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37-3.どうする?[3月]公認心理師試験

(特集:心理実践を極める)

下山晴彦(臨床心理iNEXT代表/跡見学園女子大学教授/東京大学名誉教授)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.37-3

<新規ご案内の研修会(当日参加「無料」)>

どうする? [3月] 公認心理師試験
−第6回試験の結果分析に基づいて−
 
【日程】6月24日(土)9時〜12時
【講師】宮川純(河合塾KALS)

【話題提供】下山晴彦(臨床心理iNEXT代表)
【指定討論】宮崎圭子(跡見学園女子大学)/河合輝久・浦野由平(山形大学)

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](無料)https://select-type.com/ev/?ev=gZCmMoMZnaw
[iNEXT有料会員以外・一般](無料)https://select-type.com/ev/?ev=6X7hncGGn8Y
[オンデマンド視聴のみ](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=8Xnh2B0wrTg

【プログラム】
【プログラム前半】第6回試験の結果分析
・第6回公認心理師試験の結果分析   宮川純
・第6回公認心理師試験の感想戦    第6回試験受験者+宮川純   
・第6回結果分析から読む試験動向   宮川純+下山晴彦

【プログラム後半】大学と院生は3月試験にどう備えるか
・3月試験で心理職教育はどうなるのか 下山晴彦
・第7回公認心理師試験の傾向と対策  宮川純✖️第7回受験生
・どうする?心理職教育と試験対策   大学院教員+宮川純

(宮川純先生)

<ご案内中の研修会>

技能向上のためのマインドフルネス事例検討会
−強迫症(反芻)と身体麻痺(解離)の事例−
 
【日程】6月10日(土)9時〜12時
【内容と申込】https://note.com/inext/n/n31f38aa9c50a
 ※オンデマンド視聴申込締切:6月20日 
 
解離性障害の理解と実践を学ぶ
−出会い方から支援の工夫まで−
 
【日程】6月4日(日)午前9時〜12時
【内容と申込】https://note.com/inext/n/n5551c315490d
 ※オンデマンド視聴申込締切:6月13日

◾️学校で認知行動療法を使いこなす
−S Cの道具としての子どもC B T−

【日程】6月17日(土)9時〜12時
【内容と申込】https://note.com/inext/n/n82881995d472
※オンデマンド視聴申込締切:6月27日


1.本当は重大事件なのですが・・・・

第6回公認心理師試験が5月14日(日)に実施された。公認心理師試験は、厄介な試験だ。難易度だけでなく、合格基準や出題傾向が毎回異なり、受験生はその都度振り回される。今回の試験では、これまでと違って知識の丸暗記では対応できない、新たな出題傾向がされたようだ。
【試験解題】https://www.kals.jp/clinical-psy/pdf/kounin_230518.pdf
 
次回の第7回試験は、なんと!3月実施となる。多くの人は、大学院在籍のままの受験となる。つまり、公認心理師試験が、大学院の教育課程における正式な行事となるのだ。
 
これは、大学院の教育カリキュラムに深刻な影響を及ぼす重大事件なのだ。
 
試験が3月実施となることで大学院教育の主要目標は、公認心理師試験合格となる。各大学院で合格率を競うようになるだろう。結果、臨床技能教育、実習指導、修士論文の指導と執筆は、これまでのようなペースではできなくなる。不透明であった就活のプロセスは、ますます混乱していく。まともな心理職の専門教育はできるのだろうか?


2.[3月]公認心理師試験の結果、何が起こるのか?

大学院修士課程2年生は、来年の3月には公認心理師試験が待っている。まさに、大学院での学習の総決算が公認心理師試験となる。幼児期から大学まで受験に“慣れ親しんできた”日本の若者は、“試験”と聞くだけで無条件反射的に受験対策モードになる。結局のところ、大学院教育は、「心理実践を極める」専門職養成とは全く違う方向に進むことになるだろう。
 
大学院での学習は、試験合格が目標となる。しかも、公認心理師試験は、合格点の調整が行われ、合格人数を一定に保つ。そのため、院生同士がライバルになる。これまでの大学院は、心理職を目指す同志として学生が悩みや不安を共有し、人間として成長する場でもあった。しかし、今後は、3月試験に向けて院生間の競争が生じ、院生の孤立化が進む。
 
孤立化は、院生だけでない。大学院も孤立化が進むだろう。大学院の評価は、公認心理師試験の合格率に左右されるようになる。大学院間で合格率を競うようになる。各大学で個別に試験対策をするようになり、孤立化が進む。


3.公認心理師制度に組み込まれていく心理職教育

学部の心理学教育と大学院の心理職教育は、さらに一層公認心理師制度に組み込まれていく。心理職の社会化と制度化、それに伴なう心理職の雇用創出という点では、このような動向は必要なことでもあろう。
 
しかし、良くも悪くもこれまで培ってきた日本の心理職の大学院教育の文化が失われていくだろう。医療とは異なる文化を大切にする心理職の価値観が崩れていく。その代わりに、心理職教育が医学モデルや行政モデルに基づくものになっていく。さらに、多くの大学院は、公認心理師試験の予備校化していくことになるだろう。
 
公認心理師制度を否定することはできないし、否定する必要はない。社会性の欠如が致命的弱点であった日本の心理職にとって社会化や制度化は、むしろ必要な課題であった。そこで、次の課題となるのは、3月実施の公認心理師試験を前提として、心理職教育のあり方を見直し、再構築していくことである。


4.どうする心理職教育?

3月受験を前提として、「心理技能の基礎教育をどうするか?」、「内部と外部実習をどうするか?」、「論文指導をどうするか?」、「心理職としての進路指導をどうするか?」、「就活指導をどうするか?」、そして「試験指導をどうするか?」
 
このようなテーマを、改めて考えていく必要がある。院生だけでなく、大学院教員にとってもhappyな心理職教育とはどのようなものかを、真剣に考える時期が来ている。大学が単純に公認心理師試験の予備校化してしまったら、院生にとっても、教員にとっても、さらには心理職の未来のためにも不幸である。
 
そこで、今回の研修会では、冒頭のプログラムに示したように“本物”の公認心理師受験予備校である河合塾KALSの宮川純講師をゲストに招き、臨床心理学系の大学院の教員や院生を交えて「3月公認心理師試験」にどのように対処するのかを議論する。以下に研修会に向けて、宮川先生へのインタビューを掲載する。
 
なお、多くの院生、教員、心理職の皆様にご参加いただきたいということで当日参加費を無料とした。「3月公認心理師試験」は、心理職の発展においては非常に重要な事件なのだが、既定路線となってしまっている。そのため、多くの人々にとっては関心のないことであることも承知している。だからこそ、少しでも多くの人に参加してほしいという願いを込めての当日参加を無料とした。


5.第6回公認心理師試験の結果分析

[下山]5月の第6回公認心理師試験の結果分析※)について河合塾KALSから出ています。改めて、今回の試験問題の特徴について教えてください。
※)https://www.kals.jp/clinical-psy/pdf/kounin_230518.pdf
 
[宮川]公認心理師試験は、マニアックな問題がとても多いという印象がありました。特に第2回では、心理検査が大量に出題されました。しかも、カットオフ値に関する問題が乱発されました。第3回は、医療系の問題がとにかく多かったです。医療従事者でもわからないようなさまざまな内容が非常に多く出題されました。しかし、このマニアックな傾向が第4回や第5回から少しずつ修正されてきました。そして、今回の第6回試験では、マニアックな問題は減ってきました。
 
法律関係や医療系の問題で、知っていないと解けない問題は間違いなく存在します。しかし、難しい問題から優しい問題まで並べたときに必要な量ぐらいの割合で、マニアックな知識問題は減ってきました。むしろ、表面的な丸暗記ではなくて、中身がきちんとわかっているかどうかを問う問題が増えているというのが総括としての印象です。
 
[下山]詳しい問題分析は、研修会でお話しいただくということで楽しみにしています。試験問題として特殊なものは減ってきたということで、これが定着したわけではないかもしれませんが、変化が起きているということですね。

6.来年3月の公認心理師試験に向けてどのような準備が必要か?

[下山]これから試験を受ける人は、どのような心構えが必要でしょうか。
 
[宮川]もし「マニアックな問題の出題に備えなさい」というアドバイスがあったならば、それは現状とは違うと理解しても良いと思います。まずは過去問で出題されている内容、大学・大学院で学んだスタンダードな心理学知識、実習などで経験してきた事柄をきちんと身につけていくことが大切です。地に足のついた勉強をしていくことが求められるようになってきたと思います。
 
今年を象徴する問題として、問139があります。その問題文の中に心理検査の結果が出てきます。

問139 18歳の男性A,医療系大学の1年生。(中略)アセスメントとして実施した心理検査の結果は、Y-BOCSが基準以下の重症度で,MASが基準以上の重症度であった。
DSM-5に基づくAの病態の理解として,最も適切なものを1つ選べ。
① 統合失調症  ② 限局性恐怖症  ③ 強迫症/強迫性障害
④ パニック症/パニック障害  ⑤ 社交不安症/社交不安障害(社交恐怖)

(太字は,本稿によるもの)

Y-BOCSが基準以下の重症度で、MASが基準以上の重症度であったという記述があります。これまでは何点以上は重症で、何点以上は中等度で、何点以下は軽症ということをひたすら覚える勉強をしてきた受験生が多かったと思いますが、もうその時代は終わったと言えます。
 
カットオフ値を丸暗記することに意味や価値があるのかということは、臨床心理iNEXTの研修会でも議論になっていました。そのことが伝わって、このような出題になったのかもしれません。
 
[下山]臨床心理iNEXTのシンポジウムで指摘した公認心理師試験についての批判が出題委員会に届いていたという見方もできますね。
 
[宮川]そうであってくれると嬉しいですね。もちろんY-BOCSが強迫症の検査である、MASが不安の検査であることが分かってないといけない。そのような基本知識が必要だということを、きちんと修正してきてくれたのが今回の139番の問題です。公認心理師試験の傾向が一つ変わったなと感じました。カットオフ値の時代の終わりというと、かっこつけ過ぎかもしれませんが、試験内容の変化を象徴する問題でした。


7.3月試験になることで受験生の負担はどうなるのか?

[下山]今年は5月試験ということで、受験生の準備が大変だったと聞いています。修論発表や就活で余裕がなかったり、就職したばかりで気持ちが切り替わらずにモチベーションが起きなかったりと、試験勉強ができなかったという話を多く聞きました。今年の5月試験でそうなので、来年の3月試験になったらどうなるのでしょうか。
 
私は大学院で教えていますが、3月試験になることで大学院カリキュラムの内容や進め方もが大きな影響を受けることになると思います。そのことと関連して、公認心理師試験の分析結果から、3月試験となって受験生の負担がどのようになっていくかについてご意見があればお願いします。
 
[宮川]現状からお伝えすると、河合塾KALSで実施した模擬試験の結果の平均点は思った以上に高くなかったです。現任者ルートが終了して院生が中心の受験になるので平均点は上がるかもしれないと予想しました。しかし、平均点は上がるどころか、下がっていました。正答率を比べてみると、過去の受験生の方が正答率が高くて、今年の受験生の正答率が低いという結果が散見されました。やはり間に合っていなかった受験生が結構多いのではないかと思います。
 
その傾向は、ブループリントと関連して特に顕著に見えてきます。ブループリントでは、試験の出題基準として大項目1から24まであります。後半の13番以降と関連する問題になると、露骨に正答率が下がっていました。その原因としては、2つ予想されます。
 
一つは、前から順番に勉強しているので、後ろまでたどり着いていないということが原因と考えられます。もう一つの見方は、問題の内容と関わっています。若い番号の前半には、認知、社会、発達と言った、いわゆる基礎心理学領域の問題が多いんですね。後半になると、医療とか福祉とか教育、司法産業といった実践領域、あと法律に関する問題となっている。つまり、心理学の知識は大学院受験で学習できているが、実践領域に関する知識はまだ習得できていないとも考えられます。
 
そのような傾向に対しては、シンプルなアドバイスとしてブループリントの後半から学習しても良いかと思います。前から順番にやっていくと間に合わない可能性が高いからです。6月24日の研修会では、そのような勉強の仕方についても話題提供できたらと思っています。


8.3月公認心理師試験は、大学院教育にどのような影響を与えるか?

[下山]3月試験は、大学にとっても大変なことになります。通常3月は、場合によっては入学試験があり、修士論文検討会や修了要件チェック、そして学位授与式があります。院生にとって3月は、就活や就職準備があります。大学にとっても院生にとっても3月は重要行事が目白押しです。そのような忙しさに加えて、3月は大学院から臨床現場に出る区切りの時でもありました。院生も教員も、修士課程修了を祝して修了式や謝恩会なども催されます。
 
しかし、そこに国家資格試験が入ってきます。おそらく3月内には結果が出ていないでしょう。試験前は受験準備で緊張が続き、試験後は結果が分からず不安な日々となります。修士課程修了が決まってもほっとできません。皆で修士課程修了を祝している余裕は無くなります。
 
3月試験の影響は試験実施の3月だけにとどまりません。3月試験に向けて大学院修士課程2年間のスケジュールは、実質的に前倒しにしていかざるを得ないでしょう。授業内容、実習期間、修士論文執筆と提出などは、時期が早まるだけでなく、省力化、簡略化が進む可能性があります。これは、心理職養成としては健全ではない状況ですね。


9.孤立や孤独を超えて学生をつなぐ場としてのコミュニティの提供

[下山]3月に試験が実施されるようになると大学院は、試験勉強や受験競争の場になっていきます。それは、院生を孤立させ、孤独な受験生を作ってしまわないか心配です。宮川先生は、公認心理師試験の受験指導をする中で受験生の不安などをお聞きになったりしていることと思います。そのようなご経験から、公認心理師試験の3月実施の影響はどのようになると思われますか。
 
[宮川]今回の5月試験を受けた院生については、試験のことが気になりながら、修士論文を完成させ、提出をしていました。常に試験準備のことを心配しながら修論の発表をしなければいけない、しかも4月に就職する新しい仕事の準備もしなければいけないといった、中途半端な状況が続いていました。そのため、何かに集中することが許されない状態になっていました。試験が終わるまでモヤモヤしていた人が多かったと思います。
 
[下山]それが、さらに2ヶ月早まるわけですね。しかも、これまでのように修士課程修了後ではなく、大学院課程の中に国家試験が入ってくることになるので、これまでとは異次元の影響が出てくると思います。その結果、私は、従来の大学院から現場へのプロセス、さらには院生同士のつながりが、3月公認心理師試験で分断されると思っています。
 
それで、臨床心理iNEXTでは、宮川先生や河合塾KALSの協力も得て、公認心理師を目指す学生の支援コミュニティを用意して皆様に提供したいと考えています。受験に関する心配や不安を共有し、お互いにサポートできる学生同士のつながり、受験生と合格者の先輩心理職とのつながり、さらには受験生と教員とのつながり、さらには受験生と受験指導の専門家とのつながりを持てるコミュニティを提供する準備を進めています。

10.皆で問題理解を深める受験勉強コミュニティがあればいい

[下山]このようなコミュニティを作る上でアドバイスをいただけないでしょうか。
 
[宮川]試験問題に取り組むときに、2番が正解、1、3、4、5は違うという勉強の仕方だけになってしまうと、すごく表面的で浅はかな勉強になってしまいます。「2は正解って言われているけれど、こう考えたら本当は正解と言えないのではないだろうか」とか、「1、3、4、5は違うって言われているけど、どうして違うのか」と納得できない場合には、自分の中で考え直し、人に相談したりして意見をもらうことで理解が深まります。
 
そういうコミュニティ型の受験勉強ができると、実験勉強が表面的なものにならない。大学院によってはそのような勉強会を開催したりしていると思います。しかし、今の院生さんは、実習があったりケースがあったりと忙しい中で集合することが困難ですね。そうするとオンライン上のコミュニティに行って、誰かが何か対応してくれる。あるいはちょっと時間差があるかもしれないけど、チャットとかでコメントを書き込んでくれたりする。そうして意見を広げたり深めたりすることができると、とても良いですね。
 
そのような形で時間や空間の枠を超越できるのがオンラインコミュニティの良いところだと思います。今の忙しい院生さんだからこそ、問題について「これって、なぜ正解なのだろか?」と思った時に、そこを質問し、皆で考えられるコミュニティがあると、とても素敵だなって思います。


11.皆で一緒に迷える場を作る

[下山]お話を伺って2点思いつきました。1点は、正解と不正解の2分法の問題です。もう1点は、学生間の交流が難しくなる問題です。
 
試験であれば、正解か否かで評価されます。ところが、臨床活動では、唯一正しいという正解がない。こうかもしれない、ああかもしれないと試行錯誤しながら、少しでも問題の改善を目指していく。そういう意味では、大学院の修業時代は、唯一の正解を求めずに色々と迷う、その仕方を経験することに意味がある。
 
ところが、試験勉強が中心になると、それとは逆の思考スタイルを求める。だからこそ、院生の成長のために色々と迷うことができて、それを受けとめる場を設けることが必要だということに気づきました。昔は、大学院の同期で、あるいは先輩や後輩を含めて事例検討会の後などに飲みに行き、失敗談を話すなど、大いに馬鹿話で盛り上がったものです。コロナ禍の影響もあり、今の院生はそのようなことをしないですね。
 
むしろ、今年修士課程に入ってきた1年生に抱負を話してもらったところ、多くの人が「公認心理師の資格取得のために大学院に進学しました」と言っていました。もう迷いを共有できる場は持てないのかなと悲観的になったりします。今後は、大学院そのものが受験競争の場にならないように、一緒に迷える場を作っていくにはどうしたら良いかと考えました。


12.大学の枠を超えて学生が交流できる場を作る

[下山]もう一つは、大学院の教育課程が忙しくなると、先輩と後輩の交流が難しくなるだけでなく、所属する大学院の枠を超えて大学院間での交流ができなくなるということです。他の大学との合同事例検討会や勉強会ができなくなっていきます。大学や大学院を超えた交流の中で、所属している大学以外の修士課程や博士課程に進むということもありましたが、そのような大学間の移動もしにくくなるのではないかと思います。
 
私としては、公認心理師試験の勉強も含めて大学や大学院を超えて学生が交流できる場を作り、先輩や後輩を交えて情報交換できるコミュニティを提供できればと思っています。そのようなコミュニティが学生の迷いや悩みを共有して受け止め、心理職として成長していく場となればと願っています。
 
[宮川]本当にいいと思います。自分の大学の中だけで完結していると、どうしても意見が固定化されてしまいます。特定の考え方が弱くなることも生じます。大学を超えて意見交流ができる機会は、とても意義があるものだと思います。
 
[下山]河合塾KALSは、大学を超えた受験生のサポートをしていますね。臨床心理iNEXTの心理職を目指す学生コミュニティには、ぜひ河合塾KALSや宮川先生にもご協力をいただきたいと思っています。大学院生と話してみると、皆さん孤独だと感じます。一人、あるいは身近な少人数の仲間で、受験や就活の情報交換をしながらやっています。

12.6月24日の“無料”研修会に向けて

[下山]今こそ、心理職が連携し、協働して若い人のキャリア発達を支援しなければいけない時なのに、至る所で分断が起きている、そんな感じです。それぞれが孤立してやっている印象です。心理職を目指す若い人たちをサポートすることは、本来であれば学会や職能団体が協力して環境を作っていかなければならないと思います。
 
しかし、現実は、そのような期待を持つこと自体が虚しく感じる状況です。それで、せめて学生の皆さんの意見を聞いてどのようなコミュニティが求められているのかを確認したいと思っています。6月24日(土)の研修会について何かご要望はありますか。
 
[宮川]研修会では、僕の方からは公認心理師試験に関するデータをきちんと示したいと思います。マニアックな問題が減ってきているので、スタンダードな内容をしっかり学びましょうということを伝えたいですね。では、公認心理師試験のスタンダードとは果たして何なのか。例えばどういう心理症状がよく出ているのか、どういう検査がよく出題されているのか。それをどのように学んだら良いのかということを、データに基づいて議論することが必要だと思います。過去問題の累積データですね。このようなデータは受験生の方はもちろん、大学の先生方にとっても、学生たちにアドバイスをする上で役立つと思います。ぜひご期待いただけたらと思っております。
 
[下山]本当に[3月]公認心理師試験というのは受験生だけの問題ではなく、日本の心理学関連の大学の大きな課題ですね。今こそ学生を守るためにも大学が頑張らなければいけない。これは、教員の課題でもあるので、多くの大学関係者の皆さまも参加いただけたらと思います。


■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)

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臨床心理マガジン iNEXT 第37号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.37

◇編集長・発行人:下山晴彦

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