(p、指揮)ウェスト= イースタン・ディヴァン管弦楽団
[Deutsche Grammophon/ ユニバーサル UCCG-1867]

バレンボイム、ムター、ヨーヨー・マの大顔合わせによる三重協奏曲と交響曲第7番。ベートーヴェンの生誕250 年を飾る華やかな1枚。バレンボイムが形作る振幅の大きい音楽の中でムターとヨーヨー・マは意外なほど渋く振る舞って温かい時間を作り上げる。ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団のシェイプアップされた身のこなしの滑らかな響きとのバランスもいい。このオーケストラのキャラクターゆえか交響曲はバレンボイムとしては薄く軽めのまとまりで爽快感のある好演。久々にドイツ・グラモフォンらしいジャケット、内容のアルバム。円熟と新味の融合が聴ける。 (渋谷店 中川直)

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