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生演奏文化大国は南米!? 〜地方ライブハウスの未来は「演奏家による啓蒙」にかかっている!〜


この前tweetしたものが、つぶやきの割にかなり長い。これはまとめておいた方が良いだろうと、とりあえずこちらにそのままアップしてみることにしました。

それでは、そのままどうぞ。

この前図書館行った時、デジタルコンテンツのさまざまな統計が書かれた本があったので気になってしまい、ざっと目を通してみたんです。おそらく自分のお金を払っては購入しない本でしょう。

私が気になったのは、やはり「音楽業界」。そこには主要数カ国の全体収入の内訳と割合が書かれていました。
(※ 演奏収入の他には、CDやデジタル音源の売上収入などですね。)

皆さんは、世界主要数カ国の中で「演奏収入」が多い国はどこだと予想しますか?
その本のデータによると、ある2国がダントツでした。

正解は... 南米の《アルゼンチン・ブラジル》


しかも、アルゼンチンは音楽収入全体の70%が「演奏収入」なんですよ!!!!

多くの著名な演奏家たち(特にジャズやフュージョン系)が、一度は南米の音楽に取り憑かれてしまう意味が理解できました。演奏収入が高いという事は、演奏家業界自体が活気に溢れているということが容易に予測できます。

レベル高いセッションが、さまざまな場所で日々行なわれていることが簡単に想像できますし、演奏家はもちろん、客も間違いなく耳が肥えているでしょう。

絶対に「良い目利き」が多いはずなんです!

これが非常に大事なこと。

多くの良い目利きがいることで、「演奏家」という価値そのものが高く評価されますし、良い演奏家が正しく評価されるとなれば、「もっと良いものを提供したい」と演奏家たちはヤル気に溢れ、全体レベルが上がるでしょう。
競争率は高いとは思いますがw。

南米音楽の特徴は聴いた心地良さとは異なって、リズム表現・コードが独特で難しく、もともとスキルが高くないと再現できない音楽でもあります。

他の国の演奏収入をご紹介すると、アメリカは想定外に低くて7%。カナダは11%。ヨーロッパ(仏・独・伊など)はだいたい20%くらい。中国は確か2、3%...。こう比較すると、南米が異常なのかもしれませんね。

生演奏文化大国はダントツ、南米だ!!

ちなみに、日本の演奏収入は...6%でした。日本のミュージシャンは辛いですよ...。ハッキリ申しまして、これ以上、良くなる気配は一切感じません。


以上が、tweetした内容です。長いですねw。

この本の情報ソースを調べていない点が、我ながらまだまだ甘いなと思いますが、このつぶやきは、私が常日頃からライブハウス・演奏業界に思っていたことです。

なぜ、私が悪くなる一方だと思うのか?

まず、演奏家は基本的に職人気質。職人さんは、興味ある事を正確にコツコツやり遂げる、深掘りするのが得意です。だから、自分の演奏スキル向上だけを志し、業界全体を盛り上げることや演奏家の地位向上まで考えが及ばない人が多い。

自分の事だけしか考えられない人が多ければ、業界全体が縮小していくのは当たり前でしょう。

小〜高校生を受け入れて、ビッグバンド内で音楽教育を施すというイベントが行なわれることはありますが、そのようなイベントで業界自体の収入が上昇することはすぐには考えられないでしょう。

数年前から、国内で行なわれていた有名ジャズフェスも軒並み消滅していると聞いています。

また、職人気質な演奏家には「多くは語らない。音楽で表現するべきだ」のような凝り固まった考えを持っている人が多いのも原因かと思われます。

そして、日本のジャズって、他の国と比較すると特殊な進化を遂げたようなんですね。

コーヒー1杯で何時間も店に粘って、カウンターの机を指でコツコツと叩きながら、目をつぶってリズムを刻み続ける【自意識過剰スタイル】で、ジャズの名盤をこだわった音響で聴き、小難しい顔をしながら小難しい議論を交わし合うっていう喫茶店が、ロングロングタイムアゴーあったようなんですw。

「ジャズ喫茶」と呼ばれるものですね。

Wikipediaには、昭和初期から始まったもので60年代にもっとも盛り上がったと書かれていました。

私は「こだわること」自体は否定しません。

ただし、それがいき過ぎると、日本のオタク文化に象徴されるような「たこ壷化現象」「マニアがジャンルを潰す」という傾向が生まれます。

日本ジャズ界にもそれが垣間見えるんですね。

以下の記事を読んだ私は、「日本ジャズ界と近い現象だな。」と思いました。ぜひ読んでみてください。


他にも、日本という国自体が芸術・文化の価値をわかっていない、重んじない、受け容れる器がないという要因も大きいと思います。

不景気や経費削減等の理由からも、毎晩生演奏を行なうライブハウスは演奏メンバーが削られ、バンドは縮小化。生演奏を売りにしている店や演奏家を有り難がってくれる店は減少してきています。

このままだと「小さな町の演奏家」は淘汰され、生演奏は一部のトップミュージシャンと一部の富裕層しか楽しむことができないモノになってしまうだろうと私は予測しています。

時代の移り変わりによって、失われてしまうものもあるでしょう。
それが世の常ではあります。

しかし、元ジャズボーカリストであり、生演奏を愛している私にとって、これは死活問題です。

さまざまな要因から演奏家が活躍できる場所が減少しつつあるのですが、もっとも大きな原因だと思っているのは、演奏家自身が《生演奏の価値》を守ったり、伝えたりすることをしてこなかったこと。

これは演奏家だけでなく、音楽評論家の仕事でもあるのかもしれません。

音楽を演奏する事・生演奏・楽器の素晴らしさを一番良くわかってるのは「演奏家」なのだから、こういうところにも視点を設けて、社会に訴えかけていくべきだと私は思うんです。

ジャズの演奏家は「職人気質」で「喋り下手」。だからこそ「音によるコミュニケーションが得意である」という演奏家の性質も私は理解しています。

そして、ジャズ演奏家は、他の音楽ジャンルと比較して、非常に高度なスキルを持っていることを私は知っています。

しかし、自分の「演奏」=「売っている商品」=「自分が血ヘド吐いて努力し、育て、愛してきたもの」を売る努力もせず、理解してもらおうと語ることもせず、時代の流れにあらがってもしょうがない...とあきらめるのか?

いや!!私はそれではダメだと思います。

なぜ人間が奏でる「演奏」は、CDやデジタル音源と比較して、特別で素晴らしく、価値のあるものなのか?

演奏家同士の中で、日々の演奏中、どのようなミラクルが起きているのか?

「演奏の素晴らしき世界」を紐解いて、わからない方に説明していく必要があるのではないでしょうか?

これらを真剣に、語っていく必要が演奏家本人たちにあると思うのです。理解してもらおうという努力は必要ですよ、やっぱり。

毎晩、決まったお客さんに聴いてもらう事が楽しいですか?

それで進歩や喜びは感じますか?

これらは、特に、地方の演奏家に私が言いたいことです。

地方のライブハウスが経営困難なこと。
北海道札幌・沖縄那覇にて約10年程演奏してきた私は、ちょっと想像するだけでわかります。

誰もやってくれないのなら、自分たちでやっていくしかない。

これは、どのような仕事においても【基本のキ】なのではないでしょうか。

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