稲村文吾

中国語(ミステリ)翻訳

稲村文吾

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最近の記事

台湾/香港ミステリの一年・2022

※おもに台湾・香港、繁体字圏で発表された華文ミステリについて扱う。取り上げた情報は通販サイト「博客來」や、非英語圏ミステリ研究家の松川良宏氏のツイート(https://twitter.com/Colorless_Ideas)などを大いに参考にした。以下敬称はすべて略す。 作品顕彰の新設繁体字圏のミステリについて、公募作品から選出される賞は1980年代末から存在していたが、既発表作品を評価する賞やランキングは長らくほぼ不在という状況が続いていた。ところが2022年には、発表済

    • 台湾/香港ミステリの一年・2021

      ※おもに台湾・香港、繁体字圏で発表された華文ミステリについて扱う。取り上げた情報は通販サイト「博客來」や、非英語圏ミステリ研究家の松川良宏氏のツイート(https://twitter.com/Colorless_Ideas)などを大いに参考にした。以下敬称はすべて略す。 台湾犯罪作家聯会2021年の台湾ミステリ界において、もっとも華々しいニュースといえば台湾犯罪作家聯会(Crime Writers of Taiwan, CWT)の活動開始だろう。90年代から活動する作家の既

      • 香港ミステリについての覚書

        黃仲鳴編『香港文學大系1919-1949 通俗文學卷』の「導言」は、香港における通俗文学の流れを王韜の小説から語り出している。香港最初の ”南来文人” の一人である王韜は、1870-80年代にかけて『遯窟讕言』『淞隠漫録』『淞浜瑣話』といった小説集を刊行しており(後の二つははじめ『点石斎画報』紙に連載)、魯迅『中国小説史略』などでしばしば蒲松齢『聊斎志異』に倣ったものとみなされる。高橋お伝の行跡を記す「紀日本女子阿傳事」が『淞隠漫録』の最初に置かれているのをはじめとして、超自

        • 華文ミステリ[架空]アンソロジーを作った

          (略)ということがあって、華文ミステリのアンソロジー案を作る遊びに手を出した。 レギュレーションは、 ・すでに日本語訳が発表されているものから選ぶ ・同媒体、同じ叢書などからのかぶりはなるべく避ける ・松川良宏氏のサイト「アジアミステリリーグ」(中国ミステリ 読書案内、台湾ミステリ 読書案内 など)や松川良宏氏のTwitterアカウント(https://twitter.com/Colorless_Ideas)で言及されている作品は避ける とした。最後の項目についてはとくに

        台湾/香港ミステリの一年・2022

          台湾/香港ミステリの一年・2020

          ※おもに台湾・香港、繁体字圏で発表された華文ミステリについて扱う。取り上げた情報は通販サイト「博客來」や、台湾推理作家協会のFacebookページ(https://www.facebook.com/taiwanmystery)、非英語圏ミステリ研究家の松川良宏氏のツイート(https://twitter.com/Colorless_Ideas)を大いに参考にした。以下敬称はすべて略す。 香港出身の作家たちによる書き下ろしアンソロジー『偵探冰室』は、2019年の第一弾に続き第

          台湾/香港ミステリの一年・2020

          周浩暉『死亡通知書』連作・書誌

          2020年8月に第一部の日本語訳が出版された周浩暉『死亡通知書』連作の、現時点で判明している限りの書誌リスト。特記がない場合は中国大陸での出版。 実物を手にしていないものも多く、曖昧な部分も残っている。誤りや見落としがあった場合はぜひ指摘をお願いしたい。 ○第一部 ・『死刑通知单』(作者ブログ *1 にて連載、2007年5月? *2 ~2008年4月)*3 ・『死刑通知單 第一部之1』(台湾:菁品文化、2008年9月) ・『死刑通知單 第一部之2』(台湾:菁品文化、2008

          周浩暉『死亡通知書』連作・書誌

          台湾ミステリの一年・2019

          ※ "台湾ミステリ"とは冠したものの、台湾で執筆・発表されたミステリを中心に、実際には香港などを含む、要するに大陸以外の華文ミステリ("華文" はいわゆる "中国語" 自体を指す)事情全般を扱う。取り上げた情報は通販サイト「博客來」や、台湾推理作家協会のFacebookページ(https://www.facebook.com/taiwanmystery)、非英語圏ミステリ研究家の松川良宏氏のツイート(https://twitter.com/Colorless_Ideas)を大

          台湾ミステリの一年・2019

          台湾ミステリの一年・2018

          ( 題名は「台湾」としたが、香港をはじめとする他の繁体字圏の作家・作品についても触れる。取り上げた情報は、台湾推理作家協会のサイトとFacebookページを大きく参考にした。敬称はすべて省略した) http://taiwanmystery.org/ https://www.facebook.com/taiwanmystery/  新年を迎え台湾ミステリ界の一年を振り返るには、まず悲しい出来事から始めたい。  2014年から台北で営業していた台湾初のミステリ専門の書店(貸本

          台湾ミステリの一年・2018

          台湾ミステリの一年・2017

          ( 題名は「台湾」としたが、香港をはじめとする他の繁体字圏の作家・作品についても触れる。取り上げた情報は、台湾推理作家協会のFacebookページと、同協会公式サイトで提供されている「行事暦」を大きく参考にした)https://www.facebook.com/taiwanmystery/ http://taiwanmystery.org/ 海外への作品紹介「台湾ミステリ」を冠した記事の冒頭で扱うのが(台湾の出版社の刊行作品とはいえ)香港在住の作家、しかも現地外での話題とい

          台湾ミステリの一年・2017