見出し画像

「例えばきれいな花火を見たら」公募インタビュー#36

皆さんは、きれいな打ち上げ花火を見て感動したら、どう思うでしょうか。「また来年も見たいな」? それとも、「この感動を人に伝えたい」? 

「私は花火を作る職人になりたいと思う」。 今回のインタビュイーさんはそんな方です。

〈みなとさん(仮名) 2021年11月下旬〉

みなとさんがインタビュアー田中に応募してくださったのは二度目です。(前回の記事:「魔法が解けたあと」)

前回お話を伺ったのは2020年12月。メディアのインタビューではどうしても優等生的な受け答えをしてしまうので、職業や立場を気にすることなく、ありのままで話をしたいということで応募してくださいました。

みなとさんは幼い頃から目指した道があり、若くして専門的な職業に就きました。(上記のようにインタビューを受ける機会があったのはその職業によるもの。)しかし、ハードな鍛錬により心身の調子を崩して以来、表向きは一生懸命でも、情熱を持たずに仕事をこなすようになります。

目立った活躍は望まなくとも、自分なりのペースをつかみ、キャリアを積んでいきました。また、本業から派生する仕事はコンスタントに依頼があり、順調と言える日々だったようです。

一方で、業界の旧態依然とした体質にはほとほと嫌気がさしているということでした。とは言え、何年もひと筋にやってきた職業からの転身など、簡単には考えられない……

みなとさんは前回、少し諦めた様子でそんなことを語られました。

それから1年後、みなとさんから驚くような報告が。インタビューの後、まったく別の業界への転職活動を行うこととなり、狭き門を突破。それまでの仕事をきっぱりと辞め、もうすぐ新しい道を歩み出すと言うのです。

きっかけがきっかけを呼び、急展開となった転職の顛末について話したいと、再度申し込んでくださいました。

前回と同じく、転職前並びに転職後のご職業については明らかにせず、ぼかした表現にしております。読者の皆様におかれましては、ご想像までに留めていただけると幸いです。

これだ!という職業が求人サイトに

──去年お話を伺った時には、「転職なんてするつもりはない」という感じでしたよね。《転職後の業種》に興味はあるけど、生業としてお金を得るのは《転職前の仕事(以下、「前職」と記述)》のほうで、とおっしゃっていました。

みなとさん(以下、ミ) そうですね。本当にその状態だったんですけど、前回のインタビューの少し前に出会った趣味があったんです。周りに詳しい人がいて、私もどんどんはまっていきました。

 そうしたら、(その趣味について)何気なくネットでいろいろ検索していた時に、《はまった趣味に関する仕事》が、前年の求人サイトで募集されていたのを見つけて。

──そのお仕事が求人サイトで!? 意外です。

ミ (笑)そうなんです。

 で、「えー、絶対これになりたいじゃん!」と思ったんですよ。それから、なりたすぎて眠れない夜が続きました。毎年募集があるとも限らないし。「どうしよう!なりたいよー!」と思いながらどうすることもできず、ひたすらずっと(その職業に関わる趣味に)打ち込んでいました。

 そうしたら、ちょうど今年度の募集があったんです!まずエントリーシートを書いて出しました。私は就職活動が初めてだったので、みんなこんなことを何社も何十社もやってるなんてすごいなーって思いながらやりましたね。

今までの仕事とは、業界がまったく異なる求人。また、みなとさんにとって、いわゆる「就職活動」は初めての経験でした。身近に就活生もおらず、戸惑いもありましたが「なりたい!」と思えた仕事のため果敢に進みます。

特殊な能力はこのために

次の試験は課題提出。求人の仕事内容と直結する課題は、長い時間をかけて取り組むもので、大きな関門となりました。
前職の仕事複数と並行していたため忙しい日々でしたが、情熱を持って取り組むことができ、また、その中で自分の才能の生かしどころを見つけた気がしたそうです。

ミ 前回「“私”が5人いる」って言ったじゃないですか(前回記事「自分会議ー5人いる」の章参照)。あの子たちが、その時にめちゃくちゃ便利で(笑)。一人ひとりを分離して役割を与えると、すごく役に立つんです。君たちはそのためにいたんだねー、っていう感じになってますね。

 それに、自覚がないんですけど、私は他の人よりも記憶力がすごくいいらしくて。1回でこんな細かいことまで覚えられるの!?と驚かれます。

──確かに、5人の視点があることも記憶力も、そのお仕事に生きそうです。

ミ はい。自分が持て余していた細々した能力が、全部生きるのかもしれないっていう希望を持ってますね。

天狗の鼻が折られる

やり遂げた課題はみごと選考を通過し、三次試験へ。
同席した応募者たちの経歴を聞いて、みなとさんは動揺したそう。

ミ 外国で関連の勉強をしていたとか、すでに同職種の仕事をしていたり、そうそうたるプロフィールで。あんなにすごい人たちがいっぱいいた……と思って家に帰って。「(自分は)絶対に落ちた!」って言いながら、荒れてました(笑)。いっぱい果物食べたりして、「もー!」って一人で半狂乱になって(笑)。

──自分より合格しそうな人がけっこういた?

ミ どこかで、自分の経歴は類いまれなものだって思ってたんです。自分ってすごい、っていうのがたぶんありました。そしたら、自分とは違う角度のすごい人をいっぱい見たので、天狗の鼻が折られたような(笑)。自分がそうであったらよかったなっていう人生を歩んでる人が、いっぱいいて。しかも自分より若い人で。ああ、体力もこんなにみなぎっているし、すごい、と思いました。

 でも、ちょっと強気でいかなきゃなと思ったので、私も負けてないけどみんなもすごい!ぐらいの気持ちでいましたが(笑)。

──いいですね(笑)。

採用!

三次試験通過の連絡がきて、いよいよ最終面接。懸命に受け答えしたものの、感触は微妙でしたが……

ミ 合否は1週間以内に来るという話でした。落ちたと思って、「落ちたよ〜」「今日も連絡が来なかった」「いつ来るんだろう?」って一人で言いながら、救いがないドラマを見て癒されてました(笑)。『リバース』とか『Nのために』っていう湊かなえさん原作のドラマを見て、はあー、救いがないねえ、苦しいねえ、って(笑)。あんまりそういう苦しいのは好きじゃなかったんですけど、こういうドラマはこういう時のためにあるのかー、と思いながら。

 そうやって「ああ……」ってなってたら、数日後に電話が来て、「ぜひ働いていただきたいです」って電話が来て、受かったんです!!

私は花火職人になりたいよ

めでたく採用となり、喜んだみなとさん。でも実は前日に、それまで逐一相談と報告をしていたご両親から「本当は受かってほしくない」と言われていました。ご両親としては「(その仕事は)絶対に大変だし、今から新たにやるようなことではない」と、我が子を思っての言葉だったようです。

ミ 両親からは「いくら花火がきれいだからって、花火職人になりたいと思う人はいないでしょ?」って言われたんです。でも、私は「いや、花火がきれいなら、私は花火職人になりたいよ」って言ったんですよ。「私は競馬を見たら馬に乗る人になりたいと思うし、ボートレースを見たらボートに乗る人になりたいと思う。私はそういう人間だ!」って。

 (その就職試験には)毎年数人しか受からないんですよ。ゼロの年もあるし。エントリーの段階から何人受けているか知らないので、私も倍率は知らないんですけど。それで、まあ、今は両親も喜んでくれています。

 一応それで就職試験は終わりましたね。なので春から、働きます。

感動したなら、受ける側にいつづけるのではなく、発する側の人間になりたいと思うのが私である。みなとさんのその自覚と、次に続けた覚悟の言葉は清々しく、強さを感じるものでした。

大変な人生のほうがいいよね


──お仕事は実際、すごく大変そうなんですか?

ミ 会社から仕事内容や待遇、求める姿勢を告げられて、実際大変そうだと思ったんですけど、私はそういうもんじゃないかなあという感じでした。下積み期間ってけっこう、お金をもらえないものじゃないですか。でもお給料も出ますし、勉強もさせてもらえてお金も出る、って思ったらかなりありがたいなーと。

 それに、前職は男女でもらえるお金が全然違う業界で、女性は若いうちのほうが仕事が来がちなんですね。今が頭打ちぐらいの歳で、収入はこれから下がっていく一方なんじゃないかっていう気持ちがあったんです。実際どうなるかはわかんないんですけど。

 となると、せっかく生きるんだし、大変な人生のほうがいいよねっていう考え方です(笑)。今は、(前職に打ち込んだ時の)一番しんどい時期が終わって、かなり休めたので、もっとがんばりたい!みたいな気持ちがあります。だから、なんとかがんばろうと思ってます。

何も当たり前じゃない/私だって辞めてよくない?


──その求人を見つけるまでは、転職活動は?

ミ まったくしてないですね(笑)。見つけて初めて、こういう道もある、今を離れるのもあるかなー、って思って。

 あと、ずっと続くと思ってたものが、コロナ禍で終わったりしたんですよ。お世話になってる人が店を閉じたりとかで、何も当たり前じゃないんだなーって思うようになって。それに、アイドルが引退するのとかを見ると、こんな影響力持った人だって辞めるんだから、私だって辞めてよくない?っていう気持ちになって(笑)。

 だったんですけど、試験が進むにつれて、恐怖がすごく大きくなりました。エントリーシートを送った段階では、一か八かみたいな気持ちだったんですけど、三次試験や最終面接は落ちたらどうしようみたいな怖さがあって。そういう自分と、受かる受かる!って思ってる自分と、まあ50パー50パーで考えておこうっていう自分と、落ちても死ぬわけじゃないからまたその時がんばろうよみたいな自分と、いろんな気持ちでやってましたけど……

 なので、受けてる途中に、他にも何かないかなーと思って仕事を探してみたんですけど、どれも前職を辞める苦労をしてまでやりたい仕事はなく……という感じでした。

人間扱いされたくて

前回のインタビューで語っていたのは、前職の業界全体に対する不信感と諦めでした。それでも転職に消極的だったみなとさんが動いた理由は。

──受け始めた段階で、受かったら前職の業界はすっぱり辞めるっていう気でしたか?

ミ まあ、そのつもりで。というより、もう「絶対に辞めたい!」っていう気持ちがあって(笑)。

 コロナ禍なのに断っても断っても個人的に会おうとしてくる先輩がいたりとか、仕事で行った先で複数人いるのにパーテーションなしで食事だったりとか、おもにコロナ関連で、本当にそれでいいんですか?って思うことがけっこう多くって。そうして業界に対する諦めみたいなものがだんだん蓄積されていって。

 すごく感覚的ですけど、もともと、自分が得られるもの…お金だったり経験だったり能力だったり、名声はともかく、そういうものと、出ていくもの…時間とか体力、精神的な消耗とかを比較して、マイナスが大きくなったら、やめる。いろんな物事においてそうしているんですけど、前職について考えると、たぶん今年がトントンの年なんですよ。で、これからはきっとマイナスが大きくなってくる。だから、今年辞めるのが一番ちょうどいいなーって思って。

 それに、自分の持ってる能力を、前職の業界が持て余してる、みたいな気持ちが、ちょっと傲慢なんですけど(笑)、あって。私にできることがあっても、実際に仕事を発注されるのは、違う人なんです。本業の実力が上の人にいい仕事が行って、その人がその仕事をあんまりうまくできてなくても、「その人がやってるから意味がある」みたいな。

 もし評価されても、「こいつは仕事の実力(を示す指標値)が低いし」とか、(女性だと)「でもこいつは顔が悪いし」で全部チャラにされちゃったりする。考えて出した結論というよりは、この業界から早く去りたい、ずっといるのは無理だ、って自然と気持ちが移っていった感じですかね。もうちょっと人間扱いされたいなーって思って。

 次の仕事はきついですけど、たぶん男性でも女性でも、同じきつさを受けるから。

 しかも、今までは怒られるってなると、怒る人が自分が気持ち良くなるために怒る場面が多くて、だから私は怒られるのが苦手だったんです。でも次はきっと、より良い仕事のために怒られるんだろうから、それならいいと思ってるんですよ。

 ただまあ今は不安です。本当にやれるのかなと思って(笑)。がんばるしかない、ですかね。

先輩からの言葉

転職先が決まり、いよいよ前職を辞することが決定。まずは、前職でお世話になった大先輩に報告することに。初めて仕事に就いた時からすべてを教えてくれる、メンター的な存在の方だったそう。怒られるかもしれないと緊張していたところ、意外なことに……

ミ 「みなとさんなら他の世界もあるなってずっと思ってたけど、こっちから言うわけにもいかないから、どうするのかなと思ってたよ」って言われました。

 そして、次の仕事について話した後言われたのが、「まずは一生懸命やること。一生懸命やってれば、周りが何を言っても気にならなくなる。例えば、一生懸命やったことで間違いを指摘されたとしても、謝らなくていい。あ、そうなんですねー、自分はその時一生懸命やってこれだったんです、みたいな感じでいいよ。だからまずは一生懸命やりなさい。それから人にやさしくするっていうことをきちんと自分の中に持ちなさい。やっぱり(大事なのは)そういうことだよ」と。

 いい話が聞けて、本当によかったと思いました。実は、いろいろあってその方は話が通じない人だと思っていたんですけど(笑)、すばらしい方に自分は教わっていたんだなって思いましたね。この話(転職したい気持ちや次の仕事について)をわかってくださるんだーって。

 (その他にもいろいろと話をして)今まで知らなかった意外な一面も知ったし、その方のことを初めてちゃんと理解できたかもしれません。

前職に未練なし/大きな志を持って

みなとさんが前職の業界に愛想を尽かしたのは、時が止まったかのような男性優位の世界であることや、問題が起きた時に合理的な解決がなされないこと、改善されていく気配がないことなどからでした。

──去る場所に未練はないですか?

ミ そうですね。なんにもないですね(笑)。でも、(その仕事の核の部分を)嫌いになることは絶対になくてただ、業界に愛がないんですよね。

 業界の中で私が担当していた分野における私のスキルを、誰にも引き継げずに辞めるのは、謙虚な私としては申し訳ないという気持ちはあります。傲慢な私としては、業界の損失だね、って思っています(笑)。能力の損失だよ、いなくなってから気づくんだぞ、って(笑)。

 あと、この業界、人権意識が足りないから(笑)、いつかものすごく問題になるんじゃないかな、怖いなって思います。人を守ることも知らなければ、自分を守ることも知らないから。でも、私がこの業界に対してできることはもう全部やったので。あとは皆さんでやってもらって。

 (前職の核の部分を、長い時間)やってきたことにはなんの後悔もないです。私の生まれ育ってきた環境や、田舎なりの選択肢のなさとかから見ると、これから就く仕事にたどり着くには、この道しかあり得なかったと思います。大学を出てすぐ《これから就く仕事》という選択肢がない人生を歩んでたので。それはまったく後悔してないですね。

──今度行く業界や仕事についてどう感じていますか?

ミ 今度は、自分がもっと世界に関われそうな気がしています。というのも、今度行く業界も、私は手放しで全部すばらしい!とは思っていなくて。前職ほどではないですけど、ちょっと遅れているところもあるんです。でも6年後とか10年後になれば、(自分が下積みを終えて本格的に仕事ができるようになったら)そこを変えていけるんじゃないかって。良質な仕事をしていけるんじゃないか、それが結局は業界全体を何十年先、もっと未来まで盛り立てるためになるんじゃないかっていう、大きな志を持ってます(笑)。

 そして、(自分が下積みを終えた後、自分の仕事が与える影響を意識して)一緒に仕事をする人たちに誠実に向き合いたいなって、まだ会社に入ってもいないのに思っています。


みなとさんはこれまで仕事をする中で、自分が「見られる側」「コンテンツとして消費される側」に立つ経験をし、そのために嫌な思いもしてきました。その経験も将来生きるかもしれないと考えているそうです。


ミ 人って、人のことを無意識にでも“コンテンツ”として認識していると、目の前に私がいても、まるでテレビを見てガヤガヤ言ったりするみたいに、配慮のない言葉を言っちゃう時があるんですよ。同じ人間なのに、相手を“コンテンツ”として見たとたん、傷つかない、過度に強いものに思えてしまう人が多いと思います。(そう見られたほうは)けっこう嫌なものなんですよ。

 そういう、見られる側を経験してきたことも、より配慮の行き届いた仕事をすることに生かせるかもしれないと思っています。

自分に戻る

前職から派生した仕事もすべて辞めるみなとさん。前職の経歴はインパクトがあるため、今回の転職活動に積極的に利用したそうですが……

ミ 新しい会社に入ったら、前職についてどういう扱いなのかな。あなたの過去なんて関係ないです、っていう扱いがうれしいですけど。(前職のことを取り払って)素の自分に戻りたいです。

 自分の、本当にしたいことを遡っていった時に思い出したのが、2歳くらいの記憶なんです。(その頃すでに、ずっとやっていきたいと今思っていることに出会っていたのを)思い出して、ピースがはまったような感じでした。(そのやりたいことは自分にとって)息をするぐらい普通のことだったから、今まで気づかなかったけど。やっぱりそれで生きていきたいんだな、って。

 そこだけ、ぶれないようにしようと思います。

これから

──これから新しいお仕事のスタートまでは、勉強を?

ミ そうですね。まず引っ越して、激務でも散らからない部屋作りをがんばろうと思ってます(笑)。

 あとはまだ新しい仕事について知って日が浅いので、たくさん知って、分析しようと思います。他の勉強もたくさんして、引き出しを増やすこともしたいです。

 体力もつけたいので、筋トレとかしようかな、って思ってます(笑)。

 先日、去年まとめていただいたインタビューを改めて読んで、こんなに転職は無理だって思ってたんだなって。自分こんなに後ろ向きだったかーって思いました(笑)。

 でも本当に、(前職でのストイックな鍛錬を通して)一度自分を自分で壊してしまって、自分からいろんなものを奪ってしまった経験があったから、がんばることはすごく怖かったし、何もしたくなかったんですよ。例えて言えば、自分のパーツが全部ボロボロになってしまって、それをかろうじて接着剤でつけてるけど、猛スピードで走ったらまた全部ブワーって崩れてくようなイメージがあったんです。

 でも、次はめちゃくちゃにがんばりたい!みたいな気持ちまで来れたんで、健康に気をつけつつ(笑)、全速力でがんばりたいです。ここまで回復できて、本当にすごくよかったなー、って思ってます。

──みなとさんのご活躍を楽しみにしています。

ミ がんばります。

(終わり) 

付記・自衛せずにはいられないということ

みなとさんからは、コンテンツとして見られる側の気持ちがお聞きできました。見る側にいる時、自戒を込めて心にとめておきたいお話を付記します。

ミ (SNSなどで、人の)名前を出して書いたことは、本人に届くものだと思っていたほうがいいと私は思います。「本人はエゴサしていないから大丈夫だ」っていうのは間違いで、絶対に関係者の耳には届くんです。友達とか親とかが検索するんですよ。そして本人に届く可能性が高いです。

 それをわかっていない人も多ければ、逆に、絶対に本人に見てほしい悪口を(本人の)フルネーム入りで書く人もけっこういるんですよね。(見てしまうと)ああ……疲れる、私(その人に)何かしたか?ってすごく思います。

──みなとさんはエゴサーチするんですか?

ミ 私は、(仕事のために)SNSのエゴサはします。Twitterであれば、嫌なことを言ってくる人はブロックかミュートしてしまえば、だんだんエゴサの環境が良くなっていくんですよ。それに、ある程度数を見ると、悪意があるかないかが言葉遣いでわかるようになりますね。

 でも、掲示板(=ネット上の匿名掲示板)は絶対に見ないです。昔、若くて自衛することを知らなかった時、掲示板に「顔も実力も期待できない」って書いてあるのを見てしまい、すっごく落ち込みました

 顔について言及していいと思ってる人が多すぎます。顔についてしゃべれば、対象をこき下ろせると思ってる人がけっこう多いです。

 私の対策としては、そういう人たちを、冬に大きな石の下にいる虫だと思うんです(笑)。あったかいから、石の下に虫が集まるじゃないですか。でも、その虫は石をひっくり返さなければ見えない。だから、私が見なければ、私の中では存在しなかったことになるので、見に行かない、っていうふうに(笑)してます。存在させないか、本当に見たかったら落ち込まないことを前提に見る、ということにしています。

(付記終わり)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?