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ESG投資とマズロー

こんにちは

僕は大学で社会学のゼミに参加しているのですが、そこで扱った『ESG思考−激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった』という本を読んで考えた事をここに記録しておきたいと思います。

https://www.amazon.co.jp/dp/4065196108/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_XR5QFbPFHB107

この本は、ESGという考え方について書いている本です。ここ数十年の資本主義の性格の変遷と共に、ESGを理解するという作りになっています。

著者は、資本主義を「オールド資本主義」、「脱資本主義」、「ニュー資本主義」と分けています。

「オールド資本主義」は、限りない拡大・成長を求めるもので、環境に配慮する事は利益に繋がらないとして、利益だけを追求するもの。

「脱資本主義」は、環境への配慮と利益が両立しないと考えている点は一緒ですが、そこで利益よりも環境に配慮すべきだというもの。

「ニュー資本主義」は前提が異なっていて、環境への配慮と利益は両立しうる、環境への配慮は長期的に見れば利益をもたらすと考えるもの。

このように区分して議論を展開しています。ESGや資本主義等それ自体についての議論は、この本を読んでください。


以下、僕がゼミで発表したレポート(ニュー資本主義とマズローについて)の抜粋です。


私は、『ティール組織』に大きな影響を受けているのもあり、産業化・工業化の後の3つ目の定常化社会では「地球倫理」が発展するのではないかという半ば希望も含んだ予想をしているが、それはA.マズローの議論も踏まえてのものである。彼は『人間性心理学』において、中世から現代に至るまでに、理想の姿とされる特定の人間の型が変化してきたことを指摘している。その理想の型とは、それに従いさえすれば「個人の幸福や福祉が追求される 」というものだった。中世期においては、「霊的・宗教的人間」 が、ルネッサンス期においては「知性的人間」 、資本主義とマルクス主義が台頭してきた時代は「経済的人間」 が理想とされたと言う。そして現在では新しい概念にとって代わられつつあり、それが「心理学的に健康な人」 である。マズローが言うところの「心理学的に健康な人」と言うのは、自己実現的な人間である。彼の自己実現論において、「自己超越的な自己実現者」と「自己超越的でない自己実現者」が区別されるようになるが、前者がいわゆる自己超越である。基本的欲求の満足則ち自己超越ではなく、自己超越的な性格を帯びるのは、「自己超越的でない自己実現者」に比べてもより健康な人である。自己超越というのは「課題中心的」 であったり、「シナジー」 によって簡易に説明される。従って、「地球倫理」というのは心理学的な発達ののちに見られるものではないかと思っていた。

 ニュー資本主義は、「課題中心的」ではないにしても非常に「シナジー」という概念を表しているように見える。長期的な利益の追求が、同時に環境は社会といった領域に対する貢献をもなすからだ。世界の人間が心理学的に健康になっているかと言えば、日本を見ればそうではないように思えるし、欧米諸国の状況は知らないので言及できないが、欧米の社会は進歩していると言っていいのかもしれない。ヴィーガニズムの拡大もヨーロッパが数年先んじている。

また、自己実現は完全に個人の内的な問題として収束させられるのではなく、むしろ環境や文化の影響が大きいものである。自己実現には良い外部環境が求められる。それを考えると、シナジー的なニュー資本主義は比較的自己実現の起こりやすい社会と言えるのではないかと思う。

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