やきもの探訪① in兵庫
やきものの歴史を辿ると、古くは古代から税の代わりとして納められ、日用品として重宝され、工芸品として愛でられ、わたしたちの生活を豊かにしてきた。
越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前と六古窯と呼ばれる窯が日本には存在するが、それには留まらない数の窯が全国各地に興っては閉じ、興っては発展してきた。
今回は六古窯のひとつ、兵庫県の丹波焼を訪ねる。
今回は在来線を楽しむ旅に。
昼到着を目指し、のんびり在来線を乗り継ぎ、バスに乗り換え山の中へ入っていく。
森を抜け窯が並ぶ道を少し走ると兵庫陶芸美術館に到着。
予定通り正午前には到着し、まずはHPに載っていた併設レストランで腹ごしらえ。
篠山にそびえる山の名を冠したイタリアンレストラン「虚空蔵」へ。
陶芸美術館に併設のカフェやレストランでは、実際にやきもので料理を楽しむことができることが多いが、虚空蔵も例に漏れず、オーダーメイドで作られた丹波焼が使用される。
レストランのデッキに出ると、丹波焼の窯が一望できる……というコンセプトであったが木がかなり生い茂って窯はあまり見えない。
腹ごしらえをしたところで、通路を探検しつつ展示室を目指す。
今回の展示の目当ては「兵庫やきもの探訪ー五国の窯場を巡るー」
常々思うことだか、ミュージアムのコレクション展や常設展ほど面白いものはない。その地域についてあるいは特定の分野において長く研究され、そこでしか観ることのできないもの、歴史を体系的に学ぶことができるというのは贅沢なことである。
兵庫陶芸美術館は田中寛コレクションを中心とするが、今回のテーマ展は近年寄贈された高瀬正義コレクションの公開であった。高瀬コレクションは兵庫県産のやきものを網羅している。
【丹波】
平安時代末期から800年の歴史を誇る古窯。山の斜面を這うように作られた窯は「蛇窯」と呼ばれる。江戸後期には篠山城下にて王地山窯、明治期には篠山窯が興る。
土部か焼成によって赤く発色し、赤土部と言われる状態になっている。黄土、牛淵ドベ、土灰を混ぜた栗皮釉がかかっている。自然釉が特徴の丹波焼の良さが出ている製品。
こちらは田中コレクションより。
※コレクションルームが別にある。
【摂津】
江戸後期に京都や肥前から陶工が集められ、時代の求めに応じて、文化人たちの茶道具や海外向けの華やかな意匠の製品が作られた。豊かな文化の流入出を物語る製品が多く見られる。
川合玉堂の絵を元に作られた神戸絵付に分類される製品。神戸絵付は明治初期に始まった色絵陶磁器である。素地や陶工、絵師は九谷などの有名な産地から集められ、華やかな意匠の製品は神戸港から海外向けに出荷された。
金彩が薩摩焼と類似しているため「神戸薩摩」と呼ばれた。
チーム摂津はセンスの良さが光る。
摂津では中国の製品に習って作られた青磁も。
【但馬】
現在まで続く白磁の超絶技巧(※鑑賞に夢中につき写真を撮り忘れる失態、凄かったです)。
※下部の画像は兵庫陶芸美術館HPよりお借りしました。
【播磨】
姫路城下より窯場が築かれ始め、地元の土を使った素朴な製品が作られた。柴田善平が指導した鴨脚(おうきゃく)焼は自宅前に鴨脚樹(いちょう)があったことに因む。鴨脚焼から独立した中川勇次郎によって鷺脚(ろきゃく)焼の窯が開かれるが、二代で閉窯する。
【淡路】
賀州珉平が京都から尾形周平を招き、技術を導入したことにより珉平焼が興る。京焼の色絵陶器や中国陶磁器、漆器、金属器の写しなどが生産された。東日本ダントールタイル株式会社へと現代まで続いている。
尼崎で活躍した近現代の陶工の展示。「多技多才」の言葉通り製品もデザインも何でもできる人。
兵庫陶芸を広く観て、現代陶工まで堪能したあとは帰路も兼ねて散策。
兵庫陶芸美術館はコレクションを中心にテーマ展を開催しているので、基本的にいつ行っても兵庫陶芸を楽しめるのではないかと思う。
次回は佐賀、長崎をうろいてきたので波佐見焼についての予定。
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