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fictional diary#6 どこに向かうの

移動中にふしぎな標識をみつけた。方向と行き先を指し示すプレートには、それぞれ実在する公園や建物の名前が書かれているのだけど、実際にそのとおりの方向に進んでみると、目指す目的の場所がいつまでたっても現れない。おかしいなと思って、もう一度標識のあるところまで戻ってみた。プレートをよくよくみてみると、どうやら標識の矢印が右に90度ずれているみたいだった。検証してみようと、今度はべつの方角に進んでみた。そうするとやっぱり、プレートの説明どおりの場所ではなく、隣の矢印が示す目的地に辿りついた。だれかがいたずらで標識を回したのかな、でもこんな重そうな鉄の棒を地面から引き抜くなんてそうとうな労力だろうに。それかもしかしたら、標識を地面に取りつけるときにまちがえたのかもしれない。どちらにせよこの標識はだいぶ前に設置されたものみたいだ。鉄の棒が地面にふれるその境目は、緑のやわらかい芝生にすっぽり覆われていた。


Fictional Diary..... in企画(あいえぬきかく)主宰、藍屋奈々子の空想旅行記。ほんものの写真と、ほんとうじゃないかもしれない思い出。日刊!