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今後は自律した人たちが音楽を動かしていく。IMALABが見る音楽の未来

 一つのつぶやきをきっかけに始まった「新人アーティスト発掘・発信プロジェクト」。2020年から活動がスタートし、2年が経った。「音楽が好き」という共通項だけでつながった素人たちの集団は、これまでどのような実績を残しどこへ向かっているのか。IMALAB主宰の音楽ディレクター今村圭介氏は、IMALABと音楽業界を重ね合わせた未来を見つめている。


IMALAB発足から発掘したアーティストは2,500以上

今村:IMALABは『何年も何十年も一緒にドキドキできる音楽』をテーマに、新人アーティストの発掘・発信・育成を主に行っています。2020年半ばからスタートしたプロジェクトで、2020~2021年はIMALAB Season1として約150人のスタッフと、2022年はIMALAB Season2として約20人のスタッフと共に活動してきました。

新人を見つけてデビューさせるという意味では、音楽業界の動きとしては全く新しくないのですが、その過程に自分以外の人の手が加わっていくというのは新しい試みだと思います。IMALABはTwitterで集まったビジネスに関係のない、ただ音楽が好きというだけで結ばれている人たちで、そんな仲間と何かを一緒につくっていくというのは今まで経験したことがありませんでした。音楽業界外の人が集まっているから、大概は『わからない!何これ!?』から始まるのですが、ゼロからトライするからこそビジネスとは違うかなり新しい感覚やエネルギーがあって、かなり面白いプロジェクトになっています。笑

僕が普段音楽業界の中で一緒に仕事をしている人たちと全然違う人たちが、実際の音楽業界と同じような仕事をしているんですよ。不思議ですよね。メンバーは、他に仕事を持っている社会人や、学生やクリエイターと背景もさまざま。そんな多角的なメンバーと共に、IMALABが立ち上がって2年ちょっとで発掘したアーティストの総数は約2,500、開催した7本のライブでは延べ30組のアーティストが出演しました。

プレイリストインしたアーティストが出演する「IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE」。2022年は3回行われた。

「わけわかんない集団」から「結構ちゃんとした集団」に。ヒットが出るのももはや時間の問題ですね。笑

今村:プロジェクトの発足から2年の月日を経て、ようやく足場が固まったなという感覚があります。外から見ると2022年のIMALAB Season2は若干地味だったかもしれませんが、着実に前進してきました。

月2回更新している『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST』がLINEの公式プレイリストになり、下北沢Flowers Loftで開催したライブは100人以上動員し、インタビューやSNSを通しての発信にも力を入れてきました。地道な動きが実積として上げられてきて、Twitterをきっかけにスタートした『わけわかんない集団』から『結構ちゃんとした集団』になってきたのではないかと。そういう意味では音楽業界的に言うと収まった感覚はあると思うんですよね、他のところと同じみたいな。

この部分が音楽業界側からIMALABを見たときに面白みがないと思われている可能性もあるなと思うのですが、でもふわふわとしていないからいいかなと僕は思っています。発掘も発信も自分たちの手で確実にできるようになっているので、あとはこの足場が整ったIMALABでヒットを飛ばせたらいよいよ異常な光景が見られる。昨年、IMALABきっかけで出会ったmeiyoやきゃないは1億再生回数を越えたヒットを飛ばしている。手の届くところまでようやく来ているので、もはや時間の問題ですね。笑 2023年、いよいよですよ!


 IMALABでは発掘した新人アーティストの育成も行っている。IMALABと関わる育成アーティストのうち、今村氏の言う「異常な光景」に近づいているアーティストはいるのだろうか。

今村:IMALABで育成しているユゥレイの怪奇譚は、TikTokを中心にバズを起こしています。“ラブゾンビ”は170万回再生され、他の楽曲も合わせるとストリーミング数で約3,000万回動いているアーティストです。“ラブゾンビ”が跳ねたときは、IMALABスタッフもテンションが上がりましたね。あとは、この再生数がサブスクリプションにつながってほしいなと思います。



自律して動ける人が今後音楽に関わっていくようになる

 偶発的に生まれたIMALABだったが音楽関係者に「面白い組織」として認識され、これまで行ってきた活動が、多少なりとも音楽業界に影響を及ぼした。IMALABはそれぞれが意思決定できる自律した人が集まるプロジェクトだ。このような組織が音楽業界で台頭していく未来はあるのだろうか。

今村:音楽と携わる仕事のあり方は、今後ずいぶん変わってくるのではないかと思っています。オリコンのトップ30を見ていると、ここ2、3年は全く無名のアーティストが飛びこんでくる状況が続いていて、そうすると10年後は確実にその割合が増えてきます。そのときに、これまで一貫して行っていた仕事の一部分だけ、たとえば新人アーティストを見つけるだけのことが仕事になりうるのではないかと考えています。『この音楽が好きだから』『こういう仕事ができるから』で音楽に携われる時代がやってくる。『音楽業界で働く=アーティストに触れられる』、そんな時代ではなくなって、音楽がもっとジャンルごとに分散化していくのではないでしょうか。

アーティストもスタッフも、人物にタグが付くと言うのでしょうか。たとえばアーティストなら『下北沢で一番有名なアーティスト』、スタッフなら『ローディー』とか、それこそ『IMALAB』も新人発掘において一つのタグになるかもしれない。そういうタグを持っている人にお願いしよう、という動きがもう多少なりとも始まっていて、今後もっと加速する気がしています。

メディアの力は以前に比べその影響力が弱くなってきていることもあり、自分で発信して音楽を伝えて、それで生活していくという個人の動きはもうスタートしています。そのときに、ビジネスにするにはWeb3などの技術も応用していかないと今後成り立たなくなっていく。みんな同じことに気づいて当たり前にそのあたりを探っていくので、働き方も当然変わってくるはずです。

引き出しの数が今後はその人のタグになるとしたら、その数が多い人ほど求められる時代になっていきます。今でも周りには、IMALABがさまざまなタグを持つ人たちの集団だということは理解されているので、時々『IMALABにこの仕事できる人いない?』と聞かれたりしていて。まだ活かしきれていないところもありますが、それぞれ自律した人たちの集まるDAO(分散型自律組織、decentralized autonomous organization)っぽくて、ここに何か音楽の可能性と未来を感じています。



今村 圭介

音楽ディレクター(EMI / UM) + IMALAB主宰。ナンバーガール・プロジェクトのアシスタントを経て、これまでにフジファブリック、Base Ball Bear、相対性理論、9mm Parabellum Bullet、The SALOVERS、ザ・チャレンジ、10-FEET、南無阿部陀仏、WurtSを担当

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■FAVORITE SONGS
♫The Beatles「Let It Be」
♫Prince「Purple Rain」
♫Fugees「Killing Me Softly With His Song」

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取材・文 松村翠

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