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牧丘を日本のバローロに!(カンティーナ・ヒロ/山梨県牧丘町)

2023年5月 訪問

新規取引ワイナリー カンティーナヒロ

山梨県北部、牧丘町に位置するワイナリー。
「カンティーナ」はイタリア語で「自社畑100%でワインを造る小さなワイナリー」を意味し、「ヒロ」はワイナリー当主である広瀬武彦さんの名字からとっています。

ワイナリーとしては2018年から醸造をスタート。もともとはかつて山梨県の主要産業だった養蚕や蒟蒻づくりをしており、そこから先代が鍬1つで開墾して巨峰を植え、徐々に牧丘は巨峰の一大産地になっていきました。それ以来、葡萄農家として70年の歴史を持ちます。

ちなみに、今話題のシャインマスカットですが、元祖古木はこちらの広瀬さんの畑に植わっています。

シャインマスカットの古木

醸造を担当するのは東京で会社員をしていたお酒好きな長男

武彦さんの長男である泰輝さんは、もともと東京で会社員として働いていました。その会社は飲み会の多い会社で、ご自身のお酒好きも好じ、ワイン用ブドウなら・・・と可能性を感じてから、ご実家を継ぐ未来が見えたそうです。
山梨に戻ってからは意欲的に各地を巡り、日本ではシャトー酒折で修行、海外はニュージーランドとオーストラリアに3年ほど修行に行っていました。
そこで得た醸造技術はもちろん、コミュニケーション能力が新たな武器となり、今では海外のワイナリーから新鮮な情報が手に入ることが最大の強みだと泰輝さんは言います。
「他人より4倍やって、やっと12年。本当にやっと・・・という思い。コロナもあけてやっとこれからという気持ちです。」
そう語る泰輝さん。「ブドウ8割、醸造2割」という考えのもと、その2割にも全力を注ぎたいと日々、畑を担当するお父様とともに邁進しています。

長男泰輝さん

イタリア品種へのこだわり

カンティーナ・ヒロではイタリア品種にこだわりを持っています。
山梨近辺でイタリア系品種を扱うワイナリーが無く、聞くところによると黒ブドウの色が出にくいし、栽培が難しいからとのこと。それならば、個性を出すために他のワイナリーで扱っていないものがよかったのと、「人がやらないことにチャレンジする」という武彦さんのサラリーマン時代の経験からの選択でイタリア品種にこだわることにしたそうです。
そしてもう1つの理由として、当時広瀬さんの三男がイタリアのピエモンテ州アスティで料理の修行をしていたこともあり、最終決定の後押しとなったのでした。

飲むと牧岡の風景が浮かぶようなワイン

標高は750m~1000m。富士山の絶景、南向きに開けた斜面。そこにはキジやカッコウ、ウグイス、ツバメ、渡り鳥などたくさんの生き物が集まります。
キジがいる土壌は汚染されていないとされているため、キジがいることは安心材料となり、渡り鳥は季節の移り変わりを伝えてくれます。カッコウ、ウグイス、ツバメなどの鳥の動きや、その他の風景、そこでできた葡萄のイメージが湧くワインを造りたい・・飲むとそんな広瀬さん親子の熱い気持ちがフツフツと伝わるワインばかりです。

ワイナリー入り口

試飲

ワイナリーではいくつかワインを試飲させていただきました。

●アッカ アニマ ネッビオーロ&ランブルスコ
Cantina-Hiroの「H」をイタリア語読みしたACCA(アッカ)は、イタリア品種に特化したワイナリーの主力シリーズ!
日本ワインとしてイタリア品種特有の色、香り、味を表現し、「牧丘を日本のバローロにしたい!」そんな想いが込められたワイン。
樹齢12年の葡萄から作られた濃縮感と涼やかな酸、牧丘を吹き抜ける風がよく似合います。

●パルテンツァ ヤマ・ソーヴィニヨン
Partenza(パルテンツァ)はイタリア語で「出発」の意味。Cantina Hiroのワイン造りの原点、ヤマソービニオンを使用し、初心を忘れず、出発から大きく羽ばたくようにと名付けられました。
とても印象的なワイン。緑のハーブ、シソやセリなどのニュアンス。
南向きの日当たり良い斜面に開けた畑に在る、わずかに出来た日陰で飲みたいワイン。

●巨峰
自社畑樹齢50年の葡萄と、買い葡萄を36ヶ月の樽熟成で仕上げたワイン。
はじめは樽香は全くクドくなく飲み進められるのに、アフターにどしっとパンやイーストを思わせる香りの襲来。

●マスカット・ベーリーA
色彩は濃く、香りは濃縮したベリーの果実。
味わいはとてもスマートで、余韻にはしっかりと樽香を感じる。

終わりに

ワインの味わいとともに、今でも牧丘の風景を鮮明に思い出せます。
小さな島国の中にあるロケーションとは思えないほど、開けた土地に、大きな青空、鳥がさえずり、目を上げれば紛れもない我らが富士山がそびえ立っていて、はっとさせられる。
違和感・・のような、あまりの日差しの良さなのか、少しくらりとしながら、吹き抜ける風は涼しくてたくましかった・・。

それはまさに大きい液体の中に繊細な線を感じるワインのようで、染み染みゆっくりと向き合っていたいと感じさせてくれます。

そして、その日いただいたどの赤ワインも「涼やか」という言葉が似合っていて、赤いけど青い、矛盾のような。
点描のように滑らかにみえて細かい躍動が、目を凝らすとそこには在りました。

きっと訪問していなければ矛盾のまま感じていたかもしれません。

細い線がやがて広大な海に繋がるように、めくるめく味わいにじっくり向き合えば、そのスケールの大きさに頷いてしまうのです。

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