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「After/Withコロナ時代のビジネスパーソン論」 ~ゲーム・チェンジの今、個人戦略を再構築しよう~


<はじめに>
「人生の選択を大雑把に分けたとき、『リスクある夢を追う』か『安定した道を選ぶ』かの2択になりがちです。でも安定した道などない。ならば「リスクのある好きなこと」と「リスクのある好きでないこと」の2つしかないことになります。答えは決まっていました。」これは、今はユーチューバーとして活躍されているオリエンタルラジオの中田敦彦さんが著書「天才の証明」の中で語っていたことですが、今回のコロナショックにより、「安定した道」と思われていた選択肢はより一層危ういものとなりました。もはやリーマンショックを超える経済危機となり、毎日のように、大企業が苦境に立たされる記事のオンパレードとなっています。

・リクルート、融資枠を4500億円要請
・ソニー、外貨建て融資枠を2割増(約3000億円)
・日本ペイント、融資枠1800億円契約
・日産、5000億円融資を要請
・日航が3000億円、政府に融資を要請
・全日空が日本政策投資銀行の融資制度を利用し3000億円(民間金融機関と合わせて1.3兆円程度)を調達する方針

日本を代表するような大手企業が続々と融資を要請し、雇用する余裕がなくなりました。そのような状況において「ビジネスパーソンとしてどのような戦略を持つべきか」という大きな問いに対する提言をしたいと思います。

本書は、私は中流層において、従来型ビジネスパーソンと市場価値を持ったフリーランスがごっそり入れ替わる時代になるという予測のもと、「従来型ビジネスパーソン思考→フリーランス思考→NEOフリーランスへ」というステップをベースにした構成にしています。

かつて、福沢諭吉は「一身にして二生を経る」(一人の人間が二つの人生を生きる)と述べましたが、今まさにリセットボタンが押されたゲーム・チェンジとも言える転換点を迎えている中、示唆を与えることできればと考えています。

とは言え、この本を執筆している時点で、私も1人のフリーランスとして、コロナショック時代のまっただ中にいます。このような局面で「どうすれば自分らしく働けるか」「どのような働き方がよいのか」といった難題に対して、本書を通じて、読者の皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

<目次>
はじめに

1. ビジネスパーソンを取り巻く環境
(1)コロナショックによる価値観の大転換
(2)個人個人が戦略を持つ時代
(3)年功序列、終身雇用が前提でスキルアップが後回し
(4)エンゲージメントが低すぎる日本で求められていること
(5)Withコロナ期の動向から
①マイナス要素が強いテーマ
・5大マイナス業界(旅行、アミューズメント、航空、飲食、アパレル)
・対面型ビジネスパーソン
・店舗主導型ビジネス
・ぜいたく品

②プラス要素が強いテーマ
・非接触型(オンライン×○○、ドライブスルー方式)
・コロナ×○○(専門領域)
・リスク関連
・家でできるビジネス
・移住ビジネス(空き家活用)
・リノベーション事業
・社内リソースのコンテンツ販売(デジタル化)
・国内回帰、地産地消関連
・生産性向上関連ビジネス(営業プロセス短縮)
・メンタル関連
・シビックテック

2.従来型ビジネスパーソンとフリーランス思考
(1)×会社に貢献する(承認欲求) ○クライアント、社会に貢献する(自己実現)
(2)×ノルマやKPIに追われる ○自分の使命感、目的を追い求める
(3)×特定の上司の評価 ○複数のクライアントの評価、自己評価
(4)×社内のマウンティング、ポジショントーク、忖度 ○社外の出会い
(5)×会社の看板、会社の肩書き ○自分自身の専門性、市場価値
(6)×他燃型 ○自燃型
(7)×終身雇用、就社 ○複数のクライアントと契約
(8)×従順、協調性、同調性 ○自走、自主性、創造性
(9)×会社のルール、上司の判断 ○自分の価値基準、自分の道徳観
(10) ×会社から任された役割 ○自分のライフワーク、やりたいこと


3.フリーランスへの転身に向けて その1
(1)このような条件ならフリーランスの道へ
(2)フリーランスになってから得られる恩恵
(3)営業経験を幅広く積んでおくと有利
(4)自分の適性を探索する
(5)追究していくものを決める
(6)ニッチな分野で専門性を磨く(1/100×1/100×1/100)
(7)スキルの希少性×出会い
(8)メンターを持つ
(9)あえてアウェー体験も積んでおく
(10)会社を踏み台にする」という考え方はNG

4.フリーランスへの転身に向けて その2
(1)組織でいだく違和感が強ければ強いほどフリーランスに転身する原動力になる
(2)ビジネススクールに行く(かかるコストと得られる恩恵とは)
(3)私がビジネススクールで学んだこと(ほんの一例を紹介) ①ポーターの競争戦略 ②「やりたいこと、できること、社会のためになること」3つが重なることをする ③クリティカル・シンキング ④ミッション 
(4)「体を動かす仕事」→「モノを動かす仕事」→「情報を動かす仕事」
(5)独立後、仕事を確保できるかどうかのバロメーター(リスクと無謀は違う)
(6)プランBのシナリオを考えておく
(7)「50にして天命を知る」と「50にして脱力を知る」
(8)天職を見つけるヒント
(9)発達障害はフリーランスに向いている
(10)フリーランスは手段である

5.フリーランスになってから
(1)初期コスト30万円でスタート
(2)アウトプットしよう
(3)新たなネットワークのつくり方
(4)ミッションを持とう
(5)信頼を得るために(スピード感、会社の看板に頼らない肩書きのつくり方)
(6)自宅=オフィス
(7)小さなイノベーションを生み出そう
(8)質の高いインプットをしよう①読書 ②モデル事例(一次情報)から学ぼう
(9)紙に書こう
(10)お金を目的にしない
(11)コミュニティをつくろう(クライアントとクライアントをつなげるコネクターになる)
(12)老いに対して肯定感を持とう
(13)パートナー(=better half)の存在
(14)これならできる!朝のスロー・ジョギング
(15)フロー理論で心を整えよう(一番の課題である「収入の不安定さ」との向き合い方)

6.独自ポジションに立って活躍する3つの事例紹介
(1)業界経験を活かして、クライアント企業の社長に転身したMさん
(2)女性視点と実務経験を活かして、地元コミュニティをつくった広報ウーマンSさん
(3)大好きなラーメン(袋麺)道を追求してオンリーワンポジションに立つ大和一朗さん

7.アフターコロナ時代を生き抜くために
(1)NEOフリーランスが台頭
(2)時流を見極める
(3)強みを見極め伸びる事業に応用する
(4)自分自身の軸を持つ
(5)女性、女性性を持つ男性が活躍する時代
(6)サスティナビリティという概念の加速
(7)大局的な視点で前向きに生きる
(8)人間らしい生き方

8.個人戦略を考えている人に向けた推薦書
①フリーエージェント社会の到来 ②私がマッキンゼーを辞めた理由 ③シンプルに考える ④富を「引き寄せる」科学的法則 ⑤天才の証明

・おわりに

1. ビジネスパーソンを取り巻く環境
(1)コロナショックによる価値観の大転換
コロナショック前は生産性向上に向けて働き方改革が大きなテーマとなっていましたが、今や感染リスクを軽減するという目的で、テレワークが急速にして浸透しました。ほんの数カ月の間に「会社に行く」「会議に参加するために集まる」「飲み会に参加する」「満員電車に乗る」「都心に住む」「海外旅行に行く」といった常識も過去のものになりました。テレワークやオンラインによる会議や飲み会は、Withコロナの時代だけではなく、コロナが収束してからも残っていく可能性が強いと考えられています。


これまでの常識⇒After/Withコロナ時代
会社に行く⇒ 在宅(テレワーク)
会議に集まる ⇒オンラインで参加
飲み会に行く⇒ オンラインで参加
満員電車に乗る⇒ 在宅のため不要
過密、混雑 ⇒ソーシャルディスタンス
都心に住む⇒ 地方に住む
海外旅行に行く⇒ VRで楽しむ

そして、もし経営者という立場なら、雇用するという概念も考え直さなくてはなりません。世界中で雇用不安が蔓延する中、ホテル従業員がIT企業で働く、飲食店従業員が食品スーパーで働くといった業種を超えた「従業員シェア(期間限定)」の動きも出てきました。コロナショックによって生まれた全く新しい概念です。

また、今後はコアな強みの部分の人材だけ残し、それ以外の人材は、ランサーズやココナラ、クラウドワークス等を通じて依頼するかたち済ませようという経営者の思考も増えてくるかもしれないです。必要最低限だけ雇用し、あとは横のパートナーシップで事足りてしまうかもしれません。今まで常識ととらえられていたことも、コロナショックにより、価値観が大転換する時代を迎えています。

あらゆる常識や価値観が変わる中で、重要になってくるのが自分自身の軸です。大転換の時代を迎え、この大きな問いかけにより、自分を見つめ直すべきではないかと私は思います。今こそ、内なる心に耳を傾けたり、価値を棚卸したりしながら、自分自身の軸を見つめ直す絶好の機会です。

(2)個人個人が戦略を持つ時代
なぜ、「After/Withコロナ時代のビジネスパーソン論」というテーマの本を書こうと思ったのか。今までは就職した会社が持つ理念や戦略に従ったり、共感したりしながら働くかたちでしたが、一瞬で会社の経営が危うくなり、業界ごと消滅するのではないかという状況になった世の中において、50歳でフリーランスになり、コロナショックに適応しながら得た経験を通じて、ヒントを提供できるのではないかと思ったからです。サバイバルスイッチをオンにして、個人戦略を構築するきっかけになるのではと感じたからです。

ご承知のとおり、日本の政府は私たちを助けてくれるかどうかわかりません。各国政府による国民への保障を見れば一目瞭然です。休業補償について、スペインでは賃金の100%補償、イギリスは80%補償、フランスは84%補償等々、仮に休業しても補償制度がしっかりしています。一方、日本は1人10万円支給と、マスク2枚といった状況です。政府にも頼れない中、まさに個人個人が自ら戦略を持ち、一人ひとりが主導し、働き方改革をしていかなければならない時代を迎えていることが本書を執筆する原動力となりました。

(3)年功序列、終身雇用が前提だったため、スキルアップが後回し
生産性を高めるためには昭和型、平成型から脱却すべきと言われて久しいです。生産性を高めるためには、個人のスキル向上が必要ですが、諸外国と比較して日本のビジネスパーソンの競争力は驚くほど低いのが現状です。スイスIMD2019年版競争力ランキングによると、1990年前後に1位だった日本は総合順位で30位。語学力が63位、経営幹部の国際経験63位、デジタルスキル60位、データ活用力63位と、対象63ケ国中最下位レベルの項目が続きます。年功序列、終身雇用という旧態依然とした環境の中で、個人のスキルアップが後回しになってしまっているのが現状です。

ベストセラーとなった「ライフシフト 100年時代の人生戦略」では、生産性資産に言及しています。生産性資産とはすなわち「仕事の生産性を高め、所得とキャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産」のことを言います。さらに「最もわかりやすい生産性資産は、長年かけて身につけたスキルと知識だ。知識を蓄えるには相当な時間をつぎ込まなくてはならない。教育を受けたり、特定分野の仕事で実践を通じて学んだり、コーチやメンター、同僚の話を聞いたりする必要がある。労働市場の状況が変わり、新しいスキルの習得が求められるペースが加速していることを考えると、この種の資産の価値は大きい。そこで、どのように投資をおこない、どの分野のスキルと知識を身につけるべきかが重要になる」と述べています。お金の話に終始しがちですが、著者はこうした無形の資産こそ目を向けるべきだと提唱しています。そして、「ライフシフト 100年時代の人生戦略」は平常時であることを前提に書かれてありますので、今この非常時に置き換えて、読み解く必要があります。

(4)エンゲージメントが低すぎる日本で求められていること
IBMなどが実施しているエンゲージメント(従業員がイキイキと仕事と向き合う度合い)の調査では、日本はどの調査でも最下位に位置しいているのが現状です。このままでは生産性の向上もイノベーションもとても期待できそうにありません。そして、会社員とフリーランスを比較した意識調査では、軒並みフリーランスが会社員を大きく上回る結果が出ています。「職業的自己イメージの明確さ」は会社員が3.09点に対してフリーランスが4.01点。さらに「主体性キャリアの形成意欲」は会社員が3.17点に対して、フリーランスが4.06点と高いスコアが出ています。(「フリーランス白書2019」フリーランス協会)

さらに別の調査ではフリーランスの大半が「このまま(フリーランスを)続けたい」と述べており、「雇われたい」と望んでいるのはわずか4%という興味深い結果も出ています。こうした調査結果からもフリーランスという働き方やフリーランス的な思考にこそ、大きなヒントがあるのではと考えます。「個」の文化が浸透し、専門性を活かしていくという風土があるアメリカのように、いよいよ日本でも、「個」を見つめ直し、専門性を追求していくことが急務だと考えています。

また、この大きな時代の変化に適応するかたちで会社側も変化していかなければならない状況にあります。一例としてグーグルでは「世界のためにリーダーを育成しよう。グーグルを退社して社員として貢献できなくなっても、リーダーとして世界に貢献すればいい。むしろ積極的に応援する」CEOがこのような発言をしています。(「ニューエリート」ピョートル氏)。日本においても終身雇用の制度が崩れている中、グーグルのように「自分の成長のため、自分の自己実現のために会社を使おう」と応援していくことが会社側に求められています。終身雇用で市場価値を高める意識を削いでしまうのではなく、人材育成の定義を「会社の貢献できる人を育てる」から「社会に役立つ人を育てる」そんな市場価値という観点にシフトする必要があります。

個人が意識改革し、会社も変化していくことで、一人ひとりのキャリアパスが構築されて、活力、熱意、没頭という条件が揃ったエンゲージメントが高い社会、すなわち生産性も高い社会が実現すると私は信じています。

(5)Withコロナ期の動向から
コロナショックにより、いよいよ転職するにも、独立するにもまずは、動向をチェックする必要があり、マイナス要素とプラス要素が強い業界、テーマについてそれぞれ見ていきたいと思います。

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