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チームビルディングを成功させる3つのSTEP ~主体的な行動が生まれる組織づくりの実践事例

こんにちは。株式会社インソース、メディアグループです。

本記事は、インソースのとある営業所の所長(最前線を走るプレイングマネージャー)に、現場の経験をもとに執筆してもらったものです。実践エピソードを交えて、「チームビルディング」に取り組んだ研究成果をお伝えします。私たちメディアグループも、この取り組みを読んで、自分たちのチームに多くのことを取り入れました。ぜひご一読いただければ幸いです!

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働き方や価値観が多様化していることや、テクノロジーの進化でビジネスのスピード感が高速化していることなど、社会変化の中で、今多くの職場では何となく息苦しさのある「閉塞感」が蔓延しています。

・雇用形態の違いがお互いに無意識の遠慮を生み、他人行儀の微妙な距離感で常に働いている
・前年比○○%の目標達成や短納期の締切を守るために、自分のことで精一杯になっている
・ITの進化が一人の担当業務範囲を広めた結果、同じ職場にいるのに何の仕事をしているのか互いに知らない

上記に例示したようなシーンは、世の中の大きな流れの中で、今後も広がっていくでしょう。インソースは、これらを打開するカギは「チーム」にあると考えています。企業の取り組み課題の方向性としても、個々人の能力やスキルを開発することだけでなく、組織・チームをいかに機能させるかを重要視して、様々な取り組みをはじめています。

この記事では、実際に存在するインソース営業所の事例をご紹介します。「チームが効果的に機能するには何が必要なのか?」という観点で、実際に半年間、様々なアプローチを試みた実践結果を「営業所エピソード」として交えながら、チームビルディングのヒントをご紹介していきます。なかなか理想通りには上手くいかない部分も含めて、皆さまが組織でチームビルディングを実践する際のお役に立てればと思います。

1.チームビルディングとは

チームビルディングとは、「チームの目的や目標の達成に向かって、各メンバーが主体的に能力や多様性を発揮しながら、一丸となった状態を目指す取り組み」のことです。これはリーダーの責任のもとで進められる、いわばプロジェクトのようなものであり、最終的な成果はリーダーの段取りと戦略的な導きによって大きく左右される、一種のプロジェクトマネジメントだと捉えると分かりやすいと思います。

そのように捉えると見えてくることは、「チームビルディング力」なるものは存在せず、各フェーズやシーンにより発揮すべき能力や取るべき行動が異なるということです。参画するメンバーそれぞれの意識もチームの成果に大きな影響を与える要素ではありますが、最終的にはリーダーの進め方・立ち振る舞いにより結果が決まるという自覚と覚悟を持たなければいけません。

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【営業所エピソード1~プロローグ】
年末を控えた12月中頃に、とある新規出店の営業所が発足することになりました。会社からは新規顧客開拓をすることを期待され、手元の担当顧客はほぼゼロの状態からのスタート。メンバーは、営業所長となるマネージャーと、新卒5年目、4年目、3年目、1年目に半年前に入社した中途採用の計6名で、お互いに顔と名前は一致するものの、どういった考えや性格なのかあまり知らない若手中心のメンバーでした。

「年明け早々に何かしらの結果を出して欲しい」という社内からのプレッシャーを感じる中で、初めて営業所長を任されたリーダーとして、どのようにチームを束ね、今後の方針や取り組んでいくことを示していくべきか悩んでいました。
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2.【STEP①】チームのミッション・ビジョン・バリューを共有する

この章では、チームが何のために存在し・何に向かって・どのように進んでいくのかを明確し、それらをチームに浸透させていくフェーズで必要なことをご紹介します。

(1)ミッション・ビジョン・バリューとは
まずリーダーは、チームの存在意義を示す「ミッション」と、具体的にイメージできるチームが目指す姿である「ビジョン」を考えます。これを考えていくのはリーダーの役割で、メンバーに対してはリーダーとしての意志を伝え、共感を生むメッセージを繰り返し語っていく必要があります。

一方で「バリュー」とはチーム全体で大事にしたい価値観のことで、それが日々の行動規範や判断軸となります。バリューはリーダーがトップダウンで決めるものではなく、メンバー全員が揃って対話を重ねるプロセスを経て、互いが合意し尊重ができるバリューを見出す必要があります。

▼ミッション・ビジョン・バリューの関係性ついて

ミッション・ビジョン・バリューの関係性ついて

(2)シンプルでワクワクするミッションを考える
チームの存在意義をあらわす「ミッション」は、シンプルで覚えやすくワクワクするものを考えることが重要です。妄想とも言えるような高い志の「夢でも見ているのではないの?」と周りから言われるような、でも取り組みがいを感じるミッションは、困難な場面ではチームを勇気づけ、追い風が吹く場面ではチームをより強く突き動かす原動力となります。

人は「何をするのか?」よりも「なぜ行うのか?」に心が動きます。チームの存在意義を考えることは、自分たちがそれを行う理由を示すことであり、どこに向かって進むチームなのかをイメージすることに繋がります。メンバーの心を本当に動かし共感を得るには、リーダー自身が誰よりも腹落ちし、明確な意志を持った状態で、心の底から出てくるリーダー自身の言葉でもって、伝えなければいけません。

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【営業所エピソード2~チームミッション】
12月に新規の営業所を任されることになったとき、チームをどういった方向に進めていくべきか非常に悩みました。色々と上手くいきそうなシナリオを考えてみたものの、理想のストーリーは描けませんでした。グルグルと思考は一周回って至った結論は、シンプルに自分自身の心が最も動くことを、チームのミッションとして掲げた方が上手くいく気がするし、自分も全力で取り組める、ということでした。

~ミッションの方向性~
「まだ誰もやっていない新しいことにトコトン挑戦し、社内に変化のうねりを生み出すこと」

せっかく任された新規営業所。前例にとらわれない自由な発想で、良い影響を周囲に発揮していくために、私たちのチームは存在している。ワクワクするこのミッションを掲げてチームで活動した結果、会社から期待されている新規開拓が達成できれば、WIN-WINになれる、という未来が想像できました。
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(3)チームの「3ヵ月後」のビジョンを描く
ビジョンは具体的にイメージができるチームが目指す姿であり、簡単にいうとチームの目標です。3ヶ月後をゴール地点として、そこまでに実現させたいチャレンジングで具体的な高い目標を考えることをおすすめいたします。3ヵ月後をおすすめする理由は、以下の3点です。

①具体的なイメージがしやすい
1年後や半年後は、漠然としたイメージはできますが、具体的にはイメージがしづらかったりします。ビジョンとは元々「見えないものを見る」という意味で、どうなるかわからない未来の世界を、できるだけ具体的にイメージして見ようとする行為です。

ビジョンが描く世界において、自分がどんな仲間と、どんな仕事をしているのか。日常の中で、どのような対話をし、お客さまや仲間からどういった言葉が返ってくるのか。ビジョンを描くとは、こういった鮮明な映像でイキイキと働く、具体的なイメージを持てることが大切です。

②スピード感がチームにワクワクをもたらす
チャレンジングな高い目標に対する期間の短さは、一気にチーム全体のスピード感を高めます。そして、その「スピード感」はチームにワクワクをもたらし、モチベーションを高めます。「期間が短い」という状況設定は、それだけ濃い「エキサイティングな時間」を実感することができる仕掛けとなります。

③軌道修正をしやすい
半年後には会社やチームの状況も変わっている可能性があります。今の変化が激しい時代には「軌道修正」を前提とした計画を立てることが常識となってきています。

2~3ヵ月限定のプロジェクトチームでない限り、チームが解散するまでの明確な期限が定まっていないことも多いかと思います。そうすると、例えば1年後のビジョンを立てたとしても、途中でメンバーが入れ替わったり、場合によってはリーダー自身が変わる可能性もあります。

また3ヵ月という期間は、ほどよくチームとしての中期的な取り組みの成果を見込める一方で、のんびりしていたらあっという間に過ぎ去ってしまう、ちょうど良い期間設定です。

チームのモチベーションを最も下げるのは、一度掲げた「目標」を取り組み途中で変えることです。その場合は、チームの勢いとモチベーションが下がることは間違いないので、リーダーは、立て直しを図るために大きなエネルギーを割かなければならなくなります。
よって3ヵ月後を見据えたビジョンを掲げ、3ヵ月後に取り組み結果を振り返りながら、軌道修正をするように次の目標設定をしていくサイクルを回すことは、リスクヘッジにも繋がります。

(4)会社の期待や方針のベクトルを意識したビジョンを立てる
チームは元から何かしらの役割や目標を課されて結成されることも多いと思いますが、その場合であっても、チームのビジョンは自分たちで考えた方が良いです。

①ビジョンに経営トップが発信するメッセージやキーワードを盛り込む
会社がチームに期待する成果と、自分たちが成し遂げたいビジョンを上手くリンクさせることができたら、自信をもって取り組むことができ、大きな成果をもたらします。上手くリンクさせるコツは、期初や年初に経営トップが発信するメッセージや、会社の中期経営計画のキーワードをしっかりと理解して、自分たちのビジョンに盛り込む意識を持つことです。それを意識すると、会社全体の上位目標と、自チームの目標が自然とリンクしてきます。

②勇気をもって2階層上の上司までを意識して報告する
チームの3ヵ月後のビジョンとして「チャレンジングな高い目標」を立てられたら、リーダーは上司や経営陣に、ぜひ勇気をもって報告してください。会社全体では、半期や1年間というスパンで経営計画を立てるケースが多いものです。それに対して、会社が期待する水準よりも高い目標を設定して、3ヵ月というスピード感でチームが目指すということに反対する経営者は、まずいないはずです。リーダーとして、チームが活動しやすい環境を整えることは重要な役割です。ぜひ直属の上司だけでなく、2階層上の上司までを意識して報告してください。社内の強い後ろ盾をつくることができたなら、いちいち周りの顔色を伺うことなく、新しいことやチャレンジングなことにも、自信をもって挑戦できるようになります。

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【営業所エピソード3~チームビジョン】
新年を迎えた年初朝礼で、社長からのメッセージが「アゲインストとフォローの風を楽しみながら、全社で新しいことに挑戦する1年にしていこう」でした。このメッセージを聞いたときに、ピンときました。まずは3月までのチームビジョンを、研究所のように失敗を繰り返しながら新しい実験を試み続ける『ラボ』にしていこうと決めました。そのことを社長に話す機会があり、期待と励ましの言葉を直接いただけたことは、それからの自分自身を勇気づけるメッセージになりました。
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(5)ミッションとビジョンを共有する

①キックオフミーティングでベクトル合わせをする
ミッションとビジョンが固まってきたら、キックオフミーティングを行います。リーダーとしての最初の大仕事です。この時間の意義は、チームとしてのミッションやビジョンをリーダーが示して語り、それに対して各メンバーが今その瞬間に感じていることを共有することで、チームとして向かうベクトルを擦り合わせていく時間です。ここで大事なことは、無理矢理にベクトルを合わせにいかないことです。

②ミッションやビジョンは浸透させるものではなく、共感していくもの
メンバーが、このチームとして取り組むことを自分ごとと捉えるためには、「対話」を通して内省する時間が必要な人もいます。示されたミッション・ビジョンに対してどう向き合えば良いか迷っている人に対して、相談に乗るようなイメージです。具体的には、キックオフミーティング後にリーダーとの個別面談などで、率直に感じたことを改めて聞き、リーダーとしての想いを改めて伝えます。ここでのリーダーとメンバーの対話を踏まえて、ミッションとビジョンは、よりメンバーが共鳴するような表現に、じっくりと推敲を重ねていく必要があります。

リーダーとして焦る気持ちは分かりますが、その必要はありません。ミッションやビジョンは浸透させるものではなく、メンバーが共感していくものです。リーダーが示す世界に対してメンバーは自分を投影して、具体的なイメージを膨らませています。一方的に浸透させるのではなく、共につくる・共に発展させる姿勢が重要であることは忘れてはいけません。

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【営業所エピソード4~ミッション・ビジョン共有】
1月のキックオフミーティングでミッションとビジョンを共有したときは、社内の方にファシリテーターとして協力していただき、LEGO®SERIOUS PLAY®(レゴ®シリアスプレイ®。以下、LEGO®)の手法と教材を活用したワークショップ形式で実施しました。このワークショップを通して、<エッセンシャル→エンジン→トップ>という一つのコンセプトが生まれました。意味は、本質を追求するために(エッセンシャル)、良い流れの波を生みだし(エンジン)、社内をリードする姿勢とパフォーマンスを示すことができるチーム(トップ)というものです。チームのミッションとビジョンを端的に表現した一同が満足のいくコンセプトが誕生したことを、今でも覚えています。

▼ワークショップで完成したチームコンセプト

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このシーンで意識したことは、「なぜこのミッションに取り組むべきか?」本人目線でのメリットを明確にしつつ、シンプルで覚えやすく、どの立場から見ても魅力的だと感じるコンセプトにしていくことでした。それが全員のモチベーションを高め、良い結果に繋がり、会社の期待にも応えていくことになると考えていました。
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(6)判断に迷ったら戻ってこれる指針(バリュー)を作る
ミッションとビジョンを共有したら、再度チームでミーティングの場を設けてください。目的は、チーム全体で大事にしたい価値観である「バリュー」づくりです。チーム全員が気持ちよく働く上での重要な指針となります。

各メンバーが、チームで働く上で大事にしていきたいそれぞれの価値観を語ることから始まり、その語られた価値観は優劣を付けられるものではなく、誰一人として無視されるべきではない、全て尊重すべきものとして扱うことが大切です。その際に考慮しなければいけないのは、共通項を見つけ出すことをしてはいけないという点です。共通項を取っ掛かりにバリューにしようとすると、少数派の価値観が無視されてしまう可能性があるからです。これは「共有モデル」という考え方で、全員が大事にしたい価値観を、誰一人として排除せずに、全てを尊重するモデルです。

▼共有モデル

共有モデル.

「共有モデル」の作り方
①自分がこだわること・譲れないことを、ひとつだけ要素として取り出す。
②選んだ要素をお互いに説明しあう。選んだ要素に「名前」をつける。
③全員のこだわりを持ち寄って統合した、ひとつのモデルを作る。
④完成した作品を一貫したストーリーとして、説明する。

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【営業所エピソード5~バリュー】
改めてのミーティングの結果、チームのバリューは「Discovery」となりました(実は、一回では結論に至らず、翌週に持ちこして再度ディスカッションをして、苦労の末に見つけることができたバリューです)。このバリューには、以下の価値観が表されています。

「これまで誰もやっていないことに何かしらの価値があると考え、迷ったときは(大概が困難な方を選ぶことになるが)、新しい発見がありそうな方を選ぶ」

以下の作品(写真)は、チームの6人全員が大事にしていきたい価値観を表現した作品から、一つずつLEGO®のピースを取り出し、一つのフィールドに乗せて完成しています。全体として「Discovery」という一つの意味が表現されていますが、それぞれのピースには一つひとつメンバーの意味が込められています。この価値観を常にホワイトボードに貼りだし、迷ったときや不安なときは、このバリューに立ち返って考えることができる。そんな、良いバリューが生まれたと感じました。

チーム共有モデル

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3.【STEP②】心理的安全性の継続的な醸成

ミッション・ビジョン・バリューがチームで共有できたら、そこからようやくチームとしての活動が本格的に動き始めます。ただし、本当に難しいのはここからです。どうしても日々の忙しさや疲れやイライラすることがメンバーの視野を狭くしてしまい、本記事の冒頭でも述べた『何となく息苦しさのある「閉塞感」が蔓延』した雰囲気にチームが戻っていきます。これは、チーム活動をする上で必ず起こる変化で、正しく対処をしていかないとチームのミッション・ビジョン・バリューは魅力を確実に無くし、求心力を失ってしまいます。そこで、全員の共通認識として、スポットを当てるべきことが「心理的安全性」という存在です。

(1)心理的安全性とは
心理的安全性とは、自身の考えや感情について気兼ねなく発言できるチームの雰囲気を指します。例えば、心理的安全性が高ければ、厳しいフィードバックをお互いにし合えたり、話しづらい事柄に対して目を背けずに話題に挙げられたりします。そのような空気感がある状況では、何かミスをしても、それで周りから非難されたり、上司から評価を下げられたりすることはない、と思えるようになります。また、質問をしたり、意見を求めたり、ミスを認めたり、変だと思われるかもしれないアイデアを提案することへの心理的な抵抗感も少なくなります。

心理的安全性は個人の性格の違いによるものではなく、むしろリーダーが生み出す努力をすべき「職場の特徴」のひとつです。そして勘違いしてはいけないのは、心理的安全性はトップが命令をしてパッと変えられるものではないということです。リーダーの日々の言動や、共に仕事をするメンバーたちの日々の行動とコミュニーケーションによって、結果として生み出される「職場環境の一要素」として、じわじわと醸成されていくものです。

【心理的安全性】
関連のある考えや感情について人々が気兼ねなく発言できる雰囲気。
数々の失敗の多くの根底には対人不安があり、その正体が心理的安全性。 

(2)ピラミッド型組織が与える影響
私たちは生まれつき、とりわけ学校生活を通して、上下関係や立場(ステータス)に極めて敏感になっています。これは成長過程で社会適応するために自然と生まれる変化であり、会社においても、上下関係やピラミッドの中で自分がどこに位置しているか、職場になじむために常に意識をして立ち振る舞いをするものです。そして、グループや部署で役職が低い人は、高い人に比べて、一般的に心理的安全性は低い傾向にあります。

(3)心理的安全性の存在を、チームで正しく理解する
心理的安全性とは、テクニックで変えることが困難な、とらえどころのない空気です。人間関係に影響を与える雰囲気であることは既にご紹介した通りで、リーダーはどのようにして組織における心理的安全性を高められるのか、考えなければいけません。

まず最初に、心理的安全性が組織と個人のパフォーマンス向上にどのような関係があるのかを、チームのメンバーに正確に理解してもらうことから始めましょう。

◆職場での心理的安全がもたらすメリット
①率直に話すことが奨励される
②考えが明晰になる
③意義ある対立が後押しされる
④失敗が緩和される
⑤イノベーションが促される

(4)心理的安全性を高めるリーダーの行動と取り組み例
心理的安全性にもっとも影響を与えるのは、上司やリーダーです。職場を心理的に安全にするには、リーダーが抽象的な言葉や指示、スローガンといったアプローチではなく「具体的な手段」を講じることが必要です。そして、それらの経験の共有を通して育つ「共通の感覚」が心理的安全性であることを正しく理解しないといけません。

◆心理的安全性を高めるリーダーの行動例や態度
・直接話しのできる、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を素直に認める
・自分も間違うということを積極的に開示する
・参加していないメンバーに対して、参加を促す
・失敗は学習する機会であることを強調する

◆心理的安全性を高めるチームの取り組み例
・チームとしての振り返りの時間を確保する~KPT会(おすすめ)
・個人としての振り返りの時間を確保する~1対1面談
・タスク共有MAP(タイマネの優先順位付けのタスク洗い出し)

▼KPT会の様子

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【営業所エピソード6~心理的安全性を高める取り組み】
心理的安全性の高さは、チームが効果的に機能するための前提条件です。基本的にはKPT会も1対1面談も主たる狙いは別にあり、心理的安全性が高まることは大きくは期待していませんでした。ただ、これらの取り組みで対話を重ねた分だけ、徐々にチームの一体感が高まっていく感覚があったことを、後でメンバーから聞いて知りました。

実際にやってみて分かったことは、チームで本気で考え、意見を出し合い、対話を重ね合わせた結果として生まれた「共通言語」は、チーム内に心理的安全性があったことを裏付ける証拠であり、また、じわじわと心理的安全性を高め続けていく「拠り所」になり得る、いわばチームのメンバーしか意味が伝わらない「合言葉」のようなものであったと気がつきました。

◆KPT会で実際に、チームのTRYとして取り組んだ例
・松竹梅提案
・今ココTime
・心の窓ご開帳作戦
・15分チケット
・やばいぞMAP
・#51点ルール
・チームビルディングフェスティバル

これらは、1ヵ月限定でのTRYとして決めたアクション例ですが、今でもチームの共通言語であり、チーム文化になっているものもあります。ここでのポイントは、ミッションを決めるときと同様に、シンプルで覚えやすくワクワクする表現にすることでした。
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4.【STEP③】メンバーに主体性を与える「OODAループ」をチームに浸透させる

冒頭の1章で『チームビルディングとは、「チームの目的や目標の達成に向かって、各メンバーが主体的に能力や多様性を発揮しながら、一丸となった状態を目指す取り組み」のことです』とご説明しました。STEP③では、組織が主体的に動けるようになるために、具体的に何が必要か?ということについて、OODAループのプロセスをヒントに、ご紹介していきます。

(1)OODAループとは

①目的を認識し、現状に合わせた最適な判断を繰り返す「思考プロセス」
OODAループとは、柔軟かつ迅速な意思決定の流れを4つのプロセスに分けてわかりやすく理論化したものです。
このOODAループは、O:Observe(観る)⇒O:Orient(分かる)⇒D:Decide(決める)⇒A:Act(動く)の頭文字をとったもので、もとは米空軍で提唱された行動様式です。

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OODAループは、振り返りと計画に重きを置いたPDCAとは趣旨が異なります。「その瞬間にどういった行動を取ったら良いのか?」を考え、目的を認識し、現状に合わせた最適な判断を繰り返す、人の思考プロセスを言語化したものです。

②OODAループには人に主体性を発揮させるヒントがある
状況の把握をし、何をするか決め、行動に移すという一連の流れは当たり前に見えますが、慌てると観察を怠ったり、判断をせず漫然と行動してしまったり、 意思決定を他者にゆだねたり、場合によっては行動を怠ることもあるかもしれません。戦闘機に乗っている時に何かを欠くのは文字通り命取りになります。OODAループがビジネスで応用されるようになっている背景には、スピード対応するためだけでなく、目的やチームのミッション・ビジョンを意識して、自身の役割と求められている責任を持たせることができる仕掛けの存在があります。そこに、主体性が発揮されるヒントがあります。

(2)判断と行動に結びつく情報を提供する

①部下が主体的に行動できない理由、2つの可能性
「メンバーに権限委譲をしろ!」「上司は部下に仕事をもっと任せろ!」と推奨されるものの「部下が自分で考えない」「メンバーに主体性がイマイチ足りない」といった嘆きが聞こえてくる、上手くいかない現場をよく見かけます。その理由としては、先の「心理的安全性」が悪い影響を与えている可能性がある一方で、自分で考えて判断をするために必要な情報が、メンバーに行き届いていない可能性もあります。

②「判断軸」はリーダーからメンバーに降ろすもの
リーダーの見ている世界と、メンバーの見ている世界は異なり、入ってくる情報にもリーダーが思っている以上に差があるものです。日々の流れの中で自分がキャッチしている情報を、適切なタイミングで適切な形に咀嚼(そしゃく)して、メンバーに情報を下ろせていますか?チームにおけるミッション・ビジョン・バリューが掲げられた上で、どのように行動をしたら良いか考えられない部下がいたら、考えを発展させるための情報がメンバーに足りていない可能性をまずは疑ってみて下さい。そして同時に、その情報に対するリーダーの解釈を「判断軸」としてチームに示す習慣を持たなければいけません。

(3)権限移譲がもたらす成果

①チームの変化を阻害している元凶はリーダー自身である
OODAループの考え方の元では、計画・指示通りに動くチームではなく、目的と目標をチーム全員が理解し、指示を仰ぐばかりではなく自分ができることを考えて行動していく「自律的に機能するチーム」が実現されます。ただし、リーダー自身がそういったチームの変化を阻害する要因になっているケースを見かけるので注意が必要です。具体的には、リーダーがメンバーを信じて仕事を任せることができないケースです。

②メンバーの成長機会をリーダー自身が奪っている
リーダーは、ほとんどがプレイングマネージャーの状態で、自身のタスクは減るどころか増える一方です。そうなると、「いかに速くやるか」ではなく「いかに任せていくか」に発想を変えていくしか解決の道はありません。ただ、優れたリーダーほど責任感が強く、目の前の業務やチャンスに対して、「部下に任せるより、自分がやった方が成果が出る」と思い、任せられないケースが多いものです。「目先の成果」に対する不安があっても、ここで立ち止まって考えて欲しいのは、チームメンバーの成長を止めてしまうということについてです。目的をチームの成長に据えて判断をしないと、一向に仕事を任せることはできません。リーダーは、部下の成長機会を自分が奪っていないか?と常に自問自答しなければいけません。その結果、指示をしなくても自律的に判断・行動ができるメンバーを育てていくことに繋がり、OODAループが機能してきます。

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【営業所エピソード7~OODAループを組織に浸透させる】
インソースでは管理職対象のMTGが毎週月曜の朝にあります。各部署からの情報発信や、経営陣からのメッセージが伝えられます。私は、この情報やメッセージを即チームに共有しています。情報を降ろす際のコツとしては、以下の3点があります。

①必ず文字に残して共有をすること
②発信された情報・事実と、それらに対するコメント・解釈は、誰にでも分かるように記載すること
③ネガティブな情報は、できるだけポジティブに捉えられるような表現で終わらせること

会社としての優先順位や判断軸は刻一刻と変わります。それをチームにタイムリーに降ろすことが重要であり、それらを踏まえて判断する機会は、できるだけ上司が奪わずに、部下に託します。

権限委譲について、改めて認識し直さなければいけないこととして、「任せる」という上司の行動はコントロールできるものの、それを任された部下の成果(結果)はコントロールできないということがあります。短期的な成果よりも、中長期的な成果を期待して、判断する機会を積極的に与え、辛抱強く見守り、成果に対するプロセスに丁寧に光を当ててフィードバックする。実際に自分でOODAループを回させることこそが、部下の判断軸を強化し、次のループの質を高めていくことになります。OODAループを組織に浸透させていく秘訣は、そこにあると実感しました。
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5.【+α】チームリーダーとしてのスタンス

最後に、正解が見えない暗闇の中で、リーダーはチームに光を灯し続けなければいけません。何をすれば良いか分からない中で、数々の失敗や後悔をすることも多い立場ですが、この姿勢さえ守っておけば、チーム運営が楽になる、メンバーがあなたを支えてくれるようになるポイントを3つご紹介いたします。

(1)スーパーマンを演じないで、支えられるリーダーシップを発揮する
リーダーは、チームが目的を達するためには、チーム内で起こる様々な問題を解決しなければいけません。現場で起きている詳細な事実や、業務上の知識、専門性が必要な知識。それら全てを最初から理解しているリーダーは存在しません。

自分が知らないことを、知らないと言える。わからないことを、素直に認めることができる。チーム内で起こっている問題を正しく把握するためには、自分が見えているのは全体のある一部の「狭い世界」であることを認識し、謙虚な姿勢を示す必要があります。自分の威厳や評価を下げないようにという「自尊心」が邪魔をして、リーダーがチームの問題解決を阻害するようなことは避けなければいけません。

そして、時にはメンバーを頼ったり、弱みを見せたりすることが、かえってメンバーの自立性や責任感を高め、チーム全体のパフォーマンスが高まることも知っておく必要があります。

(2)考えに考え抜いた上で、降りてくる「直感」を大事にする
リーダーは、チームの方針や具体的な施策を立てる際に、チームメンバーの意見に耳を傾け、様々な情報を得るために動き回ります。ただし、チームの方針や施策を考える際は、多数決や全員の合意を得る形を目指すと上手くいきません。考えに考え抜いた上で、リーダーは直感を働かせて、今チームに必要な行動を決断しなければいけません。情報を得るために動き回り、ありとあらゆる可能性を考え抜いた上で、降りてくる「直感」は大事にした方が良く、それは「思い付きの勘」とは異なる、覚悟を持った決断に近いものです。優れたリーダーには、そういった意味で、常に決断に向けて考え続けるという役割があります。そして、そういった状態にあると、リーダーとしての迷いも無くなり、溢れてくる自信がチームに伝播していくものです。

(3)常に「なぜ」から始める
リーダーは、一連のチームの営みを、「なぜ(理由・意義)」を付け加えてメンバーに伝える必要があります。時には、会社からの指示がチームに対してネガティブな反応をもたらすこともあると思います。その場合も、それをリーダーは前向きに捉え、自分のチームにどういう意味をもたらし、どう捉えたら良いか?つまりは、「なぜそのように動くべきか」について、リーダー自身の解釈も加え、咀嚼してメンバーに伝える義務があります。 

例えば、前項で直感を働かせて決断をしなければいけない場面があるとお伝えしましたが、その際は周りに理解を促すために、後から論理的な説明を加える必要があります。ただ、ここで必要なことは、わかりやすさだけではなく、説明するその言葉に、リーダー自身の想いがこもっているか、解釈が加わっているかが重要です。丁寧に、取り組む理由や意義を伝えるリーダーの姿勢が、メンバーの共感を生み、チームにおける求心力につながります。

6.まとめ

価値観や働き方の多様さを尊重する流れが、ますます前面に押し出される中で、組織の求心力が急激に失われつつあります。これからの時代に求められるリーダーは、チームビルディングが上手い人です。とりわけ、チームメンバーがイキイキと働き、毎日ワクワクするような職場をプロデュースする力がリーダーには問われてきます。

チームのミッションとビジョンを掲げ、バリューを元に各メンバーが主体的に役割を全うする。その姿勢と取り組み自体が、失われた求心力を職場に取り戻し、モチベーションを高めることにつながります。

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【営業所エピソード~エピローグ】
6月を振り返るKPT会では、リーダーである私はあえて発言を控え、各メンバーにディスカッションの流れを任せてみました。その結果として、7月のTRYは、これまでのチームのオリジナルの取り組みなどを事例化した無料オンラインセミナーを、チームで独自に企画して実施する、という具体的でチャレンジングなアクションに決まりました。これは私の想像をはるかに超えるアイデアで、メンバー全員のモチベーションが一気に高まりました。

「私たちの取り組み、ぜひ色々な人事担当者さまに伝えたい!」
チームとしてのミッションとビジョンを掲げ、『ラボ』的な新しい実験を試み続けてきた結果を、一人でも多くのお客さまに届けたい、というメンバーの想いが、テレアポや訪問、オンライン商談などの営業としての「行動量」につながることとなり、気がつけばメンバー発信の「無料オンラインセミナー企画」が自然と営業拠点としての重要な戦略になっていきました。

チームの次の具体的なアクションやアイデアが、メンバー間でどんどん沸き上がる様子を眺めていて、初めて「主体的な行動がとれるチームに近づいたのかな…」と実感しました。この経験をしたメンバーたちは、このチームでの活動を終えても、次のチームでも良い影響を与える存在になってくれるのだろうな、と頼もしさを覚えました。
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かなり長くなってしまいました!この記事が少しでも皆さまのお役に立てばとても嬉しく思います。記事の中で取り上げたキーワードについて詳しく学べる研修(LEGO®心理的安全性OODA)や、オンラインに対応したチームビルディングワークショップ(ワールドカフェ)なども開発しております。気になる点があれば、お気軽にご連絡ください。

インソースは、より良いチームの構築に向けて、これからも新たな取り組みに挑戦し、進化してまいります!お読みいただきありがとうございました。