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あるものを使い倒す

日々の仕事の中での疑問

私たちの仕事は誰かが作ったものを仕入れて販売すること。日々沢山出てくる新しいお酒や食品をテイスティングして、美味しいと思ったものを取り扱っているのですが、前回のnoteで書いたように、コロナの影響もあって今あるものですら売り切ることができていないのに、新しく作られたものを仕入れて販売する必要があるのかという気持ちになることがあります。
自分で作ったものであれば、そのものしかない、という気持ちで販売するのだろうと思いますが、私たちが販売しているものは全て自分で作っているものではありません。
環境の問題も年々切実になっていて、ヨーロッパではゴミを一切出さずに営業するレストランやバーも増えています。そのような流れの中、沢山のものを、ただそのものが良いからというだけで販売することは良いことなのだろうかと思うようになりました。
と言ってもそこで立ち止まっていても何も始まらないので、そんな気持ちを払しょくできるような自分がワクワクするもの、かつ、無駄が出ないものを自分たちが関わって作ることができないかと、実験をしてみることにしました。

ワインの搾りかすを使って何ができる?

初回なので、まずは協力をお願いしやすいワイナリーということで(笑)、どぶろくプロジェクトも一緒にやっている「ペイザナ農事組合法人」の「ドメーヌ・オヤマダ」の小山田さんに実験の協力をお願いすることにしました。
私たちは毎年ブドウの収穫時期にワイナリーに手伝いに行くのですが、以前からブドウの果汁を搾った後の搾りかすを畑に撒いているのを見て「どうせ畑に撒くなら、この搾りかすでグラッパを作りたい」と思っていました。

小山田さんと搾りかすの袋詰めをしているところ

蒸留は、いまでやと同じく千葉県にある「mitosaya」という蒸留所にお願いすることに。mitosayaは蒸留器1台だけの小さな蒸留所ですが、「自然からの小さな発見を形にする」ことをモットーに、とてもユニークな蒸留酒を沢山作っていて、こちらなら今回のことも面白がってくれそうだと思ってお願いしたところ、快諾してくださいました。

蒸留機に搾りかすを投入
グラッパになったワインの搾りかす

※実は、このグラッパ作りがきっかけで、前回noteに書いた飲み頃を過ぎたワインを蒸留してもらうことができました。

前回の記事

搾りかすを使って、この香りを活かした、お酒でない何かを作ってみたいという気持ちもありました。
「香りのお酒」と言われる蒸留酒ですが、それだとお酒を飲める方にしか楽しんでもらえない。せっかくの実験なので、ワインの搾りかすからお酒ではない、もっと沢山の人に使ってもらえるようなものが何か作れないかと考えていた時に、友人の紹介で「fragrance yes」というフレグランスブランドをやっているという方にお会いしました。
fragrance yes
https://www.fragrance-yes.com/

その方が、コロナ以降使うことが常識となった消毒用アルコールを、ご自分の調香で、しかも天然由来の素材を使って作っているのを見たのと、その香りがとても良かったので、これだ!と思い、半ば無理やり搾りかすを渡して(笑)、どのような香りが取れるのか試しに蒸留してもらいました。

現在は、mitosayaでは2021年のワインの搾りかすを蒸留してもらって熟成中、fragrance yesでは、去年の試作を踏まえて、今年のブドウを使ってアルコールスプレーを作ってもらうよう打ち合わせ中です。

自分なりの言葉で伝える面白さ

原料提供してくれたドメーヌ・オヤマダの小山田さんからは、「うちのブドウを使い倒している(笑)」と言われましたが、「SDGs」や「サスティナブル」と言った言葉があまりしっくり来ていなかった私にとって、「あるものを使い倒す」というのが、すごく腑に落ちました。
格好良く横文字を使って伝えることより、周りにあるものを使い倒して、面白く伝えていくことができればいいなと、今回のことを通して思いました。

商品が出てくるまでにまだ少し時間が掛かりますが、とても面白いものができそうなので、ぜひ気長にお待ちいただけたら嬉しいです。
同じ原料から、同じ香りの、でも全く違うものができるということに、自分でも今からワクワクしています。
これがうまくいったら、色々なワイナリーの香りを作ってみたいです。

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