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映画鑑賞

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2023年1月の記事一覧

生きることと働くこと。失敗してもやり直せる~映画『チョコレートな人々』~

「失敗しても、温めればまた作り直せる」

映画『チョコレートな人々』(鈴木祐司監督、2022年。以下、本作)で繰り返されるナレーションだ。
タイトルからもわかるとおり、冒頭の言葉はチョコレートに対するものだ。失敗しても温めて溶かせば、また作り直せるし、だから無駄が出ない。
しかし、それは、チョコレートに限らず、人生にも言えることではないか、本作を観ながらそう思った。

本作は、愛知県豊橋市に本店を

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「銀平スカラ座」の物語を川越スカラ座で観る~映画『銀平町シネマブルース』~

私は映画などのモデル・ロケ地を巡る、所謂「聖地巡礼」に興味がない、と以前の拙稿に書いた。
映画『銀平町シネマブルース』(城定秀夫監督、2023年。以下、本作)を川越スカラ座で観るのは、「聖地巡礼」ではない。
スクリーンに映る「銀平スカラ座」は架空の映画館だが、川越スカラ座にほとんど手を加えることなくそのまま使っている。川越スカラ座は本物の映画館であり、そこで映画を観るのは当然の行為だ。だから、「聖

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かつて女子高校生だった全ての大人のために ~韓国映画『子猫をお願い 4Kリマスター版』~ ただの雑記

女子高校生時代の親友関係は、大人になっても続くのか?

こう書き出してみて、韓国映画『子猫をお願い 4Kリマスター版』(チョン・ジェウン監督、2001年オリジナル版公開、2004年同日本公開。以下、本作)の内容とも、私の云いたかったこととも随分乖離があると思ったのだが、整理のつかない感情を考えるきっかけとして、とりあえずここから始めてみる。

日本映画『リンダリンダリンダ』(山下敦弘監督、2005

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映画『とべない風船』

日の出や夕暮れといった特別な時間ではなく、日中、ふとした瞬間に青空を見上げたまま暫し動けなくなるときがある。
あの刹那、何を思っているのか。

映画『とべない風船』(宮川博至監督、2023年。以下、本作)で、紐で結ばれた2つの黄色い風船が青空を漂うラストシーンを観ながら、あの刹那、私は感謝と祈りを捧げているのだと気づいた。
同時に、その感謝と祈りはきっと、誰とか何といった具体的なモノではなく、ただ

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