見出し画像

〈JAZZロングレビュー〉アーロン・ディール(Aaron Diehl)「The Vagabond」【2020.2 144】

■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間レヴュー JAZZ〉掲載記事。アーロン・ディール(Aaron Diehl)の2020年2月14日発売「The Vagabond」をレビューした記事です。

画像1

intoxicate 144


繊細なタッチのピアノをキーに、ジャンル、過去と未来を一線につなげる野心作(常盤武彦)


アーロンj

【JAZZ】
The Vagabond

Aaron Dieh(l p)Paul Sikivie(b)Gregory Hutchinson (ds)
[Mack Avenue Records MAC1153]〈輸入盤〉

 2011年にアメリカの若手ピアニストの登竜門で、隔年でジャズとクラッシック・ピアニストが顕彰されるコール・ポーター・フェローシップで優勝を飾り、〈マック・アヴェニュー〉からメジャー・デビューした俊英、アーロン・ディールの5年ぶり5作目は、その演奏表現が、新たな局面に到達したことを語っている。


 ベニー・ゴルソン(ts)、ジョー・テンパレイ(bs)ら大ヴェテランをフィーチャーした前作『Space , Time Cotinuum』を2015年にリリースして以降、2016年秋に、アラン・ギルバート率いるニューヨーク・フィルハーモニックとのジョージ・ガーシュウィン作品をフィーチャーした共演、2018年からミニマル・ミュージックの巨匠、フィリップ・グラスとの共演など、クラッシック音楽にも進出している。またセシル・マクローリン・サルヴァント(vo)のデビュー以来、その片腕として好サポートを発揮し、グラミー賞連続受賞に大きく貢献した。


 本作では、長年の共演者であるポール・シキヴィー(b)、今や堂々たるリズム・マスターのグレゴリー・ハッチンソン(ds)とのトリオで、バラード・プレイを中心に、内省的に深まり、リリカルなオリジナルと、カヴァー曲の独自の世界を構築している。その中でジュリアード音楽院時代に師事したロシア出身のクラシック・ピアニスト、オクサナ・ヤブロンスカヤにインスパイアされてプレイした、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフの《March from Ten pieces for Piano, Opt.12》は、激しいスウィング・チューンに換骨奪胎され、ラインナップの中でも異彩を放つ。フィリップ・グラスの《Piano Etude No.16》は、ジャズとクラッシックのジャンルを超えたアメリカン・ミュージックとしての統合感を、聴かせてくれる。ジョン・ルイス(p)、ローランド・ハナ(p)のオリジナルにも敬意を表した。繊細なタッチのピアノをキーに、ジャンル、過去と未来を一線につなげる野心作である。


アーロンa

Aaron Diehl @ Detroit Jazz Festival, 2018 Ⓒ Takehiko Tokiwa


▲Twitter
https://twitter.com/intoxicate3
▲Facebook
https://www.facebook.com/tower.intoxicate/
▲Instagram
https://www.instagram.com/tower_intoxicate/
▲タワーオンライン(本誌オンライン販売)
https://tower.jp/article/campaign/2013/12/25/03/01

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?