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「配信者C あの手この手で元気をうつす」公募インタビュー#41

〈Cさん(仮名) 2022年7月上旬〉

Cさんは「配信者(=ストリーマー)(※)」。Twitchツイッチ(※)という配信サービスを使って、リアルタイムの動画配信を毎日行なっています。Cさんが配信を始めたのは2021年の冬。不調による休職、離婚、退職を経て、「全部なくなった」あとでした。それから半年余り、楽しく配信を続けてきましたが、最近伸び悩んできたとのこと。ここで自分自身を客観的に見直したい、と応募してくださいました。

※(動画)配信者=(オンライン)ストリーマー 動画を使って自分自身をオンラインで配信する者のこと。録画か生放送かは問わない(Cさんは生放送を行なっている)。2010年代初頭、YouTubeのような動画共有サイトに端を発して、ユーザーは自身が作成した動画をネット上にアップロードできるようになり、ストリーミングと呼ばれる文化が誕生。視聴者を多く獲得できれば、収益を手にし、生計を立てることも可能に。動画配信は個性やスキルのある人にとって魅力的な選択肢となっている。(参考:Wikipedia
いわゆるYouTuberと配信者の違いは曖昧だが、今のところ、前者は動画を撮影後編集しアップロードする者、後者は生で配信する者といったイメージが一般に認識されている様子。(インタビュアー田中)

※Twitch(ツイッチ) Twitch Interactive(Amazon.com子会社)が提供するライブストリーミング配信プラットフォーム。ゲームの実況プレイ、ゲーム関連イベントの生放送が中心。配信はアーカイブが残せる仕様で、ライブ放送が終了した後でも視聴可能。(参考:Wikipedia

顔出ししないバーチャル配信者や声だけの配信者もいるが、Cさんは素顔を出して配信している。ゲーム実況、料理実況、歩きながらの旅行実況、リスナー参加型大喜利やクイズなど、様々な企画を日替わりで自宅から配信。
スタート時間は深夜から早朝まで不定、Twitterで情報を随時発信。1回の配信時間は少ない時で3~4時間、多い時は10時間~半日以上。企画によっては24時間に達する日も。

「全部なくなって」始める

──配信を始めたのは昨年(2021年)の12月からだそうですが、きっかけは?

Cさん システムエンジニアとして会社に勤務していたんですけど、昨年10月くらいに体調を崩してしまい、休職することになりました。経済面での不安などもあって、妻を残して自分だけ実家に戻ったんですね。そしていろいろあって、離婚することに。妻は同じ職場だったので、なんやかんやで、自分は離婚とともに会社も辞めるという形になりました。
 もう、全部なくなったみたいな感じで(笑)。

 保険が下りるのもあって、しばらく働かなくてもいられるという状況で、この先どうしようかなあと思った時に「じゃあ、やってみたかった配信をやってみよう」と思ったのがきっかけです。

──ご自身も、それまで他の方の配信を見ていた?

Cさん もともとゲームが好きで、配信者の方もちょこちょこ見てたんですけど、どっちかというとヒカキンさんの実況動画とか、YouTuberさんがゲームしているのを見ていました。
 で、やってみたいなと思ったんですけど、YouTuberって、撮影に3時間、その後編集に10時間かかるとか、想像を絶する大変さなんですよね。それはちょっとやだなと思って(笑)。どうせだったら、編集のいらない生のほうが、自分としては楽かなと思って配信者のほうに行ったんです。

Twitchを選んだ理由

──Twitchツイッチというサービスを選んだのはなぜ?

Cさん 今、配信者と言うと、YouTubeで生配信をする方とか、ふわっちのようなおしゃべりに特化しているサービスで顔を出してリスナーさん(※)とお話しするライバーって言われてる方がいたり、様々なのですが、その中でTwitchはゲーム配信が中心のサービスなんです。Twitchを見に行くとゲームタイトルがずらっと並んでいて、タイトルを選べばそれをやっている配信者さんがリスト表示されるような作りになっています。まず、僕はゲームが好きなのでゲーム実況から入ったということがひとつ。

※リスナー 配信界隈では配信視聴者のことをリスナーと呼ぶことがある。当記事では「リスナー」に統一する。

 また、Twitchは比較的、収益化しやすいんですね。配信において、収益化に当たっては、YouTubeにおけるスーパーチャット(=投げ銭)であるとか、Twitchにおけるサブスクライブ(月ごとの支払いで特定の配信者を応援する)といったようなシステムがあるのですが、実際に収益化できるまでには、チャンネル登録者数や同時接続者数、総再生時間など達するべきラインが設けられています。
 その点がTwitchは他サービスと比べて非常にハードルが低いですし、今後伸びるだろうと思い、Twitchを選びました。

──Cさんは、配信で収益は得られている?

Cさん ありがたいことに、いつも応援してくださるお客様がいらっしゃるおかげで、安定して毎月ひと桁万円ほどはいただいているような感じです。

伸び悩み/Twitchの問題点

──最近伸び悩んでいるとのことですが。

Cさん まず、他の配信サービスが下火になってしまったり、Twitch自体の認知度が上がったりで、今年(2022年)の3月4月くらいからTwitchで配信する人がどんどん増えたんですね。結果、今、供給過多でリスナーが少ない状態になってきちゃっているんです。

 あともうひとつ、問題があるのは、配信者同士でフォローし合って視聴数を増やして大きくなっていこう、といった状態になっていて、村社会的なふくらみ方をしていることです。Twitchは、もちろん全員ではないですが、リスナーが配信者なんですね。 

 要は、配信者も大きいところ(登録者数が多い配信者のチャンネル)でコメントして、爪痕を残して、そこで紹介してもらって、リスナーをこっちに引き込もうっていうような仕組みになっちゃっている。そして、やらしい話、「あ、この配信者さんはあんまり利用価値がないな」と思われると見てもらえなくなるっていうことが起きている。「この配信者さん、面白いのに、なんで人いないんだろう?」っていうことがけっこうあってですね。自分のことを棚に上げるわけじゃないんですけど(笑)、どんどん持ちつ持たれつのもたれ合いみたいな感じになっちゃってて、どうにも難しいなあというところです。

配信一本でいきたい

──これからも、配信者を続けていきたい?

Cさん 配信者は、仕事をしながらやっている方が多いんですが、仲のいい配信者の方と話してると、バリバリ仕事して楽しくて仕方がない、仕事で輝きたいというような人ってあんまりいなくてですね(笑)。配信のほうに生きがいを求めてる人が多くて、「仕事を辞めてTwitchの配信で一本立ちできたらいいですよね」みたいな話をよくしてるんです。
 僕も、大それた夢かなと思いつつ、配信でやっていきたいなというふうに思ってます。

──仕事を持ちながら副業的に配信をされている方が多いんですね。

Cさん みなさん1日何時間も働いて、さらに「残業で遅れます」とかツイートしながら毎日配信されてる方もいるので、自分の今の状況をアドバンテージに感じなきゃいけない、とは思ってるんですけど。本当にバイタリティーがすごいなという人が多いですね。

──Cさんはこの先も、配信一本で生計を立てていきたいと思っているわけですね。

Cさん 就職せずにやっていけるのが来年(2023年)の3月辺りまでなんですが、その話は配信でもしています。「それまでに、諦められないくらいの額を毎月得られるようになりたい」と(笑)。「収益が(今はひと桁だが)10万円くらいに達したら、“配信者は儲からないからやめて就職する”という気には俺はならない。とりあえずそこまで行きたい」という話をしてて。
 2023年の3月4月くらいをデッドラインに、もうちょっとがんばってみようと思っています。

板挟みの苦しさ。もう働きたくない

──配信者一本でやっていきたいのはなぜ?

Cさん えっとですね、正直言うと、もう働きたくないです(笑)。

 (配信を始める前)システムエンジニアとして働いていて、中間管理職的な位置に就いたら、どうしても……上司に詰められつつ部下の思いも汲みとらないといけない、部下を守ってあげたいけど、ウーッ……というせめぎ合いが苦しかったんです。

 システムエンジニアの前は出版社で専門雑誌の編集をやっていて、その時も大体同じような目にあっていましたね。まあたぶん、全サラリーマン共通の悩みだと思うんですけど。

 「人としてやさしすぎる」「非情になれないから苦しいんだよ」と毎回言われます。人とやりとりするのは得意ではあるんですけどね。社会不適合とまでは言わないんですけど、僕にはチームをまとめてどうにかするのは難しいのかなっていうところから体調が悪くなっていったので。「働きたくない」っていうのが一番にあります(笑)。

──組織で働くのはもう勘弁だという気持ちでしょうか。

Cさん そうですね。何かやるとしても、工場などで黙々と、改善点を見つける必要なくラインを流している、みたいなほうが自分には合ってるのかと。組織的に動くことは難しいのかなって自分で思っています。

──人の板挟みになったり難しい判断をすることなく、ひとりで働きたいと。

Cさん 責任を負うのは全然いいんですけど、責任を負ってあげることしかできなくて(笑)。僕は、「ここをこうすれば全部解決するんじゃない?」みたいなアイディアを生み出すタイプの人間ではないし、一緒に悩みを分かち合ってあげることしかできない。上に怒られ怒られ「はい!すいませーん!」って言いながらがんばる、ってことしかできなかったですね。たぶん、何回やってもこの気質は治らないのかなと(笑)。

──会社で働いていた期間は何年くらい?

Cさん 今32歳で、22歳から就職して昨年退職したので、働いていた期間は9年〜10年、とかですかね。

配信の身軽さ/お金の話/アマギフよりまずは

──配信者はCさんに合っている?

Cさん 僕は人前に出るのはそんなに苦じゃないし、企画を考えてすぐ披露できるところがいいと思っています。会社だと企画書を書いても、上司に怒られそうとか恥ずかしいとかでなかなか出せないでいたんですけど、今は「あ、これ面白そう」と思ったら「今からやってみよう」ってすぐ配信を始められる。そういう身軽さも感じています。個人商店を開いたような気分で、すごく楽しいし、やりがいがありますね。

──収入が十分に得られれば、ずっとやっていきたい?

Cさん ずっとやっていきたいです。ただあの、言ってしまえば、(配信者としての収入が)新卒のサラリーマンの給料と同じ20万〜25万円くらいだと、この業界、たぶんつらいだろうと思うんですね。まあ20万得られたらすごく大きいは大きいんですけど、でもたぶん、やらしい話、「もっともっと」とがめつくなるだろうなと思います(笑)。
 いつ収入が途切れるかわからないし、来月は今月よりもっと少ないかもしれないし、保証がない分、先に多くとらないとという心理はあります。

──配信、企画するに当たって、資金は必要?

Cさん 僕の場合、パソコンは家にあったのを使っていますが、ゲーム用のPCってすごくスペックが高いので、30万とか40万とかかける人もいます。あとは何でしょうね、音をよく聞かないと難しいゲームとかもあって、音を良くする機械が2万円、いいイヤホンでが2万円とか、モニターもいいやつ買おうとかゲーム機買おうとかすると、数万円単位で支出がありますね。
 
 企画するに当たっては、自分はあんまりお金をかける方ではないんですけど(笑)、ゲームを買うのに数千円が飛ぶのと、たまに料理企画をやったりすると、その日の食材に数千円とか。ちょこちょこ、ですね。

 「みんなに日頃の感謝を込めて、アマゾンギフト券を抽選で配ります」みたいな人もいて、そういう人は一回で数万円とか使うのかな。

──Cさんはそんなには?

Cさん そういう還元はしてないです(笑)。でも、Twitchでサブスクリプション(毎月一定額の支払いで特定の配信者を応援する)をやると、その配信者専用のスタンプや絵文字みたいなものがチャットで使えるようになるんですが、それは配信者が自分で作るので、僕はそれをちょくちょく変えたりしています。

──Cさんがもしたくさん稼ぐようになったら、リスナーさんにじゃんじゃん還元する?

Cさん リスナーさんから「そういった還元よりも、面白いことを毎日やることが一番。そこがぶれちゃいけないんですよ」と言われたことがありました。「ああ、確かにそうだ」と思って。「毎日面白いことしよう」と、がんばって考えてます。

流行りのゲームはやらない/準備をちゃんと

Cさん みんな、人気のあるゲームをやるんです。例えば、あるオンラインゲームが流行っていると、オンライン対戦するからリスナーさんも同時にやろうという形でそのゲームをやる配信者が多い。僕がフォローしている人もフォロワーも、見ると大体みんな同じゲームをやってるんですよね。

 やっぱり、人気のゲームをやればけっこう人が来てくださるんですけど、それに自分が慣れちゃうと言いますか、「今日もこれをやればいい」「迷ったらとりあえずこれやろう」という感じで始めて、コメントに返しながらだらだらやってて、なんか……んー、それでいいのかなと思っちゃった時があったんで。

 配信者って、やっぱり楽なんですね。配信中だけしゃべってればいいコンテンツなので、編集がないぶん、動画を作るよりよっぽど楽なんです。
 だからこそ配信の前段階を一回一回ちゃんとやらないといけないなって思うようになって、流行りのゲームを安直にやらないようにしています。

 準備の時間をいっぱいとるべきだし、常に考えてる人だけが面白いものを生み出せると思っています。

 昨日も、配信者がみんな同じゲームをやってる中で、クイズをやっていました。オンラインゲームでもゲームソフトでもない、自分で作ったクイズをリスナーさんに見せて。
 あと、リスナーさんとできそうだなと思って、ボードゲームとかカードゲームを昨日買ってきたところです。

 そういうのをやったり、同じゲームをやるにしても、目隠ししてやるとか(笑)、音だけ聞いてやるとか、趣向を変えてやろうと思っています。

 みんなと同じようにやっても、「それやるなら今一番人気がある人の配信を見てればいいよね」って思っちゃうし、自分も飽きちゃうし、僕よりうまいゲーマーの人はいっぱいいるので、そういう人たちには勝てない。ひと味違う、あの手この手でやっていこうと。

 失敗したらやめればいいし、面白いと言ってもらえれば続ければいいし。そう思ってやってます。

変なことやっていい/企画したら即実現

──Cさんはオリジナリティーを大切にされているんですね。

Cさん 今のコンテンツって、どうしてもテレビ番組とか、使い古されたものを組み替えて生み出されてると思うので、自分も完全にオリジナルのものを編み出したとは思わないんですけど、温故知新みたいな部分もうまく使って、安易に「流行ってるからやる」にはならないようにしたいなとは思ってます。

──Cさんなりの配信のしかたで、視聴者に何か影響を与えたい?

Cさん そこまで大それたことができるかわからないですけど、(配信は)自分なりの、自分の良さやアイデアを出す場だということ、「こんな変なことをやってもいいんだ」っていうのを見せられたらいいなと思ってます。

──そういったことは、配信者を始めてから考えた?

Cさん 例えば、学生時代、一時期パチンコにはまったり、もともとゲームも好きだったりしたんですけど、やりながら「俺が作るならどう作るかな」ということを考えることが多かったです。昔から、自分で作りたくなっちゃうことが多くて。自分なりにものを考えるのはけっこう好きだったりしますね。

 本も好きで、本を書いてみたいなと思ったので(最初の就職で)出版社に入ったようなところがありますし、システムエンジニアになったのも、アプローチはどちらもものづくりをしたいというところからでした。

 ですが、憧れを持って出版社に入ってみたら「あ、僕は“てにをは”を見て添削したり、言葉の意味とか調べる人なんだな」と。オリジナリティーを出せるのは、表紙のデザインについてデザイン会社とやりとりする時くらいのもので。あんまり自分で作るものはなかったですね。

 エンジニアは、それに比べれば、こういうものを作りたいと思ったら作れる環境ではあるんですけど、やっぱり「こういうものを作ってほしい」というオーダーがあるお仕事が先なんで、何か作ろうっていう考えを持てるのは、どうやったらこの機能を作れるかなーと考えてる時くらいですかね。

 やっぱり、組織にいる時は、オリジナルのものを作る機会は少なかったかもしれません。

 今は、自分で企画したら即実現できるので、今日も何か新しいことできないかな、明日も何か新しいことできないかなと考えています。

 思いつくのは楽しいです。そこから準備するのはすごくめんどくさいですけど(笑)。

「朝までこれ正解」

──流行りのゲーム以外の企画をやるようになって、手応えはありますか?

Cさん 昔TBSでやっていた『リンカーン(※)』というお笑い番組に「朝までそれ正解(※)」っていう討論ゲームのコーナーがあって、それをずっとやりたいなと思っていたんですね。お題に対して、適したものはこれだろうとそれぞれが回答して、その答えについてみんなで話し合って最適な答え=正解を決めるというゲームです。

 その1週間くらい前までは毎日ゲームを大体6〜7時間やってたんですけど、ある日「朝までそれ正解」をやってみたら、僕のリスナーさん、(同時接続の方が)今10人くらいなんですけど、みんな夢中になって「眠れない」って言ってずーっと回答してくれて。平日の夜だったんですけど、深夜12時くらいから始めて、朝の4時5時くらいになっちゃって。「みんな死ぬからやめよう」って言って、やっとやめたんです(笑)。

 その時、ああ、みんな、知的好奇心というか、コメントで面白くしてやろうっていう気概があるんだなと。そこから、お題を出してリスナーさんに答えてもらうようなものがいいのかなと思いました。

──大喜利みたいな感じですか?

Cさん 大喜利に近いですね。真面目に回答してもいいし、ボケてもいいのですが。大体、自分がふざけて、オチを担当するんですけど(笑)。

※リンカーン TBS系列にて2005年から2013年まで放送されていたお笑いバラエティ番組。主な出演者:ダウンタウン、さまぁ〜ず、雨上がり決死隊、キャイ〜ン(参考:Wikipedia)

※激論!朝までそれ正解! リンカーンの企画である。「朝まで生テレビ!」のパロディのセットで、参加者がある議題に対する「正解だと思う」回答を提示。全員が一番納得した回答を「それが正解」と決める。
お題は「○で始まる●●なもの(こと)は?」といった形式で出題される。例)「ま」で始まる美味しい食べ物は?(引用:ニコニコ大百科

もらったコメントは全部拾う

──リスナーさんとコミュニケーションをとりながら、オチもつけて、ってすごく難しそうですが、その場を回す手腕には自信がある?

Cさん どうなんでしょう、まったく自信がないんですけど……ま、うまいこといってるのかなあって(笑)。

 コメント欄は本当に文字だけの世界なので、自分がやんなきゃと思って、全員につっこんだ上で、最後ボケよう、というフローを考えて(笑)やってはいますね。

──リスナーさんからの反応は、文字のコメントが来るという形ですね。

Cさん はい。自分もフリップを用意して、自分の答えをダン!って出すんですけど、生配信なんで、反応があるまでどうしてもラグがあるんですよ。それに笑い声がちょくですぐ聞こえてくるわけでもないので、(ねらった笑いが)当たったか当たってないか反応を見るまで2〜3秒かかります。「大丈夫かな」って思いながら毎回出してるんですけど(笑)、2〜3秒後に「www」「笑笑笑」とか、「?」って来たりします。

 どのリスナーさんも、自分を見てほしい気持ちがあるし、自分のコメントに反応してもらえるとうれしいんですね。だから、配信者さんと一緒にゲームができる参加型の企画って、やるとすごく人が集まります。でも、そのゲーム内でのチャット(音声での会話)に集中しちゃって、文字コメントは見えてるんだけど反応してあげられないみたいなことが多くて、僕はあんまり参加型ゲーム企画が好きじゃなくて。

 じゃあどうすればみんな参加してくれて、活発にコメントしてくれるかなって考えたら、やっぱり文字で企画に参加できるようにしたら面白いんじゃないかなと思って、「朝までそれ正解」をやってみようと思ったんです。
 なので、自分はコメントで一緒に楽しむことを心がけてます

──もらったコメントには反応する?

Cさん コメントは全部拾います。参加者が増えた時に読み切れるのかはちょっと不安なんですけど、今のところは参加者数がそんなに多くはないんで(笑)。

 コメントが来たらコメントを読み上げて「いやそれはどうなの?」とか「あ、それ正解だわ!」とか言って、やっています。

本当に面白いことを伝えるには

──コメントに全部返すのは、リスナーさんを喜ばせたいから? 

Cさん ひとつは「楽しませたい」のもあるし、もうひとつ「嘘の反応はしないようにしよう」と思ってやっているので。
 「本当に面白いから笑っている」状態でありたいので、面白いものに「面白い」と言いたい。微妙な回答には「うーん」ってやりたい(笑)。
 そのほうがたぶん……一緒に楽しめるのかなあと思うので、それぞれに正直に反応しようっていうのを心がけています。

 あと、コメントせずにずっと見てくれてる、いわゆる「ROMロムる」っていう状態の方、なかなか入りづらくて声をかけられない初見の方とかもたぶんいらっしゃるので、なんか面白いことでにぎわってるところを見てもらえたらなって思います。本当に面白いものは「面白い!」って騒いで、「こういう楽しいことやってますよ」っていうのが伝わるといいなと。

元気がうつるように

──他にも、配信者としてこうしたい、こうありたいと思っていることがあれば。

Cさん 月並みなんですけど、やっぱり「元気づけたい」というのは絶対ありますね。
 自分もいろいろ失ってどん底から始めたけど、「先のことはあんまり心配しないで、楽しく生きてるよ」っていうのを見せたいし、例えば寝る前に自分の配信に来てくれた人が「配信つまんないな」と思って寝ても嫌だし(笑)
 自分が一番楽しんでて自分が一番元気な姿であることで、見る人も元気な気持ちで見てくれて1日が終わる、あるいは1日が始まる状況になればいいなと思ってて

 まあ、お金ほしいなとか、いろんなこともあるんですけど(笑)、「見てると元気になる」とか「楽しみにしてます」とか言ってもらえるとうれしいので、見てくれた人に元気がうつるように、まずは自分が元気にやる。始めた当初から、そう思ってずっとやってます。

 Twitchの配信者が増えて、自分の配信を見てくれる人が減ったり、後から新規で始めた人のフォロワーがどんどん増えて伸びていったりした時に、けっこう気分が滅入っちゃって。一度、悪口未遂みたいなことをぐちぐちとずっとしゃべる配信をしたことがあるんです(笑)。普段見てくれてたファンの人も、その配信は途中でいなくなっちゃったりして、もやもやしたまま寝ました。
 で、次の日、新しく買ったゲームをプレイする配信をやったんですね。面白いゲームだったし、自分の中でもそこそこ面白くできたなと思っていたら、配信後、ファンの人から「昨日とは見違えるような、人が違ったような配信でした。面白かったです」ってメッセージをもらいました。「ああ、そっか……」と思って。
 元気のない姿とか、負のオーラを発してやっている姿とか、誰もそんなの見たくない。見せちゃいけないなと。同情を買うみたいな手法もあるにはあるだろうけど、自分はやっちゃいけないなと。そういうことは今後やめようと(笑)思いました。

スイッチが入らない時は待つ。無理はしない

──Cさんは毎日配信されているとのことですが、当然、さっきおっしゃったような元気のない時もありますよね。そんな時はどうする?

Cさん 割と「配信したくないな」っていう日はないんですけど、どうにもテンションが上がってこない時っていうのはあって、その時はTwitterに「ちょっと遅れます」と書いて(笑)、何か(テンションが上がるような)面白いことないかなと思いながら、だらだら動画を見たりして。遅れる時は2〜3時間遅れたり、そのうちそのまま寝ちゃって、翌朝になったりして(笑)。
 気分が乗らない時は……やらないこともありますね。やらなきゃとは思うんですけど、スイッチが入らない時はあります。

──無理やりやるよりは、元気がある時にやろうと。

Cさん 僕、見栄えを良くしたいなと思って(笑)、最近ダイエットしててですね。昔の配信を見るとすんごい太ってるのがわかるんですけど(笑)。なので、まず運動して、シャワーを浴びて、ちょっと(機材を)セットしてから配信を始めるんです。
 その過程で大体「よしっ」とスイッチが入って配信者用の顔になるんですけど、どうしても「うーん」ってなってしまう時は数回ありましたね。

配信者としてうれしい時は/funとinteresting

──配信者としての喜びを感じるのは、リスナーさんから「楽しかったよ」とか「楽しみにしてる」といった言葉が来た時?

Cさん 「面白かったよ」って言ってもらえるのはもちろんうれしいんですけど、例えばゲーム企画で、みんなも自分もゲームに入り込んで一緒にやっていって、クリアして終わって「あ、今日はうまくいったな」って思った時が一番うれしいかもしれない。もちろんそれは、みんなが楽しんでくれてる結果だと思ってるんですけど。最終的にはやっぱり自己満足かもしれないです。

 配信前は、いろいろ準備する中で、「こういうジャンルのゲームだと大体こういう展開になって、ここにおふざけ要素があって、ここでこう楽しめるかな」みたいなことを、若干シナリオを組み立てつつ考えてるんです。その通りうまくいくことってほぼないんですけども(笑)、たまに、「やっぱりこういう展開で来るんだ!」っていうのが当たると、どんどん乗ってくるんですよね。「次はこう来るだろう、じゃあここでこれを言おう」とか、準備してなくてもひらめくことがあって、それが決まった時「ああうまくいったな」と(笑)。たまにそういうことがありますね。

──リスナーさんからの反応もうれしいけど、自分で自分を評価して「よかった」と思えた時ですね。

Cさん そうですね、リスナーさんの反応って予想できないので、笑うのかつっこむのかくらいのボヤッとした反応を構えてるくらいなんですけど、自分で自分の反応がうまくいった時「あ、いい感じだな」と思うことがあります(笑)。

──その自分の反応が、リスナーさんに特にウケていなくても、それはOK?

Cさん ウケなくても? それはどうだろう……難しい(笑)。十中八九笑ってもらえるんですけど、たまにすべるというか「あ、あれっ?」という時もあって。そういう時も「いや、俺の中ではいいボケができた」と思うことにして、今後も使おうってなりますね(笑)。

──リスナーさんに対しては「笑わせたい」っていうのが一番大きい?

Cさん どうですかね……笑わせるのがいいのかどうか……難しいですね……

──笑いなしでみんな真剣に見てるっていう状態もいいんですかね。

Cさん 自分は三枚目のキャラなので、笑わせることに比重を置いてますけど、“fun”だけじゃなくて“interesting”になる時もあったらいいかなって。「ああこのゲーム、この仕掛けしてるんだ」「キャラクターがこういうところで感動してるんだ」みたいな、そういう面白さもあったらいいなと思ってやってるんですけど。
 でも、ま、9割笑わせようとしてますね(笑)。

数字のジレンマ

──配信を始めて、嫌なことやつらかったことは?

Cさん さっき言ったように、(配信者同士、配信者とリスナーのつながりが)村社会的になっているので、ファンを作るとなると、ちょっと宗教チックなコミュニティが作られちゃうんですよ。(配信者とファンが、あるいは配信者同士が)プライベートでも仲良くしようとか、ガッチガチに近づいていこうみたいな傾向があって、……そういうのはちょっと違うかなと思っています。
 自分は、「今日の配信が面白いかどうか」でしかないと思ってるんですよ。なので、身近な人と会うとかそういうことはしたくない。

 まあ、距離を縮めてやろうとしてる配信者さんもけっこういて、色仕掛けとまではいかないのかもしれないですが、けっこう密に連絡とったりする人とかもいたり。逆に「あの人は変なことして人気稼いでる」とか風評被害をばら撒こうとする人もいたり。そういう人間的な、嫌な部分を見せつけられたりすることもけっこうあって、それはちょっとやだなーと思ってるのと……

 あとは自分ごとなんですけど、やっぱり数字的な実績は響きやすいということで、例えばみんな「何ヶ月で何千人のフォロワーができました」とか「何万円収益ありました」とか、数字を見せて宣伝するわけです。
 いいとは思うんですけど、僕は「じゃあその配信者って面白いのかな?」「面白さって数値になるのかな」って思ってしまう。やっかみもあるんですけど(笑)。
 「数字を作んなきゃいけない」と思う自分と、「数字にこだわるなよ」と思う自分がいます。そういうところでジレンマになるのもちょっと嫌だったりして、たまに自己嫌悪に陥って「うーん」となる時もあります。

 その二つが嫌なことですかね。

──Cさんは、宣伝に数字は出していない?

Cさん 出したいんですけど、出せる数字がなくてですね(笑)。僕、今、Twitchで400人弱くらいフォロワーさんがいるんですけど、早い人だと同じ期間で1000人いる配信者もいるし、僕が今同時接続10人くらいなんですけど、2ヶ月で70〜80人、100人とかいっちゃう人もいるし、そうなると(自分の数字は)実績として出せるのか?と。

 自分が出せるとしたら、配信時間ですかね。(2022年)2月の配信は330時間だったので、1日11〜12時間やった計算になります(笑)。
 あとはまあ、フォロワー数の規模の割にいただいている収益はいい数字なんですけど、お金の面はちょっと詐欺チックにもなる感じがするので、出したくないし。
 だから数字をどうにかしなきゃというのはずっと悩みというか、結局考えるのが嫌になるくらいですね(笑)。

届くまでの遠い道のり

──フォロワーさんやファンを増やす施策は?

Cさん 自分で面白かったなっていう部分を切り抜いた動画をYouTubeやTikTokにアップしたり、同じゲームの配信が続く中で自分だけ毛色を変えて、ちょっとずつニッチを広げようとしていますね。

 フォロワーを増やすには、ファンを作るにはというようなことを書いた自己啓発本みたいなものを読んだりもしてるんですけど(笑)、やっぱり「数字の実績を書きましょう」が出てきて、ああやっぱそうだよなあ……と(笑)。

 なかなかわかりやすい宣伝というのができないでいます。やっぱり、配信を見に来てもらわないと伝えられないものが自分の中にありますね。

──今日お話をお聞きしていて、実際に配信を見たらファンになる人は多いんじゃないかと思いました。

Cさん そうですか、ありがとうございます(笑)。

──でも、見に来てもらうまでが難しいんでしょうね。

Cさん そうですね。例えばYouTubeで動画を見てもらった時、コメント欄に貼ってあるTwitchのリンクをタップしてもらっても、Twitchに入ってない人は「アプリをダウンロードしてください」みたいのが出て、それを越えた先に自分のページがあって、で「フォローする」がある。そこまで行ったとしても、その時まだ配信してない状況だったりする。そうなると、なかなかユーザーさんに届かないと思うんですよね。

 他媒体で人を得るのはなかなか難しいですね。宣伝となると、Twitterが一番近いかなっていうところですね。

呼んでくれた友人、そしてひとり暮らし

──今もご実家から配信を?

Cさん 配信を始めた時は実家にいたのですが、深夜しか配信ができないけれど、家族が寝ているのであまり声を出せないという状況でした。その時、ひとり暮らしをしていた友達が「部屋空いてるから来なよ」「俺はほとんどいないし、夜騒いでいいよ」と言ってくれて、奇妙な同棲生活が始まってですね(笑)。
 でも半年しないうちに友達が「俺引っ越すわ。どうする?」と。「じゃあ俺このまま住むわ」って言って、あっという間に結局ひとり暮らしになりました(笑)。

 友達と住んでいた時は家賃と光熱費は大体折半で、僕がお金ないのを知ってるので、友達が少し多めに負担してくれていました。今はひとりですが、もともと土地が余っているような場所で家賃は安いので、まあなんとか。
 その増えたぶんをどうにか配信でまかないたいです(笑)。

──今のお住まいは、配信にはいい環境?

Cさん 集合住宅なんですけど、隣は空き部屋だし、すぐ外は公園だし、夜でも声を出せる環境にあって、すごくいいですね。

──ひとり暮らしということは、配信しつつ、家事も全部ひとりでやるわけですね。

Cさん はい、あのー、このうちには洗濯機がなくてですね(笑)。

──あら。わあ。

Cさん 同居してた友達はどうしてたんだよと思って聞いたら(笑)、実家がまあまあ近いから、ためておいて、実家に帰って洗濯してたらしいです。僕もそれにならって、週一くらいで、洗濯しに実家に帰ってます(笑)。

 料理は苦手で、自炊は本当にやらないです。だからむしろ、料理配信をたまにやります。リスナーさんに「危ないよ!」「燃えるよ!」みたいなコメントをもらいながら(笑)。

──そのしっちゃかめっちゃかぶりを楽しむんですね(笑)。

Cさん (笑) ああ俺料理下手で良かったーと思ってます(笑)。

すぐに人気者になれるかなと思っていたけど

──配信者をやってみて意外だったことは?

Cさん 正直言うと、過信みたいなものはあって。
 学生時代、よく「Cは居心地がいいから、人が集まってくるんだよ」「Cの周りにはずっと友達がいるね」とか言われたし、社会人になってからも「人当たりがいいから人が集まる」と言われていて、自分でもそういう才能があるのかなと思う部分があったんです。

 でも、配信者をやってみたら、自分って思ったよりも人を集められないんだなっていうのを思い知りました(笑)。

 ドーンって伸びて、すぐ人気者になれるんじゃないかと淡い期待を抱いて始めたものの、さっきも言ったようにうまく宣伝ができないというか、「僕、こんなにすごいんです」というセルフプロデュースができなくて。「や、すいません、面白いかもしれない配信なんでよかったら見てもらえませんかね」くらいのアプローチしかできない(笑)
 やっぱり自信満々の人のほうがすぐに人も集まるし。始めてみて自分のできなさを痛感してますね(笑)。
 その理想と現実のギャップはありました。

 あとは、村社会的だったり宗教的になってしまうこと、人の悪口を言ったりすることは、やっぱりどこのコミュニティでも発生するんだなと、想像通りだった反面、残念ではありましたね。

アンチ歓迎

──悪口とか過剰なクレームなどを書き込んでくるような人はいない?

Cさん ああ、いないんで、それがちょっと残念で。アンチができてこそ、と思っているところがあって(笑)。むしろどんどん来てほしいくらいの感覚ではいるんです。
 まあ、実際きたらへこむと思うんですけど(笑)。

──裾野が広がるとアンチも増えるって言いますもんね。

Cさん そうなんですよ。そこをひとつのバロメーターにしてるんですけど、まーだ認知が低いなって(笑)。

やってみてほしい、来てみてほしい

──言っておきたいことなど、何かありますか?

Cさん コロナ禍でみんなライフスタイルが変わって、テレワークになった人も多いし、そもそもオフィスはいらないんじゃないかみたいな議論も出たり、下手すると会社っていう組織自体どうなの?みたいなことを言われてる記事も見ます。

 僕みたいに、ひとり配信とかYouTubeとかすぐに始められる時代になってきて、みんなそれぞれ険しい道だけど、以前の僕と同じように「会社つらいな」って思ってる人がいるなら、何かそういうのやってみてほしいなって思います。絶対面白い人っているので、その人を見てみたいし。

 あと、テレワーク中に配信見ながら仕事してる人がけっこういらっしゃってですね(笑)。これからも、全然ゲームに興味がないという人でも楽しめるようなものを作りたいので、暇だなとか、BGMがわりにしたいなっていう人がいらっしゃったら来てほしいです。だから、Twitchなど配信の世界があるっていうことが、ちょっとでも広まったらいいなあと思ってます。

(終わり)


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