自分も他人も受け入れること―絵本『フレデリック』を読んで【#21-読書】
友人と話のネタにふたりだけの《読書会》をひらいてみた。
「「はじめて知ったこと」「共感できなかったこと」など、自分が感じたことを言い合って、お互いがどう感じたのかを知ろう!」という、国語の授業のようなもの。
お題本は『思考の生理学』と『フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし』の2冊。
仕事に家事に忙しい社会人でも、1ヶ月あれば読み切れるボリュームをと考えて選んだ。
さて、結果的にこの読書会は正解だった。
お互いの感想が止まらなかったし、ハッと気づかされることもあったのだ。
特に『フレデリック』について、わたしたちは自分の価値観に合わない人に抱く気持ちと向き合うことになった。
「フレデリックにはなれない」と友人は言う。
はじまるや否や、友人はそう断言した。
冬籠りの準備をはじめる野ネズミたち。
せっせと食料をあつめる仲間たちだが、フレデリックはじっと座っているだけだった。
見かねた仲間たちが「何をしているんだい」と問えば、フレデリックは「いま冬に向けてお日様のひかりをあつめている」や「ことばをあつめている」と、答えた。
冬籠りがはじまる。
最初は楽しく暮らしていた野ネズミたちだが、食料が尽きてすることがなくなってしまった。
するとフレデリックは、これまで見て、聴いて、集めたことを仲間たちに語り聞かせたのだ。
仲間たちはフレデリックのお話しに夢中になり、彼を褒めた。
うろ覚えなところもあるが、あらすじはこんな感じ。
せっせと体を動かして働く野ネズミの仲間たちと、集団から離れてひとり別のことをやっているフレデリックに、友人は「なれない」のだという。
「みんながせっせと働いているのに、自分だけ違うことはできない。きっと周りを見て、みんなと同じことをしてしまうかも」
幼いころから「みんなと仲良く」「周りをよく見て」「和を乱さない」ことを求められていたから、意図せずとも「みんなと一緒にやらなきゃ」という意識がはたらいてしまう。
それは私も同じだ。
だからわたしたちは「フレデリックにはなれない」。
つぎに、「フレデリックにイライラしちゃう」という感想もあった。
フレデリックに「イライラ」する
どうしてイライラするのか。
わたしたちの間で出てきたのは2つの考えだった。
① フレデリックの意図がわからないから
読者も仲間の野ネズミも、冬ごもりに入るまでフレデリックが何のためにお日様の光を集め、言葉をあつめたりしているのか分からない。
フレデリック自身の答えも ふわっとしていて分かりづらい。
「みんなにお話を考えてるんだ。そのための準備さ」みたいなことをいってくれたら、まだ「なるほど」と思えるのに。
② まわりに申し訳ないから
仲間がせわしなく働いているのを横目に、自分だけ違うことは申し訳なくてできない。
そのなかには「ひんしゅくを買う」ことを恐れる気持ちもあった。
ひとたび違うことをしようものなら、陰でヒソヒソ噂されているかもしれないと思うと、とても居たたまれない気持ちになる。できれば嫌われたくない。
つまり、私たちは「仲間外れにされたくないから一緒に働く」のが当前だと思っているのだ。
それも心のどこかで「みんなもそうでしょ」と思っているものだから、自分の価値観にあった行動をしないフレデリックに反発心をおぼえてしまう。
昨今悪い風潮として指摘される「同調圧力」や「差別意識」のワードがよぎり、わたしは気まずくなってしまった。
どっちもあっていいじゃないか
一方で友人は、仲間の野ネズミのような人も、フレデリックのような人がいることも素直に受け止めているようだった。
「実際に、結末を見てフレデリックのやっていたことの意味を知って「なるほど~!」て思えた。
事情がわかれば受け入れられるんだけど、わからなければイラっとしてしまうのは、もう仕方ないことだと思う。
ただし、それをそのまま本人に言うのは違うと思うんだ。」
自分の価値観に合わない人がいるのは当たり前で、その人のことを理解できなくてイラっとするのも当たり前のこと。
大切なのは「そういう人もいるんだ」と受け止めるようになることなのだと。
「だから、せっせと働く野ネズミ仲間のような人もいていいし、そうでないフレデリックのような人もいていい。
どちらかに共感し、どちらかにイラっとする人も間違いじゃないと思う。両方あっていいと思う。バトルすることじゃないもんね」
と友人は締めくくった。
そういえば、仲間の野ネズミ達は、食料あつめをしないフレデリックにイライラすることはあっても、責めたてることはしなかった。
フレデリックになれないわたしだけど、彼を受け入れる仲間の野ネズミたちのような寛容さは持っていたい。
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