JAZZ新譜レビュー 後編【2020.6 146】
2020年6月20日発刊のintoxicate 146、お茶の間レビュー掲載のJAZZの新譜8枚をご紹介!
※JAZZ新譜レビュー前編【2020.6 146】はこちら
intoxicate 146
①【J-JAZZ】
Vibrant
西山瞳(p)
[MEANTONE RECORDS MT8]
西山瞳待望のピアノ・ソロ・アルバム第二弾。西山瞳といえば、ヘヴィメタルの名曲をジャズで演奏するプロジェクト〈NHORHM〉や、ピアノ・トリオの活動でジャズ・ファンに知られているが、このピアノ・ソロは普段のアグレッシヴな音楽とは対極的な静かな音に包まれた内容になっている。全曲、西山瞳の作曲によるオリジナルだが、特に《Empathy》《Until The Quiet Comes》《Snow Train》の3曲の美しさには目をみはる。使用されたピアノはFAZIOLI F212、西山瞳自身がプロデュースを担う。(荻原慎介)
②【NEW AGE/CLASSICAL】
ストーリーズ
斎藤守也(p)
[ユニバーサル UCCY-1106]
1台4手連弾の兄弟ユニット〈レ・フレール〉の兄で、コンポーザー・ピアニスト斎藤守也の、約3 年振りとなるソロ・ピアノ・アルバム第2弾。『ストーリーズ』というタイトル通り、自身が作曲したオリジナル作品14 曲には一曲ごとに様々な物語が詰まっている。キラキラと輝くメロディ、慈しむように優しいメロディ、メランコリックなメロディ、風景が思い浮かぶものなど、それぞれの想い溢れる美しいメロディが魅力的。聴く人それぞれがイマジネーションをめぐらし、メロディを感じながら聴くのも楽しそう。ゆったりとした時間に流す音楽としてもオススメ。(上村友美絵)
③【J-JAZZ】
AI Factory
T-SQUARE
[T-SQUARE Music Entertainment Inc. OLCH-10017]
SACD Hybrid+DVD 〈高音質〉
2020年、デビューから42年、常に進化するサウンドを提供し続けるスーパー・フュージョン・バンド、T-SQUARE。ギターの安藤正容、サックスの伊東たけし、キーボードの河野啓三、ドラマーの坂東慧の鉄壁の4人体制が2019年の前作『HORIZON』では、河野啓三が急な病気治療&リハビリのため、レコーディングもツアーも不参加という事態となり衝撃が走った。それが本作で見事に復帰し、全9曲中3曲のオリジナルも提供するなど、まさに「T-SQUAREイズ・バック!」。サポート・メンバーである田中晋吾(b)、白井アキト(k)も参加、よりパワー・アップしたバンドを体感。 (馬場雅之)
④【JAZZ】
イン・コモン2
Walter Smith III(sax)Matt Stevens (g)Micah Thomas(p)
Linda Oh(b)Nate Smith(ds)
[ コアポート RPOZ-10057]
ウォルター・スミス3世の《In Common》に続く二作目。テレンス・ブランチャードや、ケンドリック・スコット、エリック・ハーランドのアンサンブルに参加、つまり今、三十代の在米アーティストの定番出世街道を歩んできた一人である。これまでもたくさんアルバムをリリースしてきた彼にとってこの〈In Common〉なるプロジェクトがどういうもののなのか。前作はドラマーにマーカス・ギルモアを、そして今作ではネイト・スミスを迎える。作曲家としてはアルバム《Ⅲ》での《Capital Wasteland》でそのフォーム、彼らしいケーデンスを確立して以来、今作に至るまでその魅力は尽きない。 (高見一樹)
⑤【JAZZ-VOCAL】
Vida Profunda
Carolina Calvache
[Sunnyside Communications SSC1587] 〈輸入盤〉
コロンビア出身、ニューヨークで活躍する女性ピアニスト。アントニオ・サンチェスらが参加し、コンテンポラリー・ジャズに南米のフォルクローレを融合させたサウンドで鮮烈にデビューを飾った2014年の『Sotareno』に続く2作目となる本作。ルーベン・ブラデスをはじめ、様々なシンガーをフィーチャーした歌モノで、ストリングスも交えたドラマティックなサウンドによって、すべての人の経験や感情を、詩とともに表現しているという。キレのあるリズムと情感を豊かに表現する彼女のピアノが、優しくも力強いタッチで心に響いてくる。(新宿店 栗原隆行)
⑥【JAZZ-VOCAL】【CD/LP】
ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア
Norah Jones
[Blue Note Records/ ユニバーサル ミュージック
UCCQ-9571(SHM-CD+DVD)UCCQ-1125(CD)0874886(LP)]
2016年の前作『デイ・ブレイクス』以降、アルバム制作を意識した音楽創作をほとんど行っていなかったというノラ・ジョーンズ。そんな中、作った音源を繰り返し聴いているうちに創作意欲が芽生え、本年になりストリングスやハーモニーを入れ最終仕上げにかかり出来上がった、本人が「これまでで一番クリエイティヴ」と語る最新作。総勢20名以上の実力派ミュージシャンが参加し、11曲中、9曲のプロデュースをノラ本人が、2曲はウィルコのフロントマン、ジェフ・トゥイーディーが担当。深みのある楽曲の中から聴こえるノラの存在感ある歌声、ピアノの響きなど、じわっと心の中に沁みわたる。(馬場雅之)
⑦【JAZZ】
リトル・ビッグII:ドリームス・オブ・ア・メカニカル・マン
Aaron Parks(p)
[BSMF RECORDS BSMF5096]
ピアニスト、アーロン・パークスのプロジェクト、〈リトル・ビッグ〉の二年ぶりの新作。二年前といえば、サックス奏者ベン・ウェンデルの『The seasons』にも参加、素晴らしいピアノを聴かせていたがそれ以降、レコーディングは無かったようである。かつてのブルックリン楽派のM Bassように、このアルバムを聴くとアーロン周辺にも同じ音楽観を共有する人々による楽派めいたものが出来上がりつつあるように感じる。例えばウォルター・スミス3世やアンブローズ・アキンムシーレといったアーティストの音楽にも、こうした空気感は随分浸透しているようだ。地域性というよりは世代なのだろうか。(高見一樹)
⑧【JAZZ / CLASSICAL】
I STILL PLAY
v.a.
[Nonesuch 7559.792086] 〈輸入盤〉
スティーヴ・ライヒにパット・メセニー、ランディー・ニューマンやローリー・アンダーソン、ブラッド・メルドーとルイ・アンドリーセンなどなど総勢11名の作曲家が書き下ろしたピアノ作品集。〈ノンサッチレーベル〉のボブ・ハーウイッツの名誉会長職就任を祝うためのプロジェクトである。彼が無類のミュージカル好きだというのは聞いていたけれど、熟達したピアニストとはしりませんでした。クラシックではポール・ジェイコブズ、リチャード・グートなど名ピアニストらの録音で知られるレーベルにもう一枚、ポップでミニマルなピアノ曲集の名盤が加わった。おそらく来年にはボブ自身がこの曲集を録音か? (高見一樹)
▶前編はこちら!
JAZZ新譜レビュー前編【2020.6 146】
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