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東京で孤立しないために。34歳でシェアハウスに住んだ理由

夜の7時。リモートワークを終え、PCを閉じる。夕飯を買いに行くために外へ出る。家から5分の距離にある牛丼屋で牛丼をテイクアウトし、コンビニでビールを買い、家へ戻る。Netflixでドラマを観ながら、夕飯を食べる。

その日、オンラインの打ち合わせ以外で人と会話をしていないことに気づく。コロナ禍でリモートワークが多くなって以来、平日5日間、誰かと会う予定を入れない限り、人とオフラインで会話しないことが当たり前となっていた。

歳を重ねるにつれ、友人とは疎遠になっていき、定期的に会う人は片手で数えるほどしか残っていなかった。残っている友人も結婚したり、恋人と暮らしていたりで、そう頻繁には会えない。

リモートワークが普及する前から、僕はこの東京でじわじわと孤立していた。コロナ禍になり、オフラインで誰とも話さない毎日が続くと、孤独感が日に日に増していった。

孤独を癒やすためにマッチングアプリで女性と会ってみたりもしたが、長続きする恋人はできなかった。むしろ、マッチングアプリの出会いは関係が悪くなれば、後腐れなく、簡単に縁を切ることができてしまう。その希薄な人間関係は孤独感を加速させた。

限界だった。このままでは、東京に殺される。

34歳、シェアハウスへの引っ越し

僕はいろいろと調べた末、シェアハウスに引っ越すことを決めた。新たな友達作りとコミュニティへの所属、それが都市部での孤立を解決する方法だと考えたからだ。

シェアハウスに住んだことなんて一度もなかったので、かなり躊躇した。一番のネックは年齢だった。30代で馴染めるのだろうか。シェアハウスに住んでいる友達に聞くと、20代が多いらしい。そんなことを聞くと尚更不安になった。

僕が最終的に決めたのは、ソーシャルアパートメントというシェアハウスだった。通常のマンションのような一人部屋がしっかりとある、「一人暮らしとシェアハウスのいいとこ取り」という謳い文句に惹かれた。

内見すると、共有スペースのラウンジはおしゃれで、築数年の新築マンションなのでとても綺麗だった。

案内してくれた運営会社の人に年齢層を聞くと「20代後半が多いですが、30代も比較的多い物件ですよ」と言われ、懸念していた年齢層の問題は払拭された。

その日、共有部のラウンジにいた住人を見渡すと、たしかに落ち着いているように思えた。とても良い雰囲気で、新しい人間関係を築いていける、そう思えた。

シェアハウスに入居して2年が過ぎた今、友人は増え、複数のコミュニティにも所属することができた。2年前には片手で数えるほどしか残っていなかった友人は何十人も増えたし、LINEグループの数は数え切れないほど増えた。

仕事終わりにはシェアハウスの友人たちと夕飯を食べたり飲みに行ったり、定期的にフェスやキャンプなどにも遊びに行くようになった。2年前の僕からすると考えられないほど人と交流している。

シェアハウスで誕生日を祝ってもらったときの写真

シェアハウスに住むという選択をしたことで、東京で孤立し、孤独感に殺されそうな状態から抜け出すことができたのだ。

2年前にこの選択をしていなければ、僕はどうなっていたのだろうか。

東京砂漠で、孤立しないための選択

今、若者の孤独死が増加していると耳にする。気になって調べてみると、TBSがその実態を取材した記事があった。

都内で一人暮らしをする30代の女性は、30歳を超えたとき結婚を諦めた。アパートの隣人の顔すら知らない。仕事は小さな会社を転々としてきて、同僚とは深くは関わらない。

若者の孤独死のニュースを見て、「もしここで死んだら?」と考えるようになった彼女は、LINEの安否確認サービスに加入した。

東京で一人暮らしをする人にとって、孤独死は他人事ではない。この記事で取材されている人たちは、2年前の僕の延長線上にいる。

他人と深い関係性を築かずとも、生きていける時代ではある。人間関係を築くことのハードルも人によって異なる。だが、東京で一人暮らしをしていると、何もせずに放って置けば人間関係は希薄になっていくし、その行き着く先が孤独死だ。

東京砂漠、なんて言われることもあるが、東京を砂漠にするか、オアシスにするかは、結局のところ自分の選択次第なのだ。少なくとも僕はシェアハウスというオアシスを見つけたことで、確実に人生が好転した。

シェアハウスに住む、という選択は僕にとって正しかった。選択によって人生は変わる。実際に東京での孤立・孤独を回避することができた。こんなふうに言うと自己責任論みたいでちょっと嫌だけど、事実だ。

選択肢が無数にあるとかえって何も選べなくなる。エーリッヒ・フロムが『自由からの逃走』で言ったように、自由すぎると人は不自由を求めるようになる。それは真実なのだろう。

それでも、選択肢は多いに越したことはない。そもそも、その選択肢があることすら知らない、ということは不幸だ。

これからの人生でも、運命を左右する大きな選択肢が待ち構えている。転職とか、結婚とか、子どもを作るとか。そのタイミングがきたとき、必死になって選択肢をかき集め、自分の頭で考え、正しい選択をできるような自分でありたい、と思う。

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