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「問い」:アート思考の次は何か ~【図解】4象限マトリクスでわかる思考とモノの流行~

井ノです。

ビジネス界隈におけるアート思考の流行は、まだまだ続きそうですね。ただ忘れてはいけないのは、どんなに画期的で新しいアプローチも大量生産してありふれてしまえば「ちがい」を生み出せなくなり、その価値は次第に薄れていくという原則です。時代の流行りと廃れのサイクルの中では、常に自分の軸を持って次のイノベーションの機会を虎視眈々と見逃さない先見の明が大切だと思います。

ということで今回のテーマは「アート思考の次に流行る思考はなんだろう?」という「問い」です
なんだか授業っぽくなってしまうのですが、先生を演じることで良い学びがあるかもしれないと思いついたのでやってみます。
この「問い」について4象限マトリクスによる図解を用いながら、みんなで考えてみましょう。

1.「4象限マトリクス」ってなに?

◆4象限マトリクス
縦軸と横軸に関連性の薄いジャンルを設定して、その交差する2つの軸によって物事や情報を整理して見える化する図表のこと。

以下が4象限マトリクスの代表例で「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」と呼ばれるマネジメント手法で使われている図表です。一度は見たことがあるかもしれません。

4象限マトリクスはコンサルが好きそうなフレームワークですね。私は全然使ってなかったのですが今回試しに使ってみたら、脳内の抽象的な概念が整理されて具体化される良い感触がありました。
今回はこのような4象限マトリクスを用いて思考や事象について整理して行きたいと思います。

2.「4象限マトリクス」で思考を整理してみよう

まずビジネスで使われる代表的思考について、どんなものがあるか整理してみましょう。わかりやすくするためにシンキングで統一しておきます。

・ロジカルシンキング:顕在的課題の解決を目的とする分析的思考法。

・デザインシンキング:潜在的課題の解決を目的とする共感的思考法。

・アートシンキング:課題や問題がわからない状態で価値の革新を目的とする衝動的で自分起点や触発を手法とする思考法。問題発見に役立つ。

・???シンキング:今回のテーマとなる「問い」。

他にもクリティカルシンキング、システムシンキングなどいろいろありますが、いったんおいておきます。
以下が各シンキングについて4象限マトリクスで図解したものです。

こうして4象限マトリクスで整理してみると「???シンキング」は自分起点で顕在的な思考なのではないかと仮説が立てられるのがわかると思います。
4象限マトリクス君はなかなかできる子のような気がしてきました。

この図に対して「ニュータイプの時代」などの著者である山口周氏が提唱している「時代の変化による価値観のシフト」を付け加えてみたいと思います。

過剰なモノの価値は低下し希少なモノの価値は上昇するという原則がある。

このようなアレンジによって「???シンキング」の実態が見えてきたように思います。創造性や独自性があり、自分起点であり、顕在的であるもの…アートシンキングがさらに流行して大量生産された結果に生まれる新しい思考なのではないかと推測できそうです。

3.「スキ」や「いいね」で価値は測定できるのか

ここまでは思考という抽象的な概念を図によって見える化してきましたが、いったん別の視点で考えてみましょう。現実に存在するモノに焦点をあてて身の回りの流行について整理してみます。

アートや芸術というわかりにくいものを、わかりやすく見える化したものが大衆文化や娯楽であり、研究論文やビジネス書などをわかりやすく要約・解説したものが知的生産コンテンツであると考えました。

例えばNoteにおける「スキ」というのは、よくある「いいね」と同じで共感度の度合いだと思っています。なのでわかりやすくて万人受けするコンテンツの方がたくさんの「スキ」を獲得します。これがアートや芸術のジレンマでもあるのですが、わかりにくくて「スキ」や「いいね」が少ないからと言って価値が無いのかというと、そんなことないでしょう。アーティストの見えない探究プロセスの結果であるアート作品は、万人の理解を越えていることが多く共感することが難しいからです。

個人的は「スキ」の他にも理解できなさや恐れに近い感覚を表す度合い「スゴい!」だとか「わからん!」みたいなものあっても良いのかなと思います。ですが、それはそれでクリエイティブカオスな状態で制御不能になってしまうのでビジネスにおいては無用と判断されるでしょう。
ビジネスの基本目的はお金を稼ぐことなので、「スキ」や「いいね」という人々の共感や万人受けの度合いだけわかってればいいからです。
そんな状況に警鐘を鳴らしているのが「アート思考」な訳ですね。

4.事象を越境する仲介者と仕組みが生み出す価値

現実で身の回りで流行っているモノについていったん整理してみましたが、実際に人気コンテンツやクリエイターにはどんな共通点があるでしょうか。先程の図に追加してみます。

感の良い方はもうお気づきだと思います。
わかりにくいものを、わかりやすくしてくれる仕組みや人物は、人気があり共感しやすく万人受けするということです。

つまり、内なるアイディアを言語化したり映えるという直感的なものをイメージ化して公開する仕組みが人気コンテンツであり、学問や哲学・思考といった難解なものをわかりやすく要約したり解説してくれる人物が人気クリエイターになるのです。

知的生産コンテンツのクリエイターとして代表的なのはメンタリストDaiGoさんが挙げられます。
研究論文という一般の人には難解で手が届かないものを、独自のやり方でわかりやすく解説して有益で鮮度ある情報を提供してくれるから人気があるのだと思います。

とはいえ人気が出てくると皆が真似して「おなじ」に向かって行くので、コンテンツやクリエイターは、いかに差別化して「ちがい」を生み出し独自性を保っていくかが大切です。
ビジネスだけでなく身の回りの流行においてもアート思考によって「ちがい」を生んでいくことが重要である理由がわかって頂けると思います。

5.みんな大好きジョハリの窓

ここまででは4象限マトリクスを使って抽象的な思考と具体的に流行っているモノを整理してきました。
この整理から新しい気付きを得るために抽象的な視点を追加してみたいと思います。
心理学の授業などで一度は目にするジョハリの窓です。

◆ジョハリの窓
「対人関係における気づきのグラフモデル」

・公開の窓:自分にも他人にも分かっている状態。この窓が大きいほど円滑な人間関係やコミュニケーションに繋がる。

・盲点の窓:他人に分かっていて、自分に分かっていない状態。自覚していない部分が他人の誤解を招くことに繋がる。

・秘密の窓:自分に分かっていて、他人に分からない状態。隠し事をしているため人間関係が不自然になる。

・未知の窓:自分も他人もわかっていない状態。隠れた才能や可能性。

なんでジョハリの窓が出てくるんだよとツッコミたくなる人もいるかもしれませんが、冒頭のシンキング整理しているときに、どっかで見たことあるなあと気づいたのです。

見比べてみると共通点に気づくと思います。顕在的は他人が知っているだよなあとか、そのくらいのもので構いません。

ジョハリの窓は心理学でよく活用される自己認識を深め自己開発を促進するためのフレームワークです。公開の窓を広げて行くことで「自分が思っている自分」と「他人から見える自分の姿」のギャップに気づきになったり、人間関係やコミュニケーションが円滑になっていくと言われています。

◆公開の窓を広げる3つのアプロ―チ
・自己開示する
・フィードバックを受ける
・挑戦することで隠れた才能や可能性に気づく

このジョハリの窓と4象限シンキングの共通点を照らし合わせることで、「???シンキング」は何という「問い」に対して答えが見えてくると思います。それは自己開示の結果であり、フィードバックを受けた改善であり、挑戦によって生まれた可能性でもあります。それは言うなればオープンシンキングなのかビジュアルシンキングなのかコンテンツシンキングなのかわかりませんが、目に見える結果を軸にして更に発展させていく思考になるのではないでしょうか。ここで問いに対する正解を出すことに意味はないと思っており、それぞれが自分の中に何か気づきのような小さな芽が生まれていれば幸いです。

6.まとめ

今回は4象限マトリクスを組み合わせてアート思考の次は何かという自分の中に沸き上がった「問い」について検証してみました。
4象限マトリクスを使って思考やモノを整理したら、軸が似ている4象限マトリクス同士を組み合わせて「抽象」×「具象」や「抽象」×「抽象」などいろいろ試しながら、更に考えを発展させていくと良い気づきが得られると思います。

アート思考の浸透した次の時代はどんな世界になるのでしょうね。自分だけのオリジナリティや「ちがい」をもったオンリーワンのたくさんの表現の花が咲いているのかもしれません。
そんな多様性が更に推進された世界では、それぞれが自分の価値観で行動しているため、差別化することにはもはや意味がなくなることでしょう。
ですが全員が自分だけの「ちがい」を追究した結果、良し悪しの判断は難しくなり自分の方が優れているとマウントを取りあったり、自分だけの表現の花を咲かせるために養分や土壌というリソースを奪い合うことになるかもしれません。私はそんな世界は嫌だと思います。
みんな自分だけの「ちがい」を追究しながらも上手に共存するという「おなじ」目的に向かってコラボしたり協力したりして、新しい価値やリソースをどんどん生み出していくような世界が来たら良いなあと思いました。

皆さんもアート思考が流行した次の世界は、いったいどんな世界になるんだろうとイメージしてみて下さい。
そのイメージを膨らませていくことが、もしかしたら先見の明に繋がって、新しい流行を生み出せるような、時代の第一人者になれるかもしれません。

井ノβe太

【参考】この記事の執筆にあたり参考にした著書を以下に張っておきますので、興味のある方はご覧になってみて下さい。

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