駆け出し百人一首(24)家にあらば妹が手まかむ草枕旅にこやせるこの旅人あはれ(聖徳太子)
家(いへ)にあらば妹(いも)が手(て)まかむ草枕(くさまくら)旅(たび)にこやせるこの旅人(たびと)あはれ
万葉集 巻三 415番
訳:家にいたら、この人も伴侶と抱き合って眠っているだろう。旅路だから、草の枕に横たわって亡くなっているこの旅人は気の毒なことよ。
Poor you! You are dead alone on the grass. If you were at home, you would sleep on your wife's arm.
『万葉集』の挽歌(死者を悼む歌)に出ている歌です。宿場が整備された江戸時代とは違い、昔の旅は過酷でした。この旅人も途中で病や食糧不足に苦しみ、亡くなってしまったのでしょう。その悲しみに心を寄せる、心優しい聖徳太子の歌で、歴史書『日本書紀』に出ているエピソードが元になっています。
和歌の修辞法
草枕:「旅」にかかる枕詞として知られる。今回の和歌の場合は、枕詞というよりは、手枕(たまくら)との対比で、道中で行き倒れている様を「草を枕に寝ている」と表現したもの。
文法事項
家にあらば:未然形+ば。仮定条件。
手まかむ:「む」は推量の助動詞の終止形。
こやせる:サ行四段活用「こやす」(横におなりになる)已然形+存続「り」連体形。
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