見出し画像

2020年コロナの旅20日目:丘とカタツムリと空飛ぶヤコブ

2020/01/05


この日、やはり花のことが気になっていた私は、やたら早起きをしてロビーに座ってライターの仕事を進めていた。やがて、他に出口があるわけでもないので当然花がやってくる。大きな荷物を曳きずっている
「あ、コウスケ、また会ったね。」
「うん、最後にお別れの挨拶をしたくて待ってたんだ。」
「そうなの?ありがとう!」
会えたことは会えたのだが結局、当たり障りのない会話だけを交わして、私は花を見送った。花に嵐のたとえもあるさ。


さて、今日は、またしても友人のロヴィサが勧めてくれた観光地へ足を運んでみたい。
Skinnarvikdberget(スキナルヴィクスベルゲット)という長い名前をもつその丘からは、ロヴィサによればストックホルムの街が360度見渡せるという。本当は年越しの時の花火大会の、知る人ぞ知る特等席として教えてもらったのだが、年越しの時はご存知の通り私は病気をしていてとても冬のストックホルムの寒風の中を丘登りできるコンデションではなかった。

体力も気力も十分に回復した今、気分転換に行くには調度良い目的地に思われた。


実際のところ、それは丘登りという名前すら大仰に思える程度のものであった。高さは確かにそれなりにあるのだが、電車とバスで頂上近くまで行けてしまう。あとは階段をいくつか上るだけだ。そこから見える景色は、確かに爽快であった。

画像2

丘に至る道。石畳が小気味よいリズムを刻む。


地元の人たちのデートスポットとなっているらしく、身を寄せ合って暖をとっているカップルが散見された。

画像1

病み上がりで体を冷やすのもよくない。ひとまず宿に戻ることにしよう。


途中でいつものようにMAXでハンバーガーを食べ、lidl(「リドル」というスーパー)で冷凍食品を買う。


宿のすぐそばに興味深いレストランがあった。

画像7

画像4

店名は「タイ寿司」で、おすすめ料理はビビンバ。


ヨーロッパのスーパーでは美味しいパンをごく安く買うことができる。種類も豊富で、日本の下手なパン屋さんよりも質もよいとさえ感じる。

画像6

プレッツェルとクロワッサンが合体した変わり種。


スウェーデンはデンマークと並んでシナモンロールの発祥の地と目されているらしい。スウェーデン語ではKanelbulleと呼ばれるが、これは単に「シナモンパン」のような意味である。ちなみにドイツ語ではSchneckenというが、これは直訳すると「カタツムリ」という意味で洒落が利いている。ドイツ語では「@」のこともカタツムリと表現するが、ドイツ語話者はカタツムリ好きの人々なんだろうか。


話がそれたが、スウェーデンにいる間に本場のシナモンロールを食べてみたかったため、リドルで買ってみることにした。美味しそうなブルーベリーパイもあったのでついでに買った。

画像8

日本でいう「デニッシュ」のような生地はヨーロッパでは「ウィーン風」と名付けられることが多いように思う。これは「ブルーベリー入りウィーンパン」として売られている。


宿に戻り、食事にする。本日のディナーはチキンの「空飛ぶヤコブ」。シナモンロールに可愛い名前を与えていないからと言ってスウェーデン人にネーミングセンスがないかというとそんなことはなく、「空飛ぶヤコブ」や「ヤンソンさんの誘惑」など、伝統的な家庭料理には命名力が光るものが多い。


さて今日の「空飛ぶヤコブ」であるが、これは基本的にはクリームシチューである。では何が空飛ぶヤコブを空飛ぶヤコブたらしめているのかというと、バナナが入っている点であろう。ちょっと甘みのある芋、くらいの存在感しかないが。

画像7


リドルの冷凍ヤコブは、昔船橋のイケアで食べたものとは比べ物にならないほど貧相ではあったが、価格が価格なので仕方あるまい。

画像9

画像10


さて、この日はSNSで知り合った別の女性、越典という人と会ったのだが、あまり楽しい逢瀬ではなかった。スウェーデンとベトナムのハーフの女性で、見た目は麗しく、洗練された雰囲気を身にまとっていたが、少し態度に鼻につくところがあり好きになれなかった。自分も大いに不遜な人間なので人のことは言えないのだけれども。


彼女とはストックホルムのスタバ的存在であるEspresso house(エスプレッソハウス)に行き、私はココナッツがまぶされたチョコレートケーキを食べた。これはおいしかった。


外に出ると大粒の牡丹雪が降っている。越典と雪の中、街をしばらく歩いて周る。鉄道の上にかかった橋の上からは、遠くまで見渡せる。雪でけぶってなんとなく物悲しい。

画像10


結局、寒いので各々家路についた。二人で話しながら歩いた道は、一人だと随分ながく感じられた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回予告

2019年12月17日に始まった私の世界旅行。1年越しに当時の出来事を、当時の日記をベースに公開していきます。

明日は2019年1月6日。今に至る友人となるドイツ人アイラとの出会い。ネルソン先輩に対する意趣返しはなるか。思わぬ博物館島トレッキング発生、凍える足。こうご期待。

スキぼたん押していただけると励みになります。よろしくお願いいたします!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?