三越伊勢丹が作る”マニア”コミュニティの可能性(後編)
こんにちは! アイムデジタルラボ 採用広報担当です。
三越伊勢丹発のメディア「コミュニティサイト」第一弾は、チョコレートがテーマの「ツール・デュ・ショコラ」。
前編では、2020年の開始から2年間で気づいた「"マニア"コミュニティモデル」について紹介しました。後編では、2023年に行った新規システム構築の裏側や成果、今後の展望について話してもらいました。
展開の拡大を見据え、システム構築にヘッドレスCMSを採用
ーー新しいシステムの開発にあたり、お二人はそれぞれどのような役割でしたか?
土屋:戦略設計とプロジェクト全体のコントロールです。スケジュールの管理、また運営にかかわるコミュニティマネージャーやバイヤーとの調整も担当していました。
松田:ビジネスメンバーと開発メンバーの橋渡し役です。システム構築と同時に若手エンジニアの育成も重要なテーマだったので、彼らのケアやサポートにもあたっていました。
ーーヘッドレスCMSを導入した理由を教えてください
松田:SaaSは開発不要で利用できるので便利ですが、一方で三越伊勢丹らしさを表現することに限界がありました。しかし、新しく開発するといっても全てを作るのも簡単ではありません。そこでヘッドレスCMSを利用し、記事の投稿や保存といった機能を利用しながら、百貨店らしい複数のコミュニティ展開や、見た目の演出といったUI部分は自分たちで作ることにしました。
結果的に、スピーディーに開発を進めることができ、今後の改善にも素早く対応していけるので、お客さまへの継続的な価値提供につながっていくと思います。
ーー大変だったのはどんなところでしょうか?
土屋:ビジネスサイドでは、この機会の価値を最大限にするための戦略策定が必要でした。SaaSからのユーザー移行やコンテンツ制作をどのように行っていくのか、考慮する点はたくさんありました。
松田:開発チームでは当初ヘッドレスCMSに慣れないこともあり、使いたい機能をうまく使えず進まないことがありました。しかし役割分担も含めチーム内のコミュニケーションの質を高めていくことで解決策を見出し、最終的にリリースまでたどり着けました。
徹底的なユーザー目線で機能を取捨選択。ビジネス価値を見極め乗り越えた不安の壁
ーーどのように開発を進めましたか?
松田:せっかく、新しく作るのだから、これまでの機能を、そのまま踏襲することがないように意識しました。新たな視点からユーザー体験を見極めることで本当に必要な機能だけに集中しようと考えました。
焦点を当てたのは、ユーザーの使いやすさ、ユーザー同士のコミュニケーション、投稿からリアクションまでがスムーズに行えるです。それを基準に最大限に価値を提供できるものを考え、選別して洗練させていきました。
ーー苦労された点について教えてください
松田:新しい視点で考えるとはいえ、これまでの機能をなくすことには非常に不安がありましたね。ユーザーの行動データの調査に時間をかけ慎重に状況を見ながら、既存サイトで使用されていない部分を特定し機能の優先順位を洗い出しました。
土屋:取捨選択によってお買い場の現場社員からは「これもできないの?」と指摘されることもありました。現場と開発の間で選択に迷う中、アイムデジタルラボが伴走してくれてとても助かりました。
ビジネス的な価値がどこにあるのか、ユーザー体験の最も大事な要素は何か、重要な問いを投げかけ続けてもらいました。数字を見ながらほぼ毎日ディスカッションしたおかげで、考えが整理され現場にも説明できるようになりました。
ーー運営側との調整はいかがでしたか?
土屋:新しいサイトの立ち上げに合わせて、運営側の業務も見直しました。それまでの個人に頼る部分が大きかったので、仕組み化したかったです。業務一つひとつを、価値の高いもの、優先度の高いものから整理をするところから始めました。現場メンバーとも、大事にしたいお客さま像やコンテンツについて日々話し合いを重ねながら、継続的に運営できるフローの再構築を行いました。
確かな手ごたえの先に見出す、新しい「買い物体験」
ーーリリース後の反響はいかがでしたか?
土屋:まず、リニューアルについてはコアユーザーを中心に、お祝いのメッセージや応援の声を非常に多くいただきました。印象的だったのは、リリース時に発生した課題を開発チームが迅速に対応してくれたことです。お客さまからも「こんなにすぐ改善されるなんてすごいですね」とお声をいただけました。
開発を内製化したことで、お客さまの声にすぐに対応できるようになったと感じます。アジャイル開発のいいところだと思います。
ユーザー数は当初の目標を大きく上回り、リリース後、数週間で多くの投稿がありました。エンゲージメントの時間も伸び、積極的に使ってくださる方々が多くいることにコミュニティサイトの可能性を感じて、さらにユーザー体験を向上させたいという想いに繋がっています。
松田:ユーザーが投稿してくださる内容は1000文字を超えることも珍しくなく、TwitterやInstagramなど既存のSNSとは異なるコンテンツが生まれています。ニッチな情報が集まりサイトが盛り上がる様子はまさに仮説通りで、今後も前進していけるサービスだと感じています。
またユーザーからの改善要望は、投稿やコメントという形で直接私たちに届くため、修正が必要な箇所をダイレクトに認識することができます。ユーザーとプロダクトが近い距離にあることは非常に良いことだと思っていますね。
ーーここまでを振り返り、どのようなやりがいを感じていますか?
土屋:新しいサービスを作ることが好きなので、今回は特にその喜びを実感しています。生みの苦しみも味わいましたが、ゼロの状態から1件目の投稿が生まれた瞬間は非常にかけがえのないものでした。
また品揃え豊富な百貨店だからこそ、マニアの方々の嗜好に基づいたビジネス展開ができます。見ていて飽きることがなく面白いですね。
そして何よりコミュニティサイトを積極的に利用してくれるユーザーがいることで、自分の仕事に誇りを持てます。人生を楽しむためのポジティブな場所を提供し、社会に対して良い影響をもたらしているという実感がやりがいにつながっています。
松田:お客さまの反応から、良い体験を提供できていると実感しています。
お客さまの中には百貨店は敷居が高いと感じられる方もいらっしゃいます。そういった方でもコミュニティサイトでの好きなものを通して三越伊勢丹とつながり、新たな関わりを持っていただけたら嬉しいですね。
ーーコミュニティサイトの今後の展望について教えてください
土屋:私たち百貨店はお客さまにお買い物を楽しんでいただくことがベースにあるので、コミュニティサイトでも「買い物体験の楽しさ」を追求していきたいと思っています。
世の中はデジタルで便利になっていってますが、買い物体験はあまり変化していないように感じています。お買い物をもっと新鮮な価値の感じられる楽しい体験、わくわくするドラマチックな体験にしたいと思っているんです。そのためにサイト内のユーザーの「好き」をもっとつなげて進化させ、よりよいユースケースを作ることを目指しています。
そして将来的にはさまざまなカテゴリにコミュニティを広げて、そこからまた新たな価値を生み出せる仕組みを構築していきたいと考えています。
松田:今後もユーザーに熱量の高い状態で継続的に楽しんでいただけることを目的に、システムをどう作れるかが重要だと考えています。前例のない取り組みですが、スピード感を持って進め改善するPDCAのサイクルを正しく回すことが必要ですね。
コミュニティサイトの第二弾として香水好きのための「パルファン」、第三弾は和菓子好きのための「わがしのわ」が始まっています。コミュニティを増やすためには運営やイベント企画のモデルを作っていきたいと思います。
いかがでしたでしょうか? アイムデジタルラボでは、三越伊勢丹と協業し、百貨店の新たな可能性を探求しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご応募ください!
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