見出し画像

脳科学のエビデンス研究を基にした、就労・復職プログラムの開発についてインタビューしました。

 こんにちは。

 インクルード公式note編集部です。

 前回は、インクルード初の試みとなるYouTubeチャンネルの立ち上げについてお伝えしました。第9回となる今回は、インクルードが運営する就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所、復職・再就職支援事業所の「ニューロワークス」「ニューロフィット」「ニューロリワーク」のプログラムの開発秘話についてご紹介します!

1.脳科学を休職・復職・就労に活かす取り組み

 前回でもご紹介したように、一般的に就労移行支援といえば臨床心理士や公認心理師との関わりが深い一方で、脳科学の領域とも深く結びつけている支援事業所は全国的にみても珍しいものです。
 私たちインクルードは心理士(心理師)だけでなく、「ブレインフィットネス研究所」を併設し、脳科学者や脳科学の研究員とともに就労や復職に関するプログラムを開発・提供しています。

 そこで今回は、インクルードのコアのひとつともいえる「脳科学」を軸に、就労・復職プログラムがどのように開発されているのかについてご紹介します。インタビューにお答えいただくのは、ブレインフィットネス研究所 研究員 兼 インクルード株式会社 プログラム開発チームでマネージャーを務める江崎(えざき)さんです。

2.プログラム開発ってどんなお仕事? 開発者にあれこれ聞きました!

編集部(以下、「編」):
本日はよろしくお願いいたします!


江崎(以下、「江」):
よろしくお願いいたします。


編:
プログラム開発そのものに関してお話しいただく前に素朴な疑問なのですが、どのような経緯でプログラム開発という業務に携わることになったのでしょうか。


江:
もともとは前職でサービスやプログラムを作る仕事をしていたということもあり、インクルードの入社当時から、脳の健康な状態を維持するために行う総合的な取り組みであるブレインフィットネスに関する商品開発を担当していました。そんな中、新たに就労移行支援事業がはじまることになり、ブレインフィットネスサービスを盛り上げるべくプログラム開発チームへと配属になりました。


編:
なるほど。インクルードが脳トレジムの運営から就労移行支援事業へと移ったときのお話とリンクするわけですね。
(関連記事はコチラ→「脳トレジム」から「就労移行支援」への事業転換

就労や復職を目指すためのプログラムを開発するとなると、大変なことも多いのではないでしょうか。特に難しいことや苦労などはありますか?


江:
一番難しいのは、やはりアイディアを支援として「設計・具体化」することですね。

当然のことですが、開発するプログラムには全て、支援としての役割が求められます。だとすれば、どのようなアイディアであってもそれをどのように支援として機能させるか、その方法や仕組みについてプログラムという枠組みの中で具体化していかなければなりません。


編:
アイディアそのものは、あくまで手段のひとつであって決して目的ではないということですね。


江:
その通りです。たとえば「新しいエビデンスが出てきたからそれをプログラムの時間に伝えるだけ」では、ただの情報伝達に過ぎないんですね。

「誰のどのような課題に対する支援なのか?」または「その支援はどのような形で提供されるべきなのか?」など、プログラムは支援である以上、それらの問いを徹底的に考え抜き、暫定的な最適解として設計・具体化されるべきだと考えています。

研究内容によっては具体的な方法の明示がない場合も多く、プログラムとして提供するとなった場合は非常に苦労します。

簡単な例を挙げると、ある研究論文では「運動はメンタルヘルスに良い」という提言のみで、どのような運動を、どのくらいの強度で、どの程度やれば良いかまでは書いていないんですね。それでも実際に支援として提供するとなった場合、その点を具体化する必要があります。非常にやりがいがあるのですが、同時に難しさを感じる部分でもあります。


編:
いわゆる「生みの苦しみ」とも呼ばれる、充実感や達成感の裏にある超えるべき大きなハードルかもしれませんね。

これまでにさまざまなプログラムを開発されてきたと思いますが、その中でも特に想い入れがあるものはありますか?


江:
現在開発中なのですが、ブラッシュアップ版のブレイフィットネスプログラムですね。「支援」という視点から、サービス自体を再設計しています。

事業所を利用いただいている方々の中で生活習慣が課題となっている利用者さんは多く、ブレインフィットネスはこの課題を解決する「支援サービス」として存在しています。とはいえ、従来のブレインフィットネスでは運動・知的刺激・食事・睡眠・ストレスケアという分野についてエビデンスを紹介する、もしくはエビデンスに基づくアクションを紹介する、といった内容で運営されており、本当の意味で「支援として機能しているか?」という点については、必ずしも満点とはいえない状態であったと考えています。

そこで、さらなる支援の質の向上を目指してサービスを大きく見直しています。具体的には、「生活基盤を整えるためのプログラム再編成」「プログラム内での行動計画作成」「行動に対する動機付け配慮」といった点で、サービスをブラッシュアップさせています。


編:
良いものを、より良くするために日々の研究と開発があるというわけですね。

プログラムを開発・運用していく中での苦労はお伺いした通りですが、特に嬉しかったことや印象的だったことがあればお聞かせいただければと思います。


江:
印象的だったのは、テレワーク支援プログラムを運用中の出来事ですね。ある事業所でプログラムを運営してくださっている支援員の方から「良いアセスメントになった」という話をいただきました。

最初は「プログラムなのにアセスメント? どういうことだ?」って思ったんですけれど、話を伺ってみると、“事前に自分の仕事を設計してその通りに実行できたかどうかを検証するという模擬就労のプログラムを通して、その利用者さんの仕事の傾向を支援員、利用者さんともに知れて良い気付きになった”ということだったんです。その意味で、良いアセスメントになったということでした。

私はプログラムについて、「何かをできない状態を、できる状態にすること」が一番の支援内容になると考えていたんですが、それだけがプログラムの価値ではないということに気づくことができ、非常に印象に残る出来事になりました。


編:
事業所の方々と触れることでプログラムの内容を良いものにしていくことができるだけでなく、プログラムと支援のそれぞれの位置づけを見直すきっかけにもなるということですね。そう考えると、事業所と開発チームは今後もいっそう深く関わり合っていくことが求められますね。


江:
そうですね。より良い支援を実現するため、プログラムの効果検証を行い、その効果データを蓄積する動きをしていきたいと思っています。その考え方を共有し、ともに運用していけるよう各事業所と連携をしていくことを考えています。こうした取り組みは、ブレインフィットネス研究所の活動にも大きく関わってくると思いますので、まさに全事業所や幅広い部署で連携していくことになっていくと思います。

開発フロー-01

編:
今後、新たにつくってみたいプログラムなどはありますか?


江:
個人的には、資格取得に向けた学習方法に関するプログラムをつくってみたいと思っています。どのプログラムにもあてはまることですが、プログラムに対して科学的な観点から介入することができます。科学的な観点から見直すことで、イノベーションを実現していくことができればと考えています。


編:
江崎さんはブレインフィットネス研究所の研究員としてYouTubeチャンネル「ニューロチャンネル」にも出演されていますね。


江:
はい。ブレインフィットネス研究所での研究内容も踏まえて、主に脳科学の観点からメンタル不調に関しての対処法や再発防止などの情報を発信しています。ご興味のある方は是非ご覧いただければと思います。

【モーニングルーティン3】 森下 様 (2)

最新動画はコチラから:https://www.youtube.com/watch?v=W97ifcNHPeY

編:
「脳科学」を軸とした就労や復職の支援の裏側には、いろいろな想いや取り組みがあったんですね。研究やプログラム開発、さらにはYouTubeへの出演などご多忙かと思いますが、これからもさまざまなプログラムを発信いただければと思います!

本日はありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?