見出し画像

タイパ、タイパというけれど。

タイムパフォーマンス(英:Time Performance)は、かけた時間に対する効果、すなわち「時間対効果」のことである。かけた費用に対する効果(費用対効果)を意味する「コストパフォーマンス」の「コスト」を「タイム」(時間)に置き換えた造語で、和製英語。

Wikipedia

タイパ=タイムパフォーマンス、時間対効果。

いかに時間を無駄にすることなく成果をあげるか。…仕事をする上で頭の片隅に置いておくべき概念かもしれません。

特に人材も予算も小規模で限られているスモールビジネスの場合、非効率にやたらと動き回って時間ばかりを無駄遣いしてしまうと、自分の首を絞めてしまうことになりかねません。

私は、東京・吉祥寺でレンタルスペース&ギャラリーseesaws(シーソーズ)を運営しています。ポップアップストアや展示会、ワークショップ開催などにうってつけのスペースです。無垢材家具と白い壁の、明るくて落ち着く上質な空間としてご好評いただいています。

seesawsを初めてご利用いただく際は、事前に見学にお越しいただくことをお願いしています。ご自身の目で空間をご覧いただき、お考えの企画に適合するかという確認をしていただくというのが、目的の一つです。クリック一つで何でも手に入れられるこの時代に、まだ利用するかもわからないスペースに「わざわざ来ていただくこと」をお願いしています。ご足労いただくことに申し訳なさを感じつつも、オープン以来変わらずこの方法を取っています。

いまや seesaws のようなレンタルスぺースも、ネット予約が珍しくありません。ホテルや美容院の予約のように、日時を選んでポチポチしていけば、予約もお支払いも完了してしまう、利用当日はスマートロックで開錠する、それはそれは便利な世の中なったものです。

そんなご時世に、seesaws では「事前にわざわざ来ていただくこと」をお願いしているのです。見方によっては非効率極まりないかもしれないことを、今日も堂々とお願いしているわけなのです。こんな私がタイパ云々を語る資格はないかもしれません。

それでも、この「わざわざ来ていただくこと、会ってお話しすること」こそが私がこの仕事をする上で、とても大切にしているポリシーなのです。

実際に会ってお話すると、思っている以上にお互いのいろいろなことがわかるものです。仕事や商品に対する熱い想い、なぜこのビジネスをやっているのか、どうしてこういう作風にたどりついたのか、今後どうしていこうとしているのか。

他愛もない雑談で終わってしまい一見実りがなかったように感じたとしても、こうした時間の共有は、想像以上にそれ以降のコミュニケーションをスムーズにしてくれます。

これまでのべ200組以上の方々にお会いしてきましたが、「こんなの時間の無駄じゃないか!来るんじゃなかった!」とお叱りを受けたことはありませんし(言われていないだけかもしれませんが)、たとえseesawsがお探しの場所に見合わなかったとしても「お会いできてよかったです」というお言葉をいただくこともあり、会ってお話しするというのはそれはそれでとても価値のあることと感じます。

ご見学にいらした際のちょっとした雑談からヒントを得て、今やseesawsの定番企画となったものもあります。それが「夜のベーグル屋さん」。吉祥寺界隈のシェアキッチンで営業されている Hello Bake さんとお話ししていたときに彼女は何気なく「私、夜のベーグル屋をやってみたいんですよね。おつまみや明日の朝食用にベーグルを販売してみたいのです。」とおっしゃったのです。

そのときは「わぁ、いつか実現できたらいいですね!」で終わってしまったのですが、なぜかずっと私の記憶に残り、後日改めて「それ、実現させませんか?」とお声かけしました。いまでは月2回程度の夜のベーグル屋さんを毎回楽しみにしていてくださる固定のお客様も増えてきました。Hello Bakeさんは活動の場を増やすべく、ご自身のお店のオープンすることになり着実に目的を達成されようとしています。(seesawsでの販売は継続してくださいますので、ご安心ください!)

seesaws はさらにここからヒントを得て、2023年9月から飲食物の販売時間枠を設け、パンやお菓子、お惣菜等の製造販売をされている方のご利用を増やす予定です。

もしも、seesaws が予約サイトからぽちぽちっとご予約いただくシステムにしていたら、このような企画が実現することも、さらになる広がりをみせることもなかったかもしれません。

もとをたどれば「わざわざ来ていただいてお話する時間を作る」ことをお願いしていたところに至ります。短絡的にタイパを追い求めていたらこうはなっていなかったかもしれません。

そう考えると、やはり一見タイパが悪いことも、長いスパンで捉えてみるととても大事であることがわかります。

これは seesaws の予約方法に限ったことではなく、日常の他の業務や、他の業種でも、同じようなことが言えるかもしれません。

タイパの概念は、仕事をする上で覚えておいた方がよさそうなことではありますが「タイパ悪いから切り捨てよう」「タイパ悪いからやめておこう」ということがあったら、一度立ち止まって長いスパンで考えて、本当にそれは効果のないことなのか、効率の悪いことなのか、考え直すのも重要です。

私はこれからもこのタイパが悪いように見える「事前にお会いすること」を続けていくつもりです。地味なことかもしれませんし、皆様のお時間と手間を頂戴することは申し訳ない気持ちがあります。けれどその先に、お互いにとってとても明るい展開が待っていることを信じて、今日も明日も続けていこうと思うのです。



#仕事のポリシー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?