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「認知 → 判断 → 実行」における「認知」の重要性

「既知」の状況にする

 前回の記事ではスペインをはじめとした最近のサッカーのトレンドともいえる「認知 → 判断 → 実行」における「認知」について説明した。

 「認知」には2つの方向性があり、どちらの「認知」もサッカーのパフォーマンスに影響することを説明してきた。

 本記事では、前回の記事で説明した「認知 → 判断 → 実行」における「認知」の内容を補足する内容を記載していく。

 まずは、振り返りとして、前回の記事の中でも取り上げた記事の内容を引用する。


以下、記事の内容
 ↓

『なぜ今「認知」なのか。サッカーの戦術的な理解を広く深めることの意義』より

「認知」を説明する時によく言われるのが、ピッチ上で経験する多くの状況をすでに知っている『既知』の状況にすると判断を自動化できるということ。
 
 既に知っていれば考えなくてもプレーできるようになるので、そのために戦術的なトレーニングでそういう状況をたくさん経験するようにしましょう、と。 


 ここにも記載されているように、「認知 → 判断 → 実行」における「認知」を向上させるためには、「既知」の状況にすることがポイントであるといえる。

 

ハーバード大学の実験動画


 ここで、INEFC大学院でも使用されたビデオを紹介したいと思う。

 このビデオは分析の授業の時のに使われたものだが、「認知」の重要性についてのポイントも含まれた実に面白い動画である。

 

▼ 動画内容

白チームが何本パスを回すか数えてください。】

 この動画では、黒いシャツと白いシャツを着たチームがそれぞれバスケットボールを持って、入り乱れながらチームメイトにパスしていく。

 入り乱れている状態なので集中して数えるようにすることが重要である。

 1分ほどの動画なので、続きを読む前に観ていただければと思う。

しっかりとパスの回数を数えられたであろうか?

正解は・・・・






15回


 少し簡単だったかもしれない。

 しかし、この動画には隠されていることがある。
実はこの動画の中に「ゴリラ」が出てきたのに気づいたであろうか?

 気づかなかった人はもう一度ご覧になってくれればと思う。


 この動画は、Christopher ChabrisとDaniel Simonsによる「選択的注意」の実験の映像である。

 この実験から、2つのことを明らかとなった。

 周りで起こっていることの多くを逃している

・ 不足・見落としていること自体を知らない


 私たちは世界をそのまま見ていると思われるが、目から入った情報は脳で処理されることで初めて認識している。
 

 「注意を向ける対象が変わることで、見えるもの、見えていないものが出てくる」というわけである。

 つまり、「認知 → 判断 → 実行」における「認知」とは知覚情報をどのように捉えるのかともいえるのである。


「認知」を上げるポイント

 Brewer は「認知」について以下のように述べている。

 知覚情報は、私たちの決定と行動を導くと同時に、私たちの知識は私たちが世界を知覚する方法に影響を与える(Brewer and Lambert、2001)

 つまり、先に引用した記事の中にも記載されているように、「既知」の状況を作ることで、私たちが世界(サッカーでいうとピッチ)を知覚する方法に影響を与えることができるのである。

 この実験動画も「ゴリラが出てくるよ!」って言ってからこの動画を見るだけで、「認知」は変わり、「何をするべきか(見るべきか)」という「実行」にも変化が現れるということである。

 「認知 → 判断 → 実行」における「認知」に影響を与えることができるのである。


 次に、上記の内容をもとに次の動画を観てみる。

 先ほどの実験動画と同様に白チームのパスの回数を数えてください。




正解は・・・・


16回


いかがでしたか?
今回の動画ではゴリラに気付くことができたであろうか?



しかし・・・今回はまた少し以前の動画と異なる。



 背景のカーテンの色が変わったことに気づいたであろうか?

 また、黒のチームの一人がいなくなったことに気づいたであろうか?


 何を見るべきかを知っているかが「認知」に影響することを体験できたであろうか。

まとめ

 上述してきたように、何に注目すべきかで「認知」に影響を与えることができるのである。つまり、選手に何に注目するのかを教えることで、「認知 → 判断 → 実行」における「認知」は向上させることができるといえる。

 そのためにも、ピッチで起きている現象がどのようになっているのかを指導者がしっかりと分析し、前回の記事で説明したポイントを選手に学ばせることが極めて重要であるといえる。

 しかし、一度知覚した情報を処理する能力自体もパフォーマンスに重要である。それこそが、「認知 → 判断 → 実行」における「認知」ではない方向性の「認知」のことである。脳や神経に深く関係しており、近年の研究からサッカーのパフォーマンスに大きく影響していることが言われている。

 次回以降の記事で知覚情報を処理する能力である「認知」について記載していけたらと思う。

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