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ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ(ヤコブソン・バレエ)(2)

前回はロシアバレエについて簡単にご紹介しましたが、今回はいよいよ「ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ(ヤコブソン・バレエ)」についてのお話です!

1.ヤコブソン・バレエの拠点(スタジオ)

このヤコブソン・バレエ団はロシアの古都・サンクトペテルブルグを拠点に活動しているバレエ・カンパニーです。

サンクトペテルブルグは、ロシアバレエの発祥の地でもあります。
18世紀にフランスから宮廷バレエが伝わり、帝室の命によってサンクトペテルブルグにバレエ学校が創設されました。それが、今日の名門バレエ学校「ワガノワ・バレエ・アカデミー」です。
ですから、ロシアバレエの始まりの地と言っても過言ではありません。
現在は、古い歴史を持つマリインスキー劇場やナチョ・デュアトのもとで躍進を遂げたミハイロフスキー劇場、ロシアを代表する振付家エイフマン率いるエイフマン・バレエなど、たくさんのバレエ団がひしめき合う街です。

サンクトペテルブルクの中心・ネフスキー大通りの近くに、ヤコブソン・バレエ団が拠点とするスタジオ(練習場所)があります。
↓とても特徴的な形をした屋根です↓

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こちらの写真に写っている可愛らしい円形の建物がスタジオなのですが、元々はなんと「馬小屋」として使われていたそうです!
馬小屋を改築し、現在のようなスタジオとなりました。

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(写真:スタジオ内の様子、ヤコブソン作品の練習中)

バレエ団のロゴマークはこちらのスタジオがモチーフになっているそう!

yacobsonロゴ (2)


2.ヤコブソン・バレエの(大まかな)歴史

ヤコブソン・バレエ団は1966年11月12日に創設されました。
創設者は、マリインスキー劇場のプリンシパルとして活躍していたソ連連邦人民芸術家 ピョートル・グゼフ。最初は、“レニングラード・コリオグラフィック・ミニアチュール”と呼ばれていました。
1969年から1976年まで、ソ連バレエを代表する鬼才振付家レオニード・ヤコブソンが芸術監督を務め、独創的な作品を多く発表したことで注目のバレエ団となりました。

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(写真:レオニード・ヤコブソン)


その後、彼の名前がバレエ団に冠され、世界中から「ヤコブソン・バレエ」と親しみと敬意を込めて呼ばれています。

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(写真:スタジオの入り口に掲げられている表札、
しっかりとヤコブソンの名前が!)

現在は、マリインスキー劇場で長年プリンシパルを務めたアンドリアン・ファジェーエフが芸術監督を務め、さらなる躍進を遂げています。

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(写真:芸術監督 アンドリアン・ファジェーエフ)

※バレエ団の歴史、ヤコブソン、ファジェーエフについては、後日詳しくお話しします♪

3.ヤコブソン・バレエのユニークなところ

ヤコブソン・バレエ団は”劇場を持っていない”という特徴があります。
そのため、毎回違う劇場を借りて公演を行っており、ホームがありません。固定の楽屋がなかったりという不便はあるようですが、自由に身動きが取れるというメリットもあり、劇場を持っていないからこそ世界中のあらゆる劇場で公演をすることが可能となっています。
創設当時は、劇場と切り離されたバレエ団というのは珍しかったそうです。
それまでの一般的な劇場は、オペラ・バレエ劇場という事が多く、オペラとバレエ両方の演目を主たる活動として置いているのが常でした。

4.ヤコブソン・バレエの現在~ダンサー編~

現在、バレエ団には約70名のダンサーが所属。
かつて、マリインスキー・バレエで屈指のダンス―ル・ノーブルとして活躍したファジェーエフ監督の厳しい審査のもと選ばれた精鋭が集まっており、ワガノワ・バレエ・アカデミーの卒業生も多数在籍。
実力を備えた若きダンサー達が日々切磋琢磨しています。

プリンシパルは、アッラ・ボチャロワ、エレーナ・チェルノワ、スヴェトラーナ・スヴィンコ、ソフィア・マチュセンスカヤ、アンドレイ・ソロキン、ステファン・デョーミン、デニス・クリムクの7名。ロシア各地から集った実力派ダンサー達です。
彼らについても、今後ご紹介していきます♪

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(写真:『ジゼル』より アッラ・ボチャロワ)

5.ヤコブソン・バレエの現在~作品編~

古典作品から現代バレエ、そしてL.ヤコブソンの振付作品まで、幅広いレパートリーを持つこのバレエ団。
近年は、古典作品の改訂や新作の上演に力を入れています。
いずれも、かつて世界の一流バレエ団でトップを務めた経歴を持つバレエダンサーによる振付となっている点も特徴です。

例えば、昨年日本でも初演した『眠れる森の美女』パリ・オペラ座・バレエ団の元エトワール、ジャン=ギョーム・バールによる改訂振付・演出でした。

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(写真:バール版『眠れる森の美女』より)

その他にも、英国ロイヤル・バレエ団の元プリンシパル、ヨハン・コボーによる改訂版『ドン・キホーテ』や同バレエ団の元プリンシパル、イナーキ・ウルレザーガの新作『スペードの女王』など、年に1作品のペースで新作を上演し続けています。

今年はコロナで延期となってしまいましたが、世界の一流バレエ団がこぞって上演するドラマティック・バレエの名作、J.クランコ版『オネーギン』のバレエ団初演に向け、リハーサルを進めていました。
サンクトペテルブルクのバレエ団が上演するのは初めてということで、ダンサー達も初演を楽しみにしていたそう。来年以降の初演が待たれます!
(この作品を上演するには「クランコ財団」からの許可が必要で、バレエ団やダンサーのレベルや作品に合うかどうかの観点から判断が下されます。ヤコブソン・バレエ団も無事に上演の許可が下り、いよいよという時にコロナ禍に見舞われてしまいました…)

6.さいごに

ヤコブソン・バレエについて、「ファジェーエフが監督になってからバレエ団のクオリティが著しく成長している!」という声もあり、近年は彼の美意識と情熱がダンサーや作品にも表れ始めたようです。

現在はコロナに悩まされながらも、9月から公演を再開しました。
積極的に新作も上演しつつ、ヤコブソン作品や古典作品の伝統も守り続け、ファジェーエフ監督のもと日々成長するヤコブソンバレエ団から目が離せません!



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