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【社会起業家取材レポ #09】 医療・福祉・地域産業を愛のたよりでつなぐ。

SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2021卒業生のジャウェンティンさんにお話しを伺いました!

1. ジャ ウェンティンさんについて

中国瀋陽市出身。東北大学を卒業して医師国家資格を取得後、脳神経外科医として東北にある中核病院で勤務。病棟・外来・救急など様々な部署で経験を積みながら、複数の病院を渡り歩く。2020年、地域の総合病院で働く中で在宅医療に興味を持ち、宮城県仙台市に「芳縁(ほうえん)在宅診療所」を開業。同時期に介護福祉事業を行う「芳縁株式会社」も設立し、医療・介護福祉の事業所同士で連携し最適なサービス提供を行う『地域エコシステム』の構築を目指している。SIA2021卒業生。
▷芳縁在宅診療所 web:https://houen-zaitaku.jp/
▷芳縁株式会社:https://houen-japan.co.jp/
▷SIA2021 最終pitch


2. 取り組んでいる社会課題

ウェンティンさんが取り組んでいる社会課題は一言で言うと「医療・介護福祉業界における業務過多」です。その背景には医療・介護福祉現場における「地域包括ケアシステム」実現に向けた取り組みがあります。

2025年には現在3,500万人を超えている高齢者人口がさらに増加し、医療・介護の需要がますます高まると予測されています。そこで厚生労働省は、2025年を目処に医療や介護をはじめとする地域の生活支援・サービスの包括的な提供体制「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。医療事業所にはケアシステム実現のために、患者さんやご家族とコミュニケーションを取り、医療施設間で密に連携をして要望に応えることが求められます。


3. インタビュー:これまでの歩み&今後の展望

Q. 芳縁在宅診療所ではどのような医療を目指していらっしゃるのでしょうか?
A. 患者さん本人やご家族の希望が叶える医療を提供したいです。

日本の医療レベルは世界でもトップクラスで、たとえ意識がない状態で患者さんが運ばれても、延命治療を施すことができます。しかし、これは本当に患者さんに対して「医療」を提供できていると言えるのでしょうか。

芳縁在宅診療所では、患者さんの希望や理想に合わせて適切な医療を提供できるよう、患者さん・ご家族・職員でしっかりと話し合って、皆が納得できる治療方針を考えることに努めています。超高齢社会がさらに進み在宅診療の必要性が高まる中、患者さんの意思を尊重した治療の重要性はますます高まるだろうと感じました。


Q. SIAプログラムを通じて、どのようなことを感じましたか?
A. 人を巻き込む力が全然足りなかったと、とても反省しました...

SIAプログラムでは薬局と診療所の業務効率化の問題から、自分が解決できそうだと思った「薬局向け受付用システム」を発表したそうです。

しかし、データを一元管理できていないことについて課題感を十分に共有できず、他に大きな問題があると指摘されたことがとても悔しかったとのこと。

そんな苦い経験をしたウェンティンさんは、毎週2時間、相手に興味を持ってもらえるような話し方の練習をするようになったそうです。

日々業務をこなし患者さんと接する中でやりたいことはたくさん見つかるので、限られた時間の中で自分のできることを探し、様々な人を巻き込んで解決していきたいと語りました。


4. 編集後記

ウェンティンさんに人生をかけて挑戦し続ける理由を聞くと、「私たちは一歩一歩、死に近づいている。死ぬときに良い人生だったと感じられるように、やりたいことに挑戦し続けたい」と語っていました。仕事の中で日々"死"と向き合っているからこそ、この言葉には説得力があると感じます。私たちが幸せな人生を送れたかどうかを判断するのは、おそらく死ぬ間際なのだと思います。だからこそ、自分が死ぬときに思い残すことが無いよう、今を全力で生きることが大切なのだと感じました。

健康については誰もが一度は悩んだ経験があるはずです。病気や怪我などが人生における重大な転機になることも少なくありません。今回の訪問を通して、医療に携わることは尊い活動であると改めて感じました。将来医師になる身として、健康問題に悩む人に手を差し伸べられるよう、よりいっそう研鑽を積もうと思いました。


取材・執筆担当:三浦友裕(東北大学 5年)


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