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オンラインが、私の通訳に役立った?!【後編】

見えないからこそ「聴く」

音声の重要性に気づくことができたのは、英語から日本語への通訳における試行錯誤のおかげです。

例えば、感謝やねぎらいの言葉が発せられた時、それだけで終わるのか、実はその後に「でも、もう少し頑張って欲しいんだよ」といった厳しい言葉が続くのか、ということが予測できません。対面であれば、第一声の表情や目配せで、その後の展開を予測できる可能性は高くなりますが、声だけだと先読みできるほどの情報が掴めません。

日本語の場合も同じですが、こちらも日本語話者である分、ハードルはそこまで高くはありません。しかし初対面の英語話者の微妙なニュアンスや声色は、なかなか厳しいものがあります。もちろん電話会議の通訳のような、言語情報のみのものに比べると、少しでも顔が見えるWeb会議はかなり通訳しやすく感じます。

オーバーなくらいがちょうどいい

Web会議の普及は一巡しているのか、この後も増え続けるのかは分かりませんが、どのような通訳が望ましいのかという模索はしばらく続くでしょう。最適解にたどり着くのはまだ先になりそうですが、今のところは、これいいなと感じたことは、取り入れてみるようにしています。

例えば、通信回線を通した声はやや冷たく無機質に聞こえてしまうので、心持ちゆっくり発声する。メモを取っている間も、聴いていると分かっていただけるように、時々うなずいてみる。対面の場合よりも、少しおおげさなくらいで丁度良い気がします。

こちらの姿勢がクライアントの安心感につながれば、全体の雰囲気が和み、こちらも通訳に専念しやすくなる気がします。いずれにしてもオンラインだからこそ、より血の通った人間的な対応が求められているというところでしょうか。

結果オーライ、オンライン通訳

コロナ禍で通訳もオンラインに移行した当初は、居心地の悪さを感じることもありました。しかしオンラインだからこその通訳が求められるようになったことで、大切にしなくてはならないものを再確認し、初心に戻ることができたような気がします。


執筆者:川井 円(かわい まどか)
インターグループの専属通訳者として、スポーツ関連の通訳から政府間会合まで、幅広い分野の通訳現場で活躍。
意外にも、学生時代に好きだった教科は英語ではなく国語。今は英語力だけでなく、持ち前の国語力で質の高い通訳に定評がある。趣味は読書と国内旅行。

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