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軒下の女

女が雨の中、軒下で一人佇んでいる。「やあ、すごい雨ですね」と声をかけて一緒に雨やどりする勇気は残念ながら持ち合わせていない。しかし、何故、こちら側の喫茶店にはいらないのだろう。私は窓際から彼女を見て勝手にその雰囲気からノスタルジックさを感じつつ、珈琲を飲んだ。煙草も旨い。

様子を見ていると、スマホを気にしている。そして、こちらの喫茶店に入ってきた。にこやかな笑顔をふりまき男の目の前に座る。なんだ男付きだったのか、と思うと二本目の煙草は不味くなった。

しかし、何故先に入って待つという選択を彼女は取らなかったのだろうと不思議だった。

あれこれ思考を巡らせてみたが答えが彼女の中にしかないので分からない。何とも微妙な気持ちで生温くなった珈琲を飲んだ。苦い。

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