見出し画像

「ひと・地域を元気にするカーボンニュートラルプログラム」|長浜市西浅井フィールド研修

こんにちは。
立命館大学1年生の梅田諒真です。

今回は、「令和4年度 環境省・教育機関と連携した地域再エネ導入促進及び地域中核人材育成研究『ひと・地域を元気にするカーボンニュートラルプログラム』」の2日目、西浅井フィールドワークについて報告します。

令和4年度 環境省・教育機関と連携した地域再エネ導入促進及び地域中核人材育成研修
脱炭素社会の実現のために最大限の導入が必要な「再生可能エネルギー」事業に関わる地域中核人材の不足は、多くの地域において課題となっています。また地域において、再エネ導入に関する知識を有する機関である教育機関と地域の連携事情も少なく、効果的な人材育成にまで至っていないのが実情です。こうした課題を解決するとともに、地域に根ざした取組を実施するために、再エネを導入する地域と高等教育機関の連携促進、専門性を持った新たな価値の創造に取り組む人材の育成、地域の脱炭素化のための視座を共有する教育機関及びユース世代間のネットワーク形成によって、持続可能な脱炭素社会の実現を支援していきます。

環境省HP, https://www.env.go.jp/press/press_00679.html

2023年2月12日(日)滋賀県長浜市西浅井町を訪れました。農山村地域で行う脱炭素の取組を学ぶため、地元で農業を営むONE SLASHの清水広行さん、株式会社バイオマスレジンマーケティングの山田眞さん、Maki(出口牧仁)さんを講師に迎え、研修を行いました。会場は、清水さんが経営する居酒屋「あほうどり」を使用させていただきました。

全員の集合写真

フィールドワーク

まず、西浅井の集落、田んぼの散策を行いました。非常に多くの水路が巡っており、水路は排水のルールを定めるなどして水質を守るための工夫が行われていました。この水は約7万年前から存在する水源から流れてきており、琵琶湖に流れ、20年後には瀬田川に流れると言います。この水源から琵琶湖までは約8キロ。水源から川に、そして人々が田んぼの水として使い、琵琶湖、瀬田川へと流れていく。水の流れと自然環境と人の営みの関係性を感じることができました。

朝からみんなでフィールドワーク

清水さんレクチャー

清水さんは地域でさまざまな活動をするに至った経緯についてお話がありました。キーワードは「地域のネガティブをポジティブに変える」
「どのようにしてこの西浅井をお米で盛り上げてきたのか」。さらに「どのようにライスレジン(お米のプラスチック)にたどり着いたか」について清水さんのライフストーリーとともに伺いました。

大学生にもわかりやすく説明する清水さん

清水さんは、西浅井町庄村の出身で、幼少期からスノーボードに打ち込み、北海道、カナダと様々な地域で競技をしてきたと言います。しかし23歳の時、怪我の影響でスノーボードを断念し、地元に戻る決断をしたようです。その後7年間のサラリーマン生活で社会経験を積み、西浅井町で色々な事業を行ってきました。
その時、清水さんは久しぶりに帰ってきた自分の育ったまちの衰えに驚くと同時に危機感を抱いたそうです。「今のままでは子供が帰ってきたいと思うまちではない。子供たちが誇りに思うまちを作りたい。」そんな思いから子ども向けの小さな祭りから始めたと言います。さらに、幾つかのイベントを経てその一回きりという儚さを感じるようになり疑問を抱くようになったようです。「イベントの運営側にも参加者側にも何か残るようなものを作りたい!」「その時に思い付いたのが“お米”だった。」と清水さんは話します。

西浅井の武器である「お米」

地元で仲間たちと美味しいお米を作り、YouTube等でも発信し、地域のファンになってもらうなど、様々な工夫を施してきました。その結果、生産するお米に高付加価値をつけることができたと言います。一方で、清水さんは全国のお米の消費量自体が減少傾向であることを総量が減っていることに違和感を覚えたそうです。「自分たちのお米がどんどん売れるようになったとしても、パイを奪い合っているだけで、農家全体の収益をあげることにはならないのではないかと考えた。」と清水さんは話します。つまりお米を『食べる価値から資源の価値へ切り替える』ということです。食べるお米の消費量は減少していくけれども、資源としての活用方法が広がれば、全体の市場の生産量と収益を上げることにつながります。具体的には古米や砕米など、売れないお米を使ってプラスチックを作り、農家に収益を還元するという仕組みを作ることで、農家の支援ができると考え、後述する株式会社バイオマスレジンホールディングスと連携し、活動を開始されています。

山田さんレクチャー

次に、株式会社バイオマスレジンマーケティングの山田眞さんに「ライスレジン」についてお話をお伺いしました。
プラスチックは石油製品であり、燃やすと温室効果ガスを排出します。そこで、最近バイオマス由来のプラスチックが注目されています。バイオマス由来であれば、植物などが成長する過程でCO2を吸収するため、カーボンニュートラルな素材と言われます。現状では、北米のトウモロコシ、南米のサトウキビを原料とするものが多く流通しているとのことです。

ライスレジンの可能性について語る山田さん

しかし、海外からの輸入に頼らずとも、日本にもさまざまな資源があります。まずお米は需要の低下、耕作放棄地の増加など、さまざまな課題を抱える農業に新しい可能性を示すことができます。その他にも牡蠣の殻、落花生等、地域の特産品や未利用資源を活用する取組もしているようです。

ライスレジンの原型

こうした地域の資源を使うことで、地域内でお金が循環する仕組みを作ることもできます。まさに清水さんが話した農家を支援して、カーボンニュートラルにも貢献する可能性のある技術だと感じました。

ライスレジンからできたスプーン

お米を使ったプラスチックについては、すでに多くの企業が採用しており、身近なところでは、吉野家のレジ袋、モスバーガーのカトラリー等で使われています。また、イナズマロックフェス、フジロックフェスとの連携等、活動が広がっています。

子ども向けのおもちゃもライスレジン

また、米のセーフティーネットとしての機能もあるとのこと。田んぼは一度放置されて荒地になると木の根が生えるなど、再び農業をするための整備には大変な労力を要します。耕作放棄地を減らして資源米として作付けをしておけば、国際情勢の悪化といった緊急時には主食用として復活できます。台風で被害を受けたことで、売り物にならなくなってしまったお米をライスレジンに変えたという事例もあるようです。

さらに地域と連携した取組も始めています。例えば、新潟市とは連携協定を締結し、農家や市民と連携し、ごみ袋やカトラリーへ活用するほか、教育を実施することなどを掲げています。

ライスレジンは非常にエコです。それだけでなく、お米の生産量などの問題も一度に解決する優れた素材であることも分かりました。私が特に記憶に残っているのは、山田さん自身の「ライスレジン」に対する想いです。それは環境に対する意識を生活者に持ってもらいたいというシンプルなことでした。少しでもこの「ライスレジン」が生活に広まることと一緒に環境に対する意識も広がっていくと私は思います。

牧さんレクチャー

そして最後に株式会社バイオマスレジンマーケティングのMaki(出口牧仁)さんから環境保全のお話を伺いました。Makiさんは、ネパールと日本の両親から生まれ、ネパールと日本の架け橋として活躍されています。

グローバルな視点で話題提供されるMakiさん

Makiさんによると、1990年代ネパールではヒマラヤで氷が溶けたことによってできた湖が決壊し、集落が水害にみまわれるという災害が発生したと言います。電気もガスもない地域であるにも拘らず、温暖化の影響を一番最初に受けてしまったのです。「気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量のほとんどは先進国によるものであるのに、影響を受けるのは途上国であるという構造に気付かされた。」とMakiさんは話します。

Makiさんはネパールの国立公園でレンジャーとして密猟を防ぎ、ジャングルを保護する仕事をしてこられました。さらに、ネパールのジャングルで2年間活動し、その経験から絶滅危惧種や環境汚染に危機感を持っています。この問題解決のためにネパール政府と協力し、Earth Loveツアー(エコツーリズム)を開催し、ネパールの国立公園の環境を守る活動も行っていると言います。

このお三方のお話を聞いて、環境を守ること、つまり消費者の意識を変えることは非常に難しいと思いました。「ライスレジン」のように、初めから生活のすべてを変えるのではなく徐々に少しずつ環境に配慮した製品を使うことでこれからの地球の未来は大きく変わるのだと考えます。

お世話になった皆様ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?