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映画「メメント」が教えてくれた写真のこと

あなたはなぜ写真を撮る?

写真を撮りたいと思い立って早1年半。
未だ趣味の範疇ではあるが、出かける時はカメラを携えてパシャパシャと写真を撮ってきた。

写真を撮り始めたきっかけは、祖父だ。
祖父は生前写真をよく撮っていた。
家族の写真から自分の趣味の水彩画の資料用としてまで。記憶の中の祖父はカメラをいつも持っている。

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祖父の遺したNikon F3と友人のPentax spf

しかしそれはきっかけにすぎず、撮り続ける理由としてはやや弱い様に感じた。
私はなぜ写真を撮る?

そう疑問に思ったことは何度かあったが
「理由なんざあ必要無ェ、そこに撮る物があるからだろォ」
と、深く考える前に思考停止していたのだ。

そんな私が先日映画「メメント」を観た。

「メメント」はかねてより期待を寄せていた作品で、観たい観たいと思いつつも
ついつい後回しにしてしまっていたヤツだ。というのも、「非常に難解」「1回では理解不能」という前評判をどこかで不運にも見てしまったからである。
それ以来「メメント」は体力のある時に観るリストに鎮座する事となっていた。

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メメント"Memento" / 2000
妻を殺害され、その際外傷を負い記憶が10分間しかもたなくなってしまった主人公。しかし、復讐を果たすべく記憶のハンディキャップと向き合い犯人に迫っていくが…。
監督は「ダークナイト」「インセプション」そして近日公開の「テネット」を
手掛ける巨匠 クリストファー・ノーランである。

ご覧になった事がある方はお分かりかと思うが
主人公レナードが記憶を繋ぎ止める為に写真を使っているのだ。

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レナードが使っているのは「ポラロイド690」というカメラ。
撮った写真がすぐ手元で確認できるという、発明当初はさぞ革新的だったろう。
ポラロイド写真に写した物の情報を書き込み、忘れても思い出せる様にしている。

前述した様に映画の構成は非常に難解で、それでも観終えた時には
「お、おう。 つまり、そういう事か。なるほどなるほど…。フーン。」
と、一応腑に落ちる感覚はある。
(これは観た事がある方にはご共感頂けるはず…)

しかし、それとは別に妙に腑に落ちる感覚があった。
それは主人公の記憶を繋ぎ止める為に写真を撮るという行為だ。

そもそも、写真を撮るという行為は事象の記録という目的があったはずだ。
デジタル化の目覚ましい進歩により、今や写真を撮る行為は身近で日常の一部に完全に溶け込んでいる。何千なんて写真がスマホの中に、HDの中に、あるいはクラウドの中に、なんて時代だ。次々と写真は上書きされ、まるで消費されているかの様な感覚もある。

しかし、「メメント」では違う。
自分の記憶を文字通り繋ぎ止める為に写真を撮っている。
そうでなければ忘れてしまうから。消費ではなく記憶の生産だ。
そういう設定なのもあってか、普段あまり深く考えもしない写真の本質が際立って描かれていて、私の脳みそにぶっ刺さった。

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この人を可愛く撮りたい。この風景をカッコよく撮りたい。
他の人を喜ばせられる様な写真を撮りたい。
私がファインダー越しに見ている物の素晴らしさを伝えたい。
そういう動機はもちろんあって、いつだって原動力だ。

だが、その根底にある
今自分の見ている光景を自分の為に残したい、いつか思い出せなくならない様に。という極めて利己的な部分が案外大きいのかも知れない。

忘れたくないのはレナードだけでなく、私も、そしてきっと祖父も同じなのだ。

あなたはなぜ写真を撮る?

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画像出典:IMDb

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