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雨ことばと三千世界

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梅雨の間、雨が降るたびに「雨」にまつわる言葉を題材にした約3000字の小説を更新します。雨にまつわる言葉は『雨のことば辞典』を参照に、五十音順に1つずつ題材にしていきます。
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記事一覧

乾元 | 三千字小説

地球表面には年間平均1000mlの雨や雪が降るらしい。 しかし、現在大気中に存在するすべての水…

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空中鬼 | 三千字小説

はじめに 2024年、6月21日。関東が梅雨入りしました。 梅雨のあいだ、雨が降るたび毎日、約3…

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狐の嫁入り | 三千字小説

(前編) 六太の失踪をわしは村中へ伝えて回った。 とはいえ本腰入れて探していたのはわしら家…

怪雨 | 三千字小説

”飢えた村に、兎の雨が降った。空から大地へ、大量の野兎が雨のように降った。兎は頸部に血と…

送り梅雨 | 三千字小説

例年であればもう、送り梅雨ボタンが押されていた。 送り梅雨ボタンが押されれば、強い雨が降…

煙雨 | 三千字小説

廃校になった母校、渡り廊下の下で、ハイライトに火をつける。 吐き出した煙が雨に混ざり、一…

雨工 | 三千字小説

相模国愛甲郡大山の麓に霜月という御師の息子がいた。霜月は秋になると、大山講の農民だった父の元へ2人で札を配りに来ていた。霜月は米粉をまぶしたような白い肌に、薄く濁った黒目の、華奢な少年だった。 親たちは、話の邪魔だから2人で遊んでいろと、おれたちを家の外にだした。しかし霜月はほとんど口を開かず、会話らしい会話をした覚えがない。聞いた覚えがあるのは霜月という名、好きな食べ物はカエル、御師の仕事を継ぐことが決まっている、ということくらいだった。 霜月はよく気配りをする男だった

陰雨 | 三千字小説

気づいたらクロスワードパズルが完成していた。 クロスワードパズルに頭を使わなくなると、人…

愛雨 | 三千字小説

ドアを開ける。 アルミ缶の中の砂利をぐるぐる回したような、大粒の雨音。 雨は近所の子らの声…

梅雨の間、雨が降るたびに「雨」にまつわる言葉を題材にした約3000字の小説を書き続け…

とある港町、小径の先の小さな本屋。 知り合いが始めた書店に立ち寄った際 「雨のことば辞典…