台湾/香港ミステリの一年・2021

※おもに台湾・香港、繁体字圏で発表された華文ミステリについて扱う。取り上げた情報は通販サイト「博客來」や、非英語圏ミステリ研究家の松川良宏氏のツイート(https://twitter.com/Colorless_Ideas)などを大いに参考にした。以下敬称はすべて略す。

台湾犯罪作家聯会

2021年の台湾ミステリ界において、もっとも華々しいニュースといえば台湾犯罪作家聯会(Crime Writers of Taiwan, CWT)の活動開始だろう。90年代から活動する作家の既晴が中心となって、「台湾犯罪文学の創作、評論、出版、催しを主な活動とする互助組織」が2020年に発足していたことが発表された。台湾におけるミステリ関係者の団体としては台湾推理作家協会(Mystery Writers of Taiwan, MWT)がすでにあり、CWTはこれと並び立つ形になる。既晴はMWTの設立にも関わっているが、こちらは数年前に退会しているという(https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=2769851303252087&id=1673950162842212)。

CWTは、年一回刊行のムック『詭祕客 Crimystery』(尖端出版)の制作過程で設立に至ったという。9月に刊行された第一号の巻頭言において既晴は、かつて林白出版社から24年にわたって刊行されていた『推理』雑誌の精神を引きつぐものにしたいと語っている。内容は、台湾でも増えているミステリの映像化・映像ミステリに関する記事やインタビュー、英語圏作家との対談やインタビュー(カナダを拠点に活躍する作家でカナダ推理作家協会や英国推理作家協会の会員でもある提子墨の人脈が生かされている)、研究者・評論家の洪敍銘による「台灣本土犯罪小說的發展軌跡」と「台灣犯罪文學精選13作」など(一部はCWTサイトでも公開されている)。近年のミステリ出版の隆盛をかんがみて小説は掲載されていない。

このほかにもCWTの動きは活発で、各種のイベントを頻繁に開催しているほか、9月末には、2009年から台湾で開催されてきた公募の長篇賞、島田荘司推理小説賞についてCWTが第八回以降の運営を引き継ぐことが発表された。さらに10月には、80-90年代に『推理』雑誌上で開催されていた短篇の公募賞を復活させる形で、「第五回」林佛児賞を開催することも発表された。

台灣犯罪作家聯會| Crime Writers of Taiwan
台灣犯罪作家聯會 | Facebook

公募賞

第七回を迎えた金車・島田荘司推理小説賞(以下 "島田賞")は、マレーシアの華文作家、王元『喪鐘為你而鳴』(汝がために鐘は鳴る)が受賞した。作者は第十七回(2019年)台湾推理作家協会賞の受賞歴がある。刊行された作品に序文を寄せた評論家の玉田誠は "21世紀の『十角館の殺人』" と形容しており、デジタルデトックスのプログラムが行われている孤島で不可能犯罪が続発する。

最終候補に選ばれたあとの二作、傅真『棄子』は香港から、凌小靈『隨機死亡』は大陸からの応募であり、賞の歴史上初めて台湾の作品が最終候補に含まれない回となった。最終候補作はすべて賞の発表前に皇冠文化から出版されており、ゲーム制作の経験があり2020年に小説デビューした傅真の『棄子』は私立探偵による人探しと探される側の生活のエピソードとを交互に綴り、過去の島田賞入選作との親近性も感じさせる。復旦大学推理協会所属で陸秋槎の後輩にあたる凌小靈の『隨機死亡』は ”カラクリの魔女” が支配するデスゲームに謎解きを組み込んだ華々しい作風。金車文芸基金会の広報誌『藝文風』36号に最終候補に残った三人へのインタビューが掲載されているほか、一次選考・二次選考の通過作についてのコメントと、最終候補を選ぶ二次選考の選評がブログ「taipeimonochrome」で公開されている(日本語)。
藝文風36期電子書
第七回金車・島田荘司推理小説賞の一次選考通過作が発表されました | taipeimonochrome
第七回金車・島田荘司推理小説賞の入選作三編が発表されました | taipeimonochrome
伏せ字だらけの『第七回 金車・島田荘司推理小説賞』二次選考選評 | taipeimonochrome

今回、台湾犯罪作家聯会は共催団体として入り、9月25日に台北で行われた授賞式では前述のとおり、金車文芸基金会と皇冠文化出版が運営するこれまでの体制から、台湾犯罪作家聯会が主催し尖端出版が共催に入る体制への移行が発表された。またこれまでは島田荘司の「本格」の定義に合致する作品が求められていたのが、第八回からはその "定義を出発点として" 、幅広い犯罪小説が対象になり、受賞作と「選考委員特別賞」作品は出版のうえで漫画化の機会も与えられるという。台湾犯罪作家聯会サイト内の特設ページでは、募集要項のほかに、第七回の授賞式で流された体制変更に関する映像(日本語・英語字幕付き)を見ることができる。
第八屆·島田莊司獎|台灣犯罪作家聯會 Crime Writers of Taiwan

短篇の公募賞である第十九回台湾推理作家協会賞は同じく9月25日に結果発表と授賞式が行われ、香港の冒業「千年後的安魂曲」が三度目の最終候補入りでの受賞となった。受賞作は31世紀の "探偵" たちが "古代人類" の残したデータを調査するSFミステリ。ほかに最終候補に残ったのは、香港の何其美、マカオの懶神、大陸の王稼駿の三人であり、島田賞と同様、こちらも賞の歴史で初めて、すべて台湾以外からの応募作が残ることになった。もっともどちらの賞も以前から応募資格を限定しておらず、第三-五回の島田賞や第六、第十七回の台湾推理作家協会賞のように台湾からの最終候補入りが一作のみという例は過去にもある。最終候補作四作は受賞作の発表前にアンソロジー『鐵皮屋裡的螢火蟲』(博識圖書)として刊行されている。
20周年を迎えた台湾推理作家協会も定期的にオンラインイベントを開催しており、また2022年1月3日からは復興電台で週一回一時間のラジオ番組「偵探推理俱樂部」を始めることが発表されている。
台灣推理作家協會 | Mystery Writers of Taiwan
台灣推理作家協會 | Facebook

小説以外では、台湾犯罪作家聯会にも関わっている作家の楓雨がFacebook上で主催する「台灣推理推廣部」の企画で、700-1500字のミステリの評論を募集する台灣推理評論新星獎が始まっている。
台灣推理推廣部 - 投稿 | Facebook

日本への紹介

台湾のジャンル小説の日本語訳はここ数年下火だったが、2021年は台湾の本を日本に紹介するグループ 太台本屋 tai-tai books などの尽力もあり、立てつづけに翻訳が刊行された。特に異色の私立探偵小説である紀蔚然『台北プライベート・アイ』(舩山むつみ訳、文藝春秋)は発売直後から評判になり、複数のミステリランキングで高い評価を得ている。ほかにはホラー分野の作品が目立ち、張渝歌『ブラックノイズ 荒聞』(倉本知明訳、文藝春秋)は多様な民間信仰や日本統治期に遡る歴史を取り込んだサスペンスホラー、三津田信三・薛西斯・夜透紫・瀟湘神・陳浩基『おはしさま  連鎖する怪談』(玉田誠訳、光文社)は日本、台湾(薛西斯・瀟湘神)、香港(夜透紫・陳浩基)の作家たちによるリレー小説とテーマ競作の間を行くような一冊。陳浩基は『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』(講談社)にも拙訳のSF「ヨルムンガンド」が収録された(日本語訳が初出)。台湾ホラーに戻ると、李則攸・巫尚益『返校 影集小説』(七海有紀訳、角川ホラー文庫)は2020年末からNetflixなどで放映されたドラマのノベライズで、同じ原作による2019年の映画『返校 言葉が消えた日』も2021年に日本で公開されている。原作ゲームの制作元であるRed Candle Games (赤燭遊戲) が続けて2019年に発表した『還願』はしばらく公開停止になっていたが、2021年に自主流通でふたたび入手できるようになった(日本語対応有。還願 - Devotion)。

紙の本以外の形態では、同名のドラマのノベライズにあたるサスペンスBLの羽宸寰・林珮瑜『HIStory3 圏套~ラブ・トラップ』(小暮結希訳、プレアデスプレス)が電子書籍による分割配信で発表され、新型コロナウイルス禍を扱った既晴「疫魔の火」とワンシチュエーションの倒叙ミステリの「月と人狼」(どちらも阿部禾律訳)、そして作者インタビューが「北海道ミステリークロスマッチ」のnote上で公開された。
既晴『疫魔の火』 訳/阿部禾律 | 北海道ミステリークロスマッチ
既晴『月と人狼』| 北海道ミステリークロスマッチ
既晴(きせい)さんインタビュー | 北海道ミステリークロスマッチ
なお、インタビュー内で言及されている "新しいミステリー雑誌" は前述の『詭秘客』であり、『台湾現代犯罪事典』はネット小説プラットフォーム「讀創故事」上で連載が進められている(台灣現代犯罪事典)。

香港ミステリ

毎年恒例となった香港出身の作家による書き下ろしアンソロジー『偵探冰室.疫』(星夜出版)は、陳浩基、譚劍、文善、莫理斯、黑貓C、望日、冒業と、3年目にして最多の7人が参加した。台湾版も蓋亞文化から同年内に出版されている。カナダ在住の文善は、以前に陳浩基『ディオゲネス変奏曲』の香港版を出版した独立(インディーズ)出版社の格子盒作室から新作『不白之冤 WHITE LIES』を刊行している。カナダを舞台に、殺人の罪で収監されたが無罪を訴える香港移民の女性が話の中心になる。二冊目の単著を準備中だという莫理斯は、"香港のホームズ" の活躍を描き日本語訳も予定されているデビュー作が『香江神探福邇,字摩斯』(遠流)として台湾で再刊された。そのほかの作家としては、名家からの人探しの依頼に始まる正統派ハードボイルドの許信城『追跡』(要有光/台湾)がある。

天行者出版が主催し、香港・マカオから広くエンターテインメント小説を募る天行小説賞は第四回の結果が発表された。受賞作の一つのThe Storyteller R『JM的無以名狀事件簿:可惡童話』はクトゥルフ神話を取り入れた "ファンタジーミステリ"。天行者出版からは、島田賞の選考通過経験もある作者による掌篇集の第二弾、子謙『人間百詭II』や第一回天行小説賞で最終選考に残った謎解きの要素を含む武侠小説、東南『潛龍』も刊行されている。東南は同様に第二回天行小説賞の選考に残った『任俠行』(要有光/台湾)も刊行している。

天行小説賞の選考委員を務める陳浩基は新作の単著はなかったが、第二回島田賞受賞作『世界を売った男』の発表十周年を記念した改訂版が台湾の皇冠文化から刊行された。2019年に香港の皇冠出版から刊行された新版(こちらは香港の読者に合わせた微修正も入っている)と同様、2012年の日本語訳に際しての改訂やのちに書かれた後日談となる掌編の追加が反映されている。告知によれば映画化の計画も進行しているとのこと。陳浩基は前述の『偵探冰室.疫』への参加のほか、『皇冠』雑誌(皇冠文化/台湾)で短篇連作〈12〉の連載を開始し、新型コロナウイルス禍を扱った詩や散文を含むアンソロジー『孤絕之島:後疫情時代的我們』(木馬文化/台湾)に短篇「鄰人哥吉拉」を寄せている。

新刊

新刊は今年も要有光の刊行作から。既存シリーズの続篇が目立ち、葉桑『假如兇手是月亮』はベテラン作家による警察小説シリーズの第二作で台湾と韓国を股にかけて展開し、牧童『午夜前的南瓜馬車』はドラマ化も進む法律ミステリシリーズの新作、有馬二『觀劇之魔女』は様々な設定を取り込み続けるサーガの第四作で、"転生" した作家が次々と謎に挑む羽目になる。佘炎輝『DNA殺手』は前作から引き継いだ法医学への詳しい言及と新興宗教の問題を絡め、薬剤師でもあるマレーシアの牛小流『藥師偵探事件簿:請保持社交的距離』は当然ながら新型コロナウイルス禍を反映している。海盜船上的花『牙醫偵探:網紅迷蹤』は主人公の歯科医としての違和感が物語の発端になり、沙承橦.克狼『緝毒犬與檢疫貓:獸人推理系列』は "獣人" たちや魔法が登場するいわゆる特殊設定ミステリを展開する。
楓雨『我所不存在的未來』は自殺を予感し阻止することのできるという "予言師" の登場が信仰をめぐる問いに発展していき、脚本家としての仕事も順調な游善鈞『空繭』は死体が繭に包まれて発見される連続殺人を扱う。燕返『殘像17:新疫時期的殺意』は大陸の作家が新型コロナウイルスとSARSを扱った作品で台湾が初出となる。新人では、日本在住の軸見康介『卡術師』はクレジットカード犯罪に精通した "カード師" が主人公のサスペンス、『殺人是件嚴肅的事』馬卡はコミックリズ映画小説賞の受賞歴があり、センセーショナルな猟奇殺人に始まり犯人の特殊な思考と善悪の問題に迫っていく。

台湾でも版権ビジネスが盛り上がるなか気を吐く鏡文學は映像化を見据えた「鏡文學百萬影視小說大獎」を隔年で開催しており、2021年には第二回の結果が発表された。募集ジャンルは限定されていないが、受賞作の唐福睿『八尺門的辯護人』は殺人の容疑を掛けられたインドネシアからの移民の漁師を救うため原住民族の弁護士が奔走する法廷ミステリ、審査員賞の楊鐵銘『借刀殺人中學』はカジノが大きな存在感を放つマカオの高校生たち四人が主人公となるサスペンス。
ライトノベルの著作が多数ある宴平樂『起駕,回家』はチンピラ二人が女神媽祖の巡行に隠れてトラブル続きの逃走劇を繰り広げ、吳曉樂『致命登入』はひきこもりの主人公が、ゲーム上で出会った女性を死の運命から救おうとする。天地無限『滯留結界的無辜者』は作者としては珍しく超自然的な設定を採用し、霊を呼び起こしての事件捜査と謎の霊との戦いが同時進行する。四絃『抱歉,我討厭我的孩子』は母娘の関係から生まれた愛憎を四人の女性のエピソードから描き、去年も言及した張國立『乩童警探:死亡的深度』はシャーマンの家系に生まれた警察官を主人公とする三部作の完結作。サイト「鏡文學」での連載後に電子書籍として単行本化された臥斧『一開始就是假的』は、ある議員の死をネタに記者がでっちあげた陰謀論が大騒動に発展していく。

島田賞を主催してきた皇冠文化の総合文芸誌『皇冠』には、前述した陳浩基の〈12〉連作のほか、譚劍「醜小鴨」黑貓C「穿著長靴的貓」(4月号、806期)、瀟湘神「感冒」(8月号)、 海盜船上的花「制裁者遊戲──怪物」沙棠「傳珠遊戲──偽裝」(11月号)といった短篇が掲載。2021年9月号(811期)は島田賞の発表に合わせた華文ミステリ特集で、台湾推理作家協会の理事長を務める冬陽による島田賞を軸にした台湾ミステリの回顧、既晴による「華文犯罪小説」の歴史の振り返り、陳浩基のインタビューのほか、過去の島田賞受賞者・入選者から黑貓C、柏菲思、薛西斯、胡杰の短篇が掲載された。

島田賞の運営を引き継ぐ尖端出版からは、台湾の二次葬の慣習と法医学の知見を取り入れたシリーズの最新作、八千子『山水儚:少女撿骨師系列4』が刊行。八千子はほかにもライトノベル分野で『前進吧!!高捷少女 姬絆(一期生)』『世紀末書商1』(三日月)を書いているほか、『螢幕判官』で知られる光穹遊戲の新作ゲームのノベライズ『棄海:波弟大冒險』を刊行しており、AIを組み込んだ人形をめぐってSFミステリ的に展開し「21世紀本格」に挑んだ『幸福森林』魏子千名義で発表している。尖端出版からはほかに台湾推理作家協会賞受賞者の初長篇、王少杰『團圓』と、4人の少女の死から始まるダークな青春ミステリの寧悅淩『第五證人』が刊行されている。

第六回島田賞受賞者の受賞第一作で、1993年の実際の芸能人殺害事件を下敷きにした唐嘉邦『疑案辦:血色芙蓉』(凌宇)は、台湾の未解決事件の蒐集に力を注ぐ「疑案辦」プロジェクトとのコラボレーション。紀蔚然『DV8:私家偵探2』(印刻)は『台北プライベート・アイ』の10年ぶりの続篇。呉誠は今回、人探しの依頼を受けて飲み仲間たちとともに調査を進めるうち、過去の連続殺人に関わることになる。『グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故』の伊格言の新作『零度分離』(麥田)は未来に書かれたルポルタージュ集の体裁をとるSFで、ミステリ風に展開するエピソードも含まれる。
薛西斯『塔納托斯的夢境』(悅知文化)は高校生の主人公が "眠り" を手がかりに自分の過去にまつわる謎を明らかにしようとする。薛西斯は初期作の武侠小説『不死鳥』の加筆修正版(獨步文化)も玉田誠たちの推薦で刊行された。李熙麗『死亡荷爾蒙』(白象文化)は医療ライターの経歴を持つ作者の初長篇となるミステリ、秀霖『陰陽判官生死簿(貳):西風蕭颯』(釀出版)は現実での犯罪・謎解きと異界の戦いが重ね合わされるライトノベルのシリーズ第二作。X.H夜月獨步『擱淺的Blue Whale』(聯合文學)は参加者を自殺に導くという「青い鯨」ゲームを扱った青春ミステリ、亞斯莫『愛我』(聯合文學)は "東方の『キリング・イヴ』" を謳うサイコスリラー、胡長松『幻影號的奇航』(前衛)は海洋冒険小説の伝統に根ざす台湾語による冒険探偵小説。
聯經出版から刊行の瀟湘神『魔神仔:被牽走的巨人』長安『蛇郎君:蠔鏡窗的新娘』天野翔『水鬼:橋墩下的紅眼睛』の3作は、台湾の妖怪文化を盛りあげる臺北地方異聞工作室のメンバーが有名妖怪を題材にした連作。戚建邦『獵人案』(蓋亞)は唐末五代の動乱期を舞台にしたミステリの第二弾で武侠小説の要素も含み、小惑星『正午』(釀出版)は台湾中部の田舎町の限られた人間関係から起きた悲劇を描く。逢時『我是自願讓他殺了我』(奇異果文創)は林斯諺、既晴、游善鈞などの推薦を受けたミステリで、ライトノベルを中心に活躍する作者は、日本国際漫画賞の優秀賞(銀賞)に選ばれた『小丑醫生 -最後一次說再見-』の原作者も務めている。

2000年前後の台湾ミステリ史の画期から20年ほどが経ち、当時の「本格復興」の動きも歴史化して語られるようになった。台湾推理作家協会賞の最終候補作アンソロジーを出版している博識圖書からは、台湾推理作家協会の20周年を記念して過去の重要作である冷言『上帝禁區』林斯諺『羽球場的亡靈』が再刊された。前者は2005年に執筆、2008年に自費出版された作品で、後者は00年代初頭の作品を2014年にまとめた短篇集に因っている。『詭秘客』の「台灣犯罪文學精選13作」に選ばれた林斯諺『雨夜送葬曲』も、2005年の初刊、2015年の改訂版に続き、2017年の英訳に際しての修正を反映した二度目の改訂版が要有光から再刊されている。