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【毒親連載小説 #3】母とわたし①

若い頃の母は、容姿端麗で
当時の写真を見ると、
女優の黒木瞳似の美人だった。

また、
自分自身をどのように
美しく見せるのかを
よく心得ていて、
出かける時はいつも
バッチリと化粧をし、
綺麗に着飾る。

見た瞬間に
パッと目を引く美しさ
だったと思う。

また、母は外では、
社交的でハキハキと
モノを言う
とても快活な人に見えた。

母のクローゼットには
たくさんの洋服や
ブランド物のバッグが
所狭しと並べられていて、
身なりにお金をかけることは
全く厭わない人だった。

それにひきかえ
私といえば、
母とは似ても似つかぬ
冴えない容姿に、
ほとんど言葉を
発することのない
無口な子供だった。

「美しくて活発な母」と
「醜くて無口な私」。

親子と言うには
似ても似つかぬ二人だった。

母は確かに
外では美しくて活発だったが、
それは精巧な仮面に過ぎなかった。

家庭内ではそれとは正反対の
「ヒステリーで暴力的な母」

この母の全く違う仮面は、
外の人は誰一人として知らない。

いや、仮に私がこのことを
外部の人に言ったとしても、
きっと誰一人、
私の話には耳を傾けては
くれないはずだ。

そのくらい、母は
完璧すぎるほど完璧な仮面を
被り続けていたからだった。

(つづく)

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