見出し画像

感動必至のアニメ映画「窓ぎわのトットちゃん」 昭和とAI時代の理想の教育について考えてみた

子どもイノベーター塾の飛田です。

黒柳徹子さんの小学生時代の実体験に基づいた作品「窓際のトットちゃん」がアニメ化された。1981年に発売された本をリメイクしたこの映画は、視聴者の心を引きつけるストーリーと美しいアニメーションが特徴。徹子さんが描く幼い頃の思い出や日常生活の描写は、昭和時代の風景と共に鮮やかに描かれている。彼女が感じた喜びや悲しみ、そして成長していく心情が繊細に表現されており、観る人の心を温かく包み込む。黒柳徹子さんの思い出を込めた感動の物語を、ぜひ観てみてほしい。

私自身も、小学生だったころ、この本を勧められて読んだ記憶がある。
今では800万部以上も売れ、ギネスからも認定されたそうだ。

キーワード:トットちゃん、黒柳徹子、発達障害、オルタナティブスクール、フリースクール、インクルージョン教育、リトミック、校則、探求学習、モンテッソーリ教育、給食費、食育、エンゲージメント、満足度、理想の学校


[以下、ネタバレ要素あります]

「窓際のトットちゃん」とは

第二次世界大戦前から戦争に突入していく時代のトットちゃんこと
黒柳徹子さんの自叙伝である。

現代的な用語で、ストーリーを要約するとこんな感じだ。
(あくまで私の解釈に基づくものです)

トットちゃんは、落ち着きがない、黙っていられない、衝動的に行動する
などの問題行動が目立ち、うちでは面倒をみれませんと言われ、
小学校を退学になってしまう。みんなに「困った子」と言われる、
「発達障害」の児童は受け入れられませんと言われたということだ。

トモエ学園

そこで両親が探した転校先が、トモエ学園という私立の学校。
経営難になった学校を買い取る形で創設されたらしく、
「フリースクール」的な色合いが強い。
生徒数は全校で数十名。学年分けのようなものは見られない。
教室は廃車となった電車の車両、木に手書きをした学校の表札。

「インクルージョン教育」を掲げる教育をモットーとしているようだ。
その象徴として描かれる登場人物が、泰明ちゃん。
小児マヒを患い、本の世界に引きこもりがちだが、
トットちゃんの後押しで、水泳や木登りなど、様々なことに
チャレンジしていくことになる。

不自由な足で、どうやって木に登るか?
唯一の答えはない。
失敗し、そこから次のアイディアを考え、また挑戦する。
そのような「探求学習」の要素は、遊びの中に組み込まれている。

それでありながら、「安全性」は確保されている。
ある日、学校内のみんなで相撲を取っていた時、
泰明ちゃんも挑戦したいと言い出した。
その時は、校長先生が危険だからとすかさず介入。
ケガの危険性がないようにルールを変えて、腕相撲大会にしたのだった。

授業にも縛りが少ない。
生徒たちが、与えられた選択肢の中から、好きなものを選ぶ。
そして、自分のペースで学ぶのだ。
ある児童がオルガンを弾いているとなりで、別の児童は計算ドリルをするといった具合だ。
ここからは、「モンテッソーリ教育」のメソッドを取り入れているのではないかと推察される

音楽の時間は、「リトミック」を取り入れている。
小林校長はリトミックの研究家としても知られている人物である。
おそらくは、落ち着いて授業を受けられないトットちゃんのような
特性を持つ子どもにとっては、体を動かしながらのリズム学習や、
体操、造形などの学び方はあっていたのであろう。

トモエ学園には、「校則」らしいものもないらしい。
トイレに財布をおとしてしまうトットちゃんが、肥溜めをさらって
財布を探そうとする場面がある。
おそらく、とんでもない悪臭がして、迷惑だったことだろう。
でも、校長先生は「ちゃんと戻しておくんだよ」と一言。
自分でやると決めたことであれば、自由にやらせる。
それをちゃんとやりきってくれるという信頼もある。

「食育」にも特徴がある。
お弁当には、海のものと、山のものを持ってくるルールがあるらしい。
家庭によっては十分におかずを持ってこられない子もいる。
そうすると、学校が用意したおかずが配給される仕組みになっている。
現代でも「給食費未納」の問題があるが、子どもたちがそんなことを
気にしないで良い形で運営されている。

このように「社会的弱者」のケアは徹底されている。
前述の、小児マヒで外遊びができず、本ばかり読んでいた泰明ちゃんだが、全部の本を読みつくしてしまう。
そんな彼のために、空の電車の車両をもう1台譲り受け、学校に図書室を
作る。

そんなトモエ学園に通う生徒の満足度(エンゲージメント)は極めて高い。
ある日、近隣の小学校に通う子供たちが、「トモエ学園、ボロ学校♪」と
はやし立てに来るシーンがある。
しかし、トットちゃんを先頭に「トモエ学園、いい学校。
来てみてホントにいい学校」と歌い返す。
それに反論できない、近隣の悪ガキどもは退散していく。
心からの居場所を作っているのが、トモエ学園なのだ。

まさに、小林校長先生が考える理想の学校への思いが反映されたものなのだろう。調べてみると、トモエ学園は1937年に設立され、その後始まった
第二次世界大戦のために生徒が疎開することになり、学校も一時閉鎖。
その後の東京大空襲で学校は1945年に焼失してしまう。
つまり学校は8年間しか存在しなかったということ。
燃え盛る校舎をみながら、「今度はどんな学校をつくろうか」とつぶやく
小林校長の言葉からは、理想の実現は道半ばだったことがうかがえる。

家庭教育

他にも命について考えさせられるシーン、両親の思想が子どもの発育に与える影響など見どころは多い。涙なしには見ることができない作品である。

両親の影響も、トットちゃんの生育には大きな影響があったことだろう。
第二次世界大戦がはじまり、オーケストラでバイオリンを弾いていたトットちゃんの父親は、失業状態となる。食べ物を買うにも困る有様であったある日、軍歌の演奏者としての仕事が舞い込む。
しかし、父は自分のバイオリンは、戦争を賛美するためのものではないと考え、自らの信念を貫くために、その仕事を断る。
強烈な同調圧力があったであろう戦時で、このような行動をとれることは、両親もまた、よく考えて、自分が何を目指しているのかを良くわかっていたということだ。

作品をみて分かったことは、戦争の時代の話であるにも関わらず、現代の教育で問題視されている課題の多くに、すでに実践的な解が示されているということである。
「オルタナティブ教育」と呼ばれる教育手法の実践は、はるか昔から存在していたということだ。

理想の教育、理想の学校

さて、窓際のトットちゃんの話はここまでなのだが、
理想の教育というのは、何なのだろうか?

私にとっては、「個々の違いを社会のパワーに変える学校だ」
公教育の教育システムは、変えるには巨大すぎるという制限があるにも
関わらず、多くの先生方、そして関係者のみなさんの努力で、
現代のニーズに合った教育に変わっていこうとしている。

学年

子どもの発達度合いは1人1人違うにもかかわらず、ある1年間の範囲に
生まれた人は、同じ学年となり、同じカリキュラムをこなさないとならない。
そんな中で、落ちこぼれを作ることなく、吹きこぼれにも退屈をさせないための創意工夫は、先生方の努力にかかっている。

評価(通知表)

出席やテストで取った点数などをベースに、人を評価する仕組みから、
個性がいかに伸びたのか、人とは違う部分を認めるという教育に舵が切られつつある。さらに、一部の小学校では通知表をなくしてしまっている。
(別の映画で「夢見る校長先生」という作品があり、学校改革に取り組む校長先生たちのリアルストーリーがドキュメンタリー化されている)

暗記

社会にでても、単なる知識ならばネットで調べられるし、AIにも聞ける。
そんな中で、知識の暗記ではなく、現実の問題を考える力を育成することへのニーズが高まっている。
ICTの活用や、習熟度別の個のペースで進む学習などの環境も用意されつつある。また、受験制度改革も始まり、試験そのものの質も変わってきている。

多様性

私が小学生だったころには、「○○ちゃんと、おなじでーす」という意見が
繰り返される話し合いが、学級会のあるあるだった。
みんなと同じように考え、同じように行動することを求められる思想統制や
同じ時間に、同じことを、同じようにやることを求められる同調圧力があったのだろう。昨今では、「多様性」がキーワードとなり、自分の意見を持つことの価値がより高まってきている。

学校教育には、常により高い要求がなされ、現行の改革ですら十分ではないという反論もあるだろう。もちろん、変革にはバラツキもあるし、校長や担任の力量による部分もあるだろう。しかし、心ある教育関係者が、未来をより良いものにしていこうとしていることには、議論の余地がない。

こどもイノベーター塾

近年、教育ニーズの変化に伴い、「こどもイノベーター塾」という取り組みを始めた。この塾は、現代を生きるこども達が、将来必要な力を身につけるために設計されたプログラム。子どもの未来への最高の贈り物として、構想された「こどもイノベータ塾」では、公教育の枠にはまらないからこその、尖った、かつ、ユニークな取り組みがなされています。

実は、下記の取り組みは、子どもたち自らが考えた、理想の学びの姿を具現化したもの。ついつい、大人側の制約事項に目が行きがちになってしまうものですが、子どもたちの意見は純粋そのもの。それをなるべく完全な形で実現しようと、運営している私どもも、既成概念に縛られない思考をしようと努力しています。

・子どもが興味がある内容を使って学ぶ
・個人で追求したいことがあれば、どんどん取り組んで良い
・得意なことがあれば、先生になることもできる
・答えを覚えることではなく、そもそも問題は何か、どんな答えがありうるかを考える
・1人でワークに取り組むのではなく、みんなの力で問題解決のアイディアを高め合う
・周囲の人も理解でき、納得がいくように、「短く、分かりやすく」言葉を選ぶ
・塾をより良くするアイディアは、塾生が自ら考えて、実行する
このようなことを通して、個を伸ばし、社会の課題を創造的に解決できるリーダーを育てていく、取り組みである。

こども達と、理想の学びの場について議論した際の様子はこちらの記事もご覧ください。

子どもイノベーター塾を体験するには

難問に取り組むことにワクワクしている、お子さん集まれ!
学校だけでは、知的好奇心が満たしきれないお子様も大歓迎。
ミッション(授業)は、オンライン開催。ネットさえつながれば、日本中どこからでも(海外からでも)参加可能。
月2回のミッションで、わずか3980円/月。

ぜひ、体験しに来てください。
子どもイノベータ塾のホームページ(体験申し込み)はこちら。


情報源

映画「窓ぎわのトットちゃん」公式サイト
小林宗作(校長先生)- wikipedia
トモエ学園 - wikipedia
窓ぎわのトットちゃん(文庫本)


この記事が参加している募集

アニメ感想文

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?