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「1年0組」愛夢ラノベP|【#創作大賞2024 、#ホラー小説部門】

「1年0組」愛夢ラノベP



【あらすじ】(293文字)

 本作は、8番出口ライクと◯◯しないと出られない部屋を合わせたホラーだ。
 美桜は目が覚めると、会社で残業をしていたのに、なぜか高校時代の教室にいた。その教室で、アンノーンなる黒い人影と出会う。アンノーンは美桜に変化があれば進み、変化が無ければ戻れと命じる。もちろん、美桜は抗ったが、1年8組まで行って過去を思い出さないと教室から出られないと言われてしまう。
 そこで、美桜は教室を進む。
 不思議な事に、教室を進むごとに景色は変わる。しかも、ホラー現象が起こる。その光景を見て、美桜は自身の過去を思い出す。
 最後に、美桜は1年8組でアンノーンの正体を知るが、実は他にも秘密があった。


【本文】
第0部 1年0組

 右脇腹の強烈な痛みで目が覚めると、見覚えのある教室にいたの。
 さっきまで都内某所のオフィスビルで残業をしていたのに、高校時代の教室へと飛ばされていたわ。居眠りをしたのか、気を失ったのか、理由は定かではないけど、どういう訳か瞬間移動をしていた。
 なぜか外は冬の深夜から春の昼間に変わっている。しかも、黒いレディーススーツは、いつの間にか、セーラー服に着替えさせられていた。
 一体、どんな変態の仕業なの?
 もしや例のストーカーかしら?
 入社3年目で同僚の佐々木くんを思い出す。仕事をする姿がカッコよくて付き合ったけど、初めて家に入れた時に便座を上げたままにされて、蛙化現象が起きちゃったの。それで付き合って2週間で別れたら、それから付きまとわれているのよ。来世で一緒になろうとしているらしいわ。しつこ過ぎる!
 待って、まだ頭が混乱しているようね。
 状況を確認するため、ゆっくりと学生机から立ち上がる。すると、いつもより視線が10センチほど低いの。
 まるで時が巻き戻って子供になったように。
 『どうしたの?』、そんな疑問の答えを探すために周囲を見渡す。鮮やかな桜が見える窓ガラス、私と白塗りされた誰かとの相合傘が描かれた黒板、磨りガラスでぼやけた廊下。
 そして、背後には見知らぬ少女がいた。

「うわっ! あなたは誰?」

「ふーん、私を忘れたのね?」

「どこかで会った事があるの?」

「答えたくないわ、ただ名前がないと困るわね。アンノーンと呼んで」

 謎の少女は、《不明の》を意味するunknownを名前に使用したわ。でも、見知らぬって言う割には、私は彼女に会った気がしたの。だからこそ用心深く彼女を凝視する。

 アンノーン――15歳のFJK、173センチのDカップ、どこか見覚えがある顔。
 黄色くて丸い瞳は、蒲公英のように美しい。栗毛色の地毛は少しクセ毛のため、毛先がカールして可愛らしい。
 どこか懐かしさを感じるのは、私が高校時代に着ていた制服姿だからだろうか。
 その容姿のせいで、同級生に質問するみたく私は尋ねてしまう。

「アンノーン、ここはどこ?」

「過去を思い出さないと出られない教室よ」

 何よ、そのイベントみたいな部屋は?
 内心でツッコんでいると、アンノーンが教室を指した。その指先の風景を見た時、まず頭に浮かんだ言葉は『懐かしい』だったわ。
 学生時代に戻った気がして、さっきよりも慎重に周囲を眺める。
 右側の窓の外には、広大なグラウンドが広がる。白線で細長い楕円形が描かれ、その両端にサッカーゴールがある。ただ、昼間なのに、塀の向こうは夜のように真っ暗だったわ。
 正面の黒板には、『1年0組』と白チョークでデカデカと書いてあるの。ただ、右端の日付は白く塗り潰されていたわ。
 左側の曇ガラスには、今のところ異常はない。
 教室の中央には、1列あたり5つの机が5列も並ぶ。また、見上げると、汚れが1つもない白い天井が目に入る。
 教室の後方の黒板には何も書かれておらず、その両脇には大量のポスターが貼ってある。たとえば、手洗い・うがいの方法、時間割、掃除の当番表、賞状、みんなの習字、各委員会の目標などね。

「今、過去を思い出したわ。ここは私が通っていた高校よ」

「そうね」とアンノーンは頷く。

「正解なら、部屋から出してよ。過去を思い出さないと出られない教室なんでしょ?」

「まだ忘れている事があるわ」

「たとえば?」

「私の名前とか」

「アンノーンよね?」

「それは仮名よ。大切なのは、美桜(みお)が私の本名を忘れた事よ」

 アンノーンに美桜と呼ばれて背筋が伸びる。美しい桜が咲いた日に生まれたから、父親が名付けてくれた名前。
 なぜアンノーンが私の本名を知っているの?
 心の中の不安が顔にでも出ていたのか、アンノーンは不気味な笑みを浮かべた。その顔は、子供が初めてパステルで親の笑顔を描いた絵に似ていたわ。目は潰れ、鼻は曲がり、口は歪んでいるの。

「今、どうして名前を知っているのって思ったでしょ」

「正解よ、なぜ私の名前を知っているの?」

「それすらも覚えていないのね、私たちは過去で会っているのに」

「私の記憶には、アンノーンなんて存在しない」

「消したからよね!」とアンノーンは大声を上げた。

「ビックリした、急に声を荒げないで」

「美桜が忘れたからじゃない。でも、良いわ。ゆっくり思い出させてあげる」

「私に思い出すべき過去はないわ」

「そうかしら? 誰にだって大切な過去があるはずよ」

「忘れたい思い出もあるんじゃないの?」

「だからこそ思い出して欲しいのよ」

「はぁーー、埒が明かないわね。どうやって思い出せば良いの?」

「今から教室を出てもらう」

「そうしたら、学校を出て家に帰れるのね?」

「違うわ、どれだけ教室を出ても、次は教室よ」

「はぁ? それじゃ帰れないわ」

「だから、過去を思い出すまで出られないのよ。ただ、ヒントとして部屋に変化があるわ」

「なんか流行っているゲームみたいね」

「よく聞いて。もし変化があれば、次の教室に進んで。逆に変化が無ければ、前の教室に戻って」

「指示に従えば、現実に戻れるの? それとも夢が覚めるのかしら?」

「さぁね、1つ言える事は、1年8組まで進んで過去を思い出したら、外に出られるかもって事よ」

 アンノーンが話し終えた刹那、彼女は煙のように消えた。その白煙が窓も開いていないのに、ブワッと私の方に立ち込める。すると、窓がガタガタと揺れた。
 一瞬、地震かと勘違いした。
 しかし、違う。
 これは強風よ。
 幽霊が窓ガラスを叩くように、目に見えない風がグラウンド側の窓に吹き付ける。次の瞬間、パリーンと全てのガラスが割れる。破片が吹き飛ぶ。陽光に照らされたガラス片は、あたかも自分がダイヤモンドダストだと勘違いしたように、煌めきながら私に降り注いだ。
 咄嗟に両手で顔を覆う。
 だけど、気がつくと、両腕にも両足にも切り傷があり、衣服がない白い肌から赤い血が流れた。
 怖くなった。
 変化があった。
 だから、私は廊下に出た。見覚えのあるタイル張りの廊下を進むと、同じような教室を見つける。その部屋に飛び込む。すると、正面の黒板に文字が書いてあったわ。



 ――『1年0組』。

 次の教室には、特に変化はなかった。さっき割れたガラスも元に戻り、何事も無かったかのように静かなの。
 間違い探しの基本、これを覚えろと言わんばかりね。
 面倒くさいけど、もう一度、周囲を確認する。
 正面の黒板には教室の番号、グラウンドには白線で描かれた楕円形、廊下側には曇ガラス、教室の後方には色んなポスター。そして、部屋には25個の椅子と机が並ぶ。白い天井にも何もない。
 変化が無ければ、前の部屋に戻る。
 アンノーンの指示に従って、私は廊下に出た。さっきと同じタイル張りの廊下を戻ると、また教室が現れる。ガラガラと引き戸を開けると、黒板の文字が変わっていたわ。



 ――『1年1組』。

 おそるおそる教室に入る。
 最初に驚いたのは、季節が進んでいた事ね。あれだけ咲き誇っていた桜が散り、緑の葉桜に衣替えしていたわ。
 次に驚いたのは、天気が変わっていた事よ。さっきは晴れていたのに、今は雨の音が聞こえるの。忘れられた事を悲しんでいるのか、世界が泣いていたわ。どんよりとした黒い雲から、細長く白い雨が垂直落下をしている。その雨粒がグラウンドを湿らせ、窓を濡らし、水たまりを生み出していた。
 ただ、不思議だったのは、グラウンドの中央だけ濡れていない事よ。その真ん中には、白線で《香》の文字が書かれていた。

「香……意味が分からないわ」

 よく見ようと呟きながら窓に近づいた時だったわ。いきなり窓から巨大な目が現れたの。
 うわっと声を出しながら尻もちを付く。でも、痛みを感じるよりも先に恐怖で全身に鳥肌が立った。巨人よ。スーツを着た女性教員が窓の外から教室を覗いているの。どこかで見た気がするなって思った後、ここが3階だと気づく。それなのに、大きな眼球が窓越しに睨んでいるの。まるで何かを探すようにね。
 足が震える。
 だから、立てない。
 声を出したら、何かされそう。そんな畏怖から口を両手で押さえる。ゆっくり呼吸を整える。それから巨大な女性教師の視線を辿る。
 すると、視線の先には、さっきまで存在しなかった少女が立っていた。
 アンノーンよ!
 アンノーンがびしょ濡れで直立していたの。そんな彼女の前には、真っ黒な人影がある。ちょうど私と同じくらいの背丈で、セーラー服を着た女性のシルエットよ。その人影がアンノーンに水筒から水をかけた。

「ほらほら、アンノーン。汚いから、洗ってあげるわ」

「A子ちゃん、やめて! 服が濡れちゃうわ」

「臭いんだから、洗濯した方が良いに決まっているわ」

「昨日、洗ったわ」

「嘘つき、タンスの匂いがするわ」

「おばあちゃんから貰った大切な服なの。押し入れの奥で大事に保管していたのよ」

「だから、古臭いんだ。みんな、聞いて。アンノーンはババアの古着を着ているんだって」

 私の目の前で、アンノーンと黒い人影のA子が会話をしている。すると、誰もいない教室で、ガハハハハって笑い声が轟いた。あまりの声量に窓ガラスが震える。
 怖い……そんな感情の裏に、楽しいって感情が芽生える。
 あぁ、私も高校時代に同じ事をしたわ。名前は忘れちゃったけど、お金持ちの家の子で成績が優秀だったのよ。しかも、柔道が強くて、可愛くて、とにかく男子からチヤホヤされていたわ。そのせいで、私の初恋相手も取られちゃったの。
 ムカつくわよね。
 だから、その子に復讐をしてやった。
 担任の宮本先生を言いくるめ、友達に嫌がらせを受けたと嘘をついて、名前を忘れた女の子に仕返しを……あれ、私は忘れたはずの出来事を思い出そうとしていた。
 ただ、いじめた子の顔も容姿も名前すらも思い出せない。黒い人影のように。
 まっ、忘れるくらい小さな存在なのよ。そう自分の心を説得した頃、まだ黒い影による演劇は続いていたわ。

「どうしてA子ちゃんは私をイジメるの?」

「アンノーンが私に嫌がらせをしたからよ」

「だったら謝るわ」

「何についての謝罪なの?」

「えーと、それは……分からないわ」

「でしょ、アンノーンは無意識に私を傷つけるの。だから、私は復讐して良いの」

 またA子が水筒で水をかけた時だったわ。急に雨漏りが始まる。まるで天井に雨雲ができたように、ポツポツと至るところで雨が降るの。やがて天井の中央が抜けて、ズドーンと滝のように水が流れた。
 変化があれば、次の教室に進む。
 しかし、水圧が凄くて前に進めない。あたかもリバートレッキングをするように、廊下側の窓枠を掴む。激流を登る感覚で、1歩ずつ確実に前進する。やがて流れが反対になり、窓から両手を離すと、出口の扉へと押し流された。
 川みたいになった廊下で急流下りをすると、ビショビショのまま次の教室に漂着する。濡れて重たいスカートを引きずりながら、教室に入ると、黒板の文字が変わっていたわ。



 ――『1年2組』。

 これを8組まで繰り返すのか、と虚無感で体がダルくなる。いや、ダルさの正体は、服が濡れて重くなったせいかも。
 スカートを雑巾みたいに絞りながら部屋を見渡す。
 変化した点と言えば、少し校舎が汚れていること。それに反して、雨は降り続けていた。校庭に紫陽花が咲いているから、おそらく今は2025年6月の梅雨だろう。
 西暦まで推察できるのは、私の高校時代の年号だからよ。

「あらあら、机に落書きがあるわね」

 担任の先生みたく教卓に立って、25個の机を見つめる。死ね、帰れ、汚い、臭い……そんな罵詈雑言が24個の机にスプレーペイントされていた。カラフルな色使いにもかかわらず、その言葉のせいで汚く感じる。
 それと、真ん中の机の《鳥》が気になる。
 他は文章や誹謗中傷なのに、中央の机にだけ1文字が書いてある。それは何かのメッセージのように。

「たしか、さっきは香だったわね。そして、次は鳥……ダメだわ、関連性が分からない」

 香鳥なんて鳥類はいない。
 仕方なく、首を左右に振りながら教壇から降りる。変化があった以上、次に進むしかない。そう心に決めて、半分ほど教室を歩いた時だったわ。
 背後で女性の激昂が聞こえたの。

「誰よ、私の机に落書きしたの!」

「アンノーン、自分で汚して怒っちゃダメよ」

 まただ、アンノーンとA子のいざこざが始まる。
 誰もいないのに、360度から笑い声が轟くと、ど真ん中の机にアンノーンが座っている。そんな彼女を教卓から、黒い人影のA子が見ている、頬杖をつきながら。
 その光景は、私の心の中にある景色を再現したようだった。
 そうよ、私も学生時代に同級生の机に落書きをした。その後、名前を忘れた少女に反撃されたのよね。
 過去を振り返っていると、その記憶どおりに、アンノーンはA子と喧嘩を始めた。

「どうせA子が犯人でしょ?」

「はぁ、勝手に決めつけんなよ」

「いつも私をイジメているわ、初恋相手を奪われたと思い込んで」

「そそそっそんな訳ないじゃん」とA子は恥ずかしがる。

「結局、自分に魅力がない事を私のせいにしただけよね?」

「まるで私が犯人みたいな言い方だけど、証拠でもあるの?」

「これだけ落書きするには時間が必要なはず。誰か見ていない?」

 アンノーンはグルリと教室を見渡す。そのため、ほんの一瞬だけ私と目が合う。咄嗟に視線を外す。
 そう言えば、高校生の時も同じ事があったっけ。あの時は誰も名乗り出さなかったわ。だって、ターゲットを庇ったら、今度は君をイジメるって脅していたから。
 あの時と同じように、誰も返事をしない。そりゃ、誰もいないから、当たり前なのかもしれない。でも、さっきは笑ったくせに誰も証言をしようとしないの。自分が被害者にならなければ、関係ないって感じね。

「アンノーン、見てみなさい。皆は犯人を知らないって」

「単に誰かに脅されているだけでは?」

「いつも憶測で物を言うのね」

「皆、覚えておいて。見て見ぬふりをする人も同罪なんだから」

 どこかでアンノーンのセリフを聞いた覚えがある。たしか、高校1年生の梅雨の時期よ。もしかして私の過去が再現されているの?
 そんな疑問が浮かんだ頃、いきなり校舎が揺れた。
 あたかも直下型地震が起きたように、何の前触れもなく上下に建物が震動する。やばい、本能が危険を察知して引き戸に向かう。
 変化があれば、前に進む必要があるからよ。
 右手で引き戸を全力で引いた。しかし、扉は動かなかった。

「なんで開かないのよ?」

「A子だけじゃない。あんたも、あんたも、あんたも、あんたも、皆、イジメの共犯者なんだから」

「だって、皆も悪事を働いちゃダメよ」とA子はおちょくる。

「そういう態度を取るなら、いつか必ず後悔させてやるから」

 アンノーンの言葉を合図に、上下運動に左右の振動も加わる。その小刻みな揺れのせいか、ポスターや机から文字が飛び出す。
 死ね。
 帰れ。
 汚い。
 臭い。
 そんな暴言が宙に浮かぶ。
 手洗い・うがいの方法、時間割、掃除の当番表、賞状、みんなの習字、各委員会の目標……そういった文字すらも空中を漂う。
 怖くなった。
 初めて見る現象に思考が止まる。背筋が凍る。次に何が起こるか分からず、身動きができなくなる。一方で、文字の方には動きがあった。プロジェクションマッピングのように表示された文字は少しずつ文章を変えた。最初は意味不明な羅列だったけど、数秒後には全ての文字列が同じ文面に変わったの。
 お前たちを許さない!

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」と謝ってしまう。

「お前たちを許さない!」とアンノーンは叫んだ。

「皆、アンノーンに恨まれたわよ」とA子は囃し立てる。

「あぁぁぁぁあ、宮本先生に言ってやるから」

 アンノーンは叫びながら私の方に走ってきた。咄嗟に交わすと、彼女は引き戸を開けてくれた。
 警告文を見て、全身に戦慄が走った。電気が流れたように、体がビクンとなる。嫌な汗が吹き出す、恐怖を外に出そうとするごとく。
 私も怖くなって逃げ出す。
 教室を飛び出すと、いつもと同じタイル張りの廊下の先に教室がある。部屋に飛び込む。すると、そこには変わりばえのない部屋があったわ。



 ――『1年3組』。

 落書きは全て洗い流されたように消えていたの。最初と同じく新品の机や椅子が並び、部屋には私しかいない。
 正面の黒板には教室の番号、グラウンドには白線で描かれた楕円形、廊下側には曇ガラス、教室の後方には色んなポスター。そして、部屋には25個の椅子と机が並ぶ。白い天井にも何もない。
 変化が無いので、アンノーンの言葉を思い出して、前の部屋に戻る。
 またタイル張りの廊下を歩くと、やはり教室が現れた。ガラガラと引き戸を開けると、黒板の文字が変わっていたわ。しかも、前方のみならず後方まで。



 ――『1年4組』。

 まず目に飛び込んだのは、後方の黒板の文字だったわ。そこには《飛》と書かれていたの。
 1年1組に《香》。
 1年2組に《鳥》。
 1年4組に《飛》。
 とりあえず、前方の黒板に板書をする。この文字には意味がある気がした。でも、出てきた順に並べても《香鳥飛》にしかならない。この3文字には見覚えもないし、そもそも読みも分からない。
 待てよ。
 逆順なら、《飛鳥香》となる。
 あすか……そんな名前の人に会った気がした。でも、色んな学生と出会い、社会人になってからも営業で多くの人と関係を持った。だから、飛鳥香が誰か分からなかったの。

「それにしても暑いわね」

 紺色のカーディガンを脱ぐ。雨は止んでいた。まだ1時間も経っていないのに、あれだけジメジメしていた梅雨は終わり、季節は初夏へと駒を進める。
 夏は嫌いよ。
 暑いから。
 エアコンがないため、じんわりと汗ばむ。夢とは思えないほど日差しは強く、容赦なく照りつける陽光で皮膚が焼けそうだったわ。ミンミンという蝉の声が壁を貫通するため、体感温度が2度くらい上がる。

「暑いし、さっさと次に行こう」

 変化を見つけたので、そそくさと引き戸に向かう。しかし、瞬間接着剤で付けられているのか、まったく扉は開かなかった。
 チッと舌打ちをすると、背後で読経が始まる。
 誰かが設置したスピーカーから、坊さんの御経と木魚のポンポンポンが聞こえる。また、知らぬ間に教室は葬式会場へと様変わりをしていた。
 後方の黒板の前に、机で祭壇が作られている。その周囲には、校庭に生えていそうな雑草が飾られていたわ。また、カーテンを鯨幕みたいに垂らす。極めつけは、中央にアンノーンの白黒写真がテープで貼ってあるの。遺影のつもりね。
 その時、A子の人影は厳かな顔で教卓に立つと、クラスメイトに一言だけ告げた。

「えー、本日はアンノーンの葬儀に参列いただき誠にありがとうございます」

「私は生きているわ」とアンノーンが名乗り出る。

「あれれ、アンノーンの声が聞こえるわ。空耳かしら?」

「無視をしないで、本当にA子は性悪ね」

「はいはい、皆もアンノーンの幽霊を気にせず、約束どおり、花を手向けてね」

 A子の黒い影は、突如として現れた人影に花を配ったわ。すると、人のシルエットは列を作り、1人ずつ笑いながら花を祭壇に置いたの。
 そんな様子を見て、私も同じ事をしたなって懐かしくなる。
 当時の私は嫌がらせ目的で……えーと、名前を忘れた女子の葬式を取り仕切った。もちろん、宮本先生に怒られるはずだから、対策をしておいたわ。
 そんな過去を思い出した時、宮本先生が現れたの。あっ、宮本先生は当時の担任よ。ちな、1年1組の巨人のモデルでもあるわ。

「A子さん、何をしているの?」

「これはアンノーンの葬儀よ」

「今すぐ片付けなさい」

 宮本先生は凄い剣幕で怒った。それなのに、A子は「嫌よ」と余裕そうな顔を見せたの。まるで何か策があるように。
 宮本先生――25歳の女性教師、162センチ、数学担当の既婚者。黒いレディーススーツに、黒いピンヒールを履く。
 私の記憶を再現したような宮本先生に、アンノーンが駆け寄る――助けを求めながら。

「宮本先生、A子がイジメるの」

「ちょっと遊んだだけじゃん」

「A子さん、やり過ぎよ。謝りなさい」と宮本先生が仁王立ちした。

「嫌よ。てか、宮本先生は私に逆らってもいいの?」

「教師なんだから、生徒を指導するのは当然の責務よ。さっさと机を戻しなさい」

「不倫をしているのに」とA子はスマホを見せた。

「えっ!」と宮本先生は青ざめる。

「宮本先生は結婚しているのに、学年主任で国語担当の奥田先生と……」

「A子さん、それ以上は喋らないで」

「だったら、宮本先生も私たちの遊びに口を挟まないで」

「それとこれとは話は別よ。そもそも写真を撮らないで。肖像権の侵害よ」

「不倫相手の身分権を侵害した人が、そんな事を言えるの?」

「とにかくスマホを渡しなさい」

 宮本先生は、A子の黒い人影と乱闘した。先生は右手のスマホを奪おうとしたわ。しかし、逆にA子に髪を引っ張られ、そのまま宮本先生は床に投げ飛ばされちゃった。
 そんな先生にアンノーンが近づく。

「宮本先生、大丈夫?」

「心配いらないわ、アンノーンさんは下がってて。A子さん、退学になるわよ」

「先生だって不倫がバレたら、クビよ。しかも、私のスマホを盗もうとしたわ」

「A子、いい加減にして」とアンノーンが立ち上がる。

「部外者は、私と先生の問題に立ち入らないで」

「そもそも私への嫌がらせよ」

「でも、アンノーンは何もできないわ」とA子は嘲笑を浮かべた。

「今は無理かもしれない。だけど、必ず強くなって、誰かを守れる人になってやるわ」

「綺麗事ね。それ以上、アンノーンが先生を庇うなら、不倫を校長に教えるわ」

「A子さん、分かったわ。先生は何も言わない。だから、不倫を秘密にして」

「宮本先生!」とアンノーンが驚く。

「ごめんね、アンノーンさん。私もクビになるわけにはいかないの」

「さすが宮本先生ね、最善の判断よ」

 A子は宮本先生が介入しない事を条件に、奥田先生との不倫の写真をデリートした。こうしてアンノーンを守ってくれる人は減った。どんどん彼女は孤立していく。
 静まり返った葬式会場に真っ赤な夕陽が差し込む。
 教室の壁も、床も、天井も赤く染まる。まるで殺人現場みたいに、部屋が血まみれになる。きっと宮本先生の、もしくはアンノーンの心の傷を表したに違いない。
 後味の悪さを感じながらも、変化があったので、私は次の教室へ向かう。何度も歩いた廊下を進めば、またまた教室が口を開いていた。



 ――『1年5組』。

 夏の暑さが和らぎ、秋が訪れていた。場所は変わらないのに、季節が巡ることに違和を感じてしまう。
 秋の音がしたわ。
 秋風がイチョウの葉を揺らしたから。黄色に染まった枯葉たちは、茶色い地面を隠すカーペットのように、ひらひらと風に舞って大地の色を変えた。窓を閉め切っているのに、蒸れた足のような悪臭で鼻が曲がる。犯人は、銀杏に含まれるエナント酸ね。
 ふと窓から目を逸らすと、教室の劣化に気がつく。
 黒板はチョークで汚れ、床には埃が溜まり、ところどころ窓が割れている。まるで数十年の時を経たように、経年劣化が進んでいたわ。
 そんな教室には、一面に写真が貼られていたの。
 ほら、修学旅行の写真を購入するために、番号をつけて張り出したように。

「この写真は何かしら?」

 廊下側の窓に近づく。磨りガラスを覆うように、無数の写真が貼られている。日常のワンシーンを切り取った写真には、全てアンノーンが写っていたわ。そう、彼女は盗撮されていたの。
 パンチラを行ったアンノーン。
 更衣室で着替えるアンノーン。
 水着姿で遊泳するアンノーン。
 トイレで用を足すアンノーン。
 その時、隣で啜り泣く音がした。横に目をやると、さっきまでいなかったはずのアンノーンが立っていた。彼女は泣きながら破廉恥な写真を剥がしていたわ。

「誰よ、写真を貼ったのは?」

「皆、好きな写真を取っていいわよ」

 A子の人影が教室の中央に現れたわ。彼女の声を聞くと、男子生徒のような人影が次々に写真を持っていったの。嬉々としながらね。
 すると、アンノーンは恥ずかしそうに声を上げて、写真を回収した。

「やめて、私の写真を取らないで」

「これはアンノーンの私物じゃないわ。だから、早い者勝ちよ」とA子は囃し立てる。

「宮本先生にA子の非道を言いつけてやる」

「ふふふっ、あの先生は何もしないわよ」

 A子の言うとおり、宮本先生は完全に見て見ぬふりを貫いた。もはや放任主義ね。自分の不倫をバラされたくないから、アンノーンを生贄に捧げたのよ。
 宮本先生の監視がなくなった結果、イジメはエスカレートしていった。
 って、なぜ私が今の状況を分かるのかしら?
 異空間での物語や事件を説明できるのは、それが私の経験を再現しているからなのかも。つまり、これは私の忘れた記憶、私が消し去った過去、私が心底に隠した現実の可能性があった。
 ただ、その全てを思い出せない。
 無理に思い出そうとすると、頭痛が酷くなる。
 押し入れの奥に仕舞い込んだ箱の中身が分からないように、その存在すらも忘れたみたいに、私は意識的に学生時代の出来事を思い出せないでいた。
 私が悩んでいると、アンノーンがA子に食ってかかったの。

「だったら、自分で対処するまでよ。A子、二度と私に関わらないで」

「何か勘違いしていない? 私はアンノーンに興味ないから」

「私の人生に土足で踏み込んでいるじゃない!」

「自意識過剰ね、悲劇のプリンセスにでもなったつもり?」

「あぁぁぁぁあ、殺してやる、殺してやる、殺してやる」

「急にどうしたのよ? まさか壊れちゃった」

「A子、あなたが忘れても、私は覚えているからね。いつか必ず復讐してやる」

 アンノーンが奇声を上げると、建物全体が揺れたの。しかも、天井をドンドンと誰かが叩く音もしたわ。だから、上を見上げる。
 白い天井には、大きな《遊》の文字があった。
 でも、今はヒントどころではない。パリーンと蛍光灯が割れたの。一気に暗くなる。暗闇の中で、数名の人影が動く気配がある。ただ、それよりも異様な存在が窓の外にいたわ。
 手よ。
 巨人の大きな右手が窓を突き破る。その右手はA子の影を掴むと、軽々と外にポイ捨てした。あたかも子供がドールハウスに手を突っ込むようにね。しかも、次は私を捕まえると言わんばかりに再び手が部屋に入ってくる。

「こっちに来るな」

 そう叫びながら、私は教室を出た。その数秒後、巨大な右手は前方から後方にかけて、ガーーと全ての物を壁に集めると、それらを掴んで校庭に投げていた。
 間一髪ね、そう安堵しつつも次の教室の引き戸を開けた。



 ――『1年6組』。

 その教室は、最初と一緒。特に変わっていなかったの。巨人の襲来が無かったように、部屋は綺麗に片付いていたわ。
 正面の黒板には教室の番号があるし、グラウンドの白い楕円形はそのまま。廊下側の曇ガラスも、後方のポスターも、25脚の椅子も、白い天井も変化はない。
 本来、変化がなければ戻らなければならない。
 ただ、落ち着くために、近くの椅子に腰掛けたわ。

「これは私の過去なのかしら? アンノーンって誰よ? てか、A子って私なの?」

 次々に疑問を口にした。水入りバケツを倒したように、止めどなく悩みが口をついた。しかし、だからといって何か解決するわけではない。ただ、少し考える時間が欲しかっただけ。
 ここは過去を思い出さないと出られない教室。
 だとすれば、出来事は私の人生や歴史を準えているはずよ。
 それに、アンノーンは私を知っている素振りを見せたわ。もし彼女が私と会っているとすれば、A子は私の可能性が高い。
 でも、全く思い出せない。
 アンノーンにとっては辛い過去なのだろう。だから、あの日の出来事が心に刻まれているに違いない。一方、私にとっては平凡な日常に過ぎなかった。少し悪戯をしていただけならば、記憶にも残らない。ましてや名前を忘れた少女は2年生の時に親の都合で転校した。1年しかいなかった子なんて覚える事もなかったわ。
 でも、これが私の過去だとすれば、アンノーンとは私がイジメた少女のはず。私は忘れたのに、ずっとアンノーンが覚えているとしたら、相当に恨まれているだろう。
 私を殺したいくらいに。
 もしや私はイジメの被害者に刺されて、すでに死んでいるのではないか?
 今、こうして見ている景色は走馬灯なのではないか?
 そんな怖い妄想をしながら、変化がないので、入口に戻るしかない。ずっと座っていても何も進まないからね。
 見飽きた廊下を歩くと、やはり教室が現れた。ガラガラと引き戸を開けると、案の定、黒板の部屋番号が変わっている。
 てか、雰囲気すら違ったわ。



 ――『1年7組』。

 お化け屋敷ね、そうツッコミたくなるほど教室は荒れ果てていたわ。カーテンは破れているし、すべての窓が割れているし、机と椅子は倒れている。壁なんてヒビが入り、今にも崩落しそう。
 至るところにグラフィティーアートが描かれている。
 意味不明なマークや奇妙な英単語の中に、それはあった。廊下側の磨りガラスに《鳥》の文字。たしか、1年2組も《鳥》だったはず。
 同じ文字が2回も使われる事があるの?
 そんな疑問を抱いたと同時に、右脇腹に痛みが走る。まるで誰かに刺されたかのようなズキズキとした痛みよ。
 あれよ、私が目覚めた時に感じた痛みそのものね。

「いてててて!」

 腹部を見ると、右脇腹から血が滲んでいた。しかし、セーラー服をめくると、綺麗で真っ白な肌が露出する。傷一つ無い。でも、痛みは残っている。

「何なのよ」

 そんな吐息が白い。
 冬になったからよ。
 苛立ちながら外を見ると、自分の素肌のような雪景色が広がっていた。グラウンドは雪化粧をしており、普段は見せない一面を覗かせる。
 名残の空から、チラチラと花弁雪が落ちてくる。ふんわりした雪は大地のカトレアを覆い隠し、私の過去のように、最初から無かった事にする。世界を白で埋め尽くせば、綺麗な物しか見えないと思い込んでいるみたいに。
 たしかに、足跡1つないヴァージンスノーは美しい。
 でも、その下には見せられない汚点が幾つも隠されていたわ。
 見たくないものに蓋をして、見たいものだけに囲まれた世界は住心地が良い。だけど、いつかは雪が溶けて真実が地表に露となる。ならば、自分で雪かきをした方が良い気がしたの。

「ちゃんと過去に向き合わなくちゃ」

「きゃあぁぁぁぁあ!」

 私が腹を括った頃、アンノーンの悲鳴が轟いたの。グラウンド側の窓ガラスが揺れて、また割れるのかと思ったわ。
 だから、両腕で顔を守った。
 すると、前腕部の隙間から誰かが落ちる姿が見えた。一瞬、目を疑う。えっ、アンノーンが落ちなかった?
 自分の両目を疑うわけではない。どちらも視力は1を超える。だから、見間違える事はない。
 だとすれば、アンノーンは飛び降り自殺をしたのよ。だから、窓に近寄る。1階に目を向ける。頭の中では、アンノーンが地面に横たわり、白い雪を赤い血で染めている所を想像したわ。
 しかし、実際には地面には誰もいない。
 平らな雪は白いままね。

「何だ、気のせいか」

「きゃあぁぁぁぁあ!」

 私が安堵したのも束の間、私の目の前をアンノーンが落ちていった。
 不思議なものね。それは3秒くらいの出来事なのに、スローモーションに見えたの。あたかも連続撮影をしたように、はっきりとアンノーンの姿が目に焼きつく。冬風に煽られる栗毛色の地毛も、乱れた制服も手に取るように分かる。なんなら蒲公英みたいな黄色い瞳と目が合う。
 でも、アンノーンが窓枠に差し掛かると、瞬く間に消えちゃったわ。再び窓から地面を覗くも、雪上には誰もいない。
 その刹那、また上から悲鳴が聞こえる。

「きゃあぁぁぁぁあ!」

「うわっ、危ないわね」

 アンノーンが落下してくるので、思わず尻もちをついてしまう。尻への衝撃よりも、3度目の落下に恐怖した。
 それから何度も何度も何度も何度も、アンノーンは悲鳴を上げながら屋上から落下する。
 でも、地面には彼女の遺体がない。
 人が落ちるシーンを繰り返し見せられるうちに、その光景が私の記憶を呼び覚ます。そう言えば、高校1年の冬、私がイジメた女子も屋上から飛び降りたっけ。あの子は一命を取り留めたけど、顔が潰れたらしいわ。
 自慢の美顔も台無しになって、彼氏にも捨てられたようね。それから彼女は柔道に没頭して、高校2年の時に親の都合で転校しちゃったの。
 切ない過去を振り返っていると、知らぬ間に、黒い人影が私を取り囲んでいた。
 かごめかごめをする時のように、私を中心に人影が円を作る。そのため、動きようがない。逃げ場を失くしたまま、周囲の影が私をなじった。

「「「「「A子が追い詰めた」」」」」

「私じゃない」

「「「「「A子が犯人だ」」」」」

「私はA子じゃない」

「「「「「じゃあ、誰がアンノーンを傷つけた?」」」」」

 黒い人影が両手を伸ばした。まるで死人みたいに冷たい手が私の体に触れる。こいつら、触れんのかよ。私は怖くなって、人影を押しのけて強行突破を謀る。
 もちろん、人影たちは私を追ってきた。
 でも、恐怖で後ろを振り向けない。ドタドタという足音につきまとわれながら、私は引き戸を開けて、次の教室を目指したわ。
 ひたすらタイル張りの廊下を疾走すると、次の教室が見える頃には、後方の足音は消えていたの。ただ、後ろを確認することなく教室に飛び込んだわ。



 ――『1年8組』。

 季節は不明。
 あり得ない速度で教室の時計は短針と長針を回す。
 私の心を映したように、窓の外は漆黒の闇で塗られていた。もはや何も見えない。教室から宇宙船に移動したと言われても信じちゃいそう。それくらい外は光源が1つもない暗闇だった。
 それに反して、室内は真っ赤なの。
 ペンキを塗り合うゲームをした後のように、天井も、壁も、床も赤色に染まっている。少し血腥いため、その赤色は血液に違いなかった。あまりの血の量に、ミステリーの殺人現場に来たと思っちゃう。
 不気味な雰囲気に足がプルプルと震えたわ。生まれたての子鹿になった気分で、初めて見る教室を歩く。小鹿なら全てを新鮮に思えるだろうが、A子と呼ばれた私は畏怖しか感じない。
 おや、よく見ると、床には《小》の血文字がある。
 たしか、アンノーンとの最初の会話では、1年8組がゴールみたいな言い回しだったわね。とするならば、この文字で最後かも。そこで、今までの文字を板書して確認する。

 1年1組に《香》。
 1年2組に《鳥》。
 1年4組に《飛》。
 1年5組に《遊》。
 1年7組に《鳥》。
 1年8組に《小》。

 全てを繋げると、香鳥飛游鳥小。
 意味不明ね。
 漢文にも見えたが、レ点の位置が分からない。飛ぶ鳥は香り、遊ぶ鳥は小さい。こんな風に読めなくもないけど、あまり意味が繋がらないわ。
 そこで、飛鳥香の時のように逆にしてみた。
 小鳥遊飛鳥香。
 最後の飛鳥香はアスカと読むとして、小鳥遊とは何だろうか。待てよ、難読な氏名で見た気がするわね。何て読んだっけ?
 とあるテレビ番組の解説を思い出す。そうよ、小鳥が遊べるくらい平和という意味合いから、鷹がいない、すなわちタカナシと読んだはず。

「たかなし……あすか」

 その名前を口にした刹那、記憶がフラッシュバックした。体は不気味な教室にいるのに、魂だけはタイムリープしたように過去へと舞い戻る。一瞬で過去が私の中に流れ込む。アンノーンなる存在の真名を知る。
 そうよ、小鳥遊飛鳥香って名前になるわ。
 待って、私は小鳥遊飛鳥香を知っている。
 彼女こそ私がイジメた同級生よ!
 靄が消えた空のように、頭の中がスッキリと晴れ渡った時、その頃合いを見計らったみたく背後からアンノーンの声がしたのよ。

「やっと思い出してくれたのね?」

「アンノーン……ではなくて、あなたは小鳥遊飛鳥香なのね」

 後ろを振り向くのが怖かったわ。それは私が見たくない過去を振り返る行為と重なるから。誰だって嫌な半生や消したい思い出はあるはずよ。
 でも、私は自分の過ちと向き合わなければならない。
 この教室の意図は未だに不明のままね。ただ、私が忘れた過去を思い出し、小鳥遊飛鳥香さんに謝ることが求められているように強く感じた。
 意を決して回れ右をした。
 すると、すごい勢いで景色が流れ、後ろの正面にはアンノーンこと小鳥遊飛鳥香が立っていた。しかし、その容姿は最初の美しい姿とは程遠かったの。
 顔は潰れていた、踏まれたトマトみたいに。
 首は折れていた、台風の後の枝のように。
 手も折れていた、野球で使ったバットのごとく。
 おそらく屋上から落ちた時の姿なのだろう。アンノーンは見るも無残な姿に変わり果てていた。もはや原形は止めず、人には見えない。むしろゾンビと言われた方が納得するくらいよ。
 あまりの醜貌によって無意識に悲鳴を上げてしまう。

「きゃあぁぁぁぁあ!」

「なぜ悲鳴を出すの? 久しぶりの再会なんだから、笑って話そうよ」

 一体、どこから声を出しているんだろうか?
 そんな疑問が出るほど、アンノーンはミンチ肉みたいな顔で普通に会話をしていた。口がないのに、見た目が変わったにもかかわらず、最初と同様に美しい声で語りかけてくる。
 それが逆に不気味だったの。
 間違いなく私を恨んでいるはずなのに、笑顔で喋ろうなんて言うのは裏があるに決まっているのよ。

「そっそうね、小鳥遊さんと会えて嬉しいわ」と唇が震えた。

「でしょ、座って話そうよ」

「私も昔話に浸りたいんだけど、仕事があるのよね」

「ブラック企業に務めるのも大変ね。上司から明日までに会議の資料を作れって言われたんでしょ」

「なんで会社の業務を知っているの?」

「そりゃ、美桜の世界なんだから、あなたの出来事が反映されるわ」

「やっぱり幻想なのね」と少し安堵する。

「でも、災難よね。最期に見る夢が、まさかイジメの光景だなんて」

「ずっと心に引っかかっていたのよ、小鳥遊さんの事が……ちょっと待って、今、最期って言った?」

「えぇ、これは美桜の過去ではあるけど、厳密には走馬灯だもの」

「そんなバカな!」と絶句しちゃう。

「ここに来る前の記憶も忘れたようね」

「まさか小鳥遊さんが私を刺したの?」

「さぁね」とアンノーンは曖昧に答えた。

「現実で起こった事を教えてよ」

「イジメられたのに、美桜に真実を教えるわけないわ。ただ、右脇腹は痛くない?」

「イテテテテ、たしかに腹部が痛くて血がついているのよ。傷はないのに」

「それがヒントよ。てか、最初に答えはあったでしょ」

「何の話よ? そもそも1年8組まで進んで過去を思い出したのよ。現実に帰して!」

「私の話を覚えていないの? 『外に出られるかも』って言ったのよ」

「つまり、ここで私を殺すつもり?」

「勘違いしないで、あの男が美桜を殺すの。それに私は乗じただけよ」

 あの男って誰よ?
 てか、これって本当に走馬灯なの?
 だとすれば、私は死にかけているはず。もしや右脇腹の傷が致命傷なのかも。そこまで考察しても、現実で何が起きたか思い出せなかったわ。

「お願い、元の世界に戻して」

「嫌よ、美桜のせいで私は顔に傷を負った。結婚もできなくて、友達にも笑われて、人生まで失った」

「それは小鳥遊さんが飛び降りたからよ。私のせいじゃないわ」

「本気で言っているの? 追い詰めたのは、美桜じゃない」

「もう良いわ、自力で帰る」

 私は変化があったので、後方の扉に走った。でも、そこに出口は無かったの。さっきまで引き戸はあったのに、その部屋では扉が消えていた。
 まるで私を出すつもりが無いように。

「まだ反省していないようね」と小鳥遊が足を引きずりながら近づく。

「こっちに来るな!」

 手当たり次第に教科書やチョークを投げた。しかし、そんな物に怯むことはなく、小鳥遊さんは前進した。やがて私を壁に追い込むと、壁ドンならぬ首ドンをしてきたわ。
 アンノーンの両手が私の首を締め上げる。
 折れているはずなのに、レスラーを彷彿とさせるパワーよ。

「ぐっ苦しい!」

「私に何か言うことはないの?」

「助け……て」

「私に謝れ」

「ごっめん……なっさい」と声を絞り出す。

「A子、いえ、春風美桜。謝罪に免じて、1つだけ教えてあげるわ」

「何を?」

「結末は全て夢の冒頭にあるの」

「どういう……意味?」

「言葉のままよ。美桜に窮地が迫っている。だから、走馬灯を見終わったら、私を頼って。反省していたら、助けてあげるわ」

「ありっ……がとう」

「ただし、私に会っても、容姿で笑わないでね。あと、イジメた事を反省して友達になってよ。私は人を助ける仕事に就いたんだから」

 たしか、1年4組でアンノーンは『今は無理かもしれない。だけど、必ず強くなって、誰かを守れる人になってやるわ』って話していたわね。
 ただ、彼女の意図するところは分からなかったの。
 アンノーンこと小鳥遊飛鳥香は意味不明な言葉を吐き出すと、さらに私の首を強く絞めた。頸動脈が圧迫され、脳に酸素が供給されなくなる。一時的に頭が空っぽになり、やがて苦痛すらも忘れた頃、私は意識を失った。
 死とは1つの終わりである。
 ただ、走馬灯の中での死は現実の始まりなのかもしれない。








――???――

「はっ!」と目が覚める。

 走馬灯の最初と同じく、腹部に猛烈な痛みを感じたわ。右手で触ると、なぜか濡れている。その手のひらを見ると、赤い絵の具を塗りたくったように血まみれになっていたの。

「キャッ!」と声を出す。

 と同時に記憶がフラッシュバックした。そうよ、私は残業中にストーカーに右脇腹をナイフで刺された。死を身近に感じて、犯人から逃げたんだけど、ついに屋上の踊り場で力尽きたんだわ。扉の鍵が開いていなかったから。
 ――2035年2月15日。
 ――都内某所のオフィスビル37階。
 月光が差し込む踊り場の先には、開かない扉があった。屋上に通じる道は、硬く無慈悲な南京錠で閉ざされている。だから、階段を降りようとした。足を踏み降ろすたびに振動が傷口に伝わる。痛みとともに血が吹き出す。
 出血で意識が朦朧とする。
 気が狂ったのか、自分以外の足音が階下から聞こえた。いや、これは幻聴ではないわ。誰かが下にいる。だとすれば、ストーカーに違いない。

 犯人の名前――それは佐々木大樹。

 私と同期で、入社3年目の25歳。イケメンの男子で、仕事もできる。何より明るくて面白い。絵に描いたような理想の彼氏候補で、社員からも憧れていた。だから、私が付き合った時なんて嫉妬した女子社員から嫌がらせを受けたわ。
 でも、付き合ってみるとワガママだし、理不尽な要求も多いし、断ると暴力に訴えてくる。そんな中で、冒頭で語ったとおり、蛙化現象が起きて別れたんだけど、佐々木はストーカーに変容しちゃった。
 そして、冬のボーナスが出た頃、私は佐々木大樹に襲われた。
 深夜2時まで残業をしていた所、パソコンの画面に齧りついていたから、背後の佐々木に気付けなかった。そこで彼に右脇腹を刺された。血を流しながらも懸命に逃げたけど、ついには屋上の扉が開かず、力尽きたってわけね。
 もしアンノーンの夢を、小鳥遊飛鳥香との過去を思い出さなければ、私は死んでいたに違いない。
 でも、目が覚めたとは言え、出血による酸欠で手足が痺れて走れない。しかも、階下から犯人が上がってくるならば、もう逃げ場はない。閉ざされた屋上のせいで、私は袋の鼠だから。
 だから、階段に座り込んでしまった。
 すると、見覚えのある男が声をかけてきた。背筋が凍るようなキモい猫撫で声だったわ。

「みーーお、やっと見つけたぜ」

「佐々木、こっちに来ないで」

「なんで美桜は俺と別れたんだよ」

「それは便座を上げていて蛙化現象が起きたからよ」

 私が佐々木に説明すると、彼は頭をクシャクシャにしながら駄々をこねた。本当に情けないわね。別れて正解だったわ。自分の判断を正当化しつつ、佐々木を見下した。
 佐々木大樹――社会人3年目の25歳、172センチ・62キロの右利き、営業部の若きホープ、私の元カレ。
 ねずみ色のスリーピーススーツを着ており、ジャケットとスラックスにジレを合わせている。
 ただ、私を刺した時に返り血を浴びており、せっかくのスーツに黒いシミが付いている。そんな血まみれの佐々木は、私に気持ち悪い質問を投げかけた。

「意味わかんねーよ。これだけ俺は美桜を愛しているのに、なんで美桜は俺を愛してくれないわけ?」

「好きな人を刺すような人間に恋するわけないじゃん」

「はぁ? 俺の愛が分かんねーのかよ。来世で結ばれるために、嫌だけど、刺したんだろ」

「近寄るな」

「へへへっ、まだ動けるのか。もっと刺さなきゃな!」

 佐々木がナイフを振り回す。それを交わして、階段を転がる。傷口を押さえながら、必死に36階に逃げる。ぼんやりと光る非常灯を目指して走ろうとした。
 しかし、佐々木に髪を掴まれる。

「お願い、離して」

「俺を拒絶するな。そうだ、逃げられないように足を斬っておこう」

 佐々木は常軌を逸している。妖怪よりも彼の方が怖いと悟った間に、佐々木は私の右アキレス腱にナイフを突き立てた。
 まるで熱した鉄棒を押し当てられたように、右足に表し難い激痛が走る。ナイフを前後に動かすため、肉が抉られる。血が噴き出す。ただ、アドレナリンが出たのか、体は火照り、徐々に痛みを感じなくなる。
 不思議だったわ。
 死ぬほど怖いのに、身を捩るくらい痛いのに、緊急事態には声が出ないの。猿ぐつわを咥えさせられたように、喉の奥で悲鳴が引っかかって外に声が漏れない。
 びっこを引くも、歩みが遅すぎる。もう佐々木から逃げ切れそうになかった。
 だから、心が折れて、体は床に倒れちゃったの。

「やっと大人しくなったか」

「お願い、誰か助けて」

「誰も来ねーよ。ただ、あまり騒ぐな。警備員がいるかもしれねーからな」

「36階でストーカーに襲われ……うぎゃ!」

「勝手に喋んじゃねーよ。堪能してから、殺してやるからよ」

 佐々木に腹部を蹴り込まれ、意に反して悶絶してしまう。助けを呼びたいのに、恐怖心が喉を塞ぐ。
 無抵抗の私は仰向けにさせられると、佐々木は馬乗りになった。そのままレディーススーツやシャツを破って、胸を鷲掴みにされた。でも、どうでも良かった。もう抵抗する体力が無かったのよ。
 目を閉じて、佐々木の為すがままにされる。
 このまま襲われて死ぬんだ。
 ナイフで首を斬られて死ぬんだ。
 たぶん小鳥遊飛鳥香さんをイジメた天罰ね。
 お父さん……お母さん……親孝行できなくて本当にごめんなさい。
 親不孝な自分を心中で謝罪したのだが、なぜか佐々木の手が止まった。だから、おそるおそる右目だけを開くと、彼は女性の警備員と格闘していた。

「その女性を離しなさい」

「クソッ、マジで警備員に出会すとはな」

 佐々木は女性の警備員と取っ組み合いをしていた。緑の非常灯しか光源がなく、薄暗い踊り場では彼女の姿が見えにくい。
 ただ、女性の警備員は佐々木と同じくらいの背丈で、胸はDカップくらいあり、毛先がカールしている。青い制服が似合っており、今まさに右手で警棒をスパーンと伸ばした。
 そこからは先ほどの夢みたいに2人のシルエットだけが動く。
 まず佐々木が右ストレートを繰り出すも、その拳は交わされる。佐々木が態勢を崩した隙に、女性の警備員は警棒を首に振り下ろす。佐々木は「イテッ」と小言を残すと、そのまま地面に頭を打ちつける。そこに女性の警備員が飛びかかり、見事な袈裟固めを披露した。
 女性の警備員は、誰かを守るために負けられないと言った様子ね。

「いてててて、右腕が折れる。離しやがれ」

「暴れるな! 暴行の現行犯で逮捕するわ」

 刑事訴訟法第213条には『現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる』とある。
 女性の警備員は、この規定に従って、刑法208条の暴行罪を理由に佐々木を逮捕した。もちろん、私に対する殺人未遂もあるのだけど、その捜査は警察の仕事ね。とりあえず、彼女は素早く手錠を取り出すと、それを彼の両手首に付けた。
 佐々木は泣きべそをかいており、いい気味だと思ったわ。
 犯人が逮捕されて安堵した直後、思い出したように腹部の痛みが蘇った。私は声も出せず、冷や汗を垂らしながら傷口を押さえる。ひんやりとした床が気持ちよくて目を瞑りそうだけど、目蓋を閉じれば二度と両目は開かなそうだったの。

「大丈夫ですか?」と警備員が声をかける。

「大丈ばないわ。お腹を刺されたのよ」

 痛みのせいで、女性の警備員に強く当たってしまう。完全な腹いせね。反省して女性の顔色を伺った際、全身に衝撃が走ったの。
 その警備員が歳を重ねたアンノーンに似ていたから。
 私と同い年くらいの警備員は、黄色くて丸い瞳が色褪せず、栗毛色の地毛に少しクセがあったわ。ただ、その鼻は潰れ、上の前歯が2本とも欠けていたの。まるで飛び降りた時に顔を潰したようにね。
 お世辞にも可愛いとは言えないわ。
 ただ、アンノーンの言葉を思い出して、容姿に触れない事を決める。
 もしかしたら、この警備員こそ小鳥遊飛鳥香さんなのかも。そう察した頃、警備員はスマホを取り出したわ。

「それは大変ですね。今すぐ救急車を呼びます」

「ごめんなさい」

「なぜ見ず知らずの警備員に謝るの?」と警備員は敬語を使わない。

「私たち、過去に会っているわ」

「……その声、ひょっとして春風美桜さん?」

「そうよ、小鳥遊飛鳥香さん。私を覚えていてくれたのね」

「あのね、被害者は加害者を忘れないのよ。足を踏まれた人が犯人を忘れないようにね」

「それもそうね、私だってストーカーの顔は忘れないもの」と佐々木を睨む。

「でも、なんで春風さんは謝ったの?」

「死の間際に、アンノーンに助けられたの」

「アンノーン?」と小鳥遊さんは不思議そうな顔をした。

「あっ、アンノーンというのは私の走馬灯に出てきた少女で、実は、小鳥遊さんの過去の姿だったの」

「奇妙な話ね。つまり、私が春風さんの走馬灯に登場して、あなたの命を救ったのね」

「その通りよ」

「だとすれば、私は春風さんの命の恩人ね」

「だとしなくても、小鳥遊さんは命の恩人よ。私にイジメられたのに、今日も助けてくれた。本当にありがとうございます」

「お礼なんて必要ないわ。私は人を守るために警備員になったのだから。子供の頃、柔道をしておいて良かった」

「グスン、小鳥遊さんは本当に立派ね。それに比べて、私は最低よ。被害者に助けられているし」

「本当に反省しているの?」と小鳥遊さんがしゃがみこんだ。

「当たり前よ、命を救われたんだから」

「まだ失血死する可能性はあるけどね」

「マジ?」と傷口を止血する。

「マジ、マジ。ビルに大量の血痕があったもん」

「まだ死にたくないよ。結婚もしていないし、子供も産んでいないし、行きたい国に行けていないし、あぁ、ヘブンスの今月の新作ケーキも食べれていないわ」

「よく私の前で欲望を曝け出せるわね」

「ごめん、でも死の間際だから許して」

「こんな話を聞いた事があるわ。死にそうな時は、生き延びた時の褒美を考えると良いって噂」

「じゃ、ヘブンスに新作のケーキを食べに行くわ」

「ヘブンスって話題になっているけど、どんな店なの?」

「宇宙一接客が丁寧な店よ」

「その手の店って、自分でミスをして謝るっていうコンセプトよね」

「ふふふっ、たしかにSNSでは虫が入っていたと動画がアップされていたわ」

「そんな事だろうと思ったわ。でも、春風さんの奢りなら、付き合ってあげても良いわよ」

「まさか一緒に行くつもり!」

「あらあら、私はイジメの被害者で、なおかつ春風さんの命の恩人なのだけれど」

「そっそうね、もちろん、私が御馳走するわ。これは過去の贖罪だからね」

「その程度で許されると思わないでね」

「当たり前よ、この生涯をかけて罪を償うわ」

「そこまで重く受け止めなくても良いのよ。ただ、死ぬまで友達でいてくれたら嬉しいわね。この容姿のせいで人に避けられているから」

 なんて小鳥遊さんと話していると、ピーポーピーポーと救急車のサイレンが聞こえた。その音は、普段なら誰かの急病を告げる危険な音なのに、今は私を救うための優しい音色に思えたの。
 ちな、搬送されてから聞いたんだけど、私は相当にヤバい状態で、警備員が話した事で気が紛れ、さらには勇気づけられて一命を取り留めたらしいわ。
 本当に小鳥遊さんには頭が上がらないわね。
 というわけで、私は翌月に小鳥遊さんをヘブンスに連れて行った。フェアリープリンセスとかいう黒髪JDが接客をしてくれて、新作の『丸ごとピーチのカスタードクリーム』を落として土下座していたわね。そのフェアリープリンセスが連続JD水死事件の被害者って言っていたのは半信半疑だったけど、小鳥遊さんと食べた桃の味は忘れないだろうな。
 これから死ぬまで小鳥遊飛鳥香さんと親友でいられますように!











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