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裏・ #私を構成する9枚

はじめに


 どうもこんにちは、ちけです。今回はパソ構文ではなく普通にいきます。
 以前 #私を構成する9枚 の記事を書きましたが、そこからは漏れたものの、確実に私を構成している9枚のアルバムを「裏・ #私を構成する9枚 」としてご紹介します。創作の上での影響はこちらのアルバムたちからの方が出てるかもしれません。それではどうぞ。

1.black midi/Schlagenheim


 もはや説明不要、サウスロンドン発のポストパンク・プログレ4人組(当時)の1stフル。この記事を書くことになったのは"表"の記事を投稿した翌日くらいに「そういえばSchlagenheim入ってなくね?」と思い出したのがきっかけです。
 主にノイズ要素を担っていたギターのマットがメンタルヘルスの問題により休止(おそらく実質的に脱退)してからの彼らはより構築的なアプローチへと収斂進化を遂げた印象がありますが、このアルバムではまさに「インプロの美味しいところを継ぎ接ぎする」というアプローチそのものによって造り上げられた、純度の高い異形の音楽が展開されています。
 この作品は録音物そのものというより、レパートリー/ソングリストとしての強力さがあると考えます。彼らの真価が発揮されるのは、なんと言ってもライブ。彼らの特異な点を一言で表すならば「演奏が上手すぎた」という"事故"。特にドラムスのモーガン・シンプソンは、言ってしまえば化物です。彼らのライブでは次々に超絶フレーズが繰り出されますが、クールなのは彼らが決して自らの腕にかまけず、ひけらかさず、極めて粗雑な手つきでそれらを放出してみせることです。一見フリーキーすぎるアプローチに思えても、しっかりトラックと演奏の間では辻褄が合っている。その構築力の見事さには恐怖すら覚えます。

 もちろん全曲大好きですが、特にお気に入りなのはオープニングを飾るキラーチューン「953」、"自然の脅威"とでも言うべき「Western」、彼らの始まりの曲である「bmbmbm」辺りですかね。
 現在取り掛かっているバンド、Mr. Ambulance Driverでは、僭越ながら、このアルバムにみられるアプローチを引き継いだインプロ主体のアグレッシブなハードコアに取り組みたいと思っています。お楽しみに。

2.きゃりーぱみゅぱみゅ/なんだこれくしょん


 きゃりーぱみゅぱみゅ、というか中田ヤスタカ、大好きです。特にきゃりーの曲は詞もいいんですよね。「うまくいかないけどへこたれない」みたいな、カワイらしいけれどどこか切実なところが好きです。なんとなくサラッと聴いた時にすごく詞が良くて泣きそうになることもあります。特に鬱を経て、付き合い続けてる今聴くと。
 具体的に曲を挙げると「ファッションモンスター」のスネアの音とか、「さいごのアイスクリーム」の「…ハッ!」って音とか好きです。あと「にんじゃりばんばん」最高。二十歳の間に「ふりそでーしょん」を聴くのを忘れてました。多分一生後悔すると思います。

 最近聴き返していて、特に良いなと思った「おとななこども」の歌詞を一部貼っておきます。良い曲です。

ふんわり笑ってたり
びっくりさせてくれたり
邪魔そうな顔をしても
肝心なとき守ってくれる
素直に聞き分けられない
期待に答えられなくてごめんね
いつもより ほんのちょっと
おとなのことを わかった気がしたよ
背伸びして やっと届くか届かないのがちょうどいい
いつもより ほんのちょっと
おとなのことを わかった気がしたよ
やさしくて でも無邪気
そんなキラキラした いいおとな?

きゃりーぱみゅぱみゅ「おとななこども」

3.System Of A Down/Mezmerize


 SOAD。大好きです。僕はもともとラウドロックを入り口にして洋楽に入ったクチなんですね。原体験はまた別にありますけど、小学校高学年から今まで続く音楽遍歴の初期はこういうのです。
 彼らの代表作としてはやはり『毒性』がよく挙げられ、そちらももちろん大好きですが、フェイバリットとしてはよりメタルに接近した2部作の1作目であるこちらですね。これをよく聴いていた中学生の頃はとにかく突然テンポが変わったり曲調があっちこっちに行ったりする音楽が好きで、これはちょうど急に速くなったりチャラくなったり下ネタ言ったりしてて最高です笑。
 フェイバリットはやはり「B.Y.O.B.」。目まぐるしいリズムチェンジの中で繰り出される、サージ・タンキアンのオペラ風からR&B風味まで表情豊かなボーカルがたまりません。タイトルは欧米でパーティーの際によく用いられる「Bring Your Own Bottle」(=お酒はご自分でお持ちになってください)のもじりである「Bring Your Own Bomb」の略で、「爆弾はご自分でお持ちになってください」、つまり、「貧乏人を徴兵するのではなく、空爆を決めたお前たちが戦場に行け!」という痛烈な反戦メッセージなのです。

 他に佳作を挙げるなら、ロマ風?のダンスパートが魅力の「Radio/Video」やおバカなコーラスが最高のエビバデエビバデ曲「Violent Pornography」、変拍子リフ主体のドラマチックな回転系キラーチューン「Question!」辺りでしょうか。しっとりと幕引きを飾る「Lost In Hollywood」もオツですね。
 バンドは活動休止を経て今も多分やってるんでしょうけど、新譜はあまり期待できなさそうですね。というかサージの声が枯れちゃってる。さっさと作りゃあよかったのに…。
 あとこれ、ジャケちょっと怖いっすよね。CD屋でビビった記憶があります笑。

4.Fear, and Loathing in Las Vegas/Feeling of Unity


 ベガスです。ベガス大好きです。これも中学の頃に聴いてたラウドロックで、ベガス→ホルモン→SOADと繋がるわけですね。
 16分だらけのバキバキのドラムの上に常時オートチューンのミックスボイスとEDM系のシンセ、極め付けにスクリームが炸裂する超ハイテンションスクリーモはちょっと今聴くと面白すぎる気もしますけど、シンプルにめちゃくちゃテンション上がりますね。あとこれも急に速くなったりめっちゃして楽しいです笑。
 全曲好きなんですけど、やっぱり一番好きなのは『寄生獣』アニメの主題歌になった「Let Me Hear」。この曲が「やりすぎ都市伝説」のOPで流れてて、初めて耳にした僕は関暁夫の変な説教そっちのけで「なんだべこれは!?!?」状態でした。最高です。

 他に佳作を挙げると、ライブでは定番の(まあ僕ライブ行ったことないんですけど)イケイケパーティーチューン「Party Boys」、超絶ドラム&ベースソロで幕を開ける、ブレイクダウンや小ネタ満載のダークなマッドトラック「Ignite Your Frail Mind」などなど。
 このアルバムの2作前から快作を連発してまして、ここでバンドは一つの完成形に到達した形になります。これの一つ後の『New Sunrise』で少し停滞するんですが、主要メンバーであったギター/コーラスのSxunの脱退(ちなみに、小耳に挟んだ話によると現在ガーシーのスタッフになっているらしいです。何やってんだよ…。)を挟みつつリリースした『HYPERTOUGHNESS』は素晴らしく抜けのいい復活作でした。Sxun脱退前にリリースした「Keep the Heat and Fire Yourself Up」は彼らの新たな最高到達点という感じで激アツでした。最新作はまだ聴いてないです。

5.Battles/La Di Da Di


 一応真ん中ということで、特に憧れの強いバトルスを選びました。このアルバムはなんと言っても1曲目を飾る「The Yabba」。この曲の時点ですでに五億点が確定します。冒頭のおそらくイアン・ウィリアムス主体のノイズループを見事に5拍子で「解釈」してみせるジョン・ステニアーのドラムには脱帽です。

 他に佳作を挙げるとしたら「Summer Simmer」や「Megatouch」、「Flora > Fauna」〜「Luu Le」辺りですかね。なんでかわからないですけど、日本っぽいフレーズだったりリズムが多いんですよね。
 ぶっちゃけ「The Yabba」以降はいつものバトルスという感じ(それでも三億はあげたい)なんですけど、この「いつものバトルス」が聴けるのって実はそんなにないんですよね。Mirroredはポップな仕上がりだし、Grass Dropも3人でそれを追いかけてる感じだし。本当に初期のEPとこのアルバムくらいかも。2人になってからもちゃんとカッコいいですけど、やっぱりデイヴ・コノプカは居てほしかった。この時期のライブ映像、マジで最高ですからね。この2011フジロックの映像、何回見たことか。早くこれになりたい。

 何はともあれ、そろそろニューアルバムと来日してほしいですね。また平沢が前座だったりすると最高。

6.Rage Against The Machine/Rage Against The Machine


 RATM。コレをちゃんと中学生で通った自分を褒めてやりたいですね。多分、早すぎてもダメだし、遅すぎてもダメ。どのアルバムも良いんですけど(特に最後に出したカバー盤はもっと聴かれてもいいと思う)、やっぱり一枚選べと言われると迷わず1stです。基本、このバンドはこの一枚で全部やり切ってしまってるんですよね。30年以上経った今でもRATMの掲げたメッセージが古くならないのは、彼らの凄さと取るべきか、それだけ正義が果たされていない(Justice has not been done)と取るべきか。
 音圧の高いサウンドも好きで、彼らのサウンドを手がけたリッチ・コスティのプロデュース作は定期的に追ってます。最近だとLovejoyが良かったです。今年のサマソニに行く方は観ておくといいと思います。たぶん、3年後にはメインステージに行っているはず。
 RATMに話を戻します。彼らを彼らたらしめているのは、なんと言っても強靭すぎるリズム隊とトム・モレロの天才的なリフワークの数々。もうこれに関しては何曲か選ぶとか無理ですね。ずっと最高の極み。敢えて言うならば、僕は都立高校の受験中に「Freedom」のリフが頭の中で鳴り止まなくなり、無事不合格となりました。Fuck you!! I won't do what you tell me!! Motherfucker!!

7.Dream Theater/A Change of Seasons


 プログレ・メタルの大御所、ドリーム・シアター。これは金字塔として名高い2作目『Images and Words』の時期の未発曲をキーボードメンバーの交代を経てから再録したもの(確か)です。『Images and Words』はもちろん最高なんですけど、プロデューサーとなかなか折り合いがつかなかったようで、ドラムの音があまり良くない(スネアに余計なトリガーをかませてます。ベストの時のリミックスで一部の曲は改善されてますけど、どこかのタイミングでキッチリとしたリミックス盤を出してほしいですね)んですよね。しかし、フュージョンに接近したダークな意欲作『Awake』を経て、ここでようやくマイク・ポートノイのドラムサウンドが完成を見てますね。80'sの煌びやかな音とも違う、パキッとした良い音です。
 さて、主な収録曲は23分からなる表題曲1曲のみで、オマケとして(それでもボリュームとしては30分以上になるのですが)ツェッペリンやフロイドといった鉄板バンドのカバーライブ集が入ってます。しかし、この表題曲は本当に素晴らしい。『Awake』期のダークな作風を『Images and Words』期のキャッチーなタッチでまとめ上げた理想的な出来。特に賞賛したいのはジョン・ペトルーシの幽玄極まるアルペジオ。中盤にかけてのソロの応酬も、バカテクをひけらかしすぎずちょうど良い塩梅。このEPから参加しているキーボードのデレク・シェレニアンはまだ前任のケヴィン・ムーアの仕事を引き継ぐ形にはなっていますが、彼のメカニカルな音色もこの曲の冷たいムードに合っていて、良い仕事してます。彼がDT離脱期のポートノイやビリーシーンなどと組んでいたスーパーバンドのSons of Apolloも素晴らしいですね。DTよりアメリカンなテイストが強いかも。

 主要なトラックは1曲のみのこのEPですが、この1曲のみで余裕で大名盤1枚分のカタルシスを得ることができます(まあ普通に23分もあるし)。DTの入り口に、ひいてはプログレ・メタルの入口にも最適なんじゃないかと思います。カバーはカバーで愛嬌があって良いもんですが、まあ正直ファン向けのお遊びですね。
 マンジーニの処遇に若干思うところがないではないものの、ポートノイの復帰は素直に嬉しいです。またこの辺りのシンプルでキャッチーな作風に回帰してほしいですね。今後に期待です。

8.Queensryche/Empire


 クイーンズライチ。最近はライクと表記するのが主流らしいですが、ライチって呼ばせてほしいですね。馴染みがあるので。彼らもドリーム・シアターと並んでプログレ・メタルの代表格として名高いバンドですが、いかんせんDTと比べて語られないがちなのは90'sから00'sにかけての迷走からでしょうね。80年代後半にかけて活躍したメタルバンドは90'sのグランジ・ブームに乗っかってしまってコケたパターンが非常に多くて、今まで残ってない部分はかなり大きいのです。彼らも大ヒットを2作(この作品と前作『Operation:Mindcrime』)飛ばした後、ボーカルであるジェフ・テイトの燃え尽き症候群も相まってかなり迷走しました。この後の『Promised Land』は妙に音が良いのもあって僕は嫌いじゃないし、グランジ期も聴くとたまに佳作があるんですけどね。まあ好きものの方以外は聴かなくて全然大丈夫です。その後、泥沼の裁判騒動などを経つつもバンドはラインナップを一新(トッド・ラ・トゥーレという若き日のジェフに瓜二つのボーカルをお迎え)し再始動。最新アルバム『Digital Noise Alliance』ではしっかり黄金期のサウンドに回帰した叙情派プログレ・メタルをやってます。そんなのいたな、昔は良かったよね…という方も、この機会に是非どうぞ。

 さて、多分コレを見る方は誰も知らないバンドだと思うので前置きがかなり長くなってしまいましたが、クイーンズライチは並べて語られることの多いDTと比較するとより正統派のHR/HMに近い楽曲が多いです。変拍子もそこまで複雑ではなく、あくまでエッジの一部、スパイス程度のものとして取り入れてます。アメリカのバンドなのに、不思議とヨーロピアンな叙情的暗さがあるのも特徴ですね。この作品の前作であり、彼らをスターダムに導いた『Operation:Mindcrime』はまさしく様式美HR/HM meets プログレといった感じの内容のシームレスなロック・オペラ的コンセプト・アルバムなのですが、今作はより粒立ちの良いアルバムで、よりプログレ色が強く出た形になります。このバンドはなんと言ってもリズム隊が素晴らしいんですね。スコット・ロッケンフィールドはスクエアで堅実なビートを叩きますし、エディ・ジャクソンもどっしりとバンドを支えつつ、両人ちょうど良いところで主張もするという、痒いところに手が届くような鉄壁のリズム・セクション。もちろんその上で妖艶な声を響かせるジェフ・テイトのボーカルや、クリス・デガーモの叙情的な泣きのギタープレイも素晴らしい。未聴の方は是非、3曲目の「Jet City Woman」〜4曲目「Della Brown」だけでも聴いてみてください。おい、そこ、ビジュアルがダサいとか言わない。

9.Cornelius/Point


 最後はコーネリアス。砂原良徳『LOVEBEAT』と迷いましたが、やっぱり自分により影響を与えたのはこっちかなと。やっぱりミックスとかをやっていると彼みたいなことやりたくなることが多いんですよね。そもそも、ステレオという概念自体に着目したの自体、このアルバムが初めてでした。「そうか、僕たちの耳は"2つ"付いているのか!」と唸りました。何気にすごいと思うのは、「Point of View Point」のドラムを小山田自身が叩いているということ。もちろん相当切り貼りしてるんだとは思いますけど、かなり上手くないですか?

 彼もここ数年で色々あったわけですが、まずは戻ってこられて本当に良かったと思います。復帰のフジロックを生で観てましたけど、周りの人達みんな泣いてましたね。特にMCなどはしてなかった(ちょっとだけしてたかも?)けど、"伝わる"ってこういうことなんだな、と思いました。僕個人としてのあの件への見解としては、英語のスピーキングの授業でコーネリアスがいかに良いか熱弁した矢先にあの騒ぎでしたし、僕も彼が反省を経てることはそれこそ『Point』以後の活動から汲み取ってはいたものの、彼が急場とはいえあの仕事を受けてしまったことはショックでした。まあ何はともあれ、彼が音楽を続けられているのが本当に嬉しいです。
 音楽に話を戻します。僕が特に推したいのは「Fly」ですかね。彼がこれまでおもちゃとして用いてきた音楽(ギターポップ、HR/HM、シューゲイザー)が良い塩梅で盛り込まれてると思います。なんかMV上げてる人がいました。僕はちゃんとDVD待ってます。虫ダメな人は若干閲覧注意。

おわりに

 以上です。なんか普通の9枚の時より長くなっちゃいました。7300字ってマジ?期末レポートじゃん。あっちも加筆修正しようかな。パソ構文も抜きで。文字数が多すぎるからか、何回かデータが飛んで泣きました。なんかライティング案件とかあればお受けします。お小遣いください。

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