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【しがCO2ネットゼロ次世代ワークショップ】DAY3|長浜市・まち歩きフィールドワーク

こんにちは。
インパクトラボの窪園です。

2022年10月23日(日)に長浜市のBIWAKO PICNIC BASEにて、「しがCO2ネットゼロ次世代ワークショップ」のDAY3を開催しました。
DAY3の長浜市・まち歩きフィールドワークは、具体的な長浜市というフィールドにおいて脱炭素に向けた取組アイデアを考える機会をつくり、まち作りと絡めたゼロカーボンシティのあり方について若者が学ぶことを目的としています。

しがCO2ネットゼロ次世代ワークショップとは

滋賀県で持続可能な社会の実現に向けて取り組む地域、団体、企業へのフィールドワークを通して、滋賀県らしいCO2ネットゼロの行動・取組アイデアを考えるプログラムです。本ワークショップでの意見交換等を通じて生まれたアイデアを広く発信することにより、滋賀県内のCO2ネットゼロに向けた取組機運の向上を図ることを目的としています。

オープニング

まず、長浜市出身であるサポーターの桐畑孝佑さんより、CO2ネットゼロに絡めて学生時代に感じた問題意識や地域で脱炭素に取り組む意義について説明がありました。桐畑さんは学生時代、モロッコで開催されたCOP22に参加し、会場近くに商談スペースがあったことに衝撃を受けたと話されました。気候変動に対する取り組みがビジネスチャンスになることを実感したそうです。しかし日本企業の姿が見受けられず、日本の気候変動に対する意識の低さを感じたと言います。

また、地域で脱炭素に取り組む意義についても言及されました。長浜市が排出しているCO2の量は、世界全体のわずか0.003%。そのため、CO2の排出を削減することは単に地球のために行うのではありません。脱炭素に取り組むことが、地域の魅力向上や課題解決のための強い武器になり、過疎地域や災害が多い地域での自立した持続可能なまちづくりに貢献し、地域の企業にとっての成長・生存戦略であるのです。

COP22の話をする桐畑さん

桐畑さんによる説明の後、参加者・メンター・スタッフの自己紹介を全体で行いました。参加者の興味分野や熱意、メンターの専門分野を共有しました。今回は、滋賀県立虎姫高校の新聞部の皆さんも参加しました。

レクチャー

次に、甲賀市出身で自然電力株式会社に勤める古谷幸一さんよりレクチャーを受けました。自然電力株式会社は西日本を中心に電源開発や工事のマネジメントなどを行なっています。「僕は、この『再生可能エネルギー100%の世界を共につくる』という図が好きなんです。」と古谷さんは話します。再生可能エネルギー導入により、地域の未来をより良くしたいという熱意が感じられました。

レクチャーをする古谷さん
古川さんが言及した図(イラスト提供:自然電力)


年限付きのカーボンニュートラルを表明する国が増え、日米欧のESG投資の合計額が2014年から2020年間で約2倍近くに増加するなど、世界的に脱炭素に向けての取り組みが加速しています。その状況下で、取り組みが進んでいる再生可能エネルギーの導入や蓄電池・マイクログリッドの取り組みなどの説明がありました。マイクログリッドは、エネルギー供給源と消費施設を一定の範囲でまとめて、エネルギーを地産地消する仕組みのことです。地域のエネルギー供給が自立型になり、導入した施設は停電時にも機能し、防災拠点としても機能します。

また、バイオディーゼル燃料やその副生物でつくるアルカリ洗剤など、電力以外のカーボンニュートラルの取り組みも説明されました。「エネルギーは発電だけではなく、運搬・供給・利用・CO2吸収などのサイクルの中で多様な産業が関係しています。脱炭素実現に向けて、その産業構造が変化する、そしてどのように変化していくかを注視していくことが大切。」と、古谷さんは話しました。

脱炭素は様々な産業と関係している
出典:経済産業省HP(下記のURLより)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html

長浜のまちを歩く

次に、長浜まちづくり株式会社の竹村光雄さんより、長浜のまちについて説明がありました。竹村さんは茨城県出身で、大学時代は建築の勉強をし、その後長浜に移住されました。竹村さんの学生時代は、オフィスと商業施設が複合した六本木ヒルズなどの建設が進み、都市型再開発の全盛期。学生にとって大手ゼネコンに勤める、あるいは世界的建築家の元にインターンをすることが主流だったと言います。竹村さん自身は、建築家が大きなプロジェクトを成し遂げるほど、しなやかな町の特性が失われると感じ始めたそうです。そこで、町の特性を活かして次の時代を作る方法が知りたいと思い、都市計画コンサル会社に勤務。そこで仕事を通じて学びながら、さらに時代に合わせた、よりしなやかな方法でまちづくりに挑戦していかなければならないと考えるようになり、転職して現在に至るそうです。

長浜は豊臣秀吉が作り上げた、古い建物や街並みが残るまちで、450年続いています。「自然を含めたまち全体が生態系のように作用しあっているからこそ、450年も続くまちになり、それこそが持続可能なまちであると感じたんだよね。ハードの建築よりも、もっと柔らかいものを大切にしたいと思うんだ。」と竹村さんは長浜の魅力を熱く語ります。

航空写真を見て、長浜の歴史を参加者に教える竹村さん

エリアをつくる

その後、竹村さんの案内の下、長浜の黒壁周辺のまち歩きを行いました。まずは黒壁。今では観光の中心を担っている黒壁ですが、かつては商業の中心が郊外に出ていく状況で、まちが衰退していく中、黒壁は不動産に売却されたそうです。そこで、「まちのシンボルである黒壁がなくなってしまっては再起できない」と地元の人々が声を上げ、地元の有志が資金を出し合い、9000万円で買い戻すことになります。

その後、長浜市に寄付したところ、別提案がなされたそうです。市も出資して第三セクターの株式会社を作り、黒壁をエリアとして企業活動を始めます。そこで、長浜にとって全く新しい産業であるガラス産業が開始。ガラス産業が盛んで、女性や子供連れを中心に、世界中から人々が集まってくるイタリアのベネチアを参考にしており、長浜にとっての総合的な産業にすることを当時の人々は試みたそうです。そうして、約30年前に株式会社黒壁を設立。デザイナーや職人、商売をする人が集まり、今ではガラス工房やレストラン、ショップがあり、活気に満ちたエリアを創成することが実現されています。

竹村さんの案内の下、まち歩きをする様子(写真左:黒壁)

大量生産・消費社会の終焉/大切な地域コミュニティ

30年前に作られたガラス産業は、多くの場合、お土産として購入され、観光客をターゲットにしています。「大量生産・消費社会から時代は変化し、今はお買い物をして、楽しい時代ではない。」「小規模であっても、自分たちのまちでつくることをブランドにして、熱意を持って、丁寧に生産された商品を大切にする時代だ。」と竹村さんは話します。さらに、篤農家と呼ばれる、その地域や作物分野を代表する農家や熱心の酒造りに取り組む酒蔵について話しました。

長浜は、豊臣秀吉の時代から続く、曳山まつりでも有名です。祭りでは子供が歌舞伎と囃子という重要な役割を担います。そして、日頃から彼らと稽古を共にし、祭礼の執行を担うのが若衆と呼ばれる竹村さんの世代の人々で、さらにその上の世代が中老と呼ばれています。歌舞伎に始まる曳山まつりの全体の良し悪しを左右するのは、年齢も関心も異なる三世代間の十二分なコミュニケーション。地域内での「他世代間のコミュニケーション」が非常に重要視されていることがよく分かります。

檜山祭りで使われる山車の倉庫前

伝統的なもの+「新しい何か」

まち歩きの中で、竹村さんが繰り返し話すことがありました。それは「古い街並みや伝統的な祭り・地域コミュニティなどの伝統的なものを保全しながら、時代に沿って新しいものを作り上げていく必要がある」ということです。長浜という地域で脱炭素に取り組むことが、長浜の伝統を破壊するものであってはならないのです。歴史のある地域で脱炭素に取り組むことの難しさ、また、面白さ・やりがいを感じられました。

グループワーク

まち歩きをした後には、BIWAKO PICNIC BASEに戻って、5チームに分かれグループワークを行いました。脱炭素の取り組みを進めることで、どのように地域の魅力を高め、地域の課題解決に繋がるかについて、まち歩きを踏まえて長浜という具体的なフィールドで考えることが目的でした。

参加者は「脱炭素×〇〇」というテーマのもと、地域で実施する脱炭素の取り組みについて話し合いました。また、脱炭素×「防災」「地域内経済」「観光・交通」「アート・芸術」「農業、林業」などの先行事例をいくつか紹介しました。話し合いの中では様々な専門分野のメンターの方々がアドバイスをしたり、グループの中に入って一緒に話し合ったりしていました。

グループのアイデアの内容をまとめる
メンターと共に、ディスカッションを行う虎姫高校の皆さん

ディスカッション

最後に全体でディスカッションを行いました。長浜のまちを見て感じたことと各グループで出た脱炭素の取り組みのアイデアを共有する時間です。

Group1は、「脱炭素×防災」という観点で、アイデアを提案しました。長浜のまちにコンビニが少なく、一方で自動販売機が多いと感じ、そこから、東日本大震災でコンビニが防災の拠点となったことを思い出したそうです。「長浜のまちに自動販売機の防災拠点を作ろう」というアイデアでした。この自動販売機は太陽光パネルで稼働する自立型電源の自動販売機で、災害時には無料で食品を提供できる他、スマホの充電などの給電機能も備えたものです。売る商品としては、長浜の篤農家が作った農作物の加工品や地元の酒蔵の甘酒などを考えているそうです。自動販売機自体は、長浜のまちに合う、観光客が注目するようなデザインにしたいと話していました。

Group2は、空き家が多く、交通の便が良くないことに注目して「脱炭素×地方創生のビジネス」というテーマで、三つの案を提案しました。使用済み油のバイオディーゼルを利用したEV自転車の導入、再エネを利用した空き家のコワーキングスペースでビジネスの展開、港に泊まっているクルーズ船にバイオディーゼル燃料を導入することを考えているそうです。

Group3は、「脱炭素×アート・教育」というテーマで、子どもから大人までが「気がついたら学んでいる」をコンセプトにした、木を使ったワークショップを行うアイデアを提案しました。具体的には、「間伐材(Day2で学習しました)の利用コンテスト」などを開催し、デザイナーや観光客、修学旅行生などのエコツーリズムを対象にして、黒壁のような活気あるエリアの創成を実現したいと話していました。

Group4と5はそれぞれ高校生のチームで、どちらも「脱炭素×交通」をテーマとしていました。食べ歩きができることに注目して、車の乗り入れを制限し、食べた分だけ消費するために歩くことを奨励したいと話していました。その他にも、コワーキングスペースや自習室にエアロバイクを置き、利用者が健康やリフレッシュの為に漕ぐと発電する仕組みや商店街に集まる人が多いことに注目して、ロンドンの歩行発電を導入してはどうか、と話していました。

アイデアの提案をする参加者たち

今後は、これらのアイデアを11月6日(日)に行われるDAY4での中間発表・滋賀県地球温暖化防止活動推進員との分科会を経て、ブラシュアップをし、11月27日(日)の最終成果報告会で発表という流れになります。

最後に

参加者全員で集合写真を撮りました!

BIWAKO PICNIC BASEにて


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
関係者の皆様、素敵な機会をありがとうございました。次回はオンラインで、滋賀県地球温暖化防止活動推進員との意見交換・ブラッシュアップを行います。また、活動の様子を発信いたしますので、ご覧ください。

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