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「I’m A Japanese Murderer 」 第11話

…何もかもが収束するまで、さして時間が掛からなかった。それは”やつ“は全てを統制して、外部からの特殊部隊や警察総動員でここに集まって収めるまでに。大統領は気力を失い、警護に抱えられながら出ていった。

誰一人、死者や怪我人も出すことなく…収束した。

”やつ“は死刑囚から、無罪になり、後にこの死刑囚達には恩恵が与えられ、看守達も大統領を守ったということで、表彰された。

…なんということだ。

大統領は辞任した。

たった1人の日本によって、全てを用意周到に準備し、大統領の息子やロシア大使館の息子、日々の生活まで調べ上げて、緻密に計画し、大統領がくるあの監獄に敢えて入れるようにあの州でわざわざ自ら911をし、自首をし、現行犯で逮捕するよう仕組み、刑務所は、刑務官、看守は元より、凶悪犯までも手玉に取るように操り、徐々に「日本」にしていった。行く度に綺麗になって行く刑務所の部屋、看守と犯罪者とのいざこざや、剰えドラッグまで辞めさせるという脅威のことを成し遂げた。”やつ“は体を売ったり、暴力を振るってわからせるのでなく、相手が何を求めているかを上手く聞き出し、”やつ“が思っている方向に持っていく、まるで解けない催眠術のように相手を絆していって、味方につけていった。あの監獄のような所でだ。
”やつ“が持っていた箱は、日本伝統の寄木細工という多いと40通りもの工程を経て初めて開く箱だ…釘も使わずただ木を寄せて作られた精巧な技術により。日本という国の底力を見せつけられた事件だった。寡黙で多くを語らない、でも確実に遂行する執念とも言える…。ラップトップには何一つ入力されておらず、スマホは愚かメモも電話も何一つ今回の事件で繋がるものはなかった。証拠隠滅を完全にできる爆弾の作り方もいまだに日本のどこで作られて今もそれがあるのか謎のままだ。息子に体内からは何も出なかった為。息子は勿論あの悪名高い刑務所に入ることになった。アンダーエッジへのレイプは最も忌み嫌われるので…大体想像はつく。
…そこまで考えていたのだろう…”やつ“の事だ。ロシア大使館の息子への殺人容疑は何故か明るみに出る事なくトップシークレットとして最高機密扱いになり100年後にしか詳らかにならない…。20年という歳月をかけて計画実行したその思いたるや…。言わないが、きっと被害者の無念を晴らす為だろう…。Kamikaze なんて言葉がある位だが、日本人の底知れぬ畏怖を感じずにはいられない。

俺は”やつ“に聞いた。

どうやって、全てを覚えておけるんだ?人間忘れることの方が多いのに…

「頭の中の整理も好きなんですよ、僕。潔癖症なので。あの白い部屋のように寸分狂いなく整えられているので問題なく引き出せるんです。物事の全貌を1ページ目から。」


↓第12話 prologue1

#創作大賞2023 #オリジナル小説

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