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自由研究とよみがえる思い出

こんにちは、伝統工芸DIYキットの”In the pouch"です。
”In the pouch"は、地域の暮らしや文化に触れ、ものづくりの楽しさを体験できるDIYキットを販売するプロジェクトです。

気づけば夏真っ盛り、夏休みも後半戦に差し掛かろうとしていますね。
1年前の夏、丁度子どもや親が夏休みの自由研究のテーマに悩み出す時期にあわせて伝統工芸DIYキット”In the pouch"はスタートしました。
今年も自由研究用でキットを体験くださる方がいて嬉しいです。
今回のnoteは、ふと思い出した自身の自由研究テーマと夏の思い出を振り返ります。


いつだって自由研究のテーマは決まらない

私は器用でもなく、探究心が強くもなく、趣味もあまりない、平凡でのほほんとした小学生でした。なので”自由研究”と言われても、正直やりたいことが見つからず、毎年ぎりぎりまで放置。
最終的には母親や祖父母が勝手に決めたテーマに従って黙々と研究をこなす、ある意味優秀な研究者でした。
当時は大真面目に与えられた研究をこなしていましたが、振り返れば突っ込みどころ満載の作品が仕上がっていた気がします。

小4の夏:祖父と夏の星座

小学校4年生の夏休み、祖父が市内の青少年科学館が主催する星座観測ツアーに連れて行ってくれました。
閉館後の博物館の中庭で人生初めての天体観測。田舎の星空はとても綺麗で、星の位置と職員さんの説明を一字一句逃すまいとメモを取っていたのを今でも思い出します。

帰宅後、早速私は10ページくらいにわたる超大作の記録資料を作成に取りかかりました。しかし、普段の家でのお絵かき感覚でチラシの裏紙を使って作成・製本してしまったのです。(昔はチラシの裏紙に絵をよく描いていた)
各ページの色はバラバラ、手作り感万歳の資料が完成し、そのまま学校に提出してしまいした。
新学期に同級生の見栄えがいい作品を見て、次からはノートを買おうと決めた、小学4年生の夏です。おじいちゃんも注意してくれ!笑

当時ツアーで教えてもらった内容はほぼ覚えていないにも関わらず、いまでも夏の星座は自分のなかでちょっと特別な存在になり、夏の大三角形を探したくなります。

小6の夏:母と松尾芭蕉

いよいよ自由研究も集大成を迎える、小学生最後の夏がやってきました。もちろん当時の私は自由研究のテーマは決まっていません。
お盆に差し掛かった頃、母から「今年の自由研究はおくのほそ道を調べてみたら?」と提案がありました。
まだ歴史も古文も習っていない小学生がおくのほそ道は渋すぎるやろ。ちなみに母は俳句好きでもなく、歴女でもなく、なぜこの提案してきたのか今でも謎です。母の口からおくのほそ道を聞いたのは、この時が最初で最後です。
おくのほそ道どころか俳句も知らなかった私でしたが、地元の図書館で本を借り、数ある俳句の中から自分の琴線に触れたものをピックアップしてまとめました。どんな俳句を選んだのかは残念ながら思い出せません。

30歳の夏:あの夏の自由研究と再会する

時は経ち、30歳の夏。私は山形県にいました。友人に誘われ、紅花染め体験をするためです。この紅花染め体験を機に、伝統工芸を広く知ってもらえる取り組みをしたいと考えるようになり、現在のキット販売に至ります。

紅花染め(べにばなそめ)とは、紅花という花から採取される色素を使って染色をする技法です。紅花という名の通り、赤色の色素を抽出することができ、紅花から作られた赤色は紅赤と呼ばれ、日本の伝統色として長い間愛されてきました。山形県では室町時代から紅花栽培がはじまり、風土や運搬方法が適していたことから、江戸時代には一大産地となりました。

紅花染め体験は、早朝の紅花摘みからスタートします。
紅花の葉には棘があり、朝露に濡れている状態のほうが棘が柔らかく刺さりにくいためです。手袋をしてても気を抜くとチクッとしてしまうため、慎重にひとつずつ花を摘みます。

紅花の花びらを積んでいく。

"行く末は 誰が肌ふれむ 紅の花"
おくのほそ道で山形を旅した松尾芭蕉が詠んだ俳句です。
紅花農家の方が教えてくれました。
山形で紅花摘みをする女性たちの「私が摘んでいる紅花は、将来誰の肌に触れるのだろう」と、都会の華やかな生活に思いをはせる心を詠んだ俳句です。当時、紅花を使った衣類や口紅は高級で京都や江戸の一部のお金持ちしか身につけることができず庶民の憧れでした。昔は手袋などなく素手で摘んでいたから、さぞ痛かっただろうなぁ。

ちなみに芭蕉は山形を旅しながら他にも有名な俳句を残しています。
五月雨を集めて早し最上川”
"閑しずかさや岩にしみ入る蝉の声"
行く先々に芭蕉の句を彫った石碑などがあり、山形の旅は小学校の自由研究の記憶を辿るような旅でした。

子どもの頃の体験は記憶に残りやすい

自発的に設定した自由研究のテーマではないですが、体験は記憶としてしっかり残り、ふとした時に思い出すことができます。事実、夏休みの自由研究は少しだけ私の感性に影響を与えてくれたのかなと思います。
夏休みの自由研究に限らず、社会科見学や遠足で行った場所、小学校の授業で習ったことは、心と記憶の片隅にいる気がします。

紅花染め体験のあと、一緒に体験した友人と「こういう伝統工芸や歴史を学校の授業でもっと体験的に習えたら、興味を持つ人が増えるのだろうか」という話になり、体験できる機会が少ないなら伝統工芸キットを作ってみようと思いました。

地域を訪れると、地域が育んできた歴史や文化、先人の暮らしの知恵に学ぶことが多いです。
工芸を知ってもらうことも大切ですが、さまざまな地域や文化に触れることで、多様性教育や世界が広がるきっかけにつながるのではないかなと思っています。

★夏休みの自由研究テーマが決まっていない方へ、自宅でできる伝統工芸DIYキット★
Instagram:
https://www.instagram.com/in_the_pouch/



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