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雨ことばと三千世界

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梅雨の間、雨が降るたびに「雨」にまつわる言葉を題材にした約3000字の小説を更新します。雨にまつわる言葉は『雨のことば辞典』を参照に、五十音順に1つずつ題材にしていきます。
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記事一覧

狐の嫁入り | 三千字小説

(前編) 六太の失踪をわしは村中へ伝えて回った。 とはいえ本腰入れて探していたのはわしら家…

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怪雨 | 三千字小説

”飢えた村に、兎の雨が降った。空から大地へ、大量の野兎が雨のように降った。兎は頸部に血と…

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送り梅雨 | 三千字小説

例年であればもう、送り梅雨ボタンが押されていた。 送り梅雨ボタンが押されれば、強い雨が降…

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煙雨 | 三千字小説

廃校になった母校、渡り廊下の下で、ハイライトに火をつける。 吐き出した煙が雨に混ざり、一…

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雨工 | 三千字小説

相模国愛甲郡大山の麓に霜月という御師の息子がいた。霜月は秋になると、大山講の農民だった父…

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陰雨 | 三千字小説

気づいたらクロスワードパズルが完成していた。 クロスワードパズルに頭を使わなくなると、人…

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愛雨 | 三千字小説

ドアを開ける。 アルミ缶の中の砂利をぐるぐる回したような、大粒の雨音。 雨は近所の子らの声だとか、人との距離だとか、余計なものを除いてくれる。 散歩道を歩き出す。焦げ過ぎたメロンパンのようなアスファルトは雨をよく撥ねた。まるで初めからそこにあったようなに振る舞うアスファルトの下には、ちゃんと土が広がっていることを、俺は知っている。 遠くから救急車の音が聞こえる。 庭先にイチジクの木が生えた古びた水色の邸宅を通り過ぎ、突き当たりの小径を右に曲がる。 邸宅の庭には白い小屋に

梅雨の間、雨が降るたびに「雨」にまつわる言葉を題材にした約3000字の小説を書き続け…

とある港町、小径の先の小さな本屋。 知り合いが始めた書店に立ち寄った際 「雨のことば辞典…

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