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〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉コロンえりか(Erika Colon)インタヴュー

■この記事は…
2020年6月20日発刊のintoxicate 146〈お茶の間ヴューイング〉に掲載されたコロンえりか(Erika Colon)インタビュー記事です。

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intoxicate 146


コロンえりかa

エル・システマの国から来た母なる歌姫

interview&text:東端哲也

 駐日ベネズエラ大使夫人でソプラノ歌手としても活躍中のコロンえりか。「何かと分断が進むこの世界で人々の心をつなぐ架け橋になりたい」という願いを込め『BRIDGE』と名付けられたデビュー盤は、4児の母親でもあり「歌うことは祈りにも似ていて、私の中では愛する気持ちと深く結びついているもの」と語る彼女らしい慈愛に溢れた楽曲で満たされている。巨匠たちが残した聖母マリアを称える名曲の数々も素晴らしいが、やはりベルギー出身で後にベネズエラ国立音楽学校の学長も務めた父エリック・コロンが作曲し、2001年に長崎の浦上天主堂で彼女によって初演された《被爆のマリアに捧ぐアヴェマリア》は別格だ。


 「1938年生まれで、祖父母らをナチスに殺された父にとっても戦争はリアルなトラウマですが、曲の後半の長調で歌われる《Sancta Maria》の部分には暗闇にさす希望の光が感じられる。爆心地の瓦礫の下から見つかったマリア像は、そんな信仰の輝きの象徴ではないでしょうか。私も人間の善なる心を信じたい」子守唄の調べもこのアルバム全体を流れる穏やかなテイストのひとつ。上皇后陛下の詩による人気曲も味わい深いが、ギター曲に定評のあるベネズエラの作曲家アントニオ・ラウロの知られざる作品も胸を打つ。


 「ラウロは父の大親友で、日本人の母との出会いも彼の紹介だったとか。父が個人的に託されたこの曲の楽譜には“ 愛する孫へ” との書き込みがありました」《平和》も同国が生んだ作曲家でフランス歌曲の大家アーンの作品。一方、かつて淡谷のり子が日本語でカヴァーし流行歌としてヒットした《マリア・ラ・オー》を作曲したのはキューバ出身のレクオーナ。


 「カリブ海に面したベネズエラの音楽シーンは、陽気な海のリズムと内陸から伝わったタンゴなどが混じり合って多様性に富んでいます。でも日本人は本当に昔から《コーヒー・ルンバ》(※作者はベネズエラ人)とかラテンの歌が大好きですよね! 私は逆に子どもの頃はアニメなど日本文化に憧れて育ちました」伴奏は主に山田武彦のピアノ。これに弦楽四重奏を加えた、上田真樹・作曲の《 よるのみち》(※歌詞はまど・みちおの詩の上皇后陛下による英訳版)やジョージアのアザラシヴィリ作曲(上田編曲)による佳曲《無言歌》の演奏も素敵だ。そしてラストを飾る世界16カ国の駐日大使・大使夫人が合唱に参加してレコーディングが実現した陽気な《ア・エ・ミ・バナナ》も圧巻。


 「外交の世界でも音楽の果たす役割って大きいです。お互いしがらみ抜きで、みんなの気持ちを繋ぐから」


 10月の公演ではアルバム収録楽曲に加えてラテン・ナンバーも多数披露する予定とか。こちらも楽しみだ。


コロンえりかj

【CD】
『BRIDGE』

コロンえりか(S)
[キングレコード KICC-1516]


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