女子にボールをゆっくり投げるのをやめてほしい。
体育の時間。ドッジボールをした。
ちらりと私のことを見て、男友達がボールをゆっくり投げた。
男女間の体力差があるなんていうことは痛いほどわかっているし、その男友達は別に私に対してだけでなく、「女子に対して」等しく、ボールをゆっくり投げていた。
もちろん、その裏には彼なりの優しさ、のようなものがあったのかも知れない。
でも。
すごく、嫌だった。
なぜかなんてわからない、でも、自分が下に見られているような気がして。
ものすごく、嫌だった。
「ごめん、ボール手加減するのめっちゃ嫌だからやめてほしい。」
気づけばそう口が動いた。
どんな顔をしていたかわからないけど、そう言った私を見て、その男友達は、
「あ、そうなん?投げていいんなら投げるで。」
と言って嫌味なくニヤっと笑った。
あまりにもあっけらかんな彼の態度にどこか拍子抜けして、その一方でなんともいえない嬉しさがこみ上げた。
もちろん、その後に、女子は女子でも本当にボールが怖いと思っている人もいるから、投げるなら私だけにしてね、というのも付け加えておいた。実際そういう子がいるのも事実だから。
「あー了解了解、別に普通に投げるで?」と返事が来て、なんとなく男友達とフラットな関係を築けたような気がした。
どこかで馬鹿にされているというか、なめられているというか。
そんな気持ちがなくなって、ふっと軽くなった。
次の体育の時間。
私と男友達が対峙して。
男友達はちらりと私のことを見て。
男子に投げるように、思いっきりボールを投げた____。
友達が後ろで「え、アイツ女子にそのボールはないやろ。」といったのが聞こえた。お前女子にきついボールとかありえへんわと茶化す男子。
でも、私はそれでよかった。それがよかった。
これでいいよな?と確かめるような目で「俺ちゃんと投げたやろ?」と言って笑った男友達。
そこに一抹の不安が見えた、気がして、
「おう!ありがとう」と私は笑顔で応えた。
もちろん、すべての女子に強いボールを投げろと言っているわけではない。
でも、私はそれが嬉しかった。
もやもやがなくなってすっきりした。
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