保科

全国を巡りながら美術や歴史のことについて。俵屋宗達にお熱。 ※記事は後に修正する…

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全国を巡りながら美術や歴史のことについて。俵屋宗達にお熱。 ※記事は後に修正することがあります。

最近の記事

竹久夢二生誕140年

画家、挿絵作家、デザイナー、詩人、ジャーナリストとして様々な顔を持つ夢二。 2024年は竹久夢二生誕140年である。 夢二の生まれた岡山の後楽園のすぐ側に建つ夢二郷土美術館では「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」が9月6日から開催中だ。 夢二郷土美術館は本館と邑久町にある夢二の生家である夢二生家記念館、記念館のすぐ側に建つ少年山荘の3つの建物からなる。 夢二生家には訪れたことがないので、今回は本館と記念館と生家を往復する入館券付きチケット(2800円

    • やきもの探訪③in有田

      肥前旅行の最終日、佐賀県立九州陶磁文化館 を目指し有田町へ。 中に入るとあらゆるものが有田焼でかわいい。 お財布を出しつつ受付に向かうと「きょうは特別展がないので無料なんです」と言われて面食らう。絵画に比べれば保存修復にお金がかからないからなのか……有田焼は儲かっているからなのか…… 第一展示室へ向かうと、プロジェクションマッピングがお出迎え。磁器を彩る所蔵品のデザインが浮かび上がる。 第一展示室では日本磁器の歴史や特徴ある有田焼について広く紹介。 日本で磁器生産が

      • やきもの探訪② in波佐見

        夏の休暇を利用して肥前に行って参りました。 今回の旅の目的は嵯峨本『伊勢物語』(慶長十三年版)の挿絵作者であり、キリシタンである狩野一雲の故郷について学ぶため。 そして波佐見、伊万里……とやきものの聖地を訪ねるためである。   まずは目指すのは、わたしの中でふんわりしている波佐見焼。 近年、北欧デザインで人気な波佐見焼。しかしやきものの定義は難しい。 その土地の粘土や磁石を使ったものやその土地の窯で焼かれ生産されたものを指すことが多いが、社会の需要に合わせて意匠が

        • やきもの探訪① in兵庫

          やきものの歴史を辿ると、古くは古代から税の代わりとして納められ、日用品として重宝され、工芸品として愛でられ、わたしたちの生活を豊かにしてきた。 越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前と六古窯と呼ばれる窯が日本には存在するが、それには留まらない数の窯が全国各地に興っては閉じ、興っては発展してきた。 今回は六古窯のひとつ、兵庫県の丹波焼を訪ねる。 今回は在来線を楽しむ旅に。 昼到着を目指し、のんびり在来線を乗り継ぎ、バスに乗り換え山の中へ入っていく。 森を抜け窯が並ぶ道を少

        竹久夢二生誕140年

          読書記録⑪-2紫式部伝 平安王朝百年を見つめた生涯

          『紫式部伝』の後半戦。 二人目の夫を宣孝を亡くした紫式部は、時折、宣孝を思い出したかのように、和歌を認めては想いを馳せる。そのような紫式部が『源氏物語』を執筆するに至った背景を知るためには、紫式部自身の来歴に迫りながら紐解いていく必要がある。 物語文学において作者不詳のものが多い中、『源氏物語』は家集や日記が残っている稀有な例である。 しかしながら、作者本人においては、近親に至るまで文献が整備されてているにも関わらず、彼女の来歴に関わる決定的な史料が未だ出てきていない。

          読書記録⑪-2紫式部伝 平安王朝百年を見つめた生涯

          読書記録⑪紫式部伝 平安王朝百年を見つめた生涯

          今回の読書記録は上原和作著『紫式部伝 平安王朝百年を見つめた生涯』である。 今回は、今年の大河ドラマの「光る君へ」の主役は紫式部ということで選んだ一冊だ。 俵屋宗達は物語絵の名手であり、『伊勢物語』や『平家物語』、そして『源氏物語』の絵を残している。写真の後ろにある屏風は、『源氏物語』を主題とした俵屋宗達の代表作のひとつ「関屋澪標図屏風」である。よってわたしは、『源氏物語』には屏風を見ながら場面を説明できるくらいには触れてきたが、作者である紫式部についてはほとんど知らない

          読書記録⑪紫式部伝 平安王朝百年を見つめた生涯

          読書記録⑩ 能の本のあれこれ

          わたしが能に興味を持ったのは一昨年のこと。 嵯峨本と同系列の装飾を持つ謡本があることや、本阿弥光悦が謡を趣味としていたこと、俵屋宗達が遺した作品は能の演目と関連があることなどから、取っ付き難い内容ではあるが、宗達の時代を知るために勉強したいと思っていた。 能とはいわゆる能楽の一部であり、室町時代に観阿弥・世阿弥親子が大成した舞台芸術である。能楽は能と狂言で構成され、能はシテという主役を中心に笛、小鼓、大鼓、太鼓、謡の音楽と舞による演出をする。一方、狂言では台詞のやり取りを

          読書記録⑩ 能の本のあれこれ

          読書記録⑨画僧古磵

          本日の本は2017年に奈良の大和文華館で開催された特別展図録『没後300年画僧古磵』 明誉古磵は浄土宗の画僧で奈良や京都を中心に活躍した。 私がこの画僧の作品にであったのは、角倉素庵が隠遁した嵯峨の中院山荘に行く途中であった。 天龍寺やお土産が並ぶ商店街を北へ抜けていくと嵯峨野の顔である清凉寺の山門が現れる。 嵯峨は古来から歌枕として親しまれ、光源氏のモデルとなった源融の別荘があったとされるなど旧跡が数多く残っている。 清凉寺の本堂にはインド由来の木造釈迦如来立像が

          読書記録⑨画僧古磵

          読書記録⑧平家納経 全三十三巻の美と謎

          謎多き俵屋宗達の基準作のひとつである平家納経。資料的根拠はないが、その斬新な意匠と発想、金銀泥の扱いの巧みさから願文(櫛筆文書)、嘱類品、化城喩品は宗達の手によって表紙・見返しの補筆がされたと考えられている。 今回この本を選んだのは、平家納経についてこれまで展覧会や図録を当たって調べてきたが、図像に関する情報中心に集めてきており、平家納経が作られるまでの背景については深く触れて来なかったからである。 平家納経は平家一門の結縁を願って平清盛が厳島神社に納めたといわれる法華経

          読書記録⑧平家納経 全三十三巻の美と謎

          空から謡の降るまち金沢

          金沢に行ってきました。 地震により様子を伺っていましたが、加賀はほぼ通常通りということを知り合いに聞き決行。 年明けに観に行く予定だった五十嵐派の蒔絵の展示期間に間に合い一安心です。 五十嵐派蒔絵のある石川県立美術館や国立工芸館も巡りましたが、きょうは金沢と宗達の繋がりを中心に書いていきたいと思います。 京都でサンダーバードに乗り換え、景色を楽しみつつ読書。 東博で光悦展があるのと、光悦は加賀と深い縁を持つことから今回の旅のお供は『本阿弥行状記』です。 光悦の父の光

          空から謡の降るまち金沢

          読書記録⑦ 東山魁夷著 風景との対話

          『風景との対話』東山魁夷著 普段あまり読むことのない作者自身の著書です。近代の作家だと日記やインタビューが残っていることはそんなに珍しいことではないかと思います。 しかし普段は宗達なんかを追っているからか、そんな風に時代を行き来していると作者自身が作品について語ることに不思議な感覚を覚えます。 東山魁夷との出会いはいつだったか。よく知らない画家をなぜ観に行ったのか、理由も時期も定かでないのですが、おそらく神戸市立博物館で唐招提寺の障壁画の展示があったときだったと思います

          読書記録⑦ 東山魁夷著 風景との対話

          読書記録⑥ やまと絵ー受け継がれる王朝の美ー

          あけましておめでとうございます。 年内に更新するとか言いつつ、できませんでした。今年もこんな感じでいきたいと思いますのでやれやれと思ってやってください。 年始からぼちぼちと昨年の図録の消化をしております。2023年11月にやまと絵展を観に行ったのですが、2泊3日をリュック一つで行ったので荷物のことを考えて通販しました。東京に行くときは図録の通販をしている美術館が多いので、買う図録を吟味してこの方法を次からも使いたいです。 買わないと思っても展示が良かったら買ってしまうんで

          読書記録⑥ やまと絵ー受け継がれる王朝の美ー

          読書記録⑤徳川義直と文化サロン

          お久しぶりの更新となりました。 月1では、と思っているのですがなかなかそうもいきません。 今回は徳川美術館の平成12年の展覧会図録『徳川義直と文化サロン』です。 表題を指で隠すという痛恨のミスをしている……書斎が寒くてリビングで読んでいるのですが、蛍光灯が写り込むので持ったらこんなことに…… 徳川義直は徳川家康の第九子、お亀の方との子で尾張徳川家の初代当主として幕政に関わった人物です。「類聚日本紀」編纂の企画をしたり、和歌の揮毫や書画を残していたりします。 とても欲し

          読書記録⑤徳川義直と文化サロン

          読書記録④ 新日本古典文学大系

          気になっている古典を漁りに図書館へ来ました。 まずは琵琶湖周辺の伝説、「俵藤太(たわらのとうだ)物語」から。 新日本古典文学大系の『室町物語集 下』に入っていました。 話はざっくり、藤原秀郷(俵藤太)のむかで退治と、龍の化身である美女にむかで退治のお礼に褒美を貰う前半と、平将門討伐の後半に分かれます。 平将門討伐や三井寺縁起なんか様々なお話が混さってできあがったお話のようです。話がわかったので今度は絵巻の図版探してみます。 お次は『閑居友(かんきょのとも)』 『閑

          読書記録④ 新日本古典文学大系

          読書記録③ 近江と能ー霊場・名所・物語ー

          こんなに頻繁に更新を続けられているのは一冊一冊が短いリーフレットや図版の多い図録を読んでいるからで、分厚い本は並行してぼちぼち読んでいます。 今回は彦根城博物館で買った『近江と能ー霊場・名所・物語ー』です。琵琶湖をぐるり回って気付いたのですが、旧跡が本当に多い。よって能や絵画の主題になることも多い。 と言いつつ、琵琶湖旅行では有名な主題である竹生島(眺めた)や白髭神社(通り過ぎた)、園城寺(宝物館が休館だった)も寄れてないんですけどね……! あ、「兼平」はクリアです(木

          読書記録③ 近江と能ー霊場・名所・物語ー

          読書記録②建礼門院と安徳天皇

          こんにちは。 遠征で入手した本を消化中です。 読む度に気になる本が増えてきてですね、そろそろちゃんと選別して古本屋に行かないと新しい本棚を買ってしまいそうです。 本日はこれ。 赤間神宮で買いました。 シンポジウムの書き起こしで、仏教文学畑の人のようです。 『平家物語』って様々な本があって、それぞれの本に親子が関係だったり兄弟関係だったりの説があります。 ご存知の通り『平家物語』は盲目の琵琶法師の語りによって残ったというのは有名な話ですが、琵琶法師の台本になったとされ

          読書記録②建礼門院と安徳天皇