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罪の意識に塗りつぶされる現実「アラーニェの虫籠」 感想

はじめに

アマプラにてこちらの「アラーニェの虫籠」を視聴しましたので感想を書いていきます!
いやなんというか、マジで感想に困るというか。
文章に表したいことは死ぬほどあるんですけど、言葉に表すのは難しいという。

この作品一応ジャンルはホラーなんですけども、
それ以上にアーティスティックで抽象的。
ある程度の道筋はちゃんと設定されつつも、必要以上の説明的なセリフは削り、見る側に考察の余地をかなり残してくれている印象でした。
なんというか作品として形は保ちつつも、極限までその枠組みを壊して成型した見たいな感じ?
よくわからないかもしれませんが、マジで見てほしい!
面白いというか、「こういう作品もあるのね」という体験できるから!
他の作品には見られない、作者様の頭の中をそのまま覗き見るみたいな体験!

というわけで、色々書きなぐります!

独特な絵柄?作画?

最近増えてきた3DCG作品なんですけど、他の作品と異なると感じたのが
「顔」「目」ですね。
なんというか、髪の毛や服の質感と比較してもかなり綿密に描かれているというか、ぶっちゃけ浮いているようにも感じる。
だからこそこの作品の異質感を表しているとも思えます。

3Dの肉体に、顔だけはイラストで描いているみたいな感じ。
作者さんの意図は分かりませんが、なんというかこのおかげで3Dでは表現しきれない顔での感情表現がより伝わるようになっているのかなと感じました。
実際、恐怖とかの感情は目を思いっきり見開いてて分かりやすい。
逆に、無表情だとかなり人形っぽく見えてくる。
ただの3DCGには見えなかったのよ。

陰鬱な雰囲気。不穏な空気。

この作品常に陰鬱。というか不穏。
なんか起きるんじゃね?
という感じがすごい。実際色んなことが起こる。
こういうジメジメした雰囲気の作品大好きな人にはかなりおすすめ。
90年代後半から2000年代前半のあの時代の作品の雰囲気が味わえると思います!
あの時代の、くらーいアニメが私は大好きなのよ!

ぶっちゃけ最後どゆこと?

この作品みたらマジで思うのが「あれ、全部妄想?」だと思う。
だって、最後ベッドから目覚めてる姿みたらそう思う気がする。

途中まで私は、「精神障害を患った主人公が妄想の世界で生活してる」と思ってました。
でもなんか違う。
と考えていたら、この公式さんのページを見つけてしまいました!

こちらの公式さんによると「ラストは夢オチではない」とのことなので
ある程度は現実に即したお話だったということになります。
じゃあ、どこからどこまで現実?どこから妄想?というか幻覚?
みたいな思考の無限ループにハマりそうです。
ここから完全に私の妄想垂れ流しになります。
まぁ、いつも通りよね。

2人の「リン」

お話を見ていると主人公の幼少期に、同じ名前の女の子が登場することが判明します。
というか作中何度も登場し、「あんたなんかいなくなっちゃえ」と言って突き飛ばしてくる黒髪の女の子。
作中最後には、実は突き飛ばしている黒髪の女の子が主人公だったという。

幼少期は同じ名前で、どことなく似ていて仲の良かった2人のリンが
何かしらのきっかけで喧嘩をし、金髪のリンが突き飛ばされ昏睡状態に。

その前に「あんたなんかいなくなっちゃえ」と言われた金髪の子が黒髪を押して、近くにあった消化器にぶつかって?首の後ろにけがをします。
この首の後ろの傷が現在の主人公にあるので、黒髪の子が今の主人公は確定です。

そこから成長した黒髪リンさんは、なぜか金髪のリンさんそっくりになってる。
もしかしたら、親友の未来を奪ってしまった罪悪感から、彼女の見た目を真似することで罪滅ぼしをしようとしていたのかも。
もしくは、彼女そのものになり、彼女が歩むはずだった人生を代わりに送り、自分の人生をなくす(彼女が奪われた人生の代わりに、代わりに自分の人生を使いつぶす)ことを考えたのかもしれませんね。

そんな風に親友の真似を続けているうちに、自分の存在が希薄となってしまい、自分が親友であると思い込んでしまった。または、脳が完全に混乱してしまい、親友としての人格を新しく形成してしまったのだと考えました。

家庭の状況が少し描写されていましたが、あの家庭環境から虐待されていたのは明らか。そんな家族にも頼れないなか、唯一の拠り所である親友を自身の手によって失ってしまい、精神に多大なストレスがかかり、精神が病んでしまう。
二重人格とか解離性同一性障害というやつなのかな。

あの薬は何?

主人公のリンさんが、何かを抱えているのは間違いないですよね。
じゃあ、あの薬は何なんでしょうか。
私の考えとしては2つあります。

①精神病に対する薬物治療のためのお薬

普通に考えたらまぁこれかも。
なんらかの精神疾患の症状を抑えるためのお薬ですね。
じっさい彼女はこのお薬を前半ずっと持っていて
何かあれば飲んでいたし。
この薬を男の子に取り上げられてからは、前半よりも異常な出来事(ほぼ妄想にも見える)に巻き込まれています。
これらは、彼女の精神疾患による幻覚や幻聴であり、過去の出来事に対する罪悪感が形となったものだと考えました。

②思い込むための薬

さっきとは逆なんですけど
「自分がもう一人のリンであると思い込むための薬」ですね。
こっちのほうが自分的にしっくりきます。
なんらかの幻覚作用のあるドラッグや、プラシーボ効果やルーティン的な意味付けをしたただの風邪薬かもしれません。
彼女は、この薬を飲む(もしくは飲む行為)によって自分の人格と親友の人格を切り離していたのではないのでしょうか。
実際に作中では薬を使うシーンはあっても、病院に通うシーンはなかったので、自身で用意した可能性がかなり高いと思われます。

物語中盤で男の子に薬を取られて
「その薬がないと!」とかなり焦っています。
この言葉の意味は
「その薬がないと、彼女になれない!彼女がいなくなってしまう!彼女を忘れてしまう!」だったのかもしれません。たぶんこの時は自覚がない。

でもそんな彼女に男の子は
「危険だから」
「自分を見失わなければ大丈夫」
「君の抱えている物。忘れること。必要な時もある。でも決してなくならない」
と言っています。

これは
抱えている物→親友のこと。過去の罪。
となる気がするので、
「過去の罪を忘れることが必要。でもそれで、君の大切なものがなくなってしまうわけではない」と言っている気がします!

自分を見失ってまで、親友の存在を残そうとしている主人公を止めてくれたのだと考えました!

じゃあ最後のシーンは?

金髪のリンが目を覚ます
→心電図が止まる
→虫に取り込まれかける
→黒髪のリンが手を握る
→黒髪のリンが落ちていく
→金髪のリンが目覚める

この流れなんですけど。
黒髪のリンが、金髪のリンに生きるための体を渡したのかな?
もしくは、生きるために必要な存在である蟲を渡したのかな?
と考えました。

この作品の世界観で、蟲がかなり重要な役割を担っています。
人間の感情の背後には蟲がいて、蟲がいるからこそ人間は人間として存在出来るといった感じだったと思います。あんま理解できてないかもだけど。
その蟲が抜け出した人間は、人を殺す化け物に成り果てます。

劇中終盤で色んな出来事(化け物に追いかけられる。謎の機械に拘束。知らない女に刺される)を経験するリンさん。
それらの出来事を通して、過去の罪と向き合うことで、自分自身と向き合います。
実際に昔の小さいころの黒髪リンさんが主人公をお風呂場に突き落としてこれらの出来事が始まるので、これは合ってるかと思う…。

向き合った結果、
「彼女がうらやましかったこと」「でも彼女にはなれなかったこと」
を自覚します。
そして、「自分が人を傷つける存在であったこと」にも気づきます。

その結果ある意味人間として、一皮剥けた状態。
最後の方に主人公に美しい蝶の羽が生えていましたが、そのまま「羽化」
ですね。人間としての成長。
お風呂場でのリンさんは赤い蛾の羽だったのでマジで進化というか変化。
「彼女への憧れ」と「これ以上生きていてはいけない罪悪感」をもって彼女は親友のもとに行きます。

そして最後のシーン。

起きたばかりの金髪リンさんは、肉体はあるけれど
中身の蟲が存在しない。
生きていくための中身がないんですね。

そんな金髪のリンさんのために、
彼女が生きていくための
「蟲」を主人公のリンさんは最後に渡したのではないか!

と考えました。


色々について

かなり強引な考え方ですが、個人的な考えはこれでした。
他の方の考察も見たい!

というか
いつから幻覚?現実?
あの男の人は何?
あのバレエの女の子は?
というか昔の戦争での人体実験はなに?
ここらへんはぶっ飛ばしました!

調べてみると、この作品の以前の話があるみたいなので
それを見てからかな。
とか考えてます。
とりあえず、一度見ただけでは理解しきれない!
でもそれが楽しい!

最後に

1時間とは思えないほどの謎!
そして満足感!
この作品をほぼお一人で制作されていた原作者様である坂本サク様に最大限の賛辞を!
なんで、この作品を見ていなかったんだ!

皆!この作品をもっと広めてくれー!

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