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シン・エヴァンゲリオンに学ぶ作業療法〜ケンケンになれない、そんなあなたへ〜

シンエヴァ、日野の感想

「えっ、最初の1時間半ずっと作業療法?精神科閉鎖病棟の日々めっちゃおもいだした。庵野…!!」


うつヌケハック担当者、株式会社イメジンの日野成美です。

前回の記事はこちら💁‍♀️

ワクチン副反応で前回お休みをいただきました!待っててくれた皆さんありがとうございます!!

ついでに業務連絡、毎月1日にお休み告知つぶやきは削除することにしました。noteを見やすく保ちたいからです。

そして38.5度の発熱はキツかったんですが、思えばガチうつの頃って高熱と同じ以上にだるくて動けてなかったなと。トイレ行くのもためらうだるさって久しぶりだったんですが、

今日のうつヌケハックは、そんなマジでガチなうつの対処の話をします。


シン・エヴァンゲリオン(以下「シンエヴァ」)をやっと鑑賞できました。Amazonプライムビデオで!


いやカイタクは忙しいわうつヌケハックは好評だわで、映画館行けてなくて。

ゲッターロボ・アークみてからのシン・エヴァンゲリオンということで「ドラゴンの中に弁慶が!」みたいなトンチンカンなことを叫びつつ

(※ゲッターロボシリーズはエヴァが参考にしまくったことで有名。みんな脳筋なので安心して観られる男子のロマン)


なるほど、こうまとめてきたか。

はじめてテレビ版をポケモンの番組の前だったか後だったかに見て「アスカかわいい」って言ってたあどけない6歳児が今こうしてアラサーと思うとグッとくるものがありますが、そんなことよりもですよ。


実は精神科には投薬だけではなくさまざまな治療法が蓄積されています。

あなたもご存知のとおり、投薬とカウンセリングによる通常の診療だけではとても、とりわけ重度うつをケアすることはできません。

特に入院病棟では生活管理や栄養管理を通して、生きるための負担を減らすサポートを実施します。


私は15歳の時に2度、トータル10ヶ月精神科入院病棟で生活しました。

その閉鎖病棟で実施されていた「作業療法」が、シンエヴァ前半でまるっと描かれていたのです。

びっくりしたぽん。


作業療法とは、

「何らかの作業を通して、自分の認知の歪みやクセを見つめ直し、気分転換やストレス低減をめざす」

というもの。(※今は定義変わってるかも!)


私も革製品めっちゃ作った記憶があるぜ!たぶん実家にまだある!

で、シンエヴァでは本当によく作業療法がきちんと描かれていました。


重度うつ病の症状、回復過程、そしてシンエヴァから学べる作業療法のメソッドを、今日はご紹介します。

※15年近く前の日野個人の記憶に大きく頼った記事です!気になる方は作業療法についていろいろ調べてみてください!
なお【ネタバレあり】記事だよ!気になる方はアマプラでCheck it now!

【以下ネタバレあり】ガチ鬱シンジくんへの正しい対処法

はい、シンエヴァを前半まで観たあなたはようこそ。

そうでない、ネタバレカモンなあなたもおいでませ。

なお後半は怒涛のあんなこと、こんなこと、そこだけ見たらわけわからない映像のオンパレードで素直に傑作に仕上がっているので、ゲンドウと一緒に泣きにいきましょう。


1行でまとめるシンエヴァ前半の状況

前作「Q」ラストでカヲル君を目の前で爆死させてしまい、重度の鬱状態になったまま第三村に到達したシンジ君。そしてなりゆきでくっついてきたアヤナミレイ(仮称)は、居候療養生活をはじめる。

い、生きてたのか!心配したんやで!みんないい人すぎやろ!!

ああ全員の気持ちがわかるよ!!アスカの気持ちも今ならわかる!

その中でもケンケン最高すぎやろ。と圧巻の保護者力を発揮したケンケンなわけですが、ケンケンについては後段熱く語るからおいておきましょう。


シンジくんは目の前でカヲル君を失ったことで、PTSDに近い重度の抑鬱状態に悪化しています。

・食べない
・眠らない
・会話できない
・返事しない

特に、場面緘黙(ばめんかんもく)や嘔吐のシーンは非常にリアルに重度うつ状態を再現した描写をしていましたね。

あの状態は誰でもなりうるものです。私も10代の一時期あんな感じでした。


あ、最初に言っておきますが、アスカのような対応は基本的にNGです。凡人はケンケンかトウジを目指しましょう。

シンジくんはわざとああして嫌がらせをしているのではなく、重度うつだとマジで体が動きません。

脳といっしょに自律神経系も炎症を起こしていると考えられます、重力に逆らって立つどころか、腕も上がらないしそもそも「立とう」って思ってから立てるようになるまで30分かかる。30分かかって立ち上がったのに、立ちくらみで起立後0.5秒にしゃがまないといけなかったりする。

悪夢じゃろ?私もあの頃が悪夢のようです。


これらを起こしているのは、脳に起こっているトラブルだと考えられます。

(うつ病のメカニズムについては定説が出てないよ!一番しっくりくるのが脳の炎症説だけど、セロトニン不足説とかいろいろあります)

シンジくんの場合強すぎるストレスを短期間のうちに受けすぎて、キャパオーバーになったのでしょう。

こうなるとマジで死に至る病です。自殺しなくても飲み食いできなくて死にます。


つまり、重度うつ病患者に対するまわりの正しい対応は、

死なないギリギリの境界線で休養を継続できるよう、生存のためのストレスレベルをコントロールする手助けをすること

です。


決して叱咤激励したり、人生の尊さについて説教することではありません。

「死なないで安全に休むための手助け」をするのが、正しい周囲のおしごとだと私は思います。

なお、ストレスレベルの話で言うと、うつ病マンには食事や排泄すら強いストレスです。


前に語ったけど、うつだと定食タイプのごはんとか食べられない!野菜食べるのも疲れる!ある意味レーション食は正解だ!

ちなみにトイレ行くのに廊下に出られない、起き上がると立ちくらみで動けなくなるから起き上がるの怖いなど、生きてるだけで大仕事なのが重度うつ病マンの世界。


そんなコンディションを抱えて死にたくてたまらないうつ病マンに、「生きていても安全だ」とメッセージを送るのが周囲の心がけることではないでしょうか。

凡人がケンケン(過干渉しない庇護者)になる方法

正直、この映画で前半重要だったのは、シンジ君ではありません。

シンジ君を支えた庇護者ケンケン(相田ケンスケ)です。


いや、無理やろ。

ふつうに聖人レベルやろ。

ニアサーで生きるか死ぬかをかいくぐって少年が神話になっただけじゃない?


「シンジは、大丈夫。」

いやどこが?!私がみてきたうつ病マンの中でも入院クラスで最重度なんスけど?!しかも開放病棟じゃなく、閉鎖!任意じゃなくて、措置!!


でも、いや、信じよう。

ケンケンはシンジくんが一生懸命、エヴァに乗って戦って葛藤して、ぜんぜん強くないのに強くなろうとしてきたことを知っています。

シンジくんが本当は「愛されて生きていたい」こともわかっています。


そう、ケンケンになるためには、つまり安全を保障する庇護者になるには、うつ病患者を信じなければなりません。

その生命力、死への恐怖、生への愛着、無邪気な信頼。

実際問題、シンジくん(14歳)くらいの肉体の生命力だと水分と最低限の栄養価さえ摂っていれば死なないので、ニアサー生存者のケンケンはそのへんもわかってたのでしょう。


うつ病患者は「できないけど、やらなきゃ」を繰り返して悪化します。

だからうつ状態になった時には、なにができてどれが無理なのか、自分で判断できません。


ケンケンのえらいところは「できるところだけ、お願い」したことです。

できることを着実にこなし、成功体験を積み重ね、寝てるだけが正しいときには寝かせ、孤独が必要ならばそれを味わせた。


「生きていても、安全だ」

そしてやっと思考が回りはじめたら、

「生き続けて、やり遂げるべきことがある」

そこに勝手にうつ病マンがたどり着くことを、きっと彼は経験で知っていたのです。


基本の衣食住、清潔な居住環境と栄養の確保された食事。

相手をジャッジせず、管理しないこと。


ちなみに、レーションを無理矢理食わせたアスカにケンケンがお礼を言ったのは、「シンジの安全を保証する立場の自分が、力づくでメシ食わせるわけにはいかない」からで、汚れ役を買って出たアスカに感謝したのです。


もう、もう、ケンケン何があったん……?(ブワッ)

まぁ治しちゃいましたね。

なお、「死にたい」という言葉の解説についてはこちらの記事を参照だ!


ちなみにアヤナミレイとの別れがなければあと半年くらいかかってたというのが私の感想ですね。

うつ病マンには「自分を守る」と決心する決定的な出来事がどうしても必要で、そのトリガーにアヤナミレイはなってくれたんだと思います。


好きな人と、ずっといっしょにいたかった。で泣いた。

アヤナミレイ(仮称)の作業療法に学ぶ、回復期の回復の仕方

さて、映画が進みすぎたので1回巻き戻し!!


アヤナミレイ(仮称)の第三村での生活は、もっと一般的なうつヌケハック向けです。

回復期および軽度〜中度のうつ、抑うつ傾向があるものの病態化はしていない人、およそほとんどの日本人が参考にできるのがアヤナミレイ。

むしろ、アヤナミレイのほうが作業療法をバリバリ実施していましたね(さっき見返したら前半シンジくん寝てるだけやったな…正しいぞ…)。


うん、アヤナミレイもすっごくうつ病マンな感じなんですわ。

感情の鈍磨
・自己と他者の境界の摩滅
・命令で安心できる
・自分の意思や感覚がわからない
・条件付きの存在価値

エンパス系のHSPや毒親育ちに多いタイプですね。


アヤナミレイタイプは、心の声を滅殺して生きています。

「命令?ならそうする。」みたいなセルフマネジメントをしていると身体機能がぶっ壊れるのですが、ぶっ壊れても「私の代わりは他にもいるもの」なので、問題視しません。

そして「自分の意思を持たないメリット」についてとうとうと相手を論破しにいっちゃう。アヤナミレイもたぶんそっちな気がする。


セルフケアしない理由を理論武装までしている相手に、どう対処すべきか?

答えはこちら!


【答え】周囲は無邪気さを武器にする


いや、おばちゃんたち良かった!!マジ最高だった!!!

「えー、なんでだろう。考えたこともなかった」
「いいじゃん、やってみなよ」

無邪気に生きることを味わい、自分自身をジャッジしないあり方で、なんとなくその場を楽しんで過ごす。

アヤナミレイ系うつ病マンは朱に交われば紅くなりやすい、つまりまわりに合わせるタイプです。

そのため、周囲のメンバーがゆるっとした価値観の人ばっかりに変わると途端に人間性を発揮したりします。


目的のために息子や世界まで犠牲にするような、ストイックさの塊みたいなネルフのところにいちゃいけんかったのだよ……。


私は一応、口八丁でものを買わせることができる言葉のプロです。

だからこそ、「無邪気に言い張る」ことが一流スピーチよりもときに強く威力を発揮することをよく知っています。

「いいじゃん、やってみたって」「バレたら怒られればいいよ」「服のままはダメだよ」


ただ、そうしたいからそうする。

無邪気にキャッキャして過ごすことは、自己批判をしなくてすむ方法の1つです。

「なんでこうしているのか、どう言い訳しよう」と常に自問自答しているのは健全な状態ではありません。もろめっさ脳に負荷がかかります。


「やりたいから、やる」
「かわいいから、抱っこする」
「好きだから、ずっと一緒にいたい」

うつ病マンがそんな無邪気さを自分に許せるように、周囲もあえて理論武装せずに無邪気に接すること。

それが重要なのかなと思った次第です。

シンエヴァに学ぶ!今日からできる作業療法

「自分のまわりにはケンケンどころか、トウジすらいないよ!アヤナミレイみたいにそっと見守っててくれる人もいないよ!」

うん、みんないい人だったね!

そんなあなたに、シン・エヴァに学ぶ作業療法をご紹介します。


今日からできるよ!

日常生活を作業療法に進化させるメソッドを一挙紹介だ!!


・自分の体と心の声に従ってみる

うつ病マンは周囲の期待に応えるべく、自分の心身の声をぶっ殺して生きてきました。

それで過労状態になり身体機能がフリーズしてるので、まずは体の声に従って休みをとりましょう。

最初はカオスです。でも、寝たかったら寝てましょう。だんだんストレス処理がすんで、体と頭が軽くなってきます。


・自然など外界の情報に触れる(ドライブ最高)

ケンケンが「仕事の手伝い」と称してシンジ君をドライブに誘っていましたが、会話ができる程度にストレス・刺激への反応耐性がついてくると、ドライブは最高のうつヌケアクション。

都会暮らしの方は、ちょっと郊外の田んぼや畑、山を見に行きましょう。田舎の民は、スタバとかコメダとか行ってみましょう。店内に入らなくて構いません。

音、光、生き物の気配など「気持ちいいな」と感じる刺激レベルを感じるためにドライブ行きましょう。私も10代の頃、親に夜のドライブ連れてってもらってました。


・適度に体を動かす

アヤナミレイのように田植え、家事育児の補助、入浴などの日常生活を手伝うことで、筋力低下を抑止してセロトニンが出やすい体質改善につなげられると考えられます。

「人と同じことが自分もできている」ことが重要なのではなく、筋肉量を落とさないことが大切なのです。


・やさしさを受け止めてみる

人からのやさしさや思いやりを、すなおに「ありがとう」と受け止めてみましょう。

褒められたら「照れる」。ものを拾ってくれたら「ありがとう」。

そして、自分にはできないことをお願いする。頼んでみる。

やってくれたら、「ありがとう」と言う。褒められたら、理論武装して相手の褒めを否定しない。受け止める。

それからはじめればいいんです。


・頼ってみる、質問してみる

「わからない、綾波レイなら、どうするの?」「これ何?」と、ある段階から頻繁に質問を発していたアヤナミレイ。

私の愛しのうつ病マンたちはみんなほんっまに、頼らないし質問しないし、自分で抱えこんで全部自分のせいにして苦しみます。

でも、本当は自分で解決できないことは他人に頼ってみていい。

ぜんぶ自分でやらないことが、うつヌケ最短ルートです。

まずは「カーテン開けて」「さみしいから、早く帰ってきて」と、だれかに頼んでみることから。


・誰かとしゃべる

大浴場のおばちゃんたちみたいな、ふつーの人との「しょーもない日常」が人生をつくります。別になにをしゃべったっていいのです。

なにを言っても怒られる人とは会話しなくていいのです。自分の意見を論破してくる碇ゲンドウみたいな人とも、エネルギー充填するまではちょっと距離を置きましょう。

SNS、コミュニティ、カウンセリングなどフィールドはたくさんあります。

もっと無邪気に生きていい。


・体が動く範囲で、はたらいてみる

「働く」「仕事する」、つまり「人の役に立っている」という感覚が人を生かします。

人に褒められる。人の役に立つ。成果を出す。愛される。愛情以外は仕事で手に入れることができます。

こけて失敗したっていいのです。終わったらカブとかもらって、持って帰って委員長にお味噌汁作ってもらえばいいのです。


・なぜ自分がこうしたのか、話してみる

終盤、碇ゲンドウと対決したシンジくん。

なぜエヴァに乗ったのか?どうしてニアサードインパクトやフォースインパクトを誘発するのか?父子がはじめて本気で話し合いました。

「さみしかった。愛されたかった。」
「もう一度、逢いたい。」

対話と理解を重ねた先に、カタルシスや救済が生まれることもあります。

対話を諦めたほうがいい相手やタイミングもありますが、少しずつ「なぜ、自分がつらいと感じるのか」ほどいて言語化するのも、よい自己分析です。

「自分の人生を引き受けた」エヴァンゲリオンの登場人物たち

いやーーーそれにしても。

キレイにまとめましたね、シンエヴァ。


私がはじめてエヴァを観たのは小学校1年生くらいの頃、ポケモンの番組の前か後がエヴァ放映時間だったからなんですが(同時間帯に「カウボーイビバップ」とかもやってたんだぜ)

あれから四半世紀が経っちゃってえっ。マジ?ってなってます。

純粋にガチ傑作で、特にイマジナリーでマイナスな後半はなにがなんだかわかんない映像展開で天才庵野の凄さを思い知るんですが、とりあえず観てみることをオススメします。


シン・エヴァンゲリオンの登場人物はみんな結局、自分を受け入れざるをえなかった。

自分の人生を引き受けて、そして旅立っていきました。


共感や寄り添いだけでうつヌケできたら苦労しないのです。愛されてやさしくされることだけが、うつヌケの鍵ではありません。

勇気をもって、その愛ややさしさを受け止めてギュッとすること。

そして一歩前に踏み出す勇気を持つこと。

それを、よく教えてくれた映画だったと思います。


庵野監督はじめスタッフの皆さん、声優さん、特に裏方、スケジュール管理やマーケ担当者の皆さん、お疲れ様でした。

よき作品を完結させてくれて、ありがとうございます。


苦しい心身を抱えていつもうつヌケハックを読んでくれているあなたも、ありがとう。大好きですよ。

次回、「失敗しちゃダメだ…を論破するからちょっとこっち顔に貸してくれ」の予定。
お楽しみに!


うつヌケハック質問箱はこちら📦


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