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人見知りの私/生きづらかったけど「今がいちばん幸せ」公募インタビュー#35

〈岡さん(仮名) 2021年11月下旬〉

とあるお店に置かせてもらったインタビュアー田中のカードを手にとり、応募してくださった岡さん。好奇心旺盛であり、お仕事の他に人と接するボランティア活動なども複数行う岡さんですが、実は人と話すことに苦手意識があるとのこと。
岡さんの内面に関わるお話を中心にまとめました。

「人見知りなんです」/「そういう自分」を知る

岡さん (しばらく話してくださってから)あ、なんか私、まだ本題に入ってないのにこんなにしゃべってる(笑)。大丈夫ですか?

──もちろん大丈夫です。

岡さん 実は私、すっごい人見知りだし、知らない人と話すのすっごく苦手なんです。今は大丈夫ですけど。

 今回、話したいと思った自分のことというのも、「私は人見知りなんです」ということなんです。

──そうなんですね。

岡さん 特に、複数と話すのが苦手。1対1で、楽だと話せるんですけど。うーん……ああ、こうやってテーマがあると話せるのかな。例えば他愛もない雑談とか、お店で一緒になった他の人と話すとか(だと話せない)。

 実は昨日も、お友達と行ったお店で(居合わせた初対面のお客さんと話すことになり)隣の人が一生懸命気を使って話してくれたんですけど、私は話したいこともないし、そもそも興味もないし(笑)。「ああ、私、つくづくこういうの苦手だな」と思って。

 飲み会も苦手で、自分の所属した会社の部署でも、飲み会になると縮み上がっちゃってたんですよ。「話さなきゃいけないけど話せない!」みたいな恐怖感に近いものが、会社員だった時はありました。

 あと、子供関係の用事でママさんたちで集まって「じゃあ会合が終わったらランチ行きましょう」とか言われても、全然人に興味もないんですよね。ははは(笑) 変なんですけど。なんか、昔からそうで。

 でも私、(会社員時代は)人と接する業種だったんですよ(笑)。まあそれなりの役職まで行かせてもらったんですけど。仕事だと大丈夫なんです。仕事の話はめちゃくちゃしゃべれるんですけど、お付き合いの食事の場だと途端にしゃべれなくなっちゃう。向こうがおじさんだったりすると、蘊蓄語って勝手にしゃべってくれたりするので、そういうのは我慢して聞いてるんですけど。

 その時は必要だったから行ったけど、フリーの状態では人を楽しませることはできないし、人と会話を楽しむことができない。それが昔は悩みだったんですけど、今はそういった場に行かなくてもよくなってきているので、「不便だなあ」っていうぐらいですかね(笑)。でも、(機会がある時に)きっぱりと「私は行きません!」と言えるような、すごく強い私でもないので、「行ったほうがいいかな、悪いかな」なんて思っちゃったりして。そこでまたストレスが発生する。

──思い切って絶対行かないことにするっていうことには、ならない?

岡さん 最近だいぶできるようになってきたんですけど、元からきっぱりしてる人に比べたらまだまだですね。

 「あの人はいつもこういうの来ないから」みたいな人いるじゃないですか。そういう人にはまだなれない、っていうか元々違うんですけど(笑)、ちょっと憧れます。あとは「あーちょっとごめんね、私無理なんだー」って言ってうまくスルッ、って人もいれば、振り向いたらもういないなんて人もね、過去いましたね(笑)。

 そう……私、話せないっていうのもあるんだけど、よくアサーティブ、ノン・アサーティブ(※)とかいうじゃないですか。ああいうのの典型的な悪い例が、昔の私ね。
 今はそういう自分をちゃんとわかっているので、ある程度はコントロールできるようになった。私はそういう人だから、今はこうしたほうがストレスがなくいられる、自分らしくいられるというふうに、意識してそっちのほうに持っていく、っていうことはできるようになりました。それができるようになったのは、今50歳過ぎてますけど、けっこう最近です(笑)。ふふふ(笑)。そういう(気持ちが表現できない)ところがまったくなくなったかって言うと全然なんですけど。

※アサーティブ アサーティブなコミュニケーションとは、自分と相手の人権 (アサーティブ権) を尊重した上で、自分の意見や気持ちをその場に適切な言い方で表現することであるとされる。岡さんはかつてそういった自己を尊重した上での表現ができなかったと述べている。

参考:Wikipedia

その場を楽しめるようになりたい

──人見知りとか、人に興味がないとか、楽しませる雑談が苦手という部分は、変えたい?

岡さん もうちょっと、知らない人とも気軽に話せるほうがいいなー、とは思いますね。そういう状況になってしまうと苦しくさえあるので。

 昨日一緒に行ったお友達は、全然知らない人とでもその場で適当に話せるし、人と仲良くなれる。私は仲良くなればものすごく深く長く付き合うんですけど、仲良くなるのが苦手なので、友達の数は割と少ないんです。ふふふ(笑)。でも、それはそれでいいです。

 たぶん、興味があることの幅がものすごく狭くって、あとはどうでもいい感が強いんだと思う。音楽とか映画とか、流行りのものとかも、だいたいあんまり興味がない(笑)。

 そういえば小さい頃から、クラスの女子が「キャー」とか言ってたりするのを見ると、ちょっと冷ややかな気持ちで一歩引いて見てたんですよね。ノリで「いいねいいねそれ、ワー!」ってみんなで動いたりするじゃないですか。「この人たち全員本当にそう思ってるのかな?思ってないだろ!」とか思うと、その人たちが「わっしょい!わっしょい!ワー!」って御神輿かついでるふうに見えちゃうの(笑)。で、言葉が悪いんですけど、「わあ、この人たち御神輿かついでる、バカみたい」って(思った)。今だったら「御神輿かつぐの好きなんだね、楽しそうだね」って思えるようになったんですけど。昔はそこでバン!と自分の扉を閉めてしまう、という感じでした。

 だからうらやましくはないし、御神輿をかつぎたくは決してないんだけど、んー、でも、適当に、その場で楽しく話ができるようになったらそれは便利だなと思いますね。仲良くなりたいんじゃなくて、その場だけでいいんですけど。その場で適当に楽しめたら、自分も楽しいじゃないですか。その人から知らない情報をもらえたりとか、あと意外とそこからご縁が生まれたりすると思うんですけど、(今は)ないんですよ。だからそういうのがあったらいいなと思います。

話が続かないと苦しい/人見知りと思われない

岡さん 私とにかく、いつも人と話が続かないんですよね。

──話が続かないなと思うと、つらい?

岡さん つらいです、苦しい。何か話したほうがいいかなって思っちゃうんですよね。今はあんまり、そこまで思わなくなったけど、何か話さなきゃと思うと余計あせっちゃったり、つまんない話したり。「これはみかんですか?」「はい、みかんです」じゃないけど、そこで終わり!? みたいな会話になる(笑)。言葉のキャッチボールにならないようなことが多くって。そもそも相手に興味がないからかなあ?(笑)ボランティアの中で人の話を聞くこともあるんですけど、その私が、おかしいですよね(笑)。

 でもねえ、昔っからなんですけど、仕事の時は、私、人が変わったようなんですよね。ま、(仕事では雑談的な話は)しゃべらなくていいってのもあるんですけど、例えば子供の行事手伝いでお店の前に立ったら、私(売るのが)むちゃくちゃうまいんですよ。自分で言うのもなんですけど。仕事をしていた時も、その時はうまいとは思わないんですけど(結果を出していた)。

 だから、人見知りって言ってもあまり信じてもらえないくらい。お役目がある時はすごくよくできるんですけど、でも、考えてみたらそれ、「会話」をしてるんじゃないんですよね。

 私の子、最近面白いことを言うようになって、「私ってさー、陰キャだからさー」とか言うので(笑)、「ママのほうがよっぽど陰キャだよ。ママは小さい頃からずっと暗くてねえ」とか言うんですけど(笑)。

 そう、実は私ずっと暗かったんですけど、大人になってから学生時代の友達に「私ね、実はずっと暗くて、こういう気持ちを抱えてたんだ」って告白したら、「えー!信じられない!いつも明るいイメージで、私は何度元気づけられたことか」と言われてびっくりしました。あ、私の気づいてない私もいるんだなと思ったんですけど、同時に、ああ、私の心は理解されてないんだな、って(思った)。

──お子さんは岡さんのことをわかっているようですか?

岡さん わかってるかどうかって言ったら、まだ子供だし立場も違うし、今は子供は自我の確立の時期なので、どっちかって言ったら自分のことに興味があるから。だから、人の話を聞くよりは自分の話をむちゃくちゃしてくるんですけど。

 でも、子供が大きくなってきたのと同時に、私は自己開示がだんだんできるようになってきて。子供にはけっこう本音を言えるので、わかってくれてるかはわかんないけど、言えてるという感じです。

ほとんどの人に興味がない 

──人に興味がないっておっしゃるけど、今回応募してくださったし、好奇心はあるんですよね。

岡さん 知的好奇心だったり、この舞台を見てみたい、とかはありますね。なんかやっぱり、嗜好性がすごく偏ってるのかもしれない。流行りのものが別に好きでもないし、ワー、とかならないし。んー……人に興味がない……いや、人を見るのが好きじゃないかって言うと、外で人をずーっとぼーっと見てて、よく夫に「見るんじゃない!」とか注意されますね(笑)。

──(笑)

岡さん (こういう状況は)わかる?わかる?「見るんじゃない、失礼だろ!」とか言われるんだけど、けっこう見てます。そういうのは、興味があるって言ったら変かもしれないけど。

──じゃあ、人としゃべるのはつらい時があるけど、人と人が話してるのを傍観者として見るのは好きだったりします?

岡さん うん、しゃべってるの聞いてたりとかは大丈夫ですね。面白いなとか思いながら、しゃべってるのぼーっと見てたりしますね。

 興味がないことも多いんですけど、もしかしたら人に興味がないんじゃなくて、うまく話せない、話すことがない、何を話していいかわからない、のかもしれない。

──人に対して質問したいことも浮かばない?

岡さん そう、そうそう。聞いてみたくない、別に。(笑)

──(笑)そうなんですね。

岡さん (笑)人の話を聞いてるのは別にいいし、興味がある時はどんどん聞いちゃうんですけど、そういうことってすごく少なくて、自分からあえて質問を作ることはない。なんか、どうでもいいかなあ(笑)

──興味を抱けない人への対応に苦慮されるということですね。

岡さん 苦慮しちゃう。で、ほとんどの人に興味を抱けない。ほとんどの人が難しい(笑)

幼少期を振り返ると/50歳でひと山超えた

岡さん なんか、話してるうちにいろいろ出てきましたよ、自分の中で。

 やっぱりねえ、昔から友達を作るのがすごく苦手だったんですよね。でも、小さい時、人に好かれたい気持ちは人一倍強かった。私は親にあんまりケアされてなくて。きちんとした親だしネグレクトとかではないんですが、昭和だったからほめられずに育ってるし、母も仕事をしていたので忙しかったし、とにかくいつも一人ぼっちだった。あときょうだいがいるんですけど、男尊女卑の考え方で男兄弟のほうがかわいがられてたっていう意識が自分の中ですごくあって。認められたい、好かれたい、わかってほしいという気持ちがすっごい強かったんですよね。今はもうすっかり落ち着きましたけど。

 やっぱりね、なんだかんだね、40歳ぐらいまでそうでした。子供が生まれた40ぐらいが転機だったんですよね。「あれ?自分は今まで生きづらかったんだ、本当に苦しかったんだ」って、だんだんわかってきたのが40歳

 そして母との関係とかいろいろあって、ひとつ山を超えたのが50歳。10年かかりました。そこで「ああ私楽になったー」って思えてから、まだ数年ですかね。
 自分を割と受け入れて、自分はこうだからこうしとこうとかコントロールできるようになったのも本当にここ数年なんですよ。

 私は負けず嫌いでもあったし。「なんで〇〇(男兄弟)ばっかり」って。んー、だから以前は“テイク”したいっていうのが強かったですよね、“ギブ”よりもね。きっと。でも、“テイク”したいと思えば思うほどそうならない。元々私はたぶん、魂は“ギブ”の人なんですよね。

 暗いし、ちっちゃい時は病弱だったし、とにかく友達もいなかった。だからまあそういうのも(人見知りや、人と話しにくいということに)影響してるのかもしれないですよね。

 ちっちゃい時は常に一人で遊ぶ、本を読む。自分が小さい時のことを思い出すと、一人でいる場面ばっかりなんですよ。

 カウンセリングを受けた時、10歳までの鮮明に思い浮かぶ記憶を思い出してくださいって言われて、カウンセラーの人に説明するんですよね。そしてカウンセラーと一緒に紐解いていくんですけど、その時も思い浮かぶのは全部、一人の場面ばっかり(笑)。あとはまあ、ちょっと痛い思い出?小学生にして友達に裏切られたとかね。

 今となっては、その思い出は全部が私にとってネガティブなものじゃないんですよ。もちろん、いい思い出かどうかって言うといい思い出ってほどじゃないけど、でも今の私は別にこれがつらい思い出とも思わない。それはやっぱり、50歳から変わってきた私が今だから言えるジャッジなんだなーと思います。

母を看取ったこと

──お母様を看取られたとのことでしたね。幼少時はごきょうだいとの対応の違いなどいろいろあったとのことですが、最後はお母様とのご関係はいかがでしたか?

岡さん うーん……そうですねえ、すごく難しいんですけど。母は病気になって、亡くなる数年前から話ができなくなっちゃったんですよね。「これ食べる?」「ううん」とか、「飲む?」「うん」とかそういうコミュニケーションはできてたんですけど。

 んー、母も、なんだろ、今のお母さんとは違って(子に対して)「母親」たる絶大な存在で、母親自身もそうあるべきだと思ってたし、だからそういう意味では、一回も腹を割って話すことなく死んでしまいました。

 それは大人になってずいぶん経ってから、いやつい最近かな、気づいたんですよね。「あ、私、お母さんと話したことがない」。ちっちゃい時は聞いてもらえる関係性づくりもなかったんでしょう。だから私は本当の気持ちを母に伝えたこともない。でも母は愛情はものすごく強くって、もう過保護なくらい愛情過多なんですけど、ずっとお互いすれ違って。私は「私がしてほしいことはこんなことじゃないのに」と反発してました。

 母が病気になってから、なかなか病名がわからなかったりして、進行していく病に対して母なりに不安もあったりしたんですけど、彼女もすごく自立心の強い人で、あまり言わないんです。私が一生懸命何かを、良かれと思ってすればするほど母はいらついて。最後には一度振り絞るような声で「私がしてほしいのはこんなことじゃないのよ!」って言ったのを今でもよく覚えています。今では本当にそうだったんだろうなと思うんだけれど、あの時はベストを尽くしていて、それ以上はもう無理だったし、うん、そういう形で今生はお別れしたんだなって感じですね。

 でも、私が最後、息を引き取る瞬間看取ったっていうのは……たぶん初めて、母がうれしいと思うことをしてあげられたんじゃないかなと思います。
 というのはね、結論としては家で看取ったんですけれど、(当初は)そんなこと考えてなかったんですよ。病院で亡くなる、もしくは、介護施設で亡くなると(考えていた)。
 なんですけど、それもすっごく不思議なご縁で。最後、母が肺炎になって入院して、食事もとれないし、本人が延命治療も望まないとなった時に、んー、と思っていたんですけど。

 たまたま全然別の用事があって、知り合いのスピリチュアルな方にメールで連絡したんですよ。その件のやりとりが終わったら、急にまたその方からメールが来て、「ところでお母様はどう?」って。以前に母の病気か入院してることを話したことがあったのかな。で、「実はもう長くなくて、今病院にいるんです」って返事したら、「お母様をおうちに連れてくることはできないの?」って言われて。「え!?」ってもう、青天の霹靂でびっくりした。そしたら「お母様はそうしてほしいって言ってる」って言われちゃって(笑)。もうね、「そんなことできるわけないじゃん!うちで看取るって何!?」と思ったんだけど、それからが本当に不思議、どんどんそういう流れになって。

 ものすごく苦労したんですよ、看取るために家まで連れてくるっていうのは。でもそういう流れになって、私も毎日病院に通って、痰の吸引や排泄の処理の仕方、口腔内ケア、看護師さんたちがやってるようなことを教えてもらって練習して、やっと退院させてもらって、うちに連れてきて。
 そしたら、お昼前に連れてきて、日付が変わったぐらいに亡くなっちゃったんですけど。だから、1回はそれ(おうちでのケア)ができたかな。

──すみません。(岡さんが泣いていらしたので) 

岡さん ううん、大丈夫です。

 きょうだいとは、小さい時は確執があったけど、母の病気のことでものすごくいい機会を与えてもらったなっていうか、すごくいい連携プレーができたっていうか。私はこれをする、あちらはこれをする、みたいな形で。

 私は、ま、正直長くて2週間ぐらいは生きるかな、もしかしたら1週間かもしれないと思って、「2週間ぐらいかかるから、悪いけどうちのことは全部やってね」って自分の家族に言ってたんですよ。それが、1晩で終わっちゃったんだけど、うん……

 (母と)確執はたくさんあったけれども、あったことは受け入れられてるし、整理も自分の中でついてるし、ただお互いわかり合うコミュニケーションはできなかった

──でもそうやって最後、自分の時間もエネルギーも使って、お母様とちゃんと一緒にいようと思われたんですね。

岡さん そうですね、流れで。私、自分ではすごく抵抗があったけど、感謝の言葉も伝えました。向こうは、聞いてました、ちゃんと。それに対して反応とかはそんなになかったけど、うん、ちゃんと伝えられたからよかった。うん。

夫のこと

──岡さんと旦那様とのご関係についてお聞きしたいです。

岡さん 夫はもの静かなほうですね。誠実な人です。
 昭和ですね、割と。感謝とか愛情とかを言葉や態度で表さない。でも、なんだろう、絶対的な信頼感はあります。ちょっと不満なところもありますけど。すごく真面目なんで、お小言が多いんです(笑)。「電気つけっぱなし!」とかね。「死なないよそんなことで!言わなくていいじゃんそんなこと!」っていう時もあります。

 もう少し心をやわらかく持ったほうが、彼自身が楽なのにな、と思うことはある。私もちいちゃい時からずーっと神経質で、手が汚れるのが嫌でお菓子を箸で食べてたぐらい。今は手で食べられるんですけどね。私はそうやって自分がどんどん楽になってきたから、彼も楽になったらいいのになーって思うんだけど、難しいです、人のことは

──一番長く一緒にいる関係の人だと思うんですけど、やっぱり自分とは別の人、という感じですか?

岡さん そうですね。楽になったらいいだろうなと思うのも、私の中の概念でしかないっていうか、ね。彼が望んでて本当に必要だったらそうなるだろうとは思うんだけど。

 でも私も子供も叱られっぱなしで、明らかに私たちにも害があるんで(笑)、それに対しては「もっとやさしい言い方してよ」とか、「なんで怒ってんの?」とか言うんですけど、本人は自覚がないんですよね。

──岡さんの働き方などについては、ご夫婦で話し合って?

岡さん 一応お断りはするんですけど、基本、あんまり「だめ」とか言う人じゃないです。ただ、忙しすぎて家庭にしわ寄せが来ると、だんだん不機嫌になっていく。最近ちょっと不機嫌な時期(笑)。だけど、そこはうまくゴマを擦りながら。

──家のことは岡さんが大部分やる?

岡さん うーん、コロナになってからは(在宅勤務なので)けっこうやってくれますね。

 あと、私が体が弱いのを知ってるので「私、もう今日だめ、ごはん作れない」って言ったら、「じゃあ何か買ってこようか?」って言ってくれたり、お弁当が続いても文句言わないし。もちろんうれしくないのはわかるんですよ、だけど、そういう時に文句言わないとか、そういうやさしさはすごくありますね。心根はとってもやさしい人なの。

──いいですね。

岡さん そうなの。感謝。

──旦那様はすっごくしゃべるとかそういう感じじゃないけど、

岡さん そう、しゃべんないですね。だから友達関係も華やかじゃないし少ないけど、長く続く。やっぱり私と似てるかな。
 私と違うのは、夫は自分から働きかけないから、だいたい友達から誘われて行く、って感じですね。私は自分からも「これ行かない?」とか誘うからね。友達はね(笑)。

大嫌いだった人のことも

岡さん 身近な人で、明るくて、すっごく人にかわいがられる人がいるんですね。考え方によってはある意味あざといし、いいとこ全部持ってっちゃうし、みたいな人。いい意味で自己中。悪気はないんだけど、自己主張が強い

 例えば、みんなでたくさんあるものを分けようっていう時なんか、普通はたくさんあったら並べて「どれほしい?」とか配慮をするじゃないですか。そういう時、(その人は)何も言わず、自分のほしいものだけ持っていったりする。

 でももし私が同じことをしても、その人は何とも思わないと思うし、だから(価値観や感じ方が)そもそも違うんですよね。私はちゃんと、お互い「これほしいんだけどどう?」とか「これはいらない」とかしたい。

 私はちょっと前までその人のことが大嫌いだったんですけど、自分が整ってきたら「私はあなたとは違うけど、自分の主張がそんなにできるって、それはそれでいいことだよね」と思えるようになった。前は顔を見るのも嫌な時期があったんですけど。

50代。「今がいちばん幸せ」更新中

──お話を聞いていると、今、すごく気持ちが整って、良さそうですね。

岡さん うん、おかげさまで。整ってきたからこそ、(最近始めたという新しいことを)やることになったのかなとも思うし。やるから整えなきゃ、とも思うし。「整えなきゃ」っていうのは浅いレベルの整えなきゃなんですけど、深いところは、うん、本当に整ってます。

──今、50代でいらっしゃいますね。

岡さん そう、ここまできちゃった。

──私は少し年下なんですけど、岡さんのお話を聞いていたら、その歳になるのがちょっと楽しみになったというか。

岡さん うん……毎年毎年、「今が一番幸せ」を更新してる感じ

──ああ、すばらしいですね。

岡さん  私ほら、小さい時はずっと生きづらかったので。学校で楽しかったという思い出はあまりない(笑)。大学も。はは(笑) ずっと生きづらく生きてきたので、今がゴールデンタイム。だから、年齢がいくのは嫌だなとかいうのもあんまりないですね。

(終わり)

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