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霧笛



ひとつ光る
鏡の
裏に隠しておいた
表情を撫でるように開いたカーテン、
誰かの手で一瞬のうちに消してしまえるものに
寿命より永い時をゆく願いを書き連ねて、
詩と呼んだものは、自動で更新され、
どうせ偽物なんでしょう、と
もう誰も言わなくなる頃に、
飛沫のような
影を合図に差し替えてきたフィルムの端から
燃えてゆがみはじめる
景色の中で、
知らずに壊されてきた信頼の灰に
立っている
きみの、世界は
まだ壊れていないと歌っていた、声を
照らしている、静かな
眼が追いかける
逃れられないほどの自由の中で
咲いた春の最後を
視界の隅で贈る






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眠れない夜に

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