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「届ける人」公募インタビュー#14

(たりんさん 2020年7月下旬)

たりんさんは、やりたいこと・考えたいことを整理がてら話して、今の状態を残したい、と応募してくださいました。

もう「もの」はいっぱいあるけど

たりんさん(以下、タ) 私も書店でバイトしてるので、棚卸しの話(友人インタビュー「大型書店で働いていた話」)とか面白かったです。

──読んでくださってありがとうございます。書店でアルバイトをしていらっしゃるんですね。あと、Twitterのプロフィールを見せていただいたんですけど、カフェでも働いてらっしゃる?

タ そちらは友達がやってるカフェで、書店でバイトを始める前は完全にフリーランスで働いていたんで、そこでたまに店番したりとか、イベントを手伝ったり企画したりとかしていて、今はそのカフェのグッズを作ってます。

──たりんさんはデザイナーさん?

タ いや、私は(デザインは)全然できないんです。そのカフェはけっこう広いスペースがあって展示ができるので、過去にそこで展示をしてくれた美大生の子とかがいるんですね。そういったアート関係の人たちにデザインは頼んで、私は全体の進行とか細かい事務的なことを。どういうものを作っていくらで売るかみたいなとりまとめや諸々。

 お店のロゴの刺繍が入ってる帽子とかTシャツ、パーカーとか。ちょうど今撮影をしてもらってるところで。8月にはカフェのグッズを売るネットショップをオープンしようと思ってるんですけど。

((( ※OPENされたとのことなのでお知らせ。かわいい。↓ )))

(※閲覧はPC推奨です!スマホでも見れます。とのことです)

──すごい、お洋服をグッズとして作られたんですね。

タ お洋服を作ってみました(笑)。Tシャツとか元々のものはあって、それを輸入して刺繍やプリントをする業者があるので、そこに頼んだんですけど。
 アメリカのストリートの子たちが着てるようなグッズが多い業者さんで、なかなかかわいくできました。

 (友人がやっているお店は)けっこう広いカフェなので、貸し切りでやるパーティーとか、いわゆる場所代が収入の大きな柱だったんですね。それが、3月の毎週末歓送迎会とかで埋まっていたものがコロナの影響で全部なくなっちゃって。私もそこでイベントをやったりしていて、そのお店には続いてほしい気持ちがあったので、何か私にもできることないかなと思ってグッズを作り始めたって感じですかね。

 元々美術関係の、作るスキルのある人とのつながりはあったし、お店のロゴとかもけっこうかわいいのをデザインしてもらってたのに何もできてなかったので、まあいい機会と言えばいい機会だなっていう感じで始めたんですけど。

──在庫は持たずに、注文が来た分だけ作る売り方ですか?

タ そうですね、基本的に。やっぱりどうしても大量に発注した方が1枚当たりのコストは安くなるんですけど、でもなんか、作っててすでに思う(笑)のが、こんなにものが世の中にあふれてるのに、また自分は作るのか。Tシャツとかみんな持ってるよなーとか、すごい考えますね。自分たちが新しく作る意味って何なんだろうなーみたいな。

──服が余って新品のまま捨てられてる話とかありますもんね。

タ 本当に。そこをクリアできる新しいものづくりとは、とか考えますね。自分たちは別にアパレルのブランドでもないわけじゃないですか、カフェだし(笑)。だからどうなんだろうなとか。

 最近私、スケボーを始めて。ずっとやってみたくて、でも運動は得意じゃないので躊躇してて、始めるタイミングを完全に見失ってたんですけど、マキヒロチさんっていう漫画家さんが描いている『スケッチー』っていうスケートボードをやる女の子たちの漫画があって、バイト先の子に貸したら「え、スケボーやろうよ」みたいなことを言ってくれて(笑)、こないだ一緒にスクールに行って板を買って今週始めたんですけど。

──へー!

タ そしたら、スケボー自体はシンプルに板だけあればできる遊びなんですけど、スケートボードってブランドとかファッションとかすごくいっぱいあるんです。着てるものとか板に書いてあることでアイディンティティや自分のフィロソフィー、これが好き、っていうのを表したりする(文化がある)。
 スケートボードのグラフィックとかも有名なスケーターが描いたイラストを印刷してあったり、好きなステッカーを貼ったりもするので、そういうのを見ているとまた新しくものを作りたくなるんですよ(笑)本当に。

 (周りに)イラスト描ける子もいるし写真撮ってる人もいるからボードを作ってみたいと思ったりもするんですけど、こんなに新しいものを作って何になるんだろうなみたいな。作る意味あるのかな、もう作ってる人いっぱいいるのにみたいな気持ちになったりしますね。

作ってくれる人にお返しを

──作ってみたいと考える時、作るものは売りたいということですか?

タ ずっと考えていることがあって…なんか、私の経歴になっちゃいますが、私は美術とか映画とかがすごく好きで、最初の就職では雑誌の編集者になりたくて出版社に入ったんですよ。それは、好きなアーティストとか好きな映画を集めた雑誌が作れたら、その人たちに何らかの形で還元できるから。

 自分は全然アーティスト的な創作はしないで鑑賞するだけなんですけど、そういう媒体とかに関われば、自分が恩恵を受けている、作ってくれている人たちに何か還元できるんじゃないかっていう気持ちがずっとあって、会社は辞めてもそういう気持ちはずっと持ち続けてて。

 私は企画を考えたり、作る側の人たちに仕事を振る仕事は割と得意だから、そういうことで還元できるなと思って。

 (友人とやっている)「グッドムービークラブ」っていう活動(※後述)はそういうのもあって、自分たちで映画を上映することで映画を作ってる人に何かしらお返ししたいっていう気持ちと、一緒にやってる美術系の友達たちにも、フライヤーをデザインしてもらったりとか、創作をする機会を作れるかなと。

 「売りたいか」という質問にここで帰ってくるんですけど(笑)、セルフプロデュースする人って限られてるじゃないですか。ネットで成功してるイラストレーターさんとか自分でグッズとかガンガン作ってる人は作ってるけどそうじゃない人もいるし、友達とかでも、いいと思うものを作っている人がいたら応援したいなと思っているから、そのアウトプットができる場所を自分が作れるといいなと。

 スケートボードに関してはまだ全然調べきれてないですけど、ビデオを撮ったりするカルチャーもあるしアパレルの展開もたくさんあるので、売るという意味でも面白いし、知らん適当なTシャツを買うより友達が描いてくれたいいデザインのTシャツが着たい(笑)、そういう気持ちがすごくある、という感じですかね。

終わりのない仕事・きっかり終わる仕事

タ 書店でバイトをする前は、フリーランスでチェコ語や英語の翻訳を在宅でやっていました。たまにチェコからクラシックの音楽家の人が来日した時などには通訳も。

──忙しかった?

タ いや、そんなに忙しくなかったんです(笑)。ただ、翻訳は時間をかけようとすればいくらでもかけられる、時給いくらだよっていう仕事なんです。私は翻訳の学校に行ったわけじゃないし、文学の翻訳とかができるスキルはなかったので、とにかく英語もチェコ語も翻訳仕事は何でも受けて。でも私、フリーランスの仕事のリズムが全然つかめなくて仕事をさばくのが下手くそで、ためちゃったりしていました。

 今年やるはずだったチェコ関連の展覧会の仕事を受けてたんですけど、コロナで展覧会自体が延期になって、それにまつわる仕事もなくなっちゃったので、暇だなあと思ってたのと、一旦、定期収入が入る働き方をしたいなっていうのもあって、書店のバイトを始めてみました。

──いつから?

タ 4月の半ばからなので、コロナでの緊急事態宣言真っ只中の時です(笑)。個人経営の一店舗のみの書店なので、チェーンのところとかと違ってコロナ真っ只中でも開店してて、でもそれが私はすごくうれしかったというのもあり、始めました。商業施設に入ってるような本屋さんは全部閉まってたんで、バイト先の本屋にお客さんが集中してすごく忙しかったですね。もう今は落ち着いちゃいましたけど。

──今はその書店さんで週何回か働いている?

タ 10時から3時までの5時間だけなんですけど、週5で働いてます。夕方から夜は時間があるので、たまに翻訳したりとかして。(書店のバイトで)固定収入がゲットできるようになったので、そういう意味でなんか今めっちゃちょうどいいですね。

──リズムもできそうですよね。

タ はい、朝強制的に起きれるし。フリーランスだった時は朝起きるのすらできず(笑)、毎日変な時間に起きて、稼働時間短いみたいな、メリハリのない生活でしたが。

 そしてフリーランスだと自分で仕事を作らないと収入ゼロ円になっちゃうけど、行けばとりあえず仕事があって5時間働いて、最低賃金ですけど月10万いくらぐらいにはなるみたいなのはそういう意味でも精神衛生的にちょうどいいですね(笑)。足りないは足りないですけど、浪費しなければ生きていける。
 翻訳とかも全然やりたい内容じゃなくてもしかたないと思ってやってたのを、無理にお金を稼ごうとしなくていいから、空いた時間にやりたい作品を翻訳してみるような余裕ができましたね。

──いいですね。決まった仕事をやって収入があって、余った時間はやりたいことをやる。

タ そのバランスがすごくちょうど良くて。バイトも最低賃金だしすごくゆるいバイト先なので、正直普通に働いてて何も求められないというか(笑)、レジをちゃんと打ってて、お金を盗まなければいいくらいの(笑)、書店側からは本当に最低限の要請しかなくて。

 私は本も好きだからそれなりに知識はある方だと思うんですけど、何で本屋さんで働けてるんだろうってぐらい読んでない同僚もいる(笑)。そう思うと、何て言えばいいのかな、昨日すごく考えてたんですけど、会社員だった時はいろんな人の期待とか理想像みたいなものに応えなきゃいけないというのをすごく考えちゃっていたし、翻訳のフリーランスの仕事も正解がなくて、どこまで完成度を上げればいいのかみたいなところもあって、それが面白味でもあると思うんですけど、過度にプレッシャーになっちゃってた部分があった。それがなくなって、とにかく普通にしてればOKで、バイト先だしなーみたいな気持ちもあって、全員と仲良くしなきゃいけないプレッシャーも全然ないから、すごく楽ですね(笑)。結局いろんな人と話してはいますけど。

──仕事内容的にも人間関係的にもプレッシャーがないと。

タ 最近、大学が市民向け講座もwebでやるようになったからいろいろ聞き始めて、哲学の自主ゼミみたいなのに参加してるんですけど、それでドゥルーズっていう哲学者のテキストを読んだら、管理社会の話があって。
 昔は、例えば学校では普段どんなに成績が悪くてもテストでいい点数をとればそれで評価された。でも今は平常点とかAO入試とかが出来て、常に変動する基準になり、常になんとなくがんばってなきゃいけないみたいな状態を作ることで安定させてるというんですね。…私、ちゃんと話せてます?

──すみません、もう1回。

タ 今は、常によくあること、優秀であることを求められている、そういう形の管理社会に変わっている、と。

 私の理解で正しければそういうテキストを読んで、私は終わりのなさみたいなものがけっこうきつかったんだなと思って。がんばればがんばるだけ評価はされるけど、でもその基準が明確じゃない。どこまで何をがんばればいいのかはあまり明文化されてなかったり、人によって変わったりしている。

 私もそんな中でいろんな人にいろんなこと、「こういうのもできた方がいいよ」「社会人としてこういう風にあれ」、そういうことを新卒の時にいっぱい言われて、もう、何が何だかみたいなことになって、それがけっこうきつくて会社を辞めちゃった部分があった
なと。

 時給でのそういう、レジを打ったりとかの単純労働は、基準も時間も明確で、誰でも満たせるくらいの基準をクリアしてれば、プラスアルファの部分は楽しみとしてやれる

 (自分の働いている)書店で言えば、レジを打ったりとかは全員がやらなくちゃいけないけど、POPを書いたりお客さんとしゃべったりとかのある意味クリエイティビティが発揮される作業は、評価はされないけどやってもやらなくてもいいことになっているので、すごく気が楽になりましたね。
 自分でここができてれば大丈夫とか、これが自分のがんばるべきことだからってわかってればたぶんきつくないんです。

──クリエイティブな仕事が高尚みたいな雰囲気が世の中にありますが、基準が明確な仕事の良さもありますよね。

タ 割り切って、始まりと終わりがちゃんとあって、っていう仕事がすごく久しぶりだったのもあったと思うんですけど、かつ、それで全ての自分の時間が終わるわけじゃないから、さっき言ったグッズを作るといったようなやりたいことを自分の基準と責任においてやっていけばいいからすごく楽になりましたね。

──それは書店で働いてみて実感したことですか?

タ そうですね。そこまで自分にフィットするって思わずにとりあえずバイトと思ってやってみたんですけど。本屋さんっていうのがちょうどよかったのかなと思いますね。カルチャー的なものに触れていたい自分の気持ちも一応満たせる場所…本が新刊で入ってくるのを見るのも好きだし、お客さんがどういう本を買っていくのか見るのも好きだし、かつ単純労働で、あと職場のゆるさもあって、思った以上にはまったっていう感じですね(笑)。

 (通訳の仕事が発生する)海外の人が来日する予定も当分なさそうなので、(書店でのバイトは)しばらく続けようかなと思ってます。

──POPを書くとかクリエイティビティを生かすようなことはあえてやらないようにしていたりする?そんなことはない?

タ 自分は担当の棚も持っていないから、週5日×5時間いてレジだけだと暇な時間が出てくるので、この本読んだのでPOP書いていいですかとか担当者の人に言ったりして、あと書店の宣伝用のTwitterも担当者は決まっていないので、暇な時にやるみたいな感じでやっています。
 やりなさいって言われないから、好きな時だけやって、やる気のしない時はまあバイトだしみたいな感じで(笑)スイッチを切り替えてる感じですね。

 本を売ること、誰かが作ったものを売ること自体は私はすごく好きで、(自分の)Twitterとかでも見た映画とか読んだ本をこれめっちゃいいよとか言うのも好きだから、その延長でできる範囲であれば(やりたい)。全然自分の思想に合わない本を勧めろって言われたら本当にやりたくないですけど、棚に並んでる本の中でこれいいなって思ったものをパラッて読んで書いたりとかはすごく楽しいですね。

「グッドムービークラブ」

──「グッドムービークラブ」では映画の上映会をされたりしているんですね。それはさっきのお友達のカフェで?

タ はい、映画の上映会をカフェでしたいねっていう話から友達と始めて、クラブっていう形にしたって感じですね。(※ご友人同士数人からなる同好会的活動)

──上映会の依頼も受けてるんですね。

タ 全然お金は稼げてなかったですけど(笑)。都内のカフェとかギャラリーとか、地方でも要望があったので、スクリーンを持って行ってやったりしてました。

 日本で上映されてない映画を買ってきて上映するのも、やってみたいなと思いますね。(自分は)せっかく外国語ができるし。
 一応私たちも映画館ではかかってなかった、個人で作ってるアニメーションを作家さんにコンタクトをとって集めて上映したことはあるんですけど。長編でめっちゃいいけど日本では上映されていないものとかを上映したい!っていう気持ちはありますね。完全に自己満ですけど。

──自己満足ですか?

タ これもさっきのグッズの話と同じ気もするんですけど、もう映画はいっぱいあるじゃないですか(笑)。自分がまた見つけてくる意味って、自分が発掘したいみたいなところ以外に見つけづらいですよね。商業的に微妙な映画でも、映画祭で上映されて本当にいいものなら日本に持ってくる専業の人たちはもういるので、自分がそこに関与する意味は考えちゃいますけど、そんなに気にしなくてもいいかなとも思うので(笑)、楽しかったら全然いいし、まあ自分たちにしか見つけてこれないものもあるだろうと思うし。

一人では続かない

──やりたいことがありすぎて、ということでしたが、その中でどれからやっていく?優先順位はどうつける?

タ やりたいことは基本的にいつもありすぎるんですけど(笑)、うーーん、手をつけて出来そうなものを、とか…。でもすごく気が散漫でどんどん新しいことに興味が移っちゃうから、一人だとたぶんモチベーションが続かない。

 長く続けてるのは、映画の活動(グッドムービークラブ)ですね。それは一緒にやってくれてる人がいるから。仕事じゃないし稼げるわけじゃないから、優先順位一番じゃないし、それが一生の夢とかではなくてただやってるだけなんですけど(笑)、私が動かなかったら、ラジオ録ろうよって他の人が言ってきたりするから続けられてる感じですね。今、上映会ができないので、映画に関するラジオ番組の収録(Podcastの配信)をやってるんですけど。
 私は自分のためだけにやるのが本当に苦手で、よくないな、集中しないとなって思うんですけど(笑)。

──それは楽しくやってらっしゃるんですか?

タ そうですね。大変になってくるとなんか疲れたりもするんですけど、基本的には楽しくないと、稼げないのにやっている意味がないので(笑)。楽しいことにしかモチベーションはないんで、って感じですね。

──じゃあ、楽しい限りは続けようかなと?

タ 自分でも映画はたぶんずっと見ると思うし、その子たちと話すのも楽しいので、よっぽどのことがなければ続けたい。
 映画を発掘してきて上映したい気持ちもあるから、そこはちっちゃく実現できればいいなあって感じですね。

残す、伝える

──趣味と仕事というか、好きなこととお金を稼ぐことの境界線はありますか?

タ あまりない、というか、すぐお金を稼ぐまではいかなかったとしても、何らかの形でアウトプットはしたくなっちゃいますね。映画とかも見たら見っぱなしだと忘れていくので、本とかもそうなんですけど、自分のためにも残しておきたいなというのはあります。

 お金になるかどうかはあまり考えてないんですけど、自分だけでとっておくっていうのがあんまりできないっていうか、ひけらかしたくなっちゃう(笑)ところがあるのと、自分の性分としてよかったものはおすすめしたいというところもある。

 そして、よいものを作った人に対して「よかったって思ってる人がいるよ」ということをちゃんと伝えておきたいっていう気持ちがすごくありますね。

 創作活動するのって大変なことじゃないですか。まあ、見てくれてる人がいなくても続けてる人はもちろんいると思うし、人に意見を言われるのを求めてない人もいっぱいいるとは思うんですけど、なんだろう、自分が見てた作家の人が死んじゃったりとか、最近同じ世代の人とかでも自殺しちゃったりだとかあったので、そういう時に自分も後悔しちゃうから、伝えておきたいなと。

 直接ファンレターとかをそんなに送ってるわけじゃないですけど、本にはさまってる読者ハガキとかはけっこう送ってます、私は。なんかちゃんと反応しておかないと、って。
 自分もラジオでしゃべっててメールが来たらすごくうれしいし、友達に会った時に聞いたら面白かったよって言ってもらうのもうれしくて、それは少なからずモチベーションになってるので、お金を稼ぐかどうかっていうよりは残しておきたいし伝えておきたいなっていうのがありますね。

──反応ってすごくうれしいですよね。

タ うれしいですよね。下手したらお金もらえるよりうれしい時がある(笑)。

届けたい。

──そういうことは自分が発信する側になる前から思ってました?

タ ああ、そうですね……一番最初のファンレター的なものは、私は小学生の時に出してますね。『ダレン・シャン』っていうファンタジー小説がめっちゃ好きだったんですけど、それの翻訳者の人に手紙を書いたことがあります(笑)。小学5年生とかそのくらいかなあ。
※『ダレン・シャン』:同名の作家によるイギリスの児童向けファンタジー小説のシリーズ。

──何か反応はありました?

タ 返事が来て。「翻訳という仕事に興味を持ってくれてありがとうございます」みたいなことを書いてくれて、今思うとすごくすてきな翻訳者さんだったなって思いますね。
 その時はもちろんTwitterとかやってないから、好きで興味を持っていたら親に(書いてみたらと)言われたのかなあ?全然覚えてないですけど、謎の熱意だけで手紙を書きました(笑)。

──返事をもらえたってすごいですね。

タ それがうれしかったのが(自分の中で)けっこう大きかった気がしますね。いわゆるファンレターって送って大体終わりだと思うけど、そうじゃなかったのが。作家じゃなくて翻訳の人に送る人があんまりいなかったのかもしれないですけどね(笑)。
 学校の授業で英語を習い始めた頃だったと思うので外国のカルチャーに興味はあって、返事の内容からすると一応ちゃんとしたファンレターを書けたのではないかと思うんですけど(笑)。何を書いたのかは覚えてないですけど。

──大人になったたりんさんご自身も翻訳に関わっていますね。

タ 私は全然そんなレベルまでいけてないですけど、なんかやっぱり、翻訳者さんってすごいなって思います。
 翻訳者一人の仕事によってその世界に触れられる人が格段に増えるわけじゃないですか。それがすごく胸熱だなと思っていますね。上映会とかも同じような(世界に触れられる人を増やす)活動だと思うんですけど。

──考えてみたらそうですね。海を越えて。

タ 海を越えて。それこそうれしいですよね。こんな、会ったこともない知らない人に届く。(作家が)同世代で生きてたらそれはそれでうれしいし、同世代じゃなくても、自分よりすごい前に生きてた人からも。

 最近『若草物語』の原作を読んでるんですけど、何年も前の人が同じような気持ちになったりしてたんだみたいなことを思うし。いろんな人のおかげで一人が書いた物語が自分のもとに来てるんだって思うと、その事実だけで胸熱ですね(笑)。
※『若草物語』(わかくさものがたり、英: Little Women)は、アメリカの作家ルイーザ・メイ・オルコットによる自伝的小説。1868年から1869年に出版された。(Wikipediaより)

 自分もそういう風になれたらいいなっていうのは思いますね。届ける、何かしらに

 私、本当にとっちらかってはいるんですけど、そこは一貫してるなって自分では思ってます。いいなと思ったものを他の人に届けたいし、作ってくれた人に還元したい、っていうのはありますね、ずっと。

(終わり)

たりん@_f_u_t_o_n_さん Twitterプロフィール
グッドムービークラブ@gdmovieclub として映画上映やラジオ配信しています podcast→ http://anchor.fm/good-movie-club ●三鷹 @HammockMitaka ●福島 @akarikunimi ●日本語・英語・チェコ語 ●本屋さんでバイト。
linktr.ee/_f_u_t_o_n

※インタビュアー田中の発言の前には──が付いています。
※今回はご本人の同意のもと、Twitterユーザー名を記載しています。(普段は匿名、仮名での記事を基本としています。)
※記事のヘッダー画像はたりんさんが撮影されたお写真です。たりんさんのInstagramを見たらすてきな写真ばかりで、お願いして使わせていただきました。

自分の活動の意味を考えながら、様々なアクションを起こされているたりんさん。上のプロフィールからとべるたりんさんの文章その他も、たりんさんの芯とセンスを感じさせてくれ、いろいろなことを教えてくれます。ぜひ見てみてほしいです。

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