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【社会起業家取材レポ #14】 画一化ではない、あきない暮らしを。


SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2021卒業生の千田昭子さんにお話を伺いました!


1. 千田昭子さんについて

神奈川県出身。岩手大学を卒業後、長くメーカーに勤務。2011年の東日本大震災をきっかけに、東北のために何かしたいという思いから仙台市にて起業家支援を行う会社に転職し、小さく事業を始める人たちの支援に取り組む。その後、栗原市に移住し3年間地域おこし協力隊として活動。六日町通り商店街に新規出店を促すための創業支援事業等を手掛ける傍ら、自身の開業準備にも取り組む。現在は、「大人の休み時間」をテーマに「六日町ナマケモノ書店」を営みながら、同商店街の空き店舗のサブリース事業や開業支援事業を手掛ける「六日町合同会社」の共同創業者としても活動。SIA2021卒業生。
六日町合同会社web:https://6machi.site
六日町ナマケモノ書店web:https://www.instagram.com/slothbooks_/
SIA2021最終pitch動画:


2. 取り組んでいる社会課題

" 日本全国どこに行っても同じ風景である。"
これが、千田さんが共同創業者として活動する六日町合同会社の背景にある課題意識です。

社会が都市一極集中へと進む中、地方部は人口が減少・経済の衰退が進んできました。六日町合同会社の活動拠点である宮城県栗原市六日町通り商店街もその例外ではありませんでした。

六日町は鉱山を支える町として江戸時代から栄えていました。しかし、鉱山は閉山。商店街はすっかり色あせてしまいました。

商店街衰退の背景には、市場の変化の影響もあります。商店街は、八百屋さん・魚屋さん・薬屋さんと様々なお店が1つのエリアに集まることで経済圏を作ってきました。しかし、大量生産大量消費型の社会になると百貨店(縦の商店街)が誕生。その後、車社会となると郊外型ショッピングモールが。さらには、Amazonや楽天といったオンラインショッピングサイトの誕生と徐々に徐々にと経済圏を失ってきたのです。

"飽きないのは「モノ」ではなく「人」である。"
"何かをしたい人(へんちくりん)を支援し個性豊かな商店街を作ろう!"
と千田さんは杉浦さんと2019年に同社を設立。

空き店舗の調査や空き家の片付け、改修、サブリースを行い、開業支援を行っています。


3. インタビュー:これまでの歩み&今後の展望

Q. 六日町通り商店街で働きたいと思ったきっかけについて教えてください。
A. 好きなアーティストのライブがあり、たまたま訪れたのがきっかけでした。

最初から、「六日町通り商店街で働きたくて...!」というわけではなかったんです。好きなアーティストのライブが六日町通り商店街で開催されるということで訪れたのがきっかけでした。

当時の私にとっては、はじめて訪れた場所だったわけですが、昔ながらのお店も残りつつ所々には新しい変わったお店がありお客さんも沢山きていました。とても印象的だったのを覚えています。ライブを通じて触れ合った街の人たちも皆フレンドリーな人たちで、アーティストさんを知らないにも関わらず来て自然に会話していたりと、人という面でも魅力を感じました。

この場所で暮らしたいと思っていたところ、以前訪れたライブの会場だった「かいめんこや」の店主杉浦さん(六日町合同会社の代表社員)がSNSで地域おこし協力隊募集の告知をしていたんです。とりあえず話を聞いてみようと相談に行ったら「きちゃいなよ!」と。私としても、これまでの自分の経験で役に立てるかもしれないと思ったこと。また、元々起業をしたいと考えていたんですが、気乗りしなかったり、事業性を見いだせなかったりと試行錯誤していたところでこの場でじっくり腰を据えて考えてみれたらということもあり六日町通り商店街にきました。


Q. 現在の六日町通り商店街の様子と事業を始めて変化したところはなんですか?
A. 人が人を呼ぶ好循環が生まれ、まちづくりに関わる人が増えました。

昔は、商店街の役員や役員を支える人の10人ほどで全てのイベントや催しを取り仕切ってやっていました。ただ、このメンバーも高齢化が進んでくるわけで。そんな中、「かいめんこや」の店主杉浦さんがやってきて役員として加わり、地域おこし協力隊を呼ぶなど様々な取り組みを始めていきました。

取り組みの結果、6年間で16店舗の新しいお店がオープンしました。新しい人が入ってきて、また別の人を呼び、関わる人が増えるといった好循環が六日町通り商店街に生まれました。

2019年に設立された六日町合同会社の存在も大きいと感じています。商店街や地域おこし協力隊は任意団体であり、お金を動かすことはあまりできません。会社があることで、県の補助金申請や委託事業の獲得など、思い切った取り組みができるようになりました。


Q. 千田さん自身、様々な活動をされているわけですが、どんな想いで現在の活動(開業支援や書店など)をされていますか?
A. みんながあまり無理せず、その人らしく豊かに暮らせたらいいと思っています。

私自身、サラリーマン時代は忙しく人のやりたいことも手伝えませんでした。お金をもらって会社のやりたいことを手伝うのがサラリーマンだと思います。振り回されることや不本意なことも多く、慣れてくると自分らしい楽しさから遠ざかってしまいます。

ここでは、素の自分のままで楽しく暮らせるようになりたいと思っています。お客さんや開業講座に来る人にも、ここの人の良さや好きなものを味わって暮らしてもらいたいという思いで活動しています。


Q. 千田さんから見て六日町通り商店街はどんな町ですか?
A. 一言で言うと「おおらか」です。

六日町通り商店街の人たちは個人(プライベート)に興味がなく、できることやしたいことを話せば受け入れてくれました。来るもの拒まず去るもの追わずというちょうどいい距離感でとても居心地がいいと感じています。六日町通り商店街は長く地域の中心地だったという歴史があるため出入りが激しかったと思うんですね。そうした背景があるのかなと感じています。


Q. 千田さんたちの活動をはじめ様々な活動が生まれ、六日町通り商店街も盛り上がっているように感じましたが、課題はありますか?
A. お客さんが少ないことです。

「はばたく商店街30選(中小企業庁、2021)」に選出されたりメディアに取り上げられたりと、六日町通り商店街は有名にはなってきましたが、お客さんが少ないという課題があります。休日やイベントの時は、多くのお客さんにお越し頂けますが、平日はどうしても閑散としてしまっているという状況です。

平常的にお客さんがきてくれないと商売が回って行かないということですよね。商店街でお店を営んでいる方の中には複業をしている人も多いです。

「六日町通り商店街って良い場所だな」と思ってくれる人がもっと増えて、商店街に足を運んでくれたらいいなと思いますし、ここで商売を始めた人がその商売で暮らしていけるようにしていきたいと思います。


Q. 最後に、千田さんの将来の暮らしの青写真について教えてください。(今後どのような暮らしができたら豊かな日々になると思いますか?)
A. 若い人に仕事を譲り、自分のお店とものづくりで食べていきたいです。

将来的には、助成金や委託事業をするといった六日町合同会社の仕事を若い人に譲り、自分のお店を経営しつつ本を書いたりものを作ったりしながら暮らしていきたいと思っています。中心になって街のことを考えることについては徐々に世代交代をしていきたいですね。

今まで私は子供の成長に合わせて、2,3年で職を変えながら生きてきたので、1つのことを長くやっていくということが馴染まないのかなという感覚があります。とはいえ、同じ場所にいながらやることを変えていくことも1つの形と思いますので、誰かのためにではなく、自分のためにと自分に目を向けて歩んでいきたいです。


4. 編集後記

「みんながあまり無理せず、その人らしく豊かに暮らせたらいい」という千田さんの想いが素敵だと思いました。これまでに、さまざまなことを経験してきたからこその価値観ではないかと感じました。

六日町通り商店街で新しくやりたいことを始める人々が豊かな暮らしを営めるような仕組みづくりをされてきた千田さんたちの活動はしっかりと実を結びはじめています。課題として挙げられていた休日やイベント開催日以外での商店街への集客も、きっとクリアされていくものと思います。

日本各地がその地域に合った取り組みをすることによって、地方が豊かになり"画一化されていないあきない暮らし"が実現されるのだと。

六日町通り商店街発の"画一化されていないあきない暮らし"が全国に広がる未来を夢見て。

取材・執筆担当:松坂恵奈(東北大学1年)


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